AIを目的にしない、課題解決の羅針盤──全国各地のDXを担うKDDI Biz Edgeと、AI実装のプロ・ソルブレインが描く、AI時代の「人間力」と共創のリアル

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落合 孝之
  • KDDI Biz Edge株式会社 代表取締役社長 

1973年7月9日生まれ、三重県出身。1996年4月、第二電電株式会社(現KDDI株式会社)に入社。2017年よりビジネスIoT推進本部ビジネスIoT営業部長を務めるなど、法人向けソリューションの最前線でキャリアを積む。社長付上席補佐、ソリューション関西支社長、ビジネスデザイン本部副本部長を歴任し、2025年4月、KDDI まとめてオフィス株式会社(現:KDDI Biz Edge株式会社)の代表取締役社長に就任。

櫻庭 誠司

2008年に仙台で株式会社ソルブレインを創業。以来、テクノロジーを活用した課題解決や仕組みづくりに取り組む。エンタープライズ領域のAI/DX推進、AI-nativeプロダクト開発を牽引し16期連続黒字経営を実現。国立大学法人東北大学 特任教授(客員)。

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大企業とベンチャーの共創事例には、「いかにして協業実現の壁を越えたか」あるいは「戦略的にどのようなシナジーが生まれたか」という理想的な成功事例が語られがちだ。

しかし実際の現場では、成功に向けて大事なことが他にもある。たとえば、両者の深い「相互理解」や「現場で汗をかく覚悟」など──。大きなプロジェクトが動くためには、やはりこうしたことこそが必要になるのではないだろうか。

全国41拠点で約30万社もの中堅・中小企業を支えるKDDI Biz Edge。日本全国のビジネスインフラを担い、「はたらく未来を変えていく。」をスローガンに掲げる従業員約2,000人の企業だ。彼らが自社の全社的なAI変革(AX)、そして顧客向けDXソリューション推進の強力な共創パートナーの一社として選んだのは、AI実装のプロフェッショナルである、仙台のベンチャー企業・ソルブレインだった。

なぜ、東京にも数多くの著名なAIベンダーやコンサルティングファームが並ぶ中で、両社は結びつき共創関係を築くに至ったのか。そこには、優れたAIのスペックやスマートな戦略論を超えた、互いの「現場主義」への共鳴があった。

「パートナー選びにおいて、最も大切にしているのが『人の想い』です。ソルブレイン・櫻庭さんたちと初めて話し、いかに『私たちのこと』を真剣に考えてくれているか、すぐに伝わってきました」。数々のDX/AXの現場をその目で見つめてきた落合氏が、信頼を寄せるソルブレインのスタンスや魅力とは。

ビジネスロジックや技術力は大前提とし、そこに加えて顧客の課題を深く理解しようとする姿勢や、そこに紐づく熱量高い行動が重要視される。これが、あるべきパートナーシップなのかもしれない。本記事では、大企業とベンチャーというよくある枠組み・関係性を超え、プロフェッショナルとして共鳴し合うような両社の共創のリアルを、KDDI Biz Edge社長・落合孝之氏と、ソルブレイン社長・櫻庭誠司氏の対話から紐解いていく。

  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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「30分でつくれますよ」──単なるプロダクトではない提案を求めていた落合氏の心を動かしたもの

落合「今までと変わらない営業の仕方なら、もう来なくていい」──。

ある地方企業の経営者さんから、こう言われたことがありました。テクノロジーが進化する中、「これが新しいツールです」と既製品を置いていくようなプロダクトアウトの営業では、もはやお客様を真に支えることはできないのだと痛感した瞬間でした。

テクノロジーの波に取り残されかねない、そんな懸念が広がる地方企業からのリアルな声。この言葉に強烈な危機感を抱いたのが、日本全国の中堅・中小企業の現場に深く入り込み、伴走支援を担うKDDI Biz Edge(旧社名:KDDI まとめてオフィス)だ。

「KDDI」と聞いて、多くの読者が思い浮かべるのは巨大な通信インフラ事業だろう。その中でこの組織は、日本全国の中堅・中小企業の現場に泥臭く入り込む“特命部隊”として、また違った形でインフラとなっていると表現できよう。

KDDIグループの戦略子会社
「KDDI Biz Edge」3つの存在意義
POINT 1
全国41拠点に広がる顧客網とインフラ
POINT 2
地方⇔都心の情報格差を打ち破る現場密着力
POINT 3
最先端技術の自社実験を活かしたはたらく未来への提案力

