連載エースと呼ばれた20代の正体──若手のノウハウ大全

「業務負荷の増」は、成長にあらず──新卒でいきなりCSチームの立ち上げを果たしたHERP原亜依南の“エースたる所以”

原 亜依南

1996年生まれ。お茶の水女子大学 文教育学部卒。 会社組織や働く人に興味を持ち、大学一年次から複数のベンチャー企業で採用支援や人事業務に従事。HERPには1年間のインターンを経て19年に新卒入社。HERP Hire/Nurtureのカスタマーサクセスを務める。趣味で写真を撮ります(喫茶店・ポートレートなど)。

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会社のなかでひときわ活躍している社員がいる。群を抜いて優秀な社員がいる。そんな“エース”と呼ばれる人間は、いかにしてエースになったのだろうか──。

20代エースの正体に迫る連載企画「突撃エース」の内容を元に、本記事ではそのエースたる所以を考察した。

第8回は、株式会社HERPのカスタマーサクセスを務める原亜依南氏。インターン生として大学3年生からHERPにジョインし、新卒としては1年目からCSチームの立ち上げに奮闘した同氏の活躍の秘密に迫る。

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スーパーインターン生、運命を変えたHERP CEO庄田氏との出会い。

「新卒人材にCSチームの立ち上げを任せるなんて......」スタートアップで働く魅力として、その裁量権の大きさが語られることが多い。一方で時に“ストレッチアサイン”と言う言葉が一人歩きし、メンバーのケイパビリティを大きく逸脱した業務負荷を与えてしまうこともあり、その線引きは甚だ難しいとも言える。

さて、今回原氏に与えられた「ゼロからのチーム組成」というミッション。果たしてこれは“ストレッチアサイン”なのか、“無謀な挑戦”だったのか。早速見ていこう。

もともと大学1年生のときから複数のべンチャー企業にてインターンを行い、特に採用活動などをメイン業務としていた同氏はまさに“スーパーインターン生”と形容できよう。つまり、厳密に言えば“全くの未経験”ではない。一方、HERPがHR領域で採用管理システム(ATS)のSaaSプロダクトを提供している企業であり、そもそも原氏との相性がよかったとはいえ、いきなりCSチームの立ち上げを任されたわけではない。

10名を超える規模の組織を作り上げ、現在4年目でありながらHERPの若手エースを拝命する原氏ではあるが、その活躍劇の始まりは大学3年生にまで遡る。

「知り合いがHRの事業会社をちょうど立ち上げたところだから、よかったら話を聞いてみないか」。就職活動も一段落し、大学生活残り1年間を何か熱中できることに費やしたいと感じていた中、HERPの創業者で代表取締役CEO庄田氏の知人から偶然声をかけられた同氏は、何か運命のようなものも感じていたのだろうか、すぐさま快諾。庄田氏と会話したわずか1時間でその魅力を体感し、すぐにインターン生として働きたいと申し出た。

のちに同氏のキャリアを大きく変えることなった、HERP採用コンサルタントの始まりである。

「新卒でHERPにいくとは、思っていませんでした。」約10カ月のインターン期間を経た大学4年生の12月。すでに、原氏は他の会社の内定を得ていた。内定先の会社に「行く気満々だった」と過去を振り返る同氏であるが、なぜHERPへのジョインを決意したのだろうか。

きっかけは同社取締役COO徳永 遼氏のある一言であった。「プロダクトを正式リリースするので、後3カ月だけ、カスタマーサクセスチームとして残ってくれないか」。この誘いがもともとプロダクトに関わりたいという思いを抱いていた同氏の心に火をつける。「正直、新卒で別会社に行くのでHERPを辞めようと思っていた」ところから一転、まずはあと3カ月だけ、残る決断をしたのだ。

まだ採用管理ツール『HERP ATS(現HERP Hire)』が正式に版を世にリリースした頃。カスタマーサクセスとして業務に携わっているうちに、ユーザーがプロダクトを喜んで使ってくれている場面に何度も遭遇した経験は、サービスが伸びていくワクワク感や楽しさを同氏に知らしめるには十分であった。

いつしか、「HERPでこのまま働きたい」という願いはまさに以心伝心かのよう、「このまま正式に社員として働きませんか」とオファーがかかるのも時間の問題であった。まだまだ社員数が少ない当時のHERPでは、当然、その流れでCSチームの立ち上げを原氏が担当するほかなかった。

