連載株式会社オプト
「OMOって何?意味あるの?と言っていたらイノベーターにはなれない」
全く新しい顧客体験を作り出す、オプト社のオムニチャネルイノベーションセンターが生まれたワケ
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オムニチャネルやO2Oなど、オンラインとオフラインの関係性に起因するマーケティング手法は、この数年の間に目まぐるしく進化してきた。
そんな中で新たに登場したキーワードがOMOという略語。「また新しいワードをバズらせて広告代理店やコンサルが一儲けしようとしているんだろう」と、シニカルに受け止める方もいるだろうが、どうやらそれはとんでもない間違い。
おそらくOMOは今後、小売業のみならずあらゆるインダストリーでビジネスの大前提となるメインストリームのようだ。グローバルな成功事例としては毎度おなじみのAmazonやアリババが挙がるものの、日本での本格化はこれから。
いち早く注力するべく新組織まで立ち上げ、日本企業との協働を進めているオプトのキーパーソン2人に話を聞いた。
- TEXT BY NAOKI MORIKAWA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
OMOって何?意味あるの?と言っていたらイノベーターにはなれない
「O2OとかOMOって意味あるの?効果あるの?って言っているようでは、ビジネスの最前線をリードする人にはなれませんよ」
いまグローバルマーケティングの中でも大変ホットな領域であるOMOを日本でリードする伴氏は、冒頭でそう言ってのけた。
今回登場する二人の立ち位置から説明しておこう。伴氏の名前は前回の吉川氏へのインタビューにも登場したが、もともと小売業の最前線に立って、特にCRMの可能性を追求しながらデータドリブンのマーケティングを担ってきた人物。
激変する時代の流れを感じ取り、より大きなイノベーションへの可能性を求めてオプトに参画し、デジタルマーケティングやデータ解析の活用機会を模索。新たな部門を立ち上げてきた存在だ。
一方、新卒入社6年目の大塚氏はメディアプランニングに従事した後、営業職としてクライアント企業の実情に深く関わり、数年前にオプトがリテール領域を強化するタイミングでオムニチャネルやO2O(Online to Offline)マーケティングに携わってきた人物。
伴氏によってOMOと向き合う部署が生まれると、その立ち上げ段階から参画してきた存在である。
そんな二人に最初に聞きたかったのは「OMOって何ですか?」だ。
「そんなことも知らないのか」と突っ込まれそうではあるが、「Online Merges with Offlineの略語であり、オンラインとオフラインが融合したアフターデジタルの現代において、マーケティングの基本概念になりつつあるもの」などというウィキペディア風の説明を聞いた程度では、誰も腹落ちしないはず。
具体的に何が起こっていて、どうして「これからはOMO」だというのかを、最初に理解しておきたかった。
伴わかりにくいですよね(笑)。私もよく「O2Oと何が違うんですか」という質問を受けます。そもそもO2Oというのは、モノやサービスを提供する側である企業が、オンラインつまりデジタルの世界と、オフラインつまり実店舗などのリアルな世界とを区別して、カスタマーにその両者間を往き来させようとしていたアプローチです。
大塚私はO2Oをテーマにした案件に今も携わっていますけれども、例えば「便利なECサイトで買い物をしているお客様をいかに店舗に連れてくるか」、あるいはその逆で「店舗に訪れるお客様をいかにオンラインのほうにも誘導するか」というような目的をもって展開する取り組みがO2Oということです。
伴もちろん企業や業界の状況次第でO2Oは今後も重要なテーマになると思うのですが、昨年あたりから日本でもアマゾンエフェクトという言葉が使われるようになりました。端的な現象がショールーミングと呼ばれるものです。
