「戦略」は真似できても、「実行」は真似できない。──X Mileの“マーケター”兼“事業家”人材の対談に見えた、組織のエグゼキューション能力の引き上げ方
Sponsoredビジネスで成功するには、戦略もさることながら、実行力(エグゼキューション能力)こそが重要だ。競合の戦略は、取り入れることはできても、それを着実に実行できるかどうかが、企業の明暗を分ける。
FastGrowではお馴染みのコンパウンドスタートアップ・X Mileは、その実行力の高さを如実に示している企業だ。同社がMinerva Growth PartnersやUTECといった有力VCからシリーズBまでに累計26.8億円の調達を実施できた決め手こそ、「経営陣全員の圧倒的エグゼキューション能力」だったと、以前の記事でもじっくり語られた。
では、その実行力は現場にどう浸透し、仕組み化されているのか。本記事では、X Mileのマーケティングチームの実態に迫っていきたい。
登場するのは、エス・エム・エスやカケハシでマーケティングや事業推進を担った川田優太氏と、エス・エム・エス、弁護士ドットコムでマーケティング、事業推進を担った佐藤謙氏だ。事業インパクトを見据えた社内連携、データ分析・活用を行う「事業家人材」としての2人が、どのようにX Mileの急成長を支えているのか。
理系大学院出身の2人による論理的かつ熱量高い対談。戦略を練るだけでなく、泥臭い実行を積み重ねるX Mileのエグゼキューション能力の秘密を解き明かしていこう。
- TEXT BY MAAYA OCHIAI
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
経営陣のエグゼキューション能力を支える、事業家人材の存在
X Mileのマーケティング統括本部で活躍する川田優太氏と佐藤謙氏。両者とも理系大学院を修了後、異なる業界でキャリアをスタートさせた。
大阪府立大学大学院工学研究科の修士課程を修了した川田氏は、アクサ生命で保険数理に携わった後、カカクコム、エス・エム・エス、カケハシなどのメガベンチャーでマーケティングや事業推進に従事。現在はX Mileでマーケティング統括本部マネージャーを務める。
一方、佐藤氏は東北大学大学院工学研究科の修士課程修了後、エス・エム・エスに新卒入社。Webマーケティングを約2年間担当し、その後弁護士ドットコムに移籍してマーケティングと事業推進に携わった。2024年2月にX Mileに入社し、現在はマーケティング統括本部のサブマネージャーとして活躍している。
ともに今のX Mileよりも規模の大きなベンチャー企業で、マーケティングをはじめ事業全体にインパクトを与える職務を担ってきた。そんな二人にX Mileに対する印象を聞くと、興味深い返答が返ってきた。
川田X Mileでは、「プロダクト間のシームレスな連携が、顧客体験の向上や企業価値を生み出す」という考えが創業当初からずっと徹底されていると感じましたね。
HR事業とSaaS事業のデータ基盤を最初から共存させている点に象徴されるように、将来の事業拡張を強く意識した仕組みづくりができているなと感じます。
マルチプロダクトを後から統合するのは非常に難しいと言われる中、SaaSの立ち上げ段階で事業間の将来的な連動性を高めるための基礎工事にしっかりと取り組んでいる。今の決して大きいとは言えない組織のリソースで、それを圧倒的にやりきれていることは奇跡的だと思います。
佐藤X Mileの数ある事業のうち、人材紹介事業は足元の売上に大きく貢献してくれる事業ですが、X Mileが見据える姿はHR企業ではありません。アーリーフェーズでもその設計思想を決しておろそかにせず、しっかりとコンパウンドスタートアップを見据えて事業を成長させていることに衝撃を受けました。