「新卒でCSチーム立ち上げ」。一見すると無謀とも思えるアサインメントには納得の理由があったのだ。

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右も左もわからないなら、ただひたすら前を向け。
行動力さえあれば形にできる

「新卒で自分がCSチームの立ち上げを任されたらどうするか」。読者の方々も一度想像していただきたい。おそらく、ほとんどの方が「無謀だ」と感じるのではないだろうか。いくらインターン生としての豊富な経験があったとはいえ、当時の原氏は当然のごとく“わからないところすらわからない”という状況。「不安で押しつぶされそうだった」と笑みを浮かべながら振り返る。

原氏がCSとしてまず整備・担当していた業務は3つだ。オンボーディングでのユーザー支援、ユーザーからの問い合わせ対応、リリースされた機能をユーザーに連携すること、である。

もちろんCS立ち上げなどまるでやったことのない同氏は、関連の書籍やイベントに積極的に参加、時にはエンジニアを誘って勉強会に参加するなど猛烈なスピードでキャッチアップを進めていった。新規のお客さんとのアポイントや機能についてのユーザーヒアリング、ヘルプページの作成や問い合わせ対応など、その毎日が多忙を極めたことは想像に難くない。

初めはダメダメだった私ですが、振り返るとユーザーさんに恵まれていたからこそ、ここまで来れたんじゃないかと思います。当時のユーザーコミュニティには、創業期のスタートアップも多く、1人で人事を担当していたり、人事以外の業務を兼務しているような担当者さんとの接点も多かったんです。

そうであるからこそ、今振り返ると不慣れなCSであったとしても「まだサービスが立ち上がったばかりなのに、CSの担当の方がついてくださるんですね」「HERPのCSの支援は素晴らしいので、弊社でも取り入れようと思います」といったポジティブフィードバックを多くもらうことできたんです。これからの日本を支えていくようなスタートアップ企業の役に立てることに、強烈なやりがいを感じました。

自らが作り上げたサービス・組織に対してポジティブな評価をもらえることは、強いモチベーションとなり、同氏の成長をさらに加速させる。それでも「わからないことも多く、中長期的視点もなかった」と謙虚に当時を振り返る姿勢には、さすが若いながら組織を1から組成した経験からかもはやプロフェッショナルとしての貫禄が付き纏う。

経営陣も、そんな同氏の行動力や自ら改善していける視座の高さを最初から見込んでいたのだろうか。入社1年目でユーザーから多くの“喜びの声”を集める組織作りに成功した同氏のポテンシャルはやはり伊達ではない、そう感じざるを得ないエピソードであった。

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業務負荷が高いことに自己効力感を覚えるな

CS組織立ち上げの出来は上々だったと言っていいのではないだろうか。同氏が成し遂げたことは確かに大きなインパクトを与えた。

しかし、少しばかりの油断もあったのだろう。「実力不足を感じました」。1年目の後半あたりから事業・組織の拡大とともに経験豊富なベテラン社員が続々と入社してくると、原氏は自分の知識や経験不足に焦るようになっていったという。

中途でジョインされてきたメンバーの優秀さ、経験豊富さに圧倒され、自分の無力感を感じることが増えてきました。年齢や年次の割に貴重な経験をさせてもらい、少し自信がついていた頃だったからということもあったかもしれません。

このまま私は終わってしまうのか、先の見えない焦りと恐怖に抗う毎日でしたが、あることをきっかけに活路を見出すことができました。それは一番経験が少ないからこそ「素直さ」が活きると考えられるようになったことです。

「オンボーディングがCSのキモだから、もっと手厚く取り組んだほうがいい」というFBをいただいたら、とにかくすぐさまプログラム改善に着手する。他にも事例のインタビューをして記事にしたり、ユーザーコミュニティを作ってオフラインイベントを開催したりと、聞いて「いいな」と思ったことは、持ち前の行動力を武器にどんどん取り入れていきました。

スタートアップの創業メンバーが、後から入社するメンバーの優秀さに圧倒されバリューを発揮できなくなる事例は少なくない。一方原氏は自身の実力をしっかり認知した上で、一切のプライドを捨て「経験豊富なメンバーの知恵を借りる」ことに注力したのである。

一方、行動量で勝負を挑むことが多い若手は、気づけばどんどんマルチタスクになりがちである。それは原氏も同様、日に日にスケジュールが圧迫され「ひっちゃかめっちゃか」な毎日であった。

