連載一人ひとりが紡ぐ、永遠ベンチャーの姿──株式会社ネクストビート

「スピーディーな挑戦」を継続する文化が、マーケティングの大きな成果に──AI・データ活用や新施策の日々を、ネクストビート矢代氏に聞く

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インタビュイー
矢代 直毅
  • 株式会社ネクストビート Marketing Division ゼネラルマネージャー 

上智大学を卒業し、株式会社セプテーニに入社。デジタルマーケティングのスキルを身に付けた後、より事業成長に貢献できるマーケターになりたいと思いネクストビートへ入社。現在はゼネラルマネージャーとして、メンバーマネジメントと全事業のデジタルマーケティング、CRM、SNSマーケティングを担当(2024年7月時点)。

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「マーケティングを通じて『人間理解』を追求する」

ネクストビートのマーケティングゼネラルマネージャー矢代直毅氏の言葉が、静かな熱気を帯びて響く。

同社は、「人口減少社会において必要とされるインターネット事業を創造し、ニッポンを元気にする」というミッションのもと、10以上のサービス・プロダクトを展開。その成長の核を担うのが、矢代氏率いるマーケティング組織だ。

本記事では、矢代氏へのインタビューを通じてマーケティングの未来像に迫る。AIとデータ分析技術の活用、「超・Synergy」と呼ばれる部門間連携、そして人間中心のアプローチ。これらの手法が、いかにして事業成長と社会課題解決の両立を実現しているのか。メイン事業の一つ『保育士バンク!』での実践例を交えながら、すべてのマーケターが意識すべきと言っても過言ではない“新たなマーケティング”の可能性を探る。

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10超の事業を推進するため、工夫が凝らされたマーケティング組織

新卒入社したセプテーニでデジタルマーケティングの経験を広く積み、事業成長へのさらなる貢献を期して転職したネクストビートでマーケティング責任者を務めるようになった矢代氏。その経験と思想から、「事業を推進するという視座でのマーケティング」について、この記事では探っていきたい。

まずは同社のマーケティング組織が持つ、独自の構造と運営手法を見ていこう。全体で6チームで構成され、その中で矢代氏は3つの専門チームを管掌する。

矢代私が管掌するのは、プロモーション、CRM、ソーシャルメディアを担当する各チーム。それぞれが明確な役割を持っています。

プロモーションチームは、広告を軸とした集客の設計と実行を担当しています。特にインハウスでの運用に力を入れており、自ら考え検証に着手し、スピード感を持って取り組むことで成果を出しています。

CRMチームは、単にCRMツール活用を担当しているというわけではなく、顧客の体験価値の向上を目指すことがミッションです。LINE、SMS、メールといったツールはもちろん用いながら、顧客との接点を集中的に見て、継続的にサービスを利用していただけるような取り組みをあれこれと検討しては実践しています。この顧客接点は営業とも密接に連携し、事業成長にも直結する部分が大きいです。

ソーシャルチームは、SNSでの創出価値を上げることで、事業貢献を目指しています。単純にフォロワーを増やすのではなく、それがどう事業成果に繋がっていくのかを常に確認し、仮説検証を繰り返しながら、多くの施策をスピーディーに実施していくことが特徴です。

マーケティング組織の構造。上段の三つの組織を、矢代氏は管掌する(提供:株式会社ネクストビート)

そんなネクストビートのマーケティング組織の特徴として、事業部との密接な連携がある。

矢代私たちのマーケティング組織は、各事業部と密接に連携しながら進めています。事業ごとにプロジェクトチームのようなかたちで進めることで、スピーディーかつ効果的なマーケティングを実現しています。

いわゆるマトリクス型の組織構造で、各事業部と密な連携をしながらマーケティング施策を実行している(提供:株式会社ネクストビート)

こうした組織構造により、ネクストビートは多様な事業領域に対応する柔軟かつ効果的なマーケティング戦略を立案・実行しようとしてきた。各事業領域は異なる顧客層、市場動向、競合状況を持つため、マーケティング施策においても柔軟に、それぞれの特性に応じたアプローチを取っている。

さらに、ネクストビートのマーケティング組織は、社会課題解決型ビジネスとしての認知向上・社会価値拡大にも大きく貢献している。『保育士バンク!』や『おもてなしHR』などのサービスは、収益事業であることに加え、人口減少社会における切実な課題の解消を強く意図して運営されている。マーケティング活動の一つひとつが、これらのサービスの社会的価値を効果的に伝え、利用者の増加と同時に社会的インパクトの拡大にも寄与しようとしている。