創業からたった5年で、10を超えるサービスやプロダクトを展開するX Mile。そこに最近ジョインした2人の発言に共通しているのは、創業時から同社のミッションである「令和を代表するメガベンチャーを創る」を見据え、コンパウンドスタートアップとして事業展開やデータ基盤構築を行っていること、そしてそのオペレーションの徹底ぶりへの驚きだ。
データを活用したマーケティングと事業推進の経験を持つこの2人が、今後の事業成長に大きなインパクトを与えることは間違いないだろう。
キーパーソンとなるであろう2人の参画により、X Mileの掲げる「ノンデスク産業の課題解決」という壮大なビジョンが、さらに一歩現実味を帯びてきた。そんな手応えを感じさせる取材の様子を、本記事で余すところなく伝えていきたい。
2人がどのような原体験を経て、事業推進の面白さに目覚めていったのか。そして、X Mileの徹底したオペレーションに魅了された理由とは何か。等身大の言葉で紡がれる対談の場面を早速切り取ってみよう。
事業に必要なのは「戦略」と「実行」だという気づき
川田氏はエス・エム・エスで約5年間、医療・介護業界に特化した人材サービスのマーケティング部門に従事した。同社では様々なサービス・ソリューションごとに役割を細分化し、明確に分担することで組織パフォーマンスの最適化を図るのが強みだ。
一方で、川田氏は「集客を担うマーケティングチームと、マッチングを行うキャリアエージェントの連携を深めることで、さらなる最適化が可能だと感じていた」と当時のエス・エム・エスでの経験を振り返る。
川田一般的に、マーケ組織と営業組織は、距離が遠くなってしまいがちです。人材紹介事業は、マーケチームが仕事を探している求職者を集める役割、キャリアエージェントはマーケが集めてきた求職者と求人案件のマッチングを行う役割で、マーケチームとキャリアエージェントは表裏一体の関係にあります。
しかし、マーケチームとキャリアエージェントが密接に連携できているかというと、まだまだ改善の余地はありました。たとえば、同じ一人の求職者でも、いますぐにでも転職したいと考えている求職者もいれば、1年後くらいに転職できればいいかなくらいの温度感で考えている求職者もいて、同じ一人の求職者を集客したといっても、その「質」は大きく異なります。
いますぐにでも転職したい求職者と1年後に転職できればいいかなと考えている求職者を同じ「1リード」と見做してしまうと、営業はたまりませんよね。
エス・エム・エスでは、その集客(リード)の質をどのように分析し、評価すれば、マーケ組織と営業組織で適正な役割分担ができるかを時間を掛けて仲間と一緒に考えました。
単純な数だけではなく、より適正な「質」も含めてマーケと営業のパフォーマンスを正しく評価できるようにしたいと考える事業推進、集客、マッチングの仲間が集まり、情報共有とコミュニケーションの円滑化を図るモデル構築に乗り出した。
川田「今月は、マーケがこのくらいの質の求職者をこのくらい集客する予定だから、少なくとも過去の実績から考えると、これくらいの売上が作れるはず」ということを、少なくとも営業とマーケの責任者クラスが事前に見通し、互いに合意できる状態であるのが望ましいと考えていました。
求職者の属性ごとに成約率を可視化し、期待値を定量的に設定することで、集客とマッチングの責任が明確になります。マーケが期待される成約数を積み上げ、マッチングが期待される成約数を上回る実績を作っていく。そのモデルを各担当者単位、エリア単位で細かく最適化していきました。
このプロセスを通して、川田氏は事業推進の面白さを学んだという。
川田事業推進の仕事は、直接売上を創出するわけではありません。でも、事業を様々な切り口で分解して考えることで、ボトルネックとなる要素が見えてきます。
分解できて、あるべき理想の形さえ定量的に説明できれば、その領域のスペシャリストは必ずいるので、あとはその人たちに任せれば自然と進んでいく。その一歩目を踏み出すのが事業推進の役割だと感じました。