取材内容等を基にFastGrowにて作成

2011年の設立以来、KDDIの法人向け通信サービスおよびオフィス環境の構築を軸に、多くの中堅・中小企業の働く環境の整備を支援してきた。

昨今、働き方の多様化やデジタル技術の急速な進展により、顧客企業の課題は「オフィス内」にとどまらず、場所を選ばないハイブリッドワークの環境整備や、DXによる業務変革へと大きく広がっている。

社内にデジタル専門人材を抱えられない中小企業にとって、ビジネスを最前線(≒Edge)で支える同社は、時代に取り残されないための防波堤であり、欠かせないインフラとして機能している。しかし、時代の急速な変化は、同社に強烈な危機感を突きつけていた。

落合私たちは通信をベースに、地方の隅々まで約30万社のお客様のビジネスを支えています。これは非常に誇り高い事業ですが、同時に強い危機感を抱いているのが今です。

自らの限界を痛感し、DXやAI変革へと舵を切ったKDDI Biz Edge。自分たち自身が実体験としてテクノロジーの力で変わらなければ、全国の顧客を支えることなどできないという強い焦りがあったのだという。

だが、変革を共に推進するパートナー探しは困難を極めた。先進的な取り組みを模索する中、名だたるSIerやAIスタートアップがこぞって提案に訪れる。その多くが、落合氏の目には「かつての自分たちと同じ姿」に映っていた。

落合プロダクトアウトの思想が強すぎると感じる売り込みも少なくなく、AI活用を広く進めることは難しいのだと痛感しました。素晴らしい技術をお持ちの企業は多いものの、私たちが真に求めていたのは、技術をアピールする前に「私たちの現場課題」へ泥臭く寄り添ってくれる姿勢でした。

私たちが求めていたのは、パッケージの紹介ではなく、私たちが直面している課題を深く聞き出し、それにどうアプローチできるかを共に考えてくれる存在でした。

相手がどれだけ私たちのことを真剣に考えてくれているかということこそ、知りたいんです。一方通行の提案ばかりでは、良い関係は築きにくい。

顧客のポテンシャルを解放するには、自社の枠を超えた機能的補完関係が不可欠だ。悩みを深くしていた落合氏の前に現れたのが、ソルブレインの櫻庭氏だった。

ソルブレインと言えば、FastGrowが長年注目し、その進化を追い続けてきたベンチャーである。2023年の三井物産との資本業務提携を皮切りに、国内最大級のBPO企業との協業などエンタープライズ企業の支援実績を急拡大。AIネイティブなプロダクトと深い現場実装力で事業変革を推し進めており、まさに勢いのあるベンチャーの一社と言える(三井物産との協業についての記事も併せてぜひお読みいただきたい)。

櫻庭落合社長からさまざまな課題を伺う中で、我々の技術力であれば、複数のアプローチ手法で確実に解決できるという確かな自信がありました。

落合櫻庭さんの姿勢が他と決定的に違ったのは、その圧倒的なスピードと実行力です。私たちが現場で抱えていた複雑な要件を伝えた際、目の前で端末を叩き、「たとえばフィールドセールス向けのインターフェースなら、こんな形で30分くらいでこんなものがつくれますよ」と。

つい、「え、もうできたんですか!」と突っ込んでしまいました(笑)。本当に驚かされましたね。

通常なら持ち帰って1週間はかかるようなプロトタイプを、その場でつくり上げてしまう。単なるツール売りではなく、私たちが大切にしてきた現場の課題に本気で伴走し、その変革プロセスを加速させてくれるパートナーだと確信した瞬間でした。

櫻庭もちろん、その場でお見せするのは完成品ではなく、議論の土台になる試作品です。ただ、動くものを前にすると、「何が課題で、どこに向かうべきか」といった議論が、一気に具体的になります。だから、「まずつくってお見せすること」を大事にしています。

「何を導入するか」ではない。「本気で向き合ってくれるパートナーと組めるかどうか」だ。成功に向け責任を全うしようとする真摯な姿勢が、両者を強く結びつけた。

全国の地域ビジネスを根底から支えるインフラ企業と、圧倒的な実装力を持つベンチャー。互いの「現場主義」という共通の想いが引き寄せ合った共創が、ここから幕を開ける。

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2,000人を動かした、徹底した「現場主義」と覚悟の伝播