リアルな店舗でモノを販売している企業の目線で言えば、せっかく価値ある商品を店頭に並べ、それをお客様が手にとって眺めて気に入ってくれても、多くの人が店で購入せずにスマホなどを用いてAmazonで購入してしまう。
それがAmazonではなく楽天市場やZOZOTOWNでも同じなのですが、とにかく店舗がEC事業者のためのショールームのように使われてしまい、自社の売り上げが伸びないという事態が日本でも問題視され始めました。
2017年に米国トイザラス経営が破綻した際、その原因がAmazonにあったという分析は世界中のメディアに躍った。Amazon=ディスラプターというイメージを決定づけたエピソードとも言えるし、ECの発展はリアル店舗を脅かす、という印象は今でも強い。
そんな中で、オフライン店舗とオンラインでの行動データを融合させることによって、カスタマーがより買い物をしやすい方法を考えようという発想が、「OMO」である。
伴同じモノがオンラインでもオフラインでも買える、となれば、あとは価格やサービスに勝る者が常に勝利することになります。あくまでも一例としてですがAmazonを取り上げれば、全世界に万全な物流網を確立し、決済方法での利便性も高い。
物流・金流・情報流という3つの流れで決まるのが小売の鉄則ですから、手をこまねいていれば強者がずっと勝ち続ける構図になります。OMOは、そうした状況を打破するべく浸透し始めた側面を持っているんです。
オンラインとオフラインとを往き来する人の流れだけを見つめるのではなく、自らがオンラインとオフラインを融合させながらカスタマーに寄り添い、他では得られない経験=エクスペリエンスを提供しようという発想ですね。
「3つの流れ」を押さえた米国のAmazon、中国のアリババ。ならば日本は?
ただし、米国発でOMOを体現し、最も成功を収めているのもAmazon。同社が食料雑貨販売の大手チェーンであるホールフーズを買収した2017年当時は、多くのメディアが「オンラインの覇者Amazonが今度はオフラインのリアル店舗ビジネスにも乗り出した」と捉えたが、真実はそうではなかった。
リアル店舗で買おうがオンラインで買おうが、AmazonのIDを持つカスタマーがそのIDを用いてショッピングをすれば、オンオフ双方の行動データを獲得し、マーケティング活用をさらに深化していくことができる。
つまり、今や世の中自体に「オンラインとオフラインの融合」は定着しており、消費者はそのどちらも好きなように選べるというファクトがある。
これに企業がどう寄り添えるかがOMOのキモ。オフライン側で既存事業を確立してきた流通産業も、ECで成功している事業者も、うかうかはしていられない。
オンとオフどちらかに傾倒していては生き残れないし、双方向に人の流れを生み出すO2Oばかりを追いかけてもいられない。どう融合させ、どれだけカスタマー側の「当たり前」に寄り添いつつ、「違い」を生み出せるかが問われているというわけだ。
一方、OMOにおいて世界で最も成功しているのはアリババやWeChatであり、中国がその最先進地域だと言われている。その理由についても伴氏と大塚氏はわかりやすく教えてくれる。
伴簡単な話です。中国ではかつて、お金の流れや情報の流れが社会情勢の影響もあって滞っていましたが、そこにデジタルによるイノベーションを確立したアリババやWeChatが登場して、人々はあっと言う間にキャッシュレス決済などのサービスを受け容れ、都市部に浸透していきました。
先の「3つの流れ」の内の2つを制圧したわけですから、あとは物の流れをサービスで提供すれば良いだけだったんです。
大塚アリババを率いるジャック・マーが2016年に「ニュー・リテール」という言葉を使って、同社のコンセプトを発表した時には多くの人がそこまで理解できていなかったと思うのですが、彼らは当初からOMOを意識して、あらゆる「流れ」をおさえにかかっていたんです。
米国のAmazon、中国のアリババがいかに時代の先を行き、したたかな戦略でOMOを進めていたのかはわかった。では日本はどうなのか?