また川田氏は、エス・エム・エスのような強い組織の特徴として、「戦略と実行が強く連動し、その両方を高い水準で共存させていること」を挙げる。
川田エス・エム・エスの戦略を真似する企業は多くありますが、実行フェーズで泥臭くやりきる力を備えた企業は少ないと思います。そこで学んだのは、戦略と実行の両輪がきちんと機能していることが大切だという、ある種当たり前のことでしたね。でも、その当たり前のことを実際に「体感」できたのが、私にとっては大切な学びでした。
実は、川田氏が仲間と共に、このモデル構築を進めている最中、佐藤氏がエス・エム・エスに新卒入社し、マーケチームに配属されていた。まさに実行を担うポジションだ。
佐藤基本的に初めは、より集客を伸ばす施策を上司から指示されるのですが、なぜそれが必要なのか、何をやらねばならないのかといったことが、事実ベースで細分化されて現場の実行担当者まで伝わってくる感覚がありましたね。
戦略と実行の両輪がかみ合うことで事業が前進することを、エス・エム・エスで学んだ川田氏。一方の佐藤氏は、また違った道のりを歩んでいく。
事業推進で学んだ「OS」として組織に落とし込む重要さ
新卒でエス・エム・エスに入社し、Webマーケティングと事業推進の基礎を学んだ佐藤氏。その後、弁護士ドットコムに移り、事業推進として集客から着金まで一気通貫で担当することになった。
理系大学院出身で新卒からメガベンチャーに飛び込んだ。一見華やかなキャリアに見えるが、佐藤氏は苦悩の連続だったと言う。
佐藤エス・エム・エスでは、理論や数字にこだわりすぎる癖が抜けず、人を動かすことや信頼を得ることの難しさを痛感しました。そのため、人を巻き込むのがまるでうまくいきませんでした。
2年後に弁護士ドットコムに移り、人材紹介事業の事業推進を任された。エス・エム・エスでは検索広告に特化した集客だったが、ここでは「事業そのものの集客最大化」がミッションとなったのだ。
佐藤立ち上げ~拡大初期のフェーズだったので、集客だけでなく、マッチング、そして着金まで一気通貫で見なければなりません。事業全体を伸ばすこと、しかもそれを企画立案から実行まで1人でやるという環境でした。事業のボトルネックを特定し、営業や事業部長に働きかけて目標を達成する。切迫した状況の中で、もはやなりふり構っていられないと何度も自らを奮い立たせました。
弁護士ドットコムでは、事業推進のみならず、人を納得させ協力を引き出すことの重要性も学びました。規模はエス・エム・エスより小さいですが、事業推進と現場実行の両輪の大切さを実感できたと思います。本当に、日々勝負でしたね。
切迫感の中で必死に走り続けたこの事業は、チーム一丸となって取り組んだ結果、1年足らずで売上規模を大きく拡大することに成功する。佐藤氏自身もキャリア事業の事業推進チームマネージャーに昇格した。そしてメンバーをマネジメントする中で、新たな気づきを得たという。
佐藤マネージャー昇格後の1年間半は、半分以上をチーム作りに費やしました。小さな組織だからこそ、一人ひとりと事業運営や組織拡大の意思決定プロセス、考え方の本質を共有することが重要だと気づいたんです。
せっかく働くのなら、大きな目標に向かって皆で知恵を出し合い、共にアクションを起こしていく。そういう風にチームを作ると、たとえ失敗しても必ず学びは得られると実感しました。
合わせてプロフェッショナル人材の採用も進み、佐藤氏のチームは自律的に企画立案、実行、協働していくような状態になっていった。そんな佐藤氏が、次のキャリアステージとして選んだのがX Mileだった。そこに至るまでの経緯とは一体どのようなものだっただろうか。
「かなり若い経営者」という先入観が覆された、X Mileの精緻な戦略構想とオペレーション
エス・エム・エス時代に共に働いた川田氏と佐藤氏。2人の人生がX Mileで再び交差することとなる。
先に入社を決断したのは川田氏だった。その理由について、こう語る。
