「退路を持たない、刺激中毒が集う場所」
起業家を支える20代は、ガイアックス式“Hard Things”から生まれ続ける
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終身雇用が終わりを迎え、「個」として生きる力が求められるこれからの時代において、学生はインターンであれど単なる「社会人経験」を得られるだけでは満足しなくなっていく。では、成長が約束される「価値あるインターン経験」は、どこにあるのだろうか?
今回紹介する環境は、おそらく、その一つの形だ。ソーシャルメディアやシェアリングサービスを運営する株式会社ガイアックスは、インターン生であっても、数百万円の広告案件や新規事業の責任者を任せるスタンスを取っている。「自由」な社風でも知られる同社は、ピクスタ株式会社の古俣大介氏や、AppBank株式会社の村井智建(マックスむらい)氏など、多くの起業家を輩出してきた。
なぜ、ガイアックスからは起業家が多数輩出されるのか。多くの若手人材を成長させてきたガイアックスには、どれほどまでに厳しい環境が用意されているのだろうか。内定者インターン生時代から「月に29.5日働いていた」と獅子奮迅のコミットを行い、いまや「若手のホープ」と呼ばれる、採用担当の流拓巳氏にお話を伺った。
- TEXT BY MONTARO HANZO
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
- EDIT BY MASAKI KOIKE
学生インターンに「運転手を雇いなさい」。とことん成果にコミットする“Hard Things集団”ガイアックス
「ぶっちゃけ、日本は働かなくてもなんとかなる国。だからこそ、働くからには圧倒的な成果をあげないと意味がないと思うんですよ」
取材を通じて、首尾一貫した“成果主義”と“ミッションへのコミットの強さ”を感じた。「正論」を堂々と指摘する姿は、やりぬいた経験に下支えされているのだろう。
ガイアックスの流拓巳氏は新卒3年目ながら、全社の期待を一手に背負う若手のホープだ。内定者インターンを経て同社にジョインしたのち、数百万円の広告運用や、新規事業の関西拠点責任者など、一般的な企業のインターンと比べると、異例の裁量を持たされていた。
流ガイアックスを一言で表現するとしたら「自責思考を持った人びとの集団」。ミッションを達成するためにどれだけベストを尽くしたのか、やり残した“HOW”はないかといった徹底的な成果へのコミットを要求される組織です。逆にいえば、成果が出れば3時間で退勤してもいい。成果を上げるために必要不可欠な「自責思考」を養える環境です。
ガイアックスの「自責思考」を初めて体感したのはインターン時代。ジョインの理由は、同社のビジョン「人と人を繋げ、社会課題を解決する」への共感からだった。
流僕のミッションは、「世の中から“他人事”を無くし、自信を持ってアクションできる人を増やすこと」。ガイアックスは自分の目指す世界を実現できる環境だと感じ、ジョインを決めました。
内定者インターン時代前半には、新規事業「TABICA」のマーケティングを担当。短期間で新規ユーザーの40%を獲得する活躍を見せ、関西拠点の責任者に抜擢された。流氏は、当時の状況を「有無を言わさず大阪に移住することになった」と語る。
流「移住するお金がないです」といえば「必要なお金は前貸しするよ」。「免許を持っていないので関西の隅々まで営業に行きにくい」といえば「事業予算の中で運転手を雇えばいいじゃん」。「関西に家がない」と言うと、最終的には社長(代表取締役、上田祐司氏)の実家に居候させてもらうことになり、関西への異動が決まりました(笑)。お金がない、住む場所がないだけで大阪行きを諦めていた自分にとって、思考の甘さを痛感させられた出来事でしたね。
オフィス暮らし、夜通しのミーティング…インターン時代の月間出勤「29.5日」
関西に移り住んだ流氏だが、居候する予定だった社長の実家に泊まることはほとんどなく、「2秒で出勤できる」という理由から、自分で立ち上げたオフィスに宿泊する毎日が続いた。挙げ句の果てには、経費でオフィスにソファーベッドを導入したほどだ。インターン生でありながら、成果のために自分ができる最善を尽くす「ガイアックスの精神」が、流氏を貫いていた。
流氏は関西拠点での生活を、常に上司からの「詰め」を食らう毎日だったと回顧する。オフィスに上司はいないながらも、関東の本社とは週に一度、オンラインでミーティングを実施。行った施策の成果が出ているのか、綿密な議論を繰り返した。
流営業、マーケティング、コンテンツ制作の進捗…。オンラインミーティングでは「なぜ伸びなかったのか」「次はどうするのか」を徹底的に質問攻めされました。しかし、一方的に詰められるだけでなく、成果へのヒントを得るために、僕も食い下がっていましたね。お互いに納得するまで議論が続くため、気づいたら夜が明けていたことも少なくありませんでした。