OMOの概念をどう事業やサービスに活かしていけば良いのか、について見極めている企業があるようにはどうも見えない。
大塚そこですね問題は。実際に現場で様々な企業のかたとお会いしていますが、強い危機感と問題意識をもって「一緒に考えましょう」と言ってくださるところもある一方、やっぱり「OMOと言われてもよくわからない」というところや、「そこまでウチは追い込まれていないから」と危機感を覚えていない企業さんも少なくないんです。ですから、かなりのケース、OMOの導入で生まれる価値を一緒に考えるようなところからスタートしていたりします。
オプトが今年の春に立ち上げたオムニチャネルイノベーションセンターは、いわばリテール分野を軸にした戦略的マーケティングのすべてに携わっていこうという部門。
それまで大塚氏がコミットしてきたオムニチャネルやO2Oに関わる案件は今も多数あるが、同時にオプトではOMOへの取り組みについても企業に強く発信を行いながら、新時代のマーケティングに見合うイノベーションをクライアントとともに起こしていこうとしている。
だからこそ、社会にOMOの価値を伝えるようなアクションにも注力しているわけだ。
伴日本と中国や米国では社会情勢も違えば、消費者の皆さんが求めているものも違います。いきなりOMOだと主張しても、企業もカスタマーもピンときません。ですから発信を続けつつ、「まずはお客様とのつながりを再構築しましょう」というようなアプローチから入るケースも多くあります。
リカーリング・モデル、つまり継続的な購買を引き出すためのアプローチもその1つ。その代表が最近よく耳にするようになったサブスクリプションというわけです。
つまりザックリ言ってしまえば、近年日本でもお馴染みになったO2OやD2C(Direct to Consumer)、サブスクリプション・モデルといった発想や手法はすべてOMOにつながっているんです。
つまり、オンラインとオフライン、デジタルとリアル、それぞれが別々だった時代は終わり、融合という名の産みの苦しみは日本でもジワジワと始まっているということ。だが、結局のところ何が「カスタマーに寄り添う」ということなのだろうか?
モノを買うのが便利すぎる現代に、「ストーリー」をもたらすのがOMO
伴氏は、アリババが運営する食品スーパーの「盒馬鮮生(フーマー)」を例に挙げる。店内に設置した生け簀に魚が放たれており、それをそのまま買うこともできれば、その場で調理してもらいイートインで食べることもできるスタイルで営業。なおかつスマホのアプリで注文すれば30分以内に配送してもらうことも可能なスーパーだ。
伴何やら盛りだくさんなサービスを実施しているので、ついそこに目が行きがちですけれども、重要なのはお客様に提供している「経験=エクスペリエンス」なんです。
中国の人々にはもともと食に対する不安が強くあります。本当に新鮮な食材なのかどうか、それを料理したらちゃんと美味しく食べられるのかどうか、などという不安は日本人にはないでしょうけれども、彼らにはある。
そんな中、間違いなく新鮮だということがわかるよう、店内で注文すると「生け簀からその場で魚を引き揚げて調理する」という仕掛けを施すことで、生鮮さに対する安心を提供し、なおかつ美味しさや楽しさまで提供できているのがフーマーなんです。
カスタマーに不安のない日本では、売り手にとっての効率が重視されて生鮮食材をパックで売っていますが、買う側にしてみればそんな状態のものを買ったって楽しくはないですよね? 日本ではストーリーのない効率重視の「買い物経験」だけ提供していればそれでいいのかといったら、私は違うと思うんです。
大塚たしかに不安の少ない日本に住んでいると、お客様の側も「今のままでいいよ」と思っていたりします。でも、ひとたび「いつもと違うプラスαの経験」をしてしまったら、ハマってしまうかもしれない。
伴もっとわかりやすい例でいえばNetflixなどに代表されるSVOD(Subscription Video on Demand)、つまりサブスクリプション型の動画配信サービスです。たぶん多くの人が数年前までは「テレビとビデオがあればそれで十分満足」と思って疑わなかったはずです。
YouTubeなどで動画を見る習慣は定着したけれども、いわゆる映画やドラマなどの映像コンテンツを見る場合は別だと考えていた。ところが一度でもNetflixやAmazonプライムを利用してしまったら、その経験をやめられなくなってしまったのではないでしょうか? そうでなければ、これほど短期間のうちにSVODユーザーが急増することはなかったはずなんです。