KDDI Biz EdgeのAI変革は、まずトップの強烈なリーダーシップによって動き始めた。

落合氏が社長に就任してすぐに行ったのは、全従業員に対する生成AIの全面解放。全国41拠点、2,000人規模の企業において、従前からの高度なセキュリティ要件をクリアしながら、限られた部門だけでなく、全国の営業の末端から事務担当者に至るまで、一斉に最新テクノロジーに触れる環境をインフラとして整えたのだ。

それは、単なるツールの導入ではなく、トップダウンで全社的な意識改革を一気に推進するという、強烈な本気度を示すものであった。

落合弊社の事業戦略において、私たちは最前線でお客様のビジネスを支える存在です。だからこそ、私たちが急ぎ全員で使ってみて、何ができるのか、何が起こるのか、肌感覚でわかるようにしたかったんです。

しかし、どんなツールも、ただ渡すだけでは十分な効果を発揮しません。それをどのような目的で使っていきたいのか、どのような未来に向かうべきなのか、そうした共有がなければ、現場がうまく使いこなすことはできないもので、すぐに無用の長物になってしまう。

それに、このような画期的なものの場合は、私がトップとして旗を振るだけでも意味がない。各事業部のリーダーや現場に当事者意識を醸成していけなければ、プロジェクトとしては全く進みません。

どれほど優れたテクノロジーであっても、トップダウンの号令だけで各現場のオペレーションがすぐに変わるわけではない。日々の業務に追われる現場にAIを定着させるため、どう進めるべきか。悩んだ末、落合氏は、現場で共に未知の課題に取り組む覚悟を持ったパートナーを招くことにした。それがソルブレインだったのだ。

ソルブレインは、既存のどんな枠にも収まらない。AIプロダクトを自社開発しながら、同時に現場の最前線まで入り込んで徹底的に伴走する。その両方を担えることこそ、彼らの価値なのである。

【KDDI Biz Edge】トップの強い意思
経営陣の本気による意思決定や会議体の整備など
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【ソルブレイン】ボトムアップの熱量
現場の課題の本質を把握するために徹底的に伴走
この両輪が噛み合い、定着への推進力が生まれる

取材内容等を基にFastGrowにて作成

櫻庭弊社のAI活用支援において、これまで多くの大手企業様のプロジェクトに深く関与させていただきました。その中でも、KDDI Biz Edgeさんの組織全体に広がる熱気には、驚かされています。経営陣が自ら音頭をとり、各プロジェクトの会議体までしっかりと整えてくださる。

その想いに応えるため、私自身も含めた専任チームで、まずは現場のミーティングに朝から晩までみっちり同席させていただきました。

落合私たちが長年培ってきた現場のリアルな空気感や業務フローの中に、ソルブレインさんが文字通り「同じチームの仲間」として深くのめり込んでくれた。テクノロジーを扱う会社でありながら、私たちと同じ、あるいはそれ以上の「現場主義の覚悟」を持って伴走してくれたことには、本当に信頼を置いています。

また、もう一人、さらに現場に入り込んで担当してくれた若手の亀田さんの覚悟には、驚かされましたね。

そう、現場の空気を劇的に変えたのが、ソルブレインの若手担当者・亀田氏(*)の存在だった。本プロジェクトでは複数のチームが並行して動いており、その一つひとつの成功に向けて、亀田氏は現場の課題や意見に全力で向き合い、解決へと奔走する。その姿勢に、現場の社員たちも刺激を受けていく。

*……亀田氏の過去のインタビューはこちら

櫻庭ソルブレインのスタンスの根っこにあるのは、「期待に応えるだけでは、本当の意味で信頼してもらえない」という考え方です。

まずは最短で、お客様と同じ目線に立ち、頼られる存在になることを目指す。その上で、求められた以上のものを返し続ける。亀田もまさにそれを、淡々と、でも確実に体現していたと思います。

落合なかなかできることじゃないですよね。その熱量は間違いなく私たちの現場メンバーにも伝播しました。

若手社員たちが、同世代の彼女がそこまでやっている姿を見て、「自分たちも、もっとやらなければ!」と奮い立ち、予想もしていなかった相乗効果が生まれたんです。決して業務に余裕があるわけではない中、絶対にこの社内変革をやり遂げようと、現場が自律的に時間をつくる動きがさらに加速して、新たな仮説検証がどんどん進むようになりました。