川田X Mileに惹かれた理由の1つは、野呂さんと渡邉さんという2人の経営者の魅力。そしてもう1つは、将来の拡張性を見据えたデータベース戦略を目の当たりにしたことです。
大きなビジョンを掲げ、事業も順調に伸びていると聞いていました。でも正直、「自分よりも全然若いCEOとCOOで、この規模の会社でしょう」と高をくくっていたんです。ところが実際にお二人の考え方や戦略、構想の緻密さに触れ、衝撃を受けました。
X Mileの魅力に惹かれ入社を決意する一方で、川田氏は、自分1人の力ではX Mileの目指すものを実現するには、到底及ばないとも感じていた。そこで、過去の職歴の中から「この人なら、もう一度一緒に働きたい」と思える知人に声をかけることにした。その1人が佐藤氏だったのだ。
エス・エム・エス時代の佐藤氏について、川田氏は「全力が出し切れていない若手」という印象を抱いていたと苦笑いで振り返る。そんな佐藤氏にあえて白羽の矢を立てたのには、理由があった。
川田能力は高くて性格も良いのに、当時の佐藤さんは「イマイチ伸び悩んでいるな」という印象でした。でも新卒から約2年エス・エム・エスで働いていたのだから、ビジネスの基本的な型は身についている。環境が変われば、彼の力はもっと発揮されるんじゃないか。そう考えていました。だから一度会ってみようと思い、連絡を取りました。
久々の再会、弁護士ドットコムで大きく成長した佐藤氏と対峙した川田氏は驚きを隠せなかった。
川田わずか2〜3分の会話で、佐藤さんが圧倒的に成長していることがわかりました。自信に満ち溢れた話しぶりでしたし、言葉選びひとつとっても、現場レベルの粒度の話と、俯瞰的な全体像の話を巧みに使い分けていた。なにより、変なプライドのようなものがなく、大人になっているのが驚きでしたね。
それで、「本当に成長したんだな」と感じ、自信を持って野呂さんと渡邉さんに推薦しました。エス・エム・エスの環境が悪かったのではなく、事業責任を背負う立場に身を置いたことで、佐藤さんの力が開花したのだと思います。
川田氏の推薦を受け、佐藤氏もX Mileの経営陣と面談を行う。その際、野呂氏は佐藤氏のことを「とても地頭が良くて、泥臭い仕事もこなせる」と評したという。戦略と実行の両面に秀でた人材だと確信した川田氏は、佐藤氏に「X Mileに来ないか」と本格的に持ちかけたのだ。
しかし、佐藤氏はその誘いを即決で受けたわけではなかった。
佐藤正直、転職は考えていませんでした。しかし、野呂さんと渡邉さんと面談をしてからいろいろ考えるうちに、お二人が外向きのベクトルを持ち、遠い未来を見据えていることを強く感じたんです。ノンデスク領域に照準を定め、真摯に向き合う姿勢に心を打たれました。
大きなビジョンを掲げるアスピレーションと、足元の行動の徹底ぶり。仕組み化という地道な作業にも手を抜かない。そのバランス感覚の素晴らしさに感銘を受け、ここなら自分の力を存分に発揮できると直感したんです。
こうして川田氏と佐藤氏は、X Mileを新たな活躍の場として選んだ。2人が揃って口にする「X Mileの構想力と実行力のすごさ」。次のセクションから、その実像に迫っていきたい。
「このリソースでこれをやり切るの!?」
と驚くレベルの仕組み化
ここまでの話を通して、川田氏と佐藤氏が事業推進の経験を着実に積み重ねてきたことがわかる。まだキャリアの半ばではあるが、すでに複数の企業で事業の立ち上げや成長に貢献してきた彼らだからこそ感じ取れる、X Mileの「強み」がある。
佐藤まだ入社1ヶ月ですが、言葉やコミュニケーションのオペレーションにも工夫が凝らされています。適切な言葉選びを心がけ、無駄な会議や会話、依頼を徹底的に排除する。日々のやり取りにおけるロス削減に本気で取り組んでいるんです。