たしかに言われてみればその通り。テレビ放映を事前に調べて試聴や録画をしたり、見たい映画をレンタル店まで行って借りたりしている日常を、多くの人は不便とは感じず「まあ満足している」と思い込んでいた。サービスを提供する側も受け取る側も「これでいいよ」と感じているところに入り込んできたSVOD。
ものは試しと経験してみたところ「好きなコンテンツを好きな時間と場所で、好きなデバイスによって見ることができる。サブスクリプションだからその規約内であれば見放題だ。
しかもネット経由でありながら画質も良いことを知ってしまったので、もうテレビに左右される生活には戻れなくなっていた」という人が多数現れ、今に至っているのだろう。
新しい「経験」の提供によって、ビデオショップや映像パッケージビジネス、テレビ局や広告産業に至る多数のビジネスが大きな打撃や影響を受けている。そして、伴氏はここでとても印象深い言葉を発した。「満足したもの負け」だ。
伴映像の世界1つを例にしても、これほど大きな変化があったんです。「日本ではカスタマーも皆満足しているから」などと呑気に構えていたら、ある日突然、海外から現れた企業に皆が毎月サブスクでお金を払っている事態になるということ。
それはどんな産業、どんなビジネスにも今後起こることなんです。コンビニのように効率に特化することで価値を出しているビジネスは変わらないかも知れませんが、それすらも例外だとは言い切れません。
やめられなくなるような「経験」とそれにまつわる「ストーリー」。これを用意できたところが日本においてもカスタマーの支持を得ていくことになるんです。つまり、満足したもの負け、あるいは、満足されていると思ったもの負けの時代がもう来ているということです。
「中国はいろいろと不満と不足が重なっていたからデジタル化もキャッシュレスもOMOも進んだんだ。日本は成熟国だから違う」などとは言っていられない。
OMOの発想を的確に「経験」と「ストーリー」に結びつけ、そこに技術や仕組みを持ち込めば日本のカスタマーも動き出す。「ぼんやりしていれば、海外からやってきたディスラプターにしてやられる」という危機感を持つべきというわけだ。
伴現代はいわば、「なんとなく」でモノが買えるようになってしまっていますよね。企業側もそんな消費者の心情に甘えていて、最高の購買体験を追求しきれていない節があるのではないでしょうか。
私は究極的には、全ての購買には「理由」があってほしいんですよ。小売店での会話のある接客のような「モノの買い方」が好きなんです。もっと感情が動いて、ワクワクするような購買を世の中に増やしたいと思っています。
大塚じゃあ、そうした「経験」や「ストーリー」を軸にした体験を創り出すことに強みを持っているところはどこなのかといったら広告代理店でしょう、と私は自負を持っています。
オムニチャネルイノベーションセンターを立ち上げた背景には、伴が当社に参画してリテール領域を強化していける体制が整ってきたから、という面もありますが、オプトならばOMOの担い手になれる、という確信もあってのことだったのだと思っているんです。
もちろん、こういう話の展開になるとは思っていたが、いよいよ聞いてみよう。「なぜオプトがOMOの担い手に相応しいのか」「他のデジタル分野同様、コンサルティングファームもOMOに乗り出し始めているが、そことの違いは何なのか」「他の広告事業者との違いは何なのか」を。
ストーリーテラーになれるのは広告代理店でありInnovation Agencyであるオプトだけ
伴オムニチャネルイノベーションセンターの役割は、小売をはじめとする多くの産業がデジタルを通じてお客様に寄り添っていくために、貢献し、協働していくことです。
これまで大塚が担ってきたオムニチャネルやO2Oの部隊、あるいは吉川が担っているデータ解析による価値提供の部隊など、複数のチームが個別の目的で動いてきました。
しかし、OMOによるイノベーションをクライアント企業と一緒に達成していくためには、一気通貫で連携しながら戦略的に動ける複合的な組織が必要。そう考えて、複数のチームを統合してオムニチャネルイノベーションセンターにしたんです。
大塚つまり、あらゆるチャレンジに対応できる実行部隊の集合体ということです。私も含め、それぞれのチームや個人が担当するO2OやCRM(Customer Relationship Management)やCDP(Customer Data Platform)等々で実績を上げながら、必要が生じた時には戦略的に連携して、クライアントにスケールのあるチャレンジをしていただけるようになったんです。