DXやAI活用を成功に導くのは、導入するツールのスペックではない。現場に立つ者たちの、本気でコトに向かう厳しさと熱量だ。

社長である落合氏が意思やビジョンを示し、ソルブレインは他社事例も知るパートナーとして牽引役を務め、現場メンバーは熱量高く取り組んでいく。このそれぞれが示した覚悟が、KDDI Biz Edgeの組織に新しい風を吹かせた。

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共通言語は「AIを主語にするな」。
IoT時代から変わらない鉄則

ここまでで、非常にスムーズに進んだ協業だという印象を持つ読者が多いはず。とはいえ、DX・AIプロジェクトは途中で頓挫しがちだと聞くこともよくあるだろう。その最大の原因は「AIを使うこと」自体が目的化してしまうことにあるとよく指摘される。

KDDI Biz Edgeとソルブレインの共創には、最初から、そうした「手段の目的化」を防ごうという強い意思が存在していた。それは、両社の根底に「テクノロジーはあくまで課題解決の手段である」という深い共通認識が流れていたからだ。なぜか。落合氏の過去の原体験の影響が、そこにはある。

落合私はかつて、KDDIでIoT事業の立ち上げを長年担当してきました。当時の現場でお客様からよく相談されたのが、「経営陣から『IoTで何か新しいことを考えてほしい』と言われているが、どうしたらいいか」という悩みです。これこそが、目的とツールの完全な履き違えを象徴するような出来事です。

「IoTを使うこと」が目的になっていたら、プロジェクトはうまくいきません。だから、私が弊社の社長に就任した際に意識したのは、「現場から見て“丸投げ”にみえてしまいそうなことは、一切しない」ということです。このプロジェクトでも、「AIで何ができるか」ではなく、「今、現場が困っているその課題をどうするのか」という起点から決してブレないよう、私自身が強くコミットしました。

IoTの立ち上げ期には、当初の想定よりも長い時間、現場に何度も足を運び、泥臭く検証を繰り返すようなこともよくありました。そうして泥臭く現場の伸び代に向き合ってきたからこそ、手段の目的化には今、経営者として、強い危機感を持っているのです。

手段への過信を戒め、顧客のポテンシャル解放に真っ直ぐに向き合う。落合氏の考えに、ソルブレインの思想も合致していた。最新のテクノロジーを扱いながらも、「AIありき」の提案を自ら否定する稀有なスタンスを常に重視してきたのだ。

櫻庭今回のプロジェクトがうまく進んでいる最大の要因は、「AIを目的にしなかったこと」に尽きると思っています。

解決すべき課題を捉えることが何よりも重要です。そこにAIが最適なら活用しますし、他のテクノロジーや別の手段が適しているならそちらを選びます。「AIありき」で進めると、どうしてもプロジェクトの辻褄が合わなくなり、結果的にお客様の成功への責任を果たせなくなってしまうんです。

KDDI Biz Edgeの皆様とは、常に「何が課題であり、どう解決するか」というビジョンを明確に共有し合って進めることができました。双方が同じビジョンを持っているからこそ、何が合理的なアプローチなのか、常に建設的な話し合いが成立したのです。ビジョンがなければ、何を言ってもイエスかノーかの極端な議論になり、プロジェクトはすぐに立ち行かなくなってしまいます。

意思を持ったリーダーが現場を率い、ビジョンを共有できるパートナーが伴走する。その強固な機能的補完関係は、時に「やめる決断」すらもスムーズに引き出した。

落合強い意思を持ったリーダーがプロジェクトにいるかどうかで、結果は全く変わります。

ソルブレインさんは、私たちの課題に対して「本当にこれで解決できるのか」を真摯に問い続け、時にはプロジェクトに自らストップをかけて丁寧に検証しなおすという勇気も持ってくれていました。「さすがに、この方向性は無理だと思います。違うルートに切り替えましょう」と率直に言ってくれるんです。

このように、同じビジョンを共有でき、率直に意見をし合える相手だからこそ、安心して背中を預けられたのです。

テクノロジーの進化に踊らされず、ビジネスの本質を見据える。両社の間に存在する「AIを主語にしない」という鉄則が、決してブレない共創の羅針盤となっていた。

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現場に「定着する」解決策を生む、ソルブレインの組織哲学──ベンチャー側の覚悟と、楽しみながら学ぶ姿勢