このように、「ユーザーを獲得するマーケティング」だけでなく、専門性の高い各チームの力と事業部との密接な連携を通じて、「社会課題の解消にも直接貢献するような、多面的な価値を創出するマーケティング」を実現しているのだ。そのために、矢代氏が意識を強める「事業を推進するという視座」こそが重要になる。

同社のマーケターたちはまさに、社の理念を体現する存在となっているわけだ。

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マーケに不可欠な「人間理解」への強い想い

では実際に、マーケティングの現場ではどのような視座・視点で取り組みが進められているのか、その内情に迫っていこう。

まず矢代氏が強調したのは、マーケティングを通して成し遂げたいミッションやビジョン。つまり、数値目標の追求を超えた、より大きな目標を掲げている。

矢代私は、マーケティングを通じて「人間理解」を追及することを重視しています。以前から人の行動に興味があり、どういったことをすれば相手が喜んでくれるのか、見てくれるのかを考えることを重視しています。誰に対してどのような価値を提供すれば喜んでもらえるのかを考え続けることが、私が追求するマーケティングのビジョンです。

このビジョンは、ネクストビートが展開する様々なサービスに反映されている。

矢代事業において、顧客理解・ユーザー理解は何よりも重要な要素と言えるでしょう。「どのような事業でも必要不可欠な要素である」とチーム内にも訴えています。顧客やユーザーのニーズや行動を深く理解しようとし続けることで、より効果的なマーケティング戦略を立案し、実行することができます。

ネクストビートのミッション実現から逆算しても、顧客・ユーザー起点のマーケティングは非常に重要だ。

矢代ネクストビートが掲げる「人口減少社会において必要とされるインターネット事業を創造し、ニッポンを元気にする」というミッションに沿って、大きな課題に挑戦するわけですから、「顧客・ユーザーは、誰なのか?どのような人なのか?」を常に探求し続けたいと考えています。

例えば、新しく集客を開始する際には、まず自分たちが持つアセット(広告、サービスサイト、CRM、SNSなど)を整理します。その上で、顧客・ユーザーの人物像を具体的に思い描き、どのタイミングでどのような行動をするのかを考え、カスタマージャーニーを作成し、それに応じた施策を各機能・各アセットの活用によって実施します。

具体的な訴求メッセージについても、実際に自身が顧客として検索行動をしたり、サイトを閲覧したりして、感じた要素から仮説立てを行い、それぞれのタッチポイント向けに訴求メッセージを作成します。もちろん、最初につくった訴求がベストになることは稀であり、その後も仮説が外れた場合には、次の仮説を検証するというPDCAサイクルを回しています。

このように、人間理解を基盤として顧客・ユーザー中心のアプローチを採用し、継続的な改善と検証を通じて効果的なマーケティング戦略を実現している。

ここでもう一つ、特筆すべきは、データ活用によるパーソナライゼーションにも力を入れている点だ。多様なサービスから得られる豊富なデータを活用し、顧客一人ひとりのニーズに合わせたマーケティングアプローチを可能にしている。

矢代例えば、「保育士バンク!」の事業において、顧客データの蓄積や分析を用いたコミュニケーション設計を実施しています。具体的な動きとしては、メールやLINEの内容やタイミングを工夫しています。

もちろん、データだけではつかめない顧客のインサイトの中にも、重要なものが含まれていますから、定期的にキャリアアドバイザーと連携して定性的な情報を収集するようにしています。時には、実際に顧客・ユーザーの元にマーケター自らが出向いてのインタビューも実施させていただくこともあります。

こうした活動も適宜取り入れたうえで、一人ひとりが自分なりの仮説を持ってアプローチを実施しています。

このアプローチは、まさに「人間理解」を追求する矢代氏のビジョンを具現化するものだと言えるだろう。

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合言葉は「永遠ベンチャー」や「超・Synergy」

こうした方針を持ちながら、常に新しい挑戦を続けているのがこの組織の特徴だ。矢代氏は、最近注力して取り組んだ施策として「指名検索からの集客増加プロジェクト」について紹介した。

