連載MBA再考

MBAはベンチャーで武器になるのか?
KeyPlayers代表高野秀敏「ベンチャーCXOになりたいなら●●を勉強しろ」

インタビュイー
高野 秀敏

1976年宮城県生まれ。1999年東北大学経済学部卒業後、新卒で未上場のインテリジェンスに入社。2005年株式会社キープレイヤーズを設立し、現職。30社以上の社外役員・アドバイザーを務める。

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MBA取得後のキャリア形成は起業する者、もといた場所に戻る者、転職する者とさまざま。

今回は数ある選択肢の中でベンチャー企業への転職を考える場合にスポットをあて、MBAホルダーの転職に数多く関わってきた転職エージェントKeyPlayers代表取締役の高野秀敏氏に、転職とMBAについてその考えを尋ねた。

  • TEXT BY SAKYO KUGA
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ベンチャー企業はMBAホルダーを特別視しているわけではない

MBAホールド後のキャリアの傾向としては基本的に金融系、コンサルタント系が多く、とくに海外一流大学出身者においてはその傾向が強い。しかし、一方で「転職先としてベンチャーを志望する者も多くなってきた」と高野氏は話す。

氏のもとに相談にくるMBAホルダーでベンチャー企業志望者はみな、MBAで勉強したことを活かして経営企画しかやりたくないというわけでなく、なんでもやるというスタンスであることが多く、“ゆくゆくは組織のCxOに”という者が多い。

しかし、意外なことに当のベンチャー企業側からMBAホルダーが欲しいと要望されることはほとんどないという。むしろ、

高野経営者自身がMBAを学びに行って改めて勉強しているというケースはまあありますね。

ベンチャー企業においては経営者自身が時間を作って学ぶということもない話ではないのだ。

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MBAを活かすことは難しい

MBAを取得してベンチャー企業へ転職すること自体が難しいわけではない。絶対に活用できるとは言い切れないが、と前置きしつつ、いわゆる規模が何千人単位の楽天やDeNAなどのメガベンチャー企業であれば、MBAで学んだことを十二分に活かすことができる環境が整備されている。

しかしスタートアップや未上場ベンチャーに関して高野氏は、「よく考えることと実行することなら、実行することのほうを重視しているからだと思うんですけど」と濁す。

つまり、黎明期の企業ではMBAで学んだことを活かせる環境にまだ至っていない可能性が高く、目の前にある仕事の成果を出すことのほうが重要ということだ。そういう意味でMBAの経験を活かすことの難易度は高まる。例え活かす機会があったとしても、マルチタスクでこなしていく必要性がでてくるだろう。

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MBAよりむしろ簿記を取れ

高野氏は、「なぜベンチャー企業に行きたいのか、目的が重要ですよね。将来幹部を目指すのであれば、ベンチャー企業の社長や幹部のことについて調べておくといいですよ」とアドバイスする。

これからMBAを学び、ベンチャー企業に転職というキャリアを考えているなら先に目指したい姿である人の経歴を調べることが大事だという。すると、未上場ベンチャー企業の社長やCFO、CxOに関して調べてみると、MBAホルダーは少ないという結果となり、そこに答えがあると。ベンチャー企業への転職MBA取得は少なくとも最適解ではないということだ。

高野自分に足りない部分がでてくれば、それはその都度勉強していくということでいいんじゃないですかね。

さらに、ベンチャー企業への転職では、勉強するという観点でいうとMBA取得よりも、簿記1級や会計士、税理士科目合格などのほうが有効かもしれないと続けた。

高野ベンチャーに転職してCxOになりたいのであれば、経理・財務ポジションで入社し管理部長に昇進、その後CFOというステップが最も計画的。COOはポジションとして発生することが少ないですし、CMOはスタートアップにはあまり存在せず、グロースしてレイターステージにあるスタートアップでやっと出てくるようなポジションです。

ベンチャー企業側のニーズも高く、経験者があまり市場に多くない財務・経理ポジションがベンチャー転職の狙い目ということだ。

MBAがベンチャー転職に有利に働きにくい背景には、日本のベンチャー企業の多くはグローバルベンチャーでないことも関係していると思われる。もちろんグローバルに展開をしている企業においてはその限りではなく、外資系企業やグローバル企業のCxOなどを目標として設定しているのであればMBA取得のほうが有効だ。

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行動することが1番重要

高野ベンチャーに転職して活躍したいと考えるなら、早く動くに越したことはないでしょう。あまり時間をかけないほうがいい。

ベンチャー企業への転職では、学ぶことも重要だがなにより行動力が大事だ。仮に目標とする企業があるなら、すぐにでも会いに行く(面接に行く)べきで、それができないようならベンチャー企業向き人材ではないのだ。

高野採用されるかどうかは社長が判断します。もしダメだったら、頼めばなぜダメだったのか教えてくれる社長も多い。そういう動きができる人はベンチャー向きだと思います。

ベンチャー企業で活躍したいなら早く動き、仮に不採用ならその理由を聞く。その理由がMBAにあるのであればMBAを学びに行けばいい。先述した通り、設定したキャリア目標から逆算して行動できるかどうかが、つまりはベンチャー企業で活躍できるかどうかのカギとなる。

高野従業員である間は、自分がどこでキャリアを積むのかを選択する自由があると思います。その自由を活かして、自分の目標達成に最適な企業で働かなければ時間が無駄ですよね。1日の過半を費やす企業というハコを、自分の目標に到達するために本当に有効活用できなかったら、ビジネスパーソンとしての成功も難しいだろうし、人生も有意義ではないと思います。

高野氏は、「ベンチャーで活躍したければ、若いうちから成果にこだわるべき。勉強を目的とせず、仕事の成果に直結する最低限の勉強をすればよいのでは」と最後に付け加えた。

“2年後にベンチャー企業に転職を考えている”、その2年間という時間に転職という行動を留めるだけの意味がMBAにあるのか?

今そのときの判断、行動でその先どんなキャリアを描けるかどうかが大きく変わってくる。人生は長いようで短い。

こちらの記事は2017年08月02日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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