伴大きなチームとして融合したことで、例えば大塚にしてもO2O案件として業務遂行しているときは、クライアントの現場担当者とだけ向き合ってきた関係式が、経営陣と向き合うような図式になり始めています。それによってオプトのメンバーの成長も加速しているんですよ。
大塚それはすごく大きな環境変化です。1つひとつのアプローチではお客様の最前線にいる担当者と密接につながり、同時に大きな戦略部分について経営陣のかたがたと議論することもできる。
とにかくオフラインが絡んでくるOMOですから、理屈や概念だけを机上で議論していても何も生まれません。アイデアが浮上したなら、すぐさまリアルな店舗を巻き込み、デジタルな仕掛けも施しながら実証実験を繰り返す。
そういう活動ができているのはオプトだけだと自信をもって言えますし、成功も失敗も混ざり合う実験結果についてしっかり分析をしながら経営陣のかたがたに意見していく立場も担えます。そうして間違いなく成長できている実感を、今味わっているところなんです。
伴OMOに限らず、今はイノベーションの成否が死活問題とさえ言える時代です。仮に危機感をもった経営者がいて、優秀な変革担当者を任命したとしても、多くの場合、そこから先、何をどう動かせばいいのかわからなかったりする。
私自身が小売業の現場にいましたから断言しますが、クルマの運転が得意な人が必ずしもクルマの修理やチューンアップまでやれるわけではないんです。
デジタルとかOMOとか、新しいアプローチや考え方をうまく自社のビジネスに埋め込んでいくためには、信頼できるパートナーが必要。私も実はそういう部分でのスキルやノウハウが欲しくて転職を決意し、オプトを選んだんですよ。
大塚例えばコンサルティングファームであれば、最新の経営手法やテクノロジー、先進国でのイノベーション事例などをいち早くキャッチして、情報としてクライアントに届けることについては強いかもしれません。
でも、実際のオフライン現場で行われた実験的な試みに寄り添い、そこで得たデータや経験を分析しながら提案できるのかといえば、そうではありませんよね。Innovation Agencyであるオプトにはそれができるだけの知見が短期間の内にどこよりも蓄積されています。
伴例えばAという昔からのコア事業を持っていた会社が、まったく違うBという事業をスタートさせる、といった類の変革ならば、そうした事例に強みを持つコンサルティングファームはいるでしょう。
でも少なくともOMOは、Aというど真ん中の事業にイノベーションを起こす取り組みです。大塚たちのようにクライアントの最前線で協働しながら知見を得ている者たちが、それぞれの専門分野や得意ジャンルで連携しながら戦略的に動く必要があるんです。
さらに伴氏は、中国や米国の真似では日本のOMOは成就しないと言い切る。日本あるいはヨーロッパのように、ある程度の豊かさをすでに手に入れていて、人々が社会の仕組みや日常生活において不足や不満をあまり感じておらず、なおかつ国土に限りがある環境下で、どうOMOを成功させるのか。それが課題だという。
伴中国はもちろん、米国のGAFAばかりをベンチマークするのではなく、ヨーロッパ域内の先進国がどのようにOMOに取り組むのかも注視しつつ、日本独自のOMOのあり方を探っていく。そういう動きをオプトはすでにスタートしています。
加えて大塚氏は、総合代理店や競合各社とオプトとの違いについても触れる。
大塚私は3つ条件があると考えています。広告知見、小売知見、データ知見の3つすべてを、カスタマー視点の体験も通じて蓄積できているところだけが、クライアントのOMOやイノベーションに価値を提供できる。
大手総合代理店も含め、競合する広告代理店の中でオプトほどこの条件を満たしているところは他にありません。
これからは「満足したもの負け」の時代。「失敗が怖いヤツ」にイノベーションなど起こせやしない
泥臭い実証実験を繰り返しながら、そこでしか得られないファクトを蓄積。そのうえでOMOやイノベーションについて戦略的に経営陣と話し合ってもいくスタンスを固めようとしているオプト。
伴氏が言った「満足したもの負け」の時代において、「ネット広告のトップ企業」というブランドに「満足」してしまうことなくイノベーションの可能性に向かって動き出していることはわかった。では、OMOの担い手になろうとしている二人が「ともに働きたい」と思う仲間とは?