関西での生活は半年間続いた。流氏は関西拠点の営業、コンテンツ制作、広報、マーケティングを担当。TABICAの体験を提供してくれそうな農家や職人の元まで直接足を運び、交渉を続ける反面、広報としては地方誌と交渉するなど、広告戦略を策定、実行した。本人も「月に29.5日は働いていた」と語るほど、ハードな毎日だった。
流かといって、周りにも徹夜でのコミットを強いていたわけではありません。ガイアックスのいいところは、各々のスタイルを追求できるところ。僕のコミットがハードタイプなだけで(笑)、定時に帰る同期はたくさんいます。ただ、徹底的に自己責任なので、自分に甘えず、成果へコミットするマインドセットが求められますね。
僕自身、関西拠点の立ち上げを経験したことで、性格が変わりました。はじめは心配性で、考えてばかりであまり予算を使えないし、なかなか動き出せなかったんです。しかし事業をストレッチさせるためには「先行投資」が不可欠で、適切にお金を使わないとサービスは伸びないと学びました。そして、自分が早く意思決定しないと事業は一切前に進みません。上司や目標達成に追い詰められることで、ビジネスマンとしての「合理的」な判断を身に付けることができたと実感しています。
なぜここまでのコミットをすることができたのだろうか。疑問をぶつけると、「一緒に手を動かしてくれる上司の姿が、自分の背中を押してくれた」と語る。
流東京にいる社長が、メールでの質問や意見に即レスしてくれるんです。徹夜のオンラインミーティングもしかり、インターン生だからといって舐めることなく“対等”に手を動かしている姿を見るたびに、会社に貢献したいと思えるようになっていきました。
誰もKPIを設定してくれない。社会人3年目に感じる「自律駆動」の難しさ
インターン時代に“Hard Things”を体感した流氏は、入社後、採用担当へ配置転換を希望。「自責思考」を実践し、自己成長におけるモメンタムを生み出した経験を大学生に還流することで、会社にさらなる勢いを生み出す人材を獲得できるのではないか、という仮説からだった。
流2019年4月入社採用からは責任者として、新卒採用を統括しています。夏のインターン企画から採用基準、選考プロセスに初任給の改定、入社時の育成など…。「採用マネージャー」でありながら、採用以外の業務範囲まで広く担当しています。
いまガイアックスが求めているのは「3年後に活躍する人材」。優秀な人材を獲得するためにどのような採用基準を設ければいいのか、経営会議などの場で、役員と一緒に話し合っています。
社会人になり、部下を持つようになった流氏は、現在の仕事を「怒られ“ない”点に難しさがある」と語る。上司がKPIを設定してくれていたインターン時代と異なり、自分自身で「合格点」を設定しなくてはならない。
流ガイアックスの信条は「みんながやりたいことをやる」こと。働く場所も時間も自由に選べる反面、自由に選べる範囲を狭めないために、福利厚生をはじめとした制度は最小限にしています。また「自由」の前提として、「成果を出す」こともシビアに求められます。ガイアックスに「怒る上司」は少ないですが、成果が出せなければ仕事はどんどん無くなっていきます。いわばフリーランスのようなイメージですね。それがガイアックスの厳しさでもあり、面白い点だと感じています。
ただ、そんなガイアックスにも1つだけ「決まりごと」があります。それは、「ライフワーク」を上司と考えること。5年後、10年後どうなっていたいのかを上司を真剣に考える時間が、3ヶ月に1度設けられます。自分の人生に主体的になれるよう、制度設計されているんです。そうしないと、Hard Thingsは乗り越えられませんからね。
加えて、会社への「当事者意識」をさらに強めていくことの重要性も痛感しているという。
流いま苦心しているのは、採用したいハイレベルな学生をどのように繫ぎとめるか。ガイアックスには起業家精神旺盛な若手が集まってくれることもあり、起業準備で内定を蹴られたりすることがあるんです。
優秀な学生に「魅力的な環境」だと認識してもらうためには、採用担当の枠組みを超え、会社の見せ方を工夫しないといけないと使命感を感じています。レベルの高い学生に訴求するためには、即物的ではなく、本質的な価値を伝える必要があるからです。いま持っている「素材」を活かし、「ガイアックス」をどのように魅力的なプロダクトにしていくのか。会社への当事者意識が問われる仕事だと、実感する毎日です。
キーワードは「ドM」「当事者意識」、そして「刺激中毒」
圧倒的な成果主義、徹底的な自責思考。これらの特徴を持ったガイアックスで働くために、若手社員にはどのような素養が求められるのだろうか。流氏はとある漫画の主人公を例に、ガイアックスで活躍する若手の共通点を説明する。
流僕が理想の若手として標榜しているのは野球漫画『MAJOR』の主人公、茂野吾郎です。MAJORのなかには、野球部の無い高校に入った主人公が、まずは練習場所をつくるために屋上へ土を運んでグラウンドを作るというエピソードがあります。