矢代特に注力した最近の取り組みが、『保育士バンク!』の指名検索増加プロジェクトです。より多くの方にサービスを知ってもらい、良い転職体験を提供していくことを通じ、ユーザー数や売り上げの増加はもちろん、社会に提供する価値を高めていこうとした取り組みの一つです。

具体的には、オンライン広告に加えてオフライン広告を始め、これまでとは異なる仮説検証を進めた部分が、新しい挑戦でした。

ここでは「超・Synergy」という考え方に基づく進め方も多くありました。キャリアアドバイザーを務める他部署のメンバーに声をかけ、「その地域にいるユーザーさんたちが何を考えて、何を見ることが多いのか」などの具体的なユーザー行動の実態や傾向について意見をもらっています。そうして仮説を立ててから、今度はデザイナーチームと連携し、ベストだと思われるかたちの広告制作を進めていきました。

NEXTBEAT IDENTITY」の一つ、「One Vibes」に、「超・Synergy」の考え方が含まれる(提供:株式会社ネクストビート)

しかし、この取り組みは必ずしも順調ではなかった。矢代氏は率直に結果を語る。

矢代今までとは異なるユーザーとのコミュニケーションを実現するための施策として取り組みましたが、これまでの結果としては集客目標に届かず厳しい着地となっています。正直、とても悔しかったですね……。

この経験を無駄にすることはなく、即座に改善を図り、次のステップへとつなげている。

矢代経験と反省をしっかり捉えたうえで、さっそく新たなチャレンジのためのアプローチに着手しています。数値的な根拠をもとに、ターゲットをより明確にした駅広告やはがきDMといったオフライン広告の実施を始めました。さらに、マーケティング全体を俯瞰した検討もしやすくなり、オフライン広告とオンライン広告それぞれにおける指名検索との相関を見極めての投資判断ができるようになっています。

加えて、サイトに訪れていただいたみなさんへのマーケティング活動として、強く印象を残し再訪を促すための仕掛けを的確に検討できる材料も増えました。最近は、LINEやメールを積極活用するCRM施策にも改めて力を入れています。

このように、新たな施策をどんどん取り入れながら、これからも継続的に改善と工夫を重ね、より良い成果の創出を目指していきます。

失敗を恐れず新しいアプローチに挑戦し、その経験を次の戦略に活かしながら、常に進化を続ける。ここで、このような挑戦と革新の背景にある「NEXTBEAT IDENTITY」について言及した。

矢代私たちが「NEXTBEAT IDENTITY」で掲げている「永遠ベンチャー」という考え方が、特に現れていますね。

「他社が10倍かかることを1年で、他者が10時間かかることを1時間で実現するために思考し、行動する」あるいは「カオスの渦中で何か失敗したとしても、成功するまで諦めないことにもう一度コミットする」という取り組みを、みな等しく目指しています。

そのためにメンバーに何度も伝え続けていることが、大きく二つあります。一つは、その施策がどれくらいのインパクトがあるのかを根拠を集めて企画し、確実性を求めることです。もう一つは、それが不明であったり、工数が大きくなるようであれば、とにかく早く施策を実施して成果を確認し、ブラッシュアップして施策を継続していくというPDCAサイクルの速さを求めることです。

私もマネージャーとして「まずは行動してみる」ということを大事にしています。新しい挑戦においては失敗することも多いですが、まずは行動し、その結果を見て次につなげるというアクションこそを重視しています。その中では、メンバーからもマネージャーの在り方などについて多くの提案をいただくようにしています。

もちろん、防ぐべきミスについては、事前にマネージャーとして指摘をします。的確にフィードバックを行い、目標達成に近づくために必要なアクションなのかどうかを見極めようとします。ですが一方で、マネージャーの見極めに時間をかけるよりも、現場がクイックに実行して検証していったほうが成果にたどり着くまで早い場合も多くあります。

なので私もメンバーも、まずは行動し、その結果を見て考えるというアプローチを取ることが多いです。頭で考え続けるよりも、実際に行動してみることを優先しているんです。

失敗を恐れずに新しいことに挑戦し、そこから学びを得て次につなげていく。これこそが、ネクストビートのマーケティングの強みだと考えている。

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“テクノロジー”と“人間の強み”を最適に組み合わせ、最大の成果を

ここまで、どちらかというとマインドセットによる挑戦心にフォーカスしてきた。だが同社のマーケティングの強みは、それだけではない。特に最近、最新のテクノロジーも積極的な活用を進めている。