気づけば2年目、次第にCSとしての仕組みが整い、目の前のボールを追っているだけでもそれなりに役割を果たせるようになった原氏は「やっとCSとしてちゃんと仕事ができている」と達成感を感じていた。しかしここで、仕事に対する価値観を大きく変え、原氏を更に成長させることとなる、マネージャーからのあるフィードバックに出会うのであった。

「業務負荷が高いことに自己効力感を感じるな」。スケジュールで埋め尽くされたカレンダーを眺め、「仕事をした感」に浸ってしまう経験は誰しもが一度は通る道ではないだろうか。原氏も同様「誰かからパスをもらったことには綺麗に対応するけど、いつも人からミッションを与えられることに期待している側面がある」というマネージャーの厳しくも、同氏の伸び代を的確に捉えたこのフィードバックは、まさに雷に打たれたかのような衝撃だったという。

“ボールを拾いにいく”ではあくまで誰かが進めている課題解決を後押ししているに過ぎません。“自分自身が何を解くべきなのか考える”姿勢が大事なんです。

取材中特に強調して発せられたこの言葉は、原氏自身が仕事の向き合い方を大きく変えた経験から生まれたものだ。与えられたタスクだけではなく、常に自ら「今の課題は何なのか」を思考することこそが大事だということを我々に伝えてくれる。

CSはユーザーのためを常に考えなければならない職務。与えられたボールをさばいているだけでは、真にユーザーのためにはならない。原氏は上司の言葉を真摯に受け止め、目的意識を以前よりさらに心掛けるようになったのだ。

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対話したいなら、まず「自分の主張」を持て

ユーザーの課題と常に向き合う。CSという職種の使命を実感した原氏は、1人で課題に向き合い頭を悩ます時間が増えた。しかし、その課題が何なのか自分一人で悶々と考えたところで、わからないことも当然ある。中長期的な視座を持って定めたアクションも「やっぱり的外れだった」なんてことはざらにある世界なのだから。原氏がこの真理に辿り着いたのもまさにこの頃。だからこそ、1人で思考の沼に陥らないよう「対話」を最も重要視するようになった。

まずは自分で考えるためだけの時間を意識的に作っています。私は“ポンチ絵”を描いてみることが多いですね。そこで描いた課題や中長期的なCS像を、経験豊富な周囲のメンバーに実際にぶつけてみる。そうすると、課題の輪郭が段々と明瞭になっていきます。

対話することの効用はもちろんそれだけではない。スピーディーに組織や事業が成長し続けるスタートアップの場合は特に、周囲が考えていることと、自分が考えていることがズレてきてしまいがちだ。そのため、自分で考えていることはモヤモヤしている段階でも周囲に発信したほうがいい。

月単位やクオーター単位ごとに、Slackで社内のメンバー全員が見える形で、自身の目標や課題を書き出しています。そこに対してオープンにフィードバックをもらうことで、私の考えていることを開示するのみならず、チーム内の認識統一もできるんです。

HERPでは立場によらずフラットに議論できる文化があるので、私もCOOなどの経営陣を積極的に飲み会などに誘い、まだアイデアがモヤモヤしている段階であっても、まずは自分が考えていることに対してFBをもらうことを意識しています。

こうすることで、FBする側も“たたき台”がある状態でディスカッションができるので、より“思考”することに頭を使うことができるんです。

持ち前の行動力と素直さで立ち上げから牽引してきたCSチームは取材当時、正社員が8名、アルバイトや業務委託含め12名の体制まで成長した。常に組織・メンバーのことを考え、高いコミットメントを示してきた原氏だからこそ、周囲のチームメンバーも信用してついてきてくれることだろう。

「私生活では最近始めた写真撮影にハマっています(笑)」とイベント中も場を和ましてくれる同氏。コロナ禍では、それまで見たことのなかったゲーム実況の動画に出会い、『ゼルダの伝説』のプレイ動画を熱心に見るようにもなったことも明かしてくれた。

おそらく、この好奇心の強さ、躊躇なく新しい世界に飛び込むことができる潔さも、原氏のキャリアを切り開く原動力の表れなのだろう。20代でエースになるには、恐れを捨て果敢にチャレンジしなければならないことはもはや言うまでもないだろう。あなたも原氏のように新卒未経験という立場から、ゼロイチで新規部署を立ち上げる勇気と行動力があるか。ぜひ一度自分に問うてみてほしい。

こちらの記事は2022年05月26日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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