INTERVIEW
山田 亮
18-11-20-Tue
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「内定欲しいのに、まだLinkedIn使ってないの?」
SNSをハックし、夢のキャリアを実現した男が教えるキャリア構築法

TEXT BY NAOKI MORIKAWA
PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA

東北でパナソニック代理店を営む家に生まれた少年が
「いつかパナソニックで活躍をして地域に貢献したい」と志し、
同社創業100周年の今年、その望みを叶えた……という、ちょっと不思議なキャリアストーリー。

感動するか否かはお任せするが、その主人公が計画的に実行してきたという
逆算式のキャリア形成術は大いに参考になるはずだ。
インターネット上のプラットフォームを活用する手法だけでも知っておいて損はない。
自己の市場価値を知り、伸ばし、伝え、武器にしていくための
独特のアプローチを、主人公・山田亮氏に聞いた。

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東北のケンシロウが手探りで見つけ出した「自分の市場価値」測定法

山田要するに私はケンシロウだったんですよ。私なんかがケンシロウを引き合いに出したら、世界中から叱られそうですが(笑)。

いきなり『北斗の拳』をたとえに使うあたり、早くもただ者ではない山田氏。かつてパナソニックが全国に展開していた代理店網は、家電製品の小売販売や設備業の最前線だ。そして山田氏の父親も東北の地でその代理店を営んでいた。当時多くの代理店がそうであったように、家族経営の小規模な店舗はゆくゆくその家の子どもによって継承されるのが当然のように思われていたという。

山田氏は少年時代から父のビジネスを手伝い、いずれは継ぎたいと願っていたのだが、兄の存在があった。すなわちラオウ。一子相伝であるのならば、修行に出よう、という心持ちのケンシロウだったというわけだ。

山田目の前で汗を流し、地域のお客様に貢献しようとしている父の姿をカッコイイと思っていたのもありますが、家の本棚に並んでいた松下幸之助さん(パナソニック創業者)の著書を小さい頃から読みかじり、その経営哲学に子どもながら感銘していたことも大きかったんです。

母から初めてもらったビジネス書は昭和63年6月に松下電器産業株式会社のリビング営業本部長から頂いた特製クロス仕上げの松下幸之助日々のことばでした。全社をあげて取り組んだナショナルFF式石油温風機も父の軽トラックにのって回収したこと、アンテナやエアコンを取り付け、乾電池や蛍光灯をお客様と対話しながら販売した記憶も残ってます。

家の商売を継ぐことはできなくても、私は一商人の観念をもっており、いずれはパナソニックで活躍したいと強く思うようになりました。

大学で就活を始める頃は、まだ家の承継がどうなるか定まっていなかったため、東北勤務が叶う企業を中心に活動。入社したリコーで、山田氏は早々に「パナソニックでいずれは行きたい」という、意向を伝えたという。

2000年代初頭に、新入社員がこんな言動をすること自体珍しかったはずだが、当時の上司は快く山田氏の夢を受け止めた。そして、「求人サイトに登録しておけば良い」とアドバイスまでくれた。ここからが山田氏独特のアプローチのはじまりとなる。

山田初めて登録したのは2003年のことなんですが、当時登録した求人サイトでは自分の職務経歴を記入すると、それを閲覧した企業の数を確認できる仕組みになっていました。

さして閲覧数が多くない状況を眺めている内に『これって、今の自分の価値を示す数字なのかもしれない』と気づき、試しにIT系のスキルの有無を問う欄にチェックを入れてみたんです。

すると、閲覧数が突然それまでの100倍に増えた。ITのスキル1つを身に着けるだけで、こんなに市場価値が変わるものなのか、と驚き、次々といろいろなチェック欄を試していきました。

ITとグローバル経験。この2つに関わるスキルや経験にチェックを入れた時、飛び抜けて閲覧数が跳ね上がることを知った山田氏は、「今という時代に企業が個人に求めている能力や資質が何なのか」を実感したという。企業サイトにあるビジョンや戦略との照合も行えば“時代のニーズ”が浮き上がってくることも知った。