そうした羅針盤もあり、KDDI Biz Edgeとソルブレインの共創は、実証実験(PoC)で終わることなどはなかった。両社のプロジェクトは、すでに現場の業務を根底から変える具体的な成果を次々と生み出している。

落合たとえば、総務や人事などのコーポレート部門には、全国2,000人の従業員から「こういう時はどうすれば良いか」といった問い合わせが、電話やチャットで月間数百件も寄せられていました。

担当者が手作業で返信していたこの業務を、テクノロジーで自動処理するシステムを構築しました。一定の成果が出たことで、社内にも「自分たちの業務も変えられるかもしれない」という良い循環が生まれています。

櫻庭この問い合わせ対応システムは、問い合わせ内容やそれに対する回答について、候補を選択肢として提示するようなものにはしていません。AIならではの対応として、自然言語で届く質問に対して解決に至るまで回答し、どうしても対応できない場合のみ人にエスカレーションするという、ビジネスの現場で確実に運用し続けられるであろう設計にこだわりました。

さらに、生成AIとしての問い合わせ回答だけでなく、「この質問をしている人は○○な悩みを抱えているかもしれない」「○○な問い合わせが多い、ビジネスフローを再検討すべきかもしれない」といった、従来の機械学習が得意とする予測分類の技術も組み合わせ、事業運営上の示唆出しにまでつながるようにしています。

AIを中心に、各技術の特性を最大限に生かした、他社にはなかなか真似できないシステムだと自負しています。

さらに成果はこれだけにとどまらない。最新のテクノロジーを前提とした業務プロセスの再構築(BPR*)にも踏み込んでいる。

*BPR(Business Process Re-engineering)……組織の目標達成のために、業務プロセスや組織構造を根本から見直し、抜本的に再設計する「業務改革」のこと

櫻庭もう一つの事例として、業務委託(BPO*)で行っていた手作業を、AIを用いて再構築するプロジェクトも進んでいます。最終的には、委託していた作業の多くを削減できる見込みが立っています。

*BPO(Business Process Outsourcing)……企業の業務プロセスの一部または全体を一括して外部の専門企業に委託するビジネスモデル

落合従来は1件あたり5分ほどかかっていた作業が、テクノロジーの力で瞬時に処理できるようになりました。手作業をシステムに任せることで、うちの社員たちはよりクリエイティブな業務にシフトできる。そうした環境をどんどんつくっていきたいですね。

なぜ、AIベンダーが陥りがちだと指摘される「現場で使えないシステム」にならず、これほど実用的な成果を生み出せるのか。その答えは、ソルブレインの特異な開発体制にあった。一般的なシステム開発において、発注側は要件をまとめ、営業担当を挟んで開発現場へ指示を出すことが多い。しかし、ソルブレインの取締役で開発トップである櫻庭佑哉氏(インタビュー記事はこちら)との会食で、落合氏は思いがけない言葉を聞く。

落合会食の際、「お客様と直接会話をさせてもらえたことが、本当に嬉しかったんです」と言われたことには驚かされました。

私たちとしては、現場の厳しい意見を開発担当の方に直接ぶつけてしまうのは申し訳ないという思いがありました。本来なら私たちが仕様を噛み砕いて伝えるべきだと思っていたからです。それなのに、直接矢面に立つことをむしろ「嬉しい」と受け止め、現場のリアルな声を聞いてくれた。非常にポジティブで、衝撃的なことでした。

それは、ソルブレインという組織の根底に流れる哲学によるものだった。

櫻庭我々にとって、お客様の生の声を聞ける環境は「正しく鍛えていただける最大のチャンス」なんです。当社では、営業・開発・PMといった役割こそありますが、「自分の仕事はここまで」と線を引かず、全員が課題に向き合い、必要なら自分のポジションを越えていく体制を敷いています。営業がプロトタイプをつくったり、エンジニアが現場に向かいお客様と直接対話したり──役割の枠に囚われずに価値を出す。それが当社のやり方です。

お客様とのコミュニケーションから逃げず、本質的な課題を紐解くことができれば、あとは我々の技術力で必ず形にできる。そうした現場主義の姿勢こそが、業務に深く定着する解決策を生み出す源泉なのです。