伴先ほども言いかけましたが、私はもともとオプトに来て、小売業にいたら手に入らなかったものを学ぼうと思っていました。それが手に入ったら、先ほど大塚が話したような統合的な知見をもって起業するなり、別のどこかの会社で新事業を興そうと思ってもいたんです(笑)。
ところが、そんな風に外でやろうと思っていたことをすでにオプトでやらせてもらい、任せてもらっている。それに「広告代理店なんてところには変にキラキラした人たちがいるんだろう」と思っていたら、トップも現場も驚くほど生真面目で熱い。
良い意味で現状に「満足」していないんですよ。これは離れられないなあと考えて、今もここにいます。
大塚わかります(笑)。広告業だからどうのこうの、という人間ではなく、既存の枠組みというものに違和感や疑問を感じた結果オプトに入ることにしました、みたいな人間の集団ですよね(笑)。
だから、これから仲間になってくれる人もそういうタイプの人間じゃないと馴染めない気がします。現実に私が携わっている仕事では、「これで本当にいいのかな」というようなピュアな視点や好奇心が何よりも大切ですから、広告やマーケティングやデジタルについての知識や経験値がなくても存在意義を見つけることができると思いますよ。
できれば、どんどん自分のほうから課題とかを提起してくれるような人と一緒に働きたいですね。これまでのネット広告の世界のように、CPA(顧客獲得単価)を抑える、といった王道的な正解がまだないのがOMOの世界ですから。
伴先ほど大塚が言ったように、我々の現場ではデータを用いて確率論を検討し、せいぜい70%程度の成功確率が見えた時点ですぐさま実験に取りかかり、ファクトドリブンで試行錯誤します。
70%を80%に伸ばそうと考えているヒマがあったら、実行して結果を見てPDCAを高速回転させなければイノベーションには到達しません。ですから、70%でゴーサインを出せる勇気や決断力も欲しい。失敗を怖がるタイプだというのなら、来なくていいです(笑)。
もちろん、失敗はしないほうが良いけれども、避けては通れないチャレンジなんです。失敗した時に「ああ、違いましたね」とクライアントに言ってのけ、「次はこれを試しましょう」と、いち早く次の実験にとりかかるくらいの図太さは必要ですし、失敗してもクライアントからの信頼を失わないくらい信用貯金をしていける人と一緒にやりたいです。
最後の最後、伴氏は日本の現状を数字で示した。
伴これだけデジタルが浸透した国なのに、実際の購買行動の93%がリアルな店舗で行われているのが日本。つまりネットでモノやサービスを購入しているのはわずか7%だけなんです。
「NetflixやLINEなど、今の社会を動かしているのは、もともと世の中で当たり前になっていなかったものなんだから、この領域だって可能性の塊。このファクトに対して『チャンスがこんなにまだ残されているんだ。面白いことがいくらでもできそうじゃないか』と思える人が集まってきて欲しい」とのこと。
現状をいとも簡単に受け容れて「日本はそういう国なんです」と「満足」げに語るようでは、「満足したもの負け」の時代にイノベーションなど起こせやしないということだ。
こちらの記事は2019年11月06日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
森川 直樹
写真
藤田 慎一郎
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