山田市場価値が上がるスキルが特定できたんですから、あとは学ぶだけ。ITと海外ビジネスについて働きながら学べる場を求め、IBMに照準を定めたんです。

ITを活用した大規模なソリューション提案を実務で経験すべく日本IBMのオファーを得ると、その志望したPC事業部がレノボに売却されることになった。正直不安もあったがレノボを取り巻く外部環境を調べれば調べるほど魅力を感じた、そして将来必ず世界一のテクノロジー企業になると確信しレノボへの転職を決めた。急速に成長していた中国やアジア市場を体感しながらITビジネスを実践することができ、結果としてレノボは世界一のPCメーカーと成長した。

さらに山田氏が在籍中、レノボはNECと事業統合。カルチャーの異なるNECのメンバーやデル、HP等から中途入社した社員などに囲まれながらマネジメント経験も積んだという。

山田日本企業、グローバル企業、中国資本など様々なカルチャーが同居する中、マネジャーも次々に変わっていくという目まぐるしい環境を体験したことで、企業文化の融合の難しさや、外部環境と整合性をとるように企業組織が変化していくものだという学習もすることができました。

2度目の転職となるマイクロソフトへの入社は2013年のことだった。しかし今回もまた、事前に「自分の夢を達成させるための最重要企業」としてマイクロソフトに照準を絞り、3年前の2010年からインターネットを活用して、同社が求める人材像へと自己のスキルを近づけていったのだという。

山田米国のマイクロソフト社に掲載されているJob Description(求人詳細)を見ながら、本社が今何を考えているのか、日本支社でこれからどんな人材の募集がかけられるのかを見極めるようにしていました。

これまでの経験上からも、外資系企業の場合、本社の意向が時を待たずして日本にも反映され、その後すぐに必要人材の採用活動が始まるとわかっていたからです。

手に入れたいキャリアやスキルを定めたら、それを実現できる企業を見つけ出し、今度はその企業が求めている人材像をインターネットも駆使して分析し、自分の力を伸ばしていく。我流ではあるものの、山田氏は逆算方式で目標達成する手腕をさらに高めていった。とりわけこの時には徹底的に活用したツールが、LinkedInだ。

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LinkedIn内の企業の採用活動の変化でトレンドを把握

今さら言うまでもなく、シリコンバレーで生まれたLinkedInは世界最大級のビジネス特化型SNSであり、すでに世界で5億人超の登録ユーザーを保有。自らの経歴やスキル、資格、興味対象等々を克明に記入し、相互につながっていくことでビジネス上のパートナーと出会ったり、共通テーマについて意見や情報をやりとりしたりすることが可能だ。

多くのグローバル企業や人材関連企業、ヘッドハンターらも登録をしてリクルーティング活動に利用している。いわゆるダイレクト・リクルーティング・サービスの代表格でもあるこのLinkedInに登録した山田氏は、マイクロソフトが求める人材像を探り出し、逆算方式で自分に不足しているスキルを伸ばしていった。

山田マイクロソフトの求人ページからわかることだけでなく、Yahoo!のリアルタイム検索も活用して、どのキーワードに数多くのクチコミが集中しているのかもチェックしました。

そうして見えてきたのが『クラウド』『モバイル』『セキュリティ』といったキーワード。世の中が注目しているバズワードとマイクロソフトが求めているスキルとを掛け合わせれば、何を習得すれば良いのかはわかります。

LinkedInの自分のページに保有スキルとして書き込める自信を持つレベルにまで、それぞれ経験を付けていくと、マイクロソフトだけでなく、アップルやグーグルの採用担当者からも声がかかりました。

「そんな煩わしいことをして調べなくても、時代が求めているスキルぐらいはだいたい想像がつく」などと考える人もいるだろう。しかし、実際に獲得できているスキルが増えると、LinkedIn上で反応する企業の数や顔ぶれが変化するし、3年の月日をかけて地道に作業を繰り返すうち、業界内のホットトレンドが変化したりもする。

成長を目指して同じように学習するにしても、Linkedinを駆使して市場動向を確認することで、勉強の方向性に確信がもてる。たしかに、「これで間違っていない」という確信は、学びの進捗やスピードにもプラスの効果を与えそうだ。

山田氏は、レノボで過ごした8年間の後半部分で「これからはモノからコトへとビジネスの主体が移っていく」と感じ取り、ソフトウエアとITサービスで世界市場を握ったマイクロソフトに魅力を感じたというが、以上のような地道な活動を通じて、働きながら感じた自分の直感が間違っていないことも確認できたのだ。だからこそ3年に渡り、ブレることなく1つの企業を追い続けることができたというわけである。