伝言ゲームを排し、顧客の一人ひとりと正面から向き合う。その誠実さが、現場の運用に耐えうる真のシステム変革の前提として不可欠なのだ。

そして、行動と実績で相手からの信頼を積み重ねていく姿勢と、それを即座に形にする技術力。この2つを両立させるため、ソルブレインはIT業界の常識を覆す大胆な組織体制を敷いている。

櫻庭どの職種であっても、顧客と直接関わるメンバーは皆、自らお客様の要望を聞き出し、自らの手でAIを軸にソリューションを組み上げていく。これが私たちのやり方です。

落合全員がAIを武器にソリューションをつくれる組織をつくり上げているというのは、経営者としてさすがですね。

綺麗な仕様書を待つのではなく、現場で粘り強く対話を続け、解決策を見出していく。その覚悟を持った集団だからこそ、大企業における従来の受発注の壁を越え、現場に深く定着するシステムを生み出し続けることができるのだ。

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「口角を上げよ」──AI時代に人間が勝つための条件

テクノロジーが進化し、あらゆるビジネスの現場でAIの定着が進んでいく。しかし、それは同時に、これからの時代を生き抜く若手ビジネスパーソンに極めて残酷な問いを突きつけることになる。

AIが人間の処理能力をはるかに凌駕し、誰もが最新のツールを使いこなせるようになったとき、我々はプロフェッショナルとして、どこに自らの存在価値を見出すべきなのか。

櫻庭AIがこのまま劇的に発達していくと、これまで人間が下積みとして担ってきたような仕事の機会は、間違いなく失われていきます。当社だけでなく、世の中のすべての企業が当たり前のようにAIを使う時代が、すぐそこまで来ているのです。

そうなった時、処理能力でAIに劣る我々人間に、あえて仕事を依頼する意義は何なのか。その理由が、今後間違いなく強烈に問われるようになります。そこで最後に勝負を決めるのは、“人間力”に他なりません。

お客様の課題に対してどれだけ本気になれるか、どれだけ深く寄り添えるか。

私は日頃から、社員に対して「常に口角を上げ続けろ」と厳しく伝えています。どんなにテクノロジーに詳しくても、口角が下がっているような人間、相手と笑顔で真摯に向き合えない人間には、これからの時代、仕事は絶対にやってきません。

単にツールを使えるだけでは、市場価値は生まれない。相手の懐に飛び込み、本気で伴走する。その圧倒的な熱量と人間味こそが、人を惹きつけ、AIには代替できない強固な信頼関係を築き上げる。落合氏も深く頷き、自社の新入社員たちに伝えたという「プロフェッショナルとしての絶対条件」を語り始めた。

落合櫻庭さんのおっしゃる通り、その本気の熱量こそが、最終的に人の心を動かすんですよね。

私も先日、KDDI Biz Edgeの新入社員たちに向けて全く同じことを伝えました。どれほど高度な知識があっても、まずは「素直で謙虚であること」がベースになければ、どんな仕事もうまくいきません。

ともすると、学生時代に優秀だった人間ほど、「そんなこと、もう知っていますよ」という態度をとってしまうこともあるでしょう。しかし、そうではなく、わかっていることでも一旦相手の言葉をしっかりと聞き入れる。仕事というのは、その素直な姿勢からすべてが始まります。

そして何より、学ぶことに貪欲であり続けること。時代が変わり、お客様の組織が変わり、キーマンが変わっていく中で、常にアンテナを張り続ける。

お客様の現場で、今何が起きているのか。そのリアルな変化に敏感でなければ、どんなに優れた提案も決して相手の心には刺さりません。常に相手を深く知ろうとする、泥臭い姿勢を持った人間だけが、このAI時代を生き抜き、さらに成長していくことができるのです。

【AIが担う領域】これまでの下積み
圧倒的な処理能力と知識の蓄積
情報の整理と提示を完全に代替する
処理能力の代替
【人間が担う領域】これからの真の価値
相手の懐に飛び込む熱量
笑顔で向き合い、本気で伴走する
信頼関係の構築
処理能力はAIに任せ、
人間は「熱量と人間味」で勝負する

取材内容等を基にFastGrowにて作成

最新のAIを駆使し、大きな組織変革を牽引する両社長が至ったのは、ロジカルさというよりもむしろ、どこまでも相手に寄り添う「人間力」だった。テクノロジーの波を乗り越え、自らの市場価値を切り拓くための真の武器は、私たちのその手の中に、最初から握られているはずなのだ。