ただしこれは決して“ドライな組織”というわけではありません。メンバー全員が、事業としても会社のフェーズとしても、今はできるだけお客様と向き合う時間を増やし、結果につなげていくことが重要だと認識しているからなんです。そのために何が必要かを追求し、ひたむきに実行している印象ですね。
判断は“ドライ”に、実行は“ウェット”に。
X Mile流ハイブリッド型の組織論についてはこちら
X Mileでは、未経験者が早期にパフォーマンスを上げるための仕組みとして「エスカレーションフォーマット」というルールを設けている。メッセージを送る際は、「依頼」「相談」「確認」など目的を明示し、回答期限を必ず添えるのだ。これにより、タスクの内容や締め切りが正確に伝わり、スピーディーな対応が可能になる。
さらに、CRMとSlackを連携させることでタスク漏れも防止。Appleでも似た取り組みが行われているように、X Mileでは情報の行き違いを防ぎながらスピード感を追求する様々な工夫が凝らされている。
もちろん、これらのルール化自体は他社でも行われているかもしれないが、実運用まで徹底できている組織は多くないだろう。
佐藤急速に人員が増えていく中で、行き渡らない部分が出てくるのは避けられません。それでもこの規模感でここまでやれていること自体、本当にすごいと思います。だからこそ、X Mileは急成長にも耐えられているのだと確信しています。
徹底的な仕組みの磨き込みについては、過去の記事でも詳しく解説されている。
佐藤氏は先ほど「見据える姿はHR事業ではなくコンパウンドスタートアップ。そのための展開を妥協せずに進めている点に驚いた」と強調した。川田氏もこの意見に賛同し、「将来の拡張性を意識したデータベース構築の難しさと、X Mileがそれを成し遂げつつあること」を指摘する。
川田X Mileの仕組み化は「このリソースでこれをやり切るの!?」と驚くレベルです。持てるキャパシティの中で、圧倒的にやり切る。それは、冒頭でも述べた通り、HRとSaaSのデータ基盤を最初から一元化している点に強く現れています。
創業時から1,000億円規模を見据えて動いているからこそ実現できることですが、口で言うのは簡単で、実際にやるのは本当に難しい。一般的には、HRとSaaSでデータベースを分けている企業がほとんどですし、プロダクトごとにデータを個別に取り扱っているケースも少なくない。しかしそうしてしまっては、後でプロダクト横断のデータ連携をする難度が非常に高くなり、やりにくくなってしまう。
X Mileは先にしっかりと戦略を練り上げ、オペレーションの重要性を理解した上で、統一されたデータ基盤を構築し、事業成長を成し遂げようとしている。本当にすごいことだと思います。
データ分析には、そもそもデータの収集と一元化が不可欠だ。裏を返せば、きちんとデータが貯まっていさえすれば、佐藤氏や川田氏のようなデータのプロフェッショナルの力を借りて、分析の結果を事業に還元していくことができる。
目先の売上に目が眩んで、データ蓄積のためのオペレーション構築を後回しにしてしまうと、事業が大きくなった後にデータを活用しようと思っても手遅れになりかねない。
X Mileは創業当初から事業と組織の拡張を見据え、オペレーションの徹底に注力してきた。だからこそ急成長の真っ只中にあっても、しっかりとデータが残っているのだ。川田氏と佐藤氏は、入社前に遡ってデータ検証することもできる環境が整っていると口を揃える。
佐藤面接でその話を聞いたとき、背筋に戦慄が走りましたよ(笑)。「マジか!」と。そもそもデータがない状態だと、正直どうしようもないですからね。バラバラに散らばっているぐらいなら、私たちの力で何とかできる自信はあるのですが。
川田COOの渡邉さんが事業のコンパウンド化を見据えて、オペレーションエクセレンスに創業1年目から取り組み続けてくださっていたおかげで、私たちが入社した時点である程度のデータが蓄積されていたんです。そこから私たち自身が加わったことで、定量的に事業のボトルネックを可視化できるようになった。データ基盤がしっかりしていたからこそ、ここまでできるんだと実感しています。