山田いわゆる求人サイトと異なり、ダイレクト・リクルーティングのSNSの場合、自分から企業にアクションを起こすことも可能ですし、数多くの企業から求人が集まっている人と、自分との違いを分析することも可能です。企業の活用の仕方を見ていけば、その会社がどれくらい熱心に人材を求めているか、ということもわかってきます。

真面目に勉強をこつこつとするだけでも、たしかに力はつくでしょうけども、LinkedIn等のSNSは身につけたスキルを多くの人に伝えることのできる場でもあります。成長の過程を書き込み、伝達するたびに、企業や個人からのリアクションも変化します。

それが励みになったり、新たな気づきになって、成長を加速することも可能になるんです。日本ではまだ活用している人が海外ほど多くないようですが、社会人だろうが学生だろうが、利用しない手はないと思いますよ。

さて、すでに多くの人が「なぜすぐにパナソニックに入社しなかったのか?」と感じているはずだ。そのまま質問をすると、山田氏の返答は至ってシンプル。「パナソニックの中途採用は狭き門でしたし、私も自身をもっと成長させてから、という気持ちがあったんです」とのこと。それでも、一定の目安は設けた。

「パナソニックの創業100周年(2018年)のタイミング、もしくはオリンピックイヤーに自分は入社するんだ」という宣言をSNSや友人に伝え始めたのだ。自らを鼓舞するため、という面だけでなく、広く公言することで誰かがそれをキャッチして何らかのリアクションを起こしてくれるかもしれない、と考えた結果である。

山田実はそれまでにも『SNSで公言してコミットする』方法を仕事に活かしてきました。例えば、『必ず目標をいつまでに達成させる』とか『今年中に新しいソリューション事例をつくる』というように書き込むんです。

友人からは『宣言してコミットするのはいいが、Howがないじゃないか』と突っ込まれたりするのですが、そんなやりとりをきっかけに一緒に考えてくれたり、同じ想いを持っていた人が賛同してくれてHowが見えてきたり。

山田氏が自己流で獲得したキャリア形成術は「逆算の思考と実行」ばかりではない。SNSやダイレクト・リクルーティングを活用した「宣言と伝達」もその1つ。デジタルトランスフォーメーションをマイクロソフト内で提案していた山田氏は、ゆくゆくこの変革を通じて社会に貢献し、地方創生というそもそもの夢にも役立てようとしていた。

そこで昨年、チャレンジ精神で企画を日経BP社に持ち込み、ついには日本版デジタルトランスフォーメーションについて連載記事を持つことに成功。日本企業が直面している変革時におけるリアルな悩みが読者の共感を呼び、総合閲覧ランキング1位の座もゲットした。更には連載中も様々テーマを絞り、どのテーマが市場が最も反響があるのかを効果測定していたという。

これもまた「伝達」の1つであり、連載記事を持ったことで自己の市場価値は上がった。

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発信し続けることが、面接でも信用につながる

マイクロソフトでも経験と実績を重ねた。デジタルトランスフォーメーションという目指す領域も明確になった。SNSや友人にも「創業100周年、もしくはオリンピックイヤーまでにパナソニックに入社」という宣言も行った。しかし、なかなかパナソニック入社のチャンスは訪れなかった。

だが昨年、風向きが変わった。マイクロソフトで社長、会長を務めてきた樋口泰行氏が古巣であるパナソニックに復帰。専務に就任したのだ。このトップ人事が山田氏の去就に直接関わったわけではないが、ほどなくパナソニックにいる友人から、「そろそろどうですか?」と連絡をもらったという。

そして経営陣と対面する機会を得て、なんと宣言通りにパナソニック入社が決まり、今に至っている。

現在はオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社にて社内外で非常に注目を集めている機械工学、電気工学、情報工学の知識、技術を融合したメカトロニクス事業に携わり、プラットフォーマーでの経験とAI、IoTを活用しながら従来の強いパナソニックのセンサーやモーター、各種デバイスを更に価値を高めるためのサービス推進プロジェクトを担っている山田氏。「メカトロニクスのモノ事業からコト事業へのレイヤアップ」がミッションだというが、経営陣との面談のタイミングから、自らの目標を社内で公言している。