目の前の状況を言い訳にして諦める発想をしてしまうのではなく「どのように解決するか」だけを考える姿勢は、ガイアックスで伸びる若手に共通しているのではないでしょうか。ある意味、不遇な状況を楽しめる「ドM」な性質が求められるのかもしれません。
また、ビジネスに限らず、何かに「当事者意識」を持って取り組んだ経歴を持つ学生は魅力的です。僕の場合は大学時代、体育会学生が集う自治運営の学生寮の代表として、多様性のある学生をまとめるため月に20回以上も深夜からミーティングを開いたり、保護者のクレーム対応に明け暮れたりしていました。胃がキリキリするほどのストレスを抱えながらも、当事者意識を持って寮の運営に携わった毎日は、ガイアックスへのコミットメントの源流となっていると思います。
さらに、3つ目のキーワードとして「刺激中毒」を挙げる。物事の対処に翻弄されながらも、心のどこかで常に「試練」を求めている人材は、「自由」なガイアックスの環境を活かし、チャレンジングな仕事ができると持論を展開する。
流ガイアックスには、会社以外に活動拠点を持っている社員がたくさんいます。しかも、そこでもコミットメントが異常なので、すぐに何らかの頭角を表す人がほとんど(笑)。僕自身は社外でコミュニティ運営をしているし、趣味のよさこいでも複数のチームからお誘いいただいたりしています。僕が尊敬しているガイアックスのグループ会社、アディッシュ株式会社の経営管理部部長の松田光希さんは仕事で成果を出し続けながら、日本パルクール協会の会長も務めていました。コミットメントの先にある快感を知っているからこそ、なんでもやりきってしまう「刺激中毒」ばかり。
また、刺激中毒を加速させるのがガイアックスの「自由」な環境。基本的に主体性を尊重するため、「頑張ったからもういいよ」なんて言う人は一人もいません。“ガイアックスコミュニティ”ではスタートアップの経営者が夜中まで仕事していますし、さまざまな出自の人とも出会えるため、日々刺激を受けることができるんです。
「何者でもない」ことを認識し、「しんどい環境」を要求できるか
成果へのコミットを求める流氏だが、最初から学生にスキルや能力を求めているわけではない。むしろ「何もできない」学生だからこそ求めることができるHard Thingsこそに、ガイアックスが掲げる「成果主義」「自責思考」への第一歩があると語る。
流僕自身、ガイアックスに内定したときからミッションを言語化し、迷いなくアクションができていたわけではありませんでした。何もできないことを認め、一日中動き回った結果、「成果」がもたらされ、裁量を与えられるようになった。陳腐かもしれませんが、何者でもないからこそ、行動しないと「次の一歩」なんて見えてこないと思うんです。
「何もできない人間」にできるのは、素直に学び、成長することだけ。覚悟が固まった学生と、新たな景色に向かって一緒にチャレンジしていきたいと思っています。こちらから用意できる「ハードな」課題は、大量にありますから。
また、ガイアックスの主要事業であるソーシャルメディアやシェアリングサービスは、経験やスキルよりもむしろ、若手の純粋な顧客目線が必要とされる側面もある。やり尽くされていない新しい領域だからこそ、学生の自由な発想が事業の成長に繋がるポテンシャルは十分にある。勇気を持って手を挙げた人にこそチャンスを与えられる環境が、ガイアックスにはあるのだ。
流語弊のある言い方かもしれませんが、追い込まれれば誰でも「できる」と思っています。「やらなければならない」「どうしても成功したい」「絶対に突破したい」…想いが強ければ強いほど、成果は出てくる。無人島に一人で暮らすようになったら、なんとかして生き延びようとするじゃないですか。
死に物狂いになれば、人はいつでも生まれ変われるはずです。現在、弊社には新規事業を担当しつつ、投資先の手伝いをしている“Hard Things”な新卒社員がいます。若いうちに大変な経験をしておくことが大切だと思えるマインドがある人には、試練を与える環境が揃っています。
あとは、覚悟次第。もし「しんどいことをさせてください!」と言える学生がいるとしたら、ぜひガイアックスというコミュニティの中で、「生死を彷徨うようなチャレンジングな機会」を自らの手で掴んでほしいと思っています。
【7/12開催】流氏含む、起業家を支える2名が登壇。経営者を支える最強の“右腕”は、どんな環境で育てられたのか?
こちらの記事は2019年06月20日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
姓は半蔵、名は門太郎。1998年、長野県佐久市生まれ。千葉大学文学部在学中(専攻は哲学)。ビジネスからキャリア、テクノロジーまでバクバク食べる雑食系ライター。
写真
藤田 慎一郎
編集
小池 真幸
編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。
1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。
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