もちろん、データ基盤の統一には設計とオペレーションのコストがかかる。単体の事業に注力すれば、もっと短期間で一気に成長を遂げることもできたかもしれない。事業成長とのトレードオフについては、二人も常に経営陣と頭を付き合わせて議論を重ねているという。
川田氏と佐藤氏は肩書き上「マーケティング統括部」に所属しているが、ここまでの話を聞くと「マーケティング」の枠を超え、「事業」「経営」の視座で物事を捉えているように思える。続くセクションでは、2人がマーケティングキャリアを拡張させた"事業家"としてどのようなことを考えているのかをさらに掘り下げていく。
“PDCAの範囲”を広げることで、マーケターは事業家に
まずは率直に、「事業家マインドとは何か」と二人に問うてみた。
佐藤数字やデータを扱うだけでは不十分で、それを意思決定に活かさなければ意味がないんです。分析して納品して終わりではなく、そこから導き出された示唆を基に、事業で何が起こっているのかを推察する。そこまで踏み込んで組織に働きかけていくことが、事業家マインドを持った事業推進だと私は考えています。そういう仕事はとてもやりがいを感じますね。
佐藤氏はさらに、「事業に変化を与えられなければ、仕事とは言えない」とも力説する。目指すべきゴールを見据えながら、事業成長の方向性を定め、結果の予測が難しくても自信を持って勝負に打って出る。それができる人間こそ事業家たりえるのだと。
強気な発言の一方で、佐藤氏は「悩み、落ち込むことも重要」だと話す。
佐藤目標未達に終わった時は、徹底的に落ち込むんです。なぜ上手くいかなかったのかを思い悩む。でもそれこそが反省につながり、次のアクションに活きてくると信じているので。
一方の川田氏は事業推進において、「経営者が目指す地点との差分を定量的に説明し、差分を埋めるために泥臭い仕事もやり切れるかできるかどうかが肝心」だと見解を述べる。
川田ありがたいことにX MileはVCから出資も受けており、今後より効率的な成長が求められるフェーズにあります。この勢いを落とさずに伸ばしていくには、ボトルネックの見極めと解消が非常に重要になってきます。 例えばHR事業だと、集客(マーケティング)、求人(営業)、マッチング(キャリアエージェント)の3つの円の掛け合わせで売上が作られます。私が担う事業推進の仕事は、この「3つの輪」を最大化するために、エリアや事業ごとに細分化して分析し、打ち手を提示し、実行していくことなんです。 つまり、事業のあるべき姿と現在地のギャップを把握し、ボトルネックとなる変数をどのように動かせば目標が達成できるのかを定量的に理解し、関係者に説明し、周りを巻き込んで泥臭く実行できる人こそが、真の事業家だと私は考えています。
川田氏と佐藤氏は、このような事業推進の考え方やプロセスは「パッケージ化」できると指摘する。
川田マーケティングは概ねどのようなチャネルであっても、ABテストを行い、高速でPDCAサイクルを回して仕組み化していく点は一致していると思います。事業家は、そのPDCAサイクルと仕組化の対象範囲をマーケティングだけでなく、事業全体に広げるイメージなので、マーケターと事業家は親和性が高いと思います。
例えば広告運用のマーケターなら、広告費とコンバージョン数、成約数などの関係性を細かく分析しながらPDCAを回し、売上最大化を追求しますよね。
事業家は、その守備範囲を広告費やCV数だけでなく事業全体に拡張する。つまり事業というより大きな単位で最適化に取り組むこと。マーケターと事業家は扱う変数が変わるだけで、本質的なアプローチは同じだと思っています。
事業推進のプロセスをパッケージとしてとらえられれば、HR事業だろうとSaaS事業だろうと、ある程度の成果は出せるという。この感覚は、X Mileの経営陣や今集まりつつある安藤氏のような事業家人材に共通しているのだと2人は言う。