山田2023年までにパナソニックのデジタルトランスフォーメーションをリードし経営的なインパクトを出す。そう言ってます。

今のパナソニックには「ソトパナ」「ナカパナ」の概念が必要だと考えており、いわゆる外から素直な心で外部環境を伝える、中から沸き立つ情熱で変化していく。こういう構図が変化が激しい世の中において求められる組織能力だと思います。

部門トップも新規事業にコミットしており、よそ者、若者、ばか者の意見にも柔軟に耳を傾けてくれ、私も責任ある自由を与えられてます。恵まれた環境を心地よいプレッシャーと感じ、現在携わっているデジタル関連のコト作りで得た技術やスキル、人脈、組織変革の実行力を更に伸ばし、なおかつマイクロソフト時代から実践および研究してきた成果も掛け合わせて、次の100年に向けて新しいビジネスモデル、柔軟にアップデートするパナソニックを作っていきたいんです。

そして、パナソニックだからこそ実現できるデジタルトランスフォーメーションを実行して、結果を出すことでもっと一人一人に向き合うことができ、最終的には社会をより良い方向に変え、地方創生にもつなげていけると確信してます。

かつて家電業界の販売戦略のシフトチェンジにより、全国各地に張り巡らされた代理店ネットワークは急速に収縮。山田家の家業にも大きな影響が出た。それでもなお、パナソニックの創設者・松下幸之助氏の教えに薫陶を受け、夢を描いてきた山田氏は、パナソニックで過去の経験を活かした活躍の場をつくる、という少年時代の目標から、今ではパナソニックの成長を通じて社会に貢献するという目標に変わっていた。

「地方の雇用は大企業に支えられているところが大きい」と身を持って体験している山田氏は、いよいよここから、日本の大企業を変え、地域を活性化させるべく、デジタル変革の旗手を目指し動き出そうとしている。

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市場価値を追いすぎると、市場価値は高まらない

いわゆる日系大企業の代表格であるパナソニックの中でも、自身のミッションを持ち、自律的なマインドを持ってキャリア作りを行っている山田氏。最近の就活生や若手社会人の間では、「市場価値を高めるために、どこで何をしたらいいのかわからない」という人が多いことを彼に伝えると、「悩んでいないで発信しましょう!」というなんともハッピーな答えが返ってきた。

山田やりたいことが見つからないとか、自分にどんな市場価値があるのかわからない、と思っている方に言いたいのは、まずはやれることを色々試してみようよ、その気になれば利用できるものはたくさんあるよ、ということ。

ダイレクト・リクルーティングやSNS、ブログ等は、使い方次第で市場価値測定装置になりますし、同時に自己の価値を広く伝達するプラットフォームにもなります。事実、パナソニックの若手社員の中には、自分の体験した社外での業務以外の活動経験をTwitterに投稿して14万リツイートを稼いだ者もいるんです。

1人で考え続けるのではなく、社会やマーケットに自分を発信し続け、今の自分の価値を市場に問う。そしてそのフィードバックから、将来なりたい自分にとって不足しているものを知り、学習する。今の時代であれば、このサイクルは誰でも簡単に回せるわけじゃないですか。

市場価値は言葉通り市場が決めるものなので、うじうじ悩んでいる暇なんてありません。どんどん市場に発信しないと!

最後に山田氏は、「逆説的ですが」と前置きした上で、自身が思う「真に市場価値を高める方法」をこう話して締めくくった。

山田そもそも、市場価値が本当に高くなる人は、目先の市場価値のことなんて気にしません(笑)。これは私が多くの社会人と接してきて結論づけたこと。

自分の価値向上といった目先の利益には目もくれず、企業・社会のため、といった外向きの大きなミッションを追求し続けています。だからこそ、周囲から多くの支持を得ることができ、大きな結果が出せる。

大手企業にいようが、ベンチャーにいようが、大きなことを成し遂げるには、多くの人たちの協力が必要ですよね。だから若い皆さんもどうか、25歳、30歳、35歳といった節目の年齢のとき、『あなたの話が聞いてみたい』『飲みに行くならあなたを誘いたい』と思ってくれる友人が周りにどれだけいるかを考えてみてください。

その数が毎年増えていれば、結果的に市場価値が高くなるような、大きなコトを仕事で実現できる可能性が高まっているはずですから。

[文]森川 直樹
[撮影]藤田 慎一郎

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