連載エースと呼ばれた20代の正体──若手のノウハウ大全

憑依するほど、ターゲットの気持ちを考えたことがあるか──入社1年目で個人年間売上10億円、イングリウッド小崎 凌の“エースたる所以”

登壇者
小崎 凌

豪州の大学卒業後、日本に帰国し起業。越境EC、メディアサイト等の新規事業の立ち上げからEXITまで経験。2018年、株式会社イングリウッドにWEB広告事業立ち上げ/マーケッターとして参画。2021年、経営企画室に異動。自社やクライアントの新規事業開発に従事。マーケティング戦略を主軸として、化粧品、雑貨、食品、店舗等の事業立ち上げ・グロースに携わる。

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会社のなかでひときわ活躍している社員がいる。群を抜いて優秀な社員がいる。そんな“エース”と呼ばれる人間は、いかにしてエースになったのだろうか──。

20代エースの正体に迫る連載企画「突撃エース」の内容を元に、本記事ではそのエースたる所以を考察した。

第三回は、株式会社イングリウッドにて入社1年目で個人年間売上10億円を達成した経営企画室 マネージャー 小崎 凌氏。一見豪快かつ大胆なその経歴を紐解くと、大成する事業家に欠かせない要素が垣間見えた気がした。

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やらない理由を探す方が難しい。30万円とトランク一つ握りしめて

かの堀江貴文氏が「多動力こそが最も重要な能力だ」と記した書籍『多動力』が話題を集めたことは記憶に新しい。文字通り、いくつもの異なることを同時にこなす力を指すこの言葉。少し前であれば「次々と興味が移り変わる人」のようにネガティブに捉えられていたのではなかろうか。しかし堀江氏が著書の中で「『多動力』が仕事に活きる時代へ変わった」と強調するように、また彼自身の生き様に賛同する数多くのフォロワーの存在が証明するように、「現代の日本人に必須のスキルである」との見方にも一定納得感があるものだ。

小崎氏もまた、自身の信念を決して曲げず、エネルギッシュに時代を駆け抜ける者たちの1人。イングリウッドに入社して1年目で個人年間売上10億円を達成、4年目となった今は経営企画室にて、「全社売上約150億円を超える新たな事業を3年以内に作り上げる」と社内でも宣言している。彼をここまでドライブさせるものとは一体何か、そのルーツはオーストラリアで過ごした大学時代にまで遡る。

「興味のあることは全てやろう」、当時の彼に怖いものなどない。興味の赴くまま、実にエネルギッシュに様々な活動に従事していた。大学に通いながらも、通訳、大学の講師などを兼任、起業家としてイングリウッドに入社するまで数多くの事業を手がけた同氏が、初めてサービスを立ち上げたのもこの時である。

小崎オーストラリアの大学で売られている教科書が高すぎるところに目をつけました。 一年で10万〜12万円くらい。強い疑問を感じて、リサーチしてみると同じ英語圏であるイギリスやアメリカでは同じ教科書が1/5程度の値段で売られていたんです。

そこで「教科書版の価格ドットコム」を作ろうと考えました。サイトの検索窓に、大学の学科のコードを入れると、その学科で必要な教科書と、世界中のデータから一番安いECサイトの情報がトップ5で出るようなページを開発。WEBサイトなんて作ったことなく、何万という教科書データを手作業で入力して3カ月の作成期間を経てリリースさせました。

綿密に収益予想を繰り返した結果、年間2,000万円の粗利予想。「これは絶対いける」と息巻いていましたが、サイトをローンチして1週間後、なんと海外のハッカーにハッキングされてしまい閉鎖を余儀なくされました。全て独学だったので、セキュリティやバックアップまで当時考えが至らなかったんです。本当に今でも悔しく、苦い思い出です(笑)。

その活力は当時の悔しさから生まれたものなのだろうか。その後も1カ月間イタリアにバックパッカーとして飛び込んだり、サンドイッチ店を開くため食品衛生資格を取得したりと、「興味があることは、やらない理由が見つからない限り、とにかく全部やってみた」という。

大学卒業後は半年間オーストラリアにて企業間通訳と大学講師を兼任していた同氏だが、ある日転機が訪れる。「日本でビジネスがしたい」という強い思いが沸き上がったのである。

30万円とトランク一つを抱えて日本に帰国。自ら会社を立ち上げは事業売却をし、その資金で新たな事業を立ち上げる日々を送ること4年。このまま経営者として生きていく道もあった中、一体どのようなきっかけでイングリウッドと出会ったのだろうか。

小崎自分が経営していた会社も順調で、生活には困っていなかったのですが、もっと大きなことを成し遂げたい気持ちが日に日に高まっていきました。そうであれば、ヒト・モノ・カネが必要、そしてビジネスの壁打ちをしてくれるメンターも欲しかった。

また、よく考えると「自分が社長である」ことには微塵のこだわりもなかったことにも気づきました。企業の新規事業開発担当という選択肢が視野に入った矢先、幸運にもイングリウッド代表取締役社長兼CEO 黒川隆介に巡り合い、「うちでやってみたらどう?」とお誘いいただいたため入社を即決しました。