川田物流から始まったHR事業とSaaS事業を、建設や製造の領域にも展開していく。物流の領域で仕組みはすでに出来上がっているので、残るは実際のお客様の反応を見ながら、業界関係者やドメインエキスパートなどの知見を丁寧に取り込んでいくだけ。この仕組みを理解していれば、横展開はさほど難しくないと思います。野呂さんや渡邉さんはこれを創業当初から描き、一つひとつの業界を着実に押さえ始めている。本当に恐ろしい先見性だと思います。
現在X Mileでは、各ドメインのHR事業に加え、物流SaaSも手掛けている。今後はSaaS事業の横展開も加速させていく計画だ。その両方の事業推進を経験してきた2人に、この先の展望についても語ってもらった。
HRとSaaS両方のマーケを経験することで、1+1が3にも4にもなる感覚を味わえる
HRの事業を細分化すると、大きく分けて求職者、求人企業、そしてマッチングを生み出すキャリアエージェントの3つの要素に分けられる。どの成長フェーズにあるHR事業でも、この基本的な構造に変わりはない。
しかし川田氏は、「SaaS事業はHR事業よりも変数が多い」と指摘する。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなど、役割が細かく分かれているだけでなく、事業フェーズによってそれぞれの役割に求められるスキルセットも変化するからだ。
川田当たり前ではありますが、マーケターがフィールドセールスの業務を行うのは難しいですし、その逆もしかり。それだけではありません。例えばマーケティングひとつとっても、事業戦略や事業フェーズによって必要とされるケイパビリティが変わってくるんです。
一般的に、BtoBのマーケティングは、イベント企画、コンテンツ制作、Webマーケ、メルマガ配信など、オンライン・オフラインマーケティングの総力戦になります。
ただ、これらすべてに精通したマーケターはほとんどいないですよね。SaaSの面白さは、まさにこの変数の多さにあると思います。
事業フェーズや役割分担以外にも、戦略、プロダクトの競争力、競合の動向など、絡み合う変数はまさにカオスだ。その中でボトルネックを特定し、打ち手を講じていく難しさに、川田氏はやりがいを感じているという。
川田SaaSは黒字化が難しい事業とよく言われますよね。HRなら100億円規模の事業は珍しくありませんが、SaaSで同じ規模に達しているのは数えるほどしかない。経営者がSaaS事業を展開する理由は、事業のポートフォリオの観点からよく理解できますが、個人的には非常に難しい事業モデルだと思っています。
もちろん資金調達の観点からは、事業ポートフォリオとして両方を持つのが理想的。ただきちんと成長させる難易度が高いのはSaaSだと思っています。キャッシュを生み出すスピードはHRの方が圧倒的に速い。とはいえ、私個人としては変数が複雑に絡み合うSaaSの方が面白いビジネスだと感じています。
現在事業推進を担当する佐藤氏。基本的にはHR事業が中心で、これまで携わった人材紹介事業で培った知見を存分に活かしている。ただ実はSaaS事業のマーケティング経験も持つ。「X Mileでは、SaaSのマーケにももっと深く携わり、存分に楽しみたいですね」と意気込みを語る。
実際にマーケティング統括部の中には、HRとSaaSの両方に関わっているメンバーもいるという。エス・エム・エスとカケハシを経て、HR→SaaSとキャリアを重ねてきた川田氏いわく、「両方を経験することで、1+1が3にも4にもなる感覚を得られる」のだとか。
川田HRからSaaSに軸足を移すと、通用するスキルもあれば新しく学ぶことも出てきます。BtoCとBtoBでも思考法が大きく異なりますから、マーケターとしての引き出しを増やすには、両方に触れる機会があるならぜひチャレンジしてほしいなと思いますね。
