“時間軸”知らずにベンチャー語るな!──本当の「視座の高め方」
Vol.1 伊藤豊著『Shapers 新産業をつくる思考法』

世の中で成功する事業家はすべからく、読書を愛するもの。書籍から、知恵や示唆をどのように受け取り、糧とするか。そのために、有限の時間の中で、どの書籍を手に取り、どのように読むべきか、これは永遠の課題だ。

そこでFastGrowは、その一助となるべく、書籍紹介連載を始める。第1回目の今回扱うのは『Shapers 新産業をつくる思考法』だ。

  • EDIT BY FastGrow Editorial

スローガン代表取締役、伊藤豊による初の著書『Shapers 新産業をつくる思考法』。同社のメイン事業『Goodfind』は就職活動支援/新卒採用支援であるから、この著書も学生/新卒採用担当者が主な読者ターゲット、そう思うかもしれない。しかしそれは全くの見当違いだ。

念のために書いておくが、「うちの代表が書いたから薦める」という話では、もちろんない。「大企業かベンチャーか」というような二項対立が意味をなさなくなっているのと同様に、キャリアを考える上でも「新卒か中途か」という二項対立は意味をなさなくなっている時代である。だから本書も、「学生は○○なキャリアを考えるべき」などといった、大きな主語を使って断言するような表現はほとんどない。

そんな言葉遊びはさておき、次のいずれかに当てはまるのなら、あなたは本書を手に取るべきだ。

  • 私、「新規事業」はできるけど、「新産業」って何?
  • ベンチャー企業から大企業への転職は、まだ難しいと思う
  • 「ビジネスは“時間軸”」と言われてもピンとこない

FastGrowによる「こう読め!」はこちら(1分解説)

キャリアを語る際のマジックワード「新規事業」。この言葉になんとなく魅力を感じるあなたは、要注意。新規事業をいくつ手掛けようと、世界も日本も変わらない。もし、世の中にインパクトを与えたいのなら、「新産業」を考える“高い視座”が必要だ。

ビジネスパーソンとしての“高い視座”を早くモノにしないことには、起業だろうと新規事業だろうと、グロースさせることはできない。本書から、その“高い視座”を持つビジネスパーソンともいえる「Shapers」への道を、種々の具体例に基づいて読み解くべし。キーワードは“時間軸”。

Shapers 新産業をつくる思考法(Kindle版)

著者 伊藤豊
出版 クロスメディア・パブリッシング(インプレス) (2021/1/29)

著者紹介

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【視座の高め方その1】
“時間軸”を捉えれば、「新産業」の創造が分かる

就職活動に励む学生の多くが、まず自己分析を一生懸命やろうとしていること、そして次に業界や企業の分析をしようとしていることに対して、私はこのようにアドバイスしています。それらの前にまず産業の歴史から掘り下げて社会分析をしてみましょう、と。

もっと言うと、戦後の産業史がどうなっていて、今の産業構造がどうやって成り立っているのか。未来はどうなっていきそうなのか。これを時間軸で捉えていく「時間軸思考」が、キャリアを考えるうえで非常に大事だという話です。

就活生を念頭に置いて書かれたこの文章。しかしFastGrowは、すべてのビジネスパーソンがこの考え方を意識すべきだと考える。

考えてみれば、当然のことではないだろうか?あなたが日々邁進している、その事業について考えてみると良い。市場やニーズの将来予測をせずに、事業を進めようとする人はいない。なぜならば、将来にわたって成長させ、持続させていくことを当然の前提としているからだ。

キャリアという面でも同じ事のはず。「将来に渡って成長し、やりがいのある仕事をし続けたい」と考えるべきだ。なのに、その対象になる企業や事業についてはなぜか「将来を考える」よりも「今の状態を考える」という人が多い。なんともおかしな話だ。

このような考えに陥る人は、事業について語る上でも、将来について思考し切れていない可能性がある。

つまり、あなたが「もう少し経験を積んだら、起業や新規事業創造をしてみたい。そのために、成功した企業に身を置き、ノウハウを知ろう」とだけ考えているのでは、事業センスのピントがズレているかもしれない、という話だ。

何も、成功した企業を否定しているわけではない。大企業やメガベンチャーを否定しているわけではない。「あなたのキャリアの時間軸」と、「身を置く企業・携わる事業の時間軸」をリンクさせて考えることができるかどうかが試されるのだ。

そしてもう一つ。キャリアを考える上で、事業を考えるときよりも重要になるものがある。それは「過去」だ。将来に向けてだけではなく、「過去」にも遡ること、これが必要不可欠だ。過去を紐解くには、知識量と努力が必要になると伊藤は指摘する。その手法についてはこの記事では割愛するが、以下の結果が得られるという。

過去の歴史的経緯から時間軸をたどり、産業の成り立ちを理解すると、今度はこれから起きる時代の変化から、産業が今後どのように変わっていくのか、独自に思考をめぐらすことができるようになります。

この視座を得るに至れば、自身のキャリアだけでなく、他人のキャリアに対しても、「新産業」という大きな世界観の中で理解し、突き進むことができるようになる。また、事業創造や起業という場面における意思決定でも、道に迷わずに意思決定をしていけるようになるだろう。

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【視座の高め方その2】
「なんでもする」は悪手、世界に行くなら絞れ

本書には新産業を創出してきた多くの企業が掲載されている。中でも特筆すべき新産業創造企業との呼び声も高いであろうSansanについて、ここでは取り上げたい。

読者の多くがそう考えているように、FastGrow編集部も考えている、日本の課題がある。伊藤も本書の中で、はっきりと言及する。

日本から世界的なスタートアップが生まれないことを嘆く声があります。

あなたも思うところはあるだろう。アイデアが世界的じゃないからだ、プラットフォーム構想が足りないからだ、日本のマーケットに特化させ過ぎているからだ、などなど……。

それを同様に考え続けてきた伊藤は、以下のようにはっきり断じた。

その理由としては、日本市場がそれなりに大きな市場であり、必ずしも世界で勝負する必要がないことや、言語バリアがあることなどが挙げられます。

しかし、それだけでなく、もっと根本的なところで、世界基準のスタートアップと日本のベンチャーには違いがあるように思います。そして、それが世界的なスタートアップが日本から生まれない理由の一つになっているのではないか、と私は考えています。

その違いを生む要因とは、日本のベンチャーが「なんでもする」ことです。

どういうことか?もう少し読み進めてみる。

舞台を世界に移すと、なんでもやる会社が勝つのは難しい現実があります。

実際に、シリコンバレーや欧州から出てきてグローバルに拡大している会社は、基本的に焦点が定まっている会社です。言い換えれば、特定のマーケットに対して特定のプロダクトで勝負している会社が、海外で成功しているケースが多いのです。

Googleは今でこそ手広いが、当初は「検索」に徹底して特化していた。他に挙げるのは、Airbnb、Uber、Spotify、Netflixなど。確かに、1つのプロダクトで勝負している。

伊藤の予測通り、Sansanは世界に大きく羽ばたいていくのだろうか?そして、次に日本から羽ばたいていくのはどの企業なのか?自社の事業に自信を持っている読者はどれだけいるだろうか。

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あの人たちの本書への評価

こちらの記事は2021年03月11日に公開しており、
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FastGrow編集部

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