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再現性はない。でも、互いの本気が「1を4にする」

大企業やベンチャーといった企業規模の枠組みを超え、本音でぶつかり合える対等なパートナーシップ。これが、全国約30万社の中堅・中小企業を支えるインフラとしての次の姿を生み出し始めた。

そして今後、さらなる強烈なシナジーも具体的に見据えている。

櫻庭KDDI Biz Edgeさんは当然ながら、高度なセキュリティ要件やガバナンスを大前提として重要視しています。私たちもベンチャーだからと言い訳するわけにはもちろんいきませんから、「ISO/IEC 27001」や「プライバシーマーク」といった基準をクリアするのはもちろんのこと、社内ガバナンスのための仕組みの整備などにも先回りして数年前から意識的に取り組んできました。自画自賛のようですが、やはりこうした蓄積をしっかり進めてきたおかげで、今の関係性があると感じます。

その上で、現場のリアルな課題に真摯に向き合っていくことができれば、我々のような仙台発のAIベンチャーという一見ニッチな存在も、最前線で活躍するチャンスを得ることができるのだと伝えたいですね。

KDDI Biz Edgeさんは、売上や組織の規模の違いに関わらず、真の意味で対等なパートナーとして接していただいていると強く感じています。非常にありがたく、誇れることだと思っています。

落合当然のことです。私たちが上から接するようなことは、あってはなりません。

そもそも私たちだけでは技術の進化スピードに追いつけないかもしれない。そして、ソルブレインさんだけでは全国の顧客接点を開拓することは難しいかもしれない。

お互いに無いものを完全に補完し合っているからこそ、この座組は強いのです。双方の強みを掛け合わせることで、生み出される価値が1+1=2ではなく、3にも4にもなる。綺麗な絵を描くコンサルティングのような世界ではありません。私たちの取り組みは、具体的に現場の課題を解決してこそ、初めて価値が生まれるものなのです。

【KDDI Biz Edge】
全国30万社の顧客基盤 × 圧倒的な信用力
地域に根を張るビジネスインフラとしての強固な土台
×
【ソルブレイン】
最先端のAI技術 × 泥臭い現場実装力
圧倒的なスピードで課題を紐解き、形にする技術集団
互いの強みを完全に補完し合うことで
互いの本気がもたらす結実
1 + 1 = 3以上 の価値
現場の課題を直接解決し、日本の「働く未来」を変える

取材内容等を基にFastGrowにて作成

属性や規模の違いは関係ない。互いのプロフェッショナルとしての機能をリスペクトし、同じビジョンを共有して現場でひたすら汗をかく。この熱量を共有し合う共創に、安易なノウハウや再現性など存在しないだろう。しかし、だからこそ彼らの生み出すシナジーは、他の誰にも真似できない強固なビジネスエコシステムとなっていく未来も期待される。

落合日本経済はかつて、大企業同士の組み合わせで大きなビジネスを動かしていました。しかし、今の時代は違います。地方の中小企業が抱える複雑な課題を解決するには、私たちのような全国に拠点を持ち泥臭く現場に寄り添うインフラ企業の信用力と、スタートアップの圧倒的なスピードや技術力を掛け合わせる形が、最適な組み合わせになるはずです。

私たち自身がテクノロジーの力で本質的に変わることで、日本全国の「はたらく未来を変えていく」。この泥臭くも本気のパートナーシップが、社会を前進させる確かな原動力になっていくはずです。

櫻庭そうですね。テクノロジーそのものは、ビッグテックが凄まじいスピードで進化させていきます。だからこそ今後のAI時代において、本当の意味でお客様の現場に向き合い、その技術を使って価値を提供し続けられる企業だけが生き残り、存在感を強めていくはずだと思います。

我々が生み出せるシナジーで、企業規模を問わず、日本中のあらゆる現場の課題を解決していく。そんな挑戦を大きく広げていけそうで、楽しみです。

ノウハウやロジックを探すだけの傍観者であってはならない。技術を使いこなして、顧客社内も含めた現場にのめり込み、相手の懐へ笑顔で飛び込んでいく。最新のテクノロジーを駆使しながらも、どこまでも人間臭い挑戦を積み重ねていくことこそが、社会・経済に変革をもたらすカギになるのだろう。

こちらの記事は2026年07月21日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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藤田 慎一郎

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