矢代AIを活用しての業務効率化はもちろん、データ分析を通じて顧客の行動パターンや潜在的ニーズを把握し、それを全社で共有しながら、適切なマーケティング手法を選択できるようにしています。

たとえば最近では「どういった顧客行動が自社サービスへのアクセスに繋がっているのか」といった分析をAIに実施してもらう取り組みを実践し始めました。また、実際に効果の良かった広告表現をAIに学習させ、それを新たにブラッシュアップしたような広告案を作成してもらって活用するケースも増やしています。

AIの活用には、「課題を解決する」という前提が当然ありますが、この点にこだわりすぎることなく、「まずは実行してみて、どのような成果が得られるのかを積極的に試みよう」と話し、取り組んでいます。他の施策と進め方は同じです。実行を通じて成果を確認し、その結果を基に次のステップを考えるという姿勢で向き合っています。

テクノロジーの活用は、あくまで手段の一つ。人間中心のアプローチという方針の中で、スピーディーな実践という手法をブラさず組み合わせながら、新しい価値創造に挑戦している。

矢代技術の活用は重要ですが、それ以上に大切なのが「人」です。私たちは、テクノロジーと人間の強みを最適に組み合わせることで、最大の成果を生み出すことを目指しています。AIやデータを駆使しながらも、「顧客はどのような人なのか、その人に提供する価値は何がベストなのか」を問い続けることが大切だと考えています。

この理念のもと、ネクストビートのマーケティングは、テクノロジーと人間性の融合を目指している。矢代氏は、このアプローチがデジタル時代における新しいマーケティングの形を示唆するものだと考えているのだ。

矢代私は、マーケティングの可能性を信じています。それは単なるビジネスツールではなく、人々の人生を豊かにし、社会を変革する力を持っているんです。その力を最大限に引き出し、活用していく。ネクストビートのマーケティングが目指す未来の姿がここにあります。

そのために、メンバーが自分のマーケティングスキルを磨くだけでなく、事業や会社全体を動かす視点で行動することを期待しています。

各メンバーが自分の担当する領域が事業全体の一部に過ぎないことを自覚し、事業成長のために「何ができるのか」「どのように行動すべきか」という広い視点を持つことが重要です。

その上で、業務を設計し、周囲の人々を積極的に巻き込みながら貢献していく姿勢を持って取り組んでほしい。こうして全員が連携し合い、共に成長し、成果を最大化するための行動をしていくことで、社会の変革にも貢献できるはずです。

この未来像の実現に向かっているからこそ、これまで紹介したように、常に新しい取り組みにチャレンジしているわけだ。

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マーケティング活動で生み出す、社会課題の解決と事業成長の両立

ネクストビートのマーケティングが、単なる集客施策ではなく、そうした従来の枠組みを超えた視座で取り組まれているというイメージも持てたのではないだろうか?さまざまなアプローチに取り組み、業界に新風を吹き込んでいるとも言えよう。

「永遠ベンチャー」「超・Synergy」といった考え方、そして事業部との密接な協力関係は、ネクストビートのマーケティングの特徴となっている。これらの要素が有機的に結びつくことで、柔軟かつ効果的な活動を実現している。

矢代私たちのマーケティングは、「NEXTBEAT IDENTITY」をもとに、テクノロジーと人間性の融合を目指しています。それは、デジタル時代における新しいマーケティングの形を示唆するものだと考えています。

人々の幸せを追求し続けるこの姿勢が、今後のマーケティング業界全体に大きな影響を与える可能性を秘めていると信じています。

AIやデータ分析技術の積極的な活用と、人間ならではの創造性や感性。これらをバランスよく組み合わせ、「事業を推進するという視座でのマーケティング」を実現している。『保育士バンク!』や『おもてなしHR』などの主要サービスにおける実践を通じて、社会課題の解決と事業成長の両立を目指している。

この挑戦には、マーケティングの本質を捉え直し、ビジネスと社会の未来をかたちづくる可能性がある。こうしたマーケティングアプローチに興味を持った読者は、同社のコーポレートサイトやオウンドメディアをチェックすることをお勧めする。最新の取り組みや、新規事業の動向から、マーケティングの本質を垣間見ることができるかもしれない。

こちらの記事は2024年08月14日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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