佐藤氏も同意見だ。「両方を経験し、知見を相対化することで視座がぐっと広がった」と実感を口にする。異なる事業領域を行き来しながらスキルを研鑽できるのは、いまのX Mileならではの魅力と言えるだろう。
「2024年問題」という市場のダイナミズムを感じながら、社会課題解決に挑む
最後に、X Mileが事業家人材やマーケターにとって魅力的な理由について、2人の見解を聞いた。
川田X Mileは急成長のただ中にあり、マーケターとして何倍もの成長を体感できるチャンスに溢れています。正直、思い通りに行かずに大変なこともありますが、他では味わえない圧倒的な成長を遂げられている手応えがありますね。
佐藤会社の成長と自身の成長を実感できるのは、本当に大切なことだと思います。市場の側面から見ても、私たちが挑んでいるのは大きな可能性を秘めた未開の領域。ダイナミックに変化しながら次の局面に向かっています。メンバー全員で力を合わせて飛躍していかなければならない。そんな特別なタイミングに参画できることが、X Mileの大きな魅力だと感じています。
また、X Mileでは様々なフェーズの事業に携われるのも醍醐味だ。HRのようにある程度成熟した事業がある一方で、SaaSのようにこれからの事業もある。川田氏は「マーケターとして経験を積める領域の広さは圧倒的」と断言する。
加えて、徹底的な仕組み化によってムダが排除され、限られた時間の中で最大限の成果を追求する文化が根付いている。
そして、「2024年問題」をはじめとする社会課題の解決に資するソリューションの提供も、マーケターとしてのやりがいに直結する。川田氏は、「物流のような身近な社会課題解決の最前線に立てることを誇りに思う」と力を込めた。
川田事業領域が多岐にわたるので、様々なチャレンジの機会があります。やりたいことがあるなら思う存分トライできる。そういう環境が整っているんです。以前のエス・エム・エスやカケハシでも社会課題解決を標榜していましたし、そこにやりがいも感じていました。X Mileもそこに引けを取らないぐらい、自分の子どもに自慢できる仕事だと思っています。
佐藤社会課題の解決に挑戦することは、マーケターとして何よりもやりがいを感じる部分ですね。変化の中心で仕事に取り組み、課題解決の先駆者となる。そんな誇り高き使命を全うできる環境が、今のX Mileにはあります。
目まぐるしい変化の渦中にいるからこそ、マーケターの視点でいち早く市場の兆しを捉え、事業を通じて新たな価値を生み出していく。X Mileという舞台なら、そのダイナミズムを存分に体感できると確信しています。
X Mileは、マーケターにとって「戦略」と「実行」の真髄を体現した学びの宝庫だ。
川田氏と佐藤氏のように、マーケターでありながら "事業家人材" の側面を併せ持つ人材が、同社の実行力の源泉となっている。机上の空論ではない、データと連携に裏打ちされたリアルな事業推進力。アカデミックな理論武装と、泥臭い実践知の融合。それを体現するマーケターの存在が、X Mileの強みと言えるだろう。
また、彼らから学べる示唆は、戦略立案に留まらない。実行を重視する組織のあり方、事業家人材を育むチームビルディング、社会課題解決への熱い想い。変革の意思を持つマーケターにとって、X Mileは1つの参考となる存在だ。
志高き人材が集い、共に成長を目指す。そんな稀有な環境が、次代のマーケターを育んでいく。X Mileの実践知に学びつつ、自らの戦略と実行力を磨いていく。それが、これからのマーケターに求められる道のりなのかもしれない。
こちらの記事は2024年04月15日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
落合 真彩
写真
藤田 慎一郎
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