これまで、まさに“野生的”にビジネスを立ち上げてきた小崎氏。EC領域には一定の知見があると自負していた同氏だが、入社後にすぐに活躍できるほど甘くはなかったという。「全て独学でやってきたので、初めはボロボロ、全く通用しませんでした(笑)」と謙遜するものの、入社一年目にして個人年間売上10億円を達成したのは事実。一体どんな軌跡を辿ったのだろうか。

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仕事で感動を生むには、ハナから300%達成を目指せ!
入社一年目で個人年間売上10億円を達成できた二つの秘訣

ややもすると、入社一年目からの大躍進の秘訣は「起業経験によるもの」と見られてしまうかもしれない。もちろん起業経験から彼が学んだものは大きいだろう。ただし、スキル的な側面では全く通用しなかったことから、その要因は「仕事に向き合う姿勢」にあったと言える。

一見到達不可能とも思える目標を達成する、そんな秘訣を惜しげもなく披露してくれた。順番に一つ目から見ていこう。

小崎 一つ目に、まずはスピードが大事。そんなこと、何回も聞いたことある方がほとんどだと思います。ただし、“はやい”にも「速い=Fast」と「早い=Early」の2種類があると考えています。

仕事でスピードが大事という文脈では、多くの場合前者の「速い=Fast」が語られる。しかし前者は、効率化、処理能力の速さ、つまり技術的なことなので、学ぶことができますし、そもそも先輩などからその技術を盗めばいい。なので「速さ」だけでは優秀な人たちの中では差が付きにくいんです。

かく言う僕は、実は全く「速く」ない。タイピングも並、頭の回転や計算が速いわけでないですし、文字を読むのも並。漫画喫茶では元を取れないタイプです(笑)。だから僕は「早い=Early」にはかなり徹底的にこだわっています。

例えば、依頼がきたら0秒で動く、決めたことは今日から実行する、とにかく期限を前倒しする、などです。皆さんもご自身の「期限にまだ余裕のあるタスク」を想像してみてほしいんですが、「今日やらなければならない理由」はないかもしれませんが、逆に大抵の場合「今日やらない理由もない」のではないでしょうか。

「速い=Fast」で勝負すると差が付きにくいですが、「早さ」でもまだまだ工夫できることは多いんです。

ひと呼吸置く間もなく、話題は二つ目の秘訣に移る。

小崎二つ目は「感動を生む成果を残し続けること」です。もう少し具体化すると上司や会社が求める、2倍以上の成果を出し続けることです。100%の成果を出す人材は、普通。100〜140%の成果を出すような優秀な人材は会社にたくさんいます。

その中で僕は、期待の200%を超えたあたりから「人は感動を覚える」と考えています。 例えば、パン屋でもそう。期待通りの味だと、普通のパンという印象しか与えられない。ただし、想像の2倍美味しかったら感動し、強烈に印象に残りますよね。

また、200%以上の成果を一度ではなく、継続的に出し続けることも重要です。周りに比較する人がいなくなるまで突出できれば、勝負アリです。

そのためには目標設定の仕方に工夫が必要。人は200%を目指すと大抵の場合150%程度に落ち着いてしまうため、初めから300%を目標として設定する。そうすることで目標が下振れても200%を達成し続けることができます。

小崎氏が明かす二つの仕事術は、ライバルといかに差別化するかについて彼自身が考え抜いた産物なのだろう。同期が優秀で差がつかないと悩んでいる方は、ぜひ一度参考にしてみてはどうだろうか。

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マーケターたるもの、異性であっても憑依せよ

これまで突出した成果を残すためには、スピードが大事と説く小崎氏ではあるが、仕事のクオリティに関しても妥協は許さない。特に同氏の「思考の深さ」に対する徹底ぶりには目を見張るものがある。

小崎仕事柄マーケティングを得意としていますが、もっとも大切にしていることは、ターゲットユーザーを明確に描写することです。それは、ユーザーに限りなく寄り添うなんてものではなく、その人に憑依して、その人のレンズで、感覚的にわかるようになるまで思考を深く落とす、ということです。

例えば、その人が何歳で、どういう家族構成で、どういう恰好をしていて、どういう生活をしていて、どういうことに興味があるのか、悩みがあるのか、生きがいを感じるのか、朝ごはんは何を食べるのか、寝る前は何をしているのか、友人とはどういう会話をしているのか、スマホでは何をすることが多いのか……ここまでで最低基準です。

さらに、どういう商品が欲しいかというぼんやりしたものだけでなく、どういうワードにビクッと反応するかを単語レベルで思考する。「刺さるワードを聞いたときに、どう思うかを想像する」というよりも「ユーザーになりきった自分が実際にビクッとする感覚があるか」まで考えるんです。

一般的なマーケティングは市場調査からターゲットユーザーを決める。そこで頻出する「ペルソナ」は主に年齢、性別、仮名、職業、普段の趣味、考えていること、一日のスケジュールなどを、販売側の目線から「こうなのでは?」と決めていることが多いだろう。一方、小崎氏は“感情をリアルに感じとるレベル”まで自身とターゲットを同化させるのだ。

では、一体どのようにターゲットを“憑依”させることができるのだろうか。

小崎その人になりきって生活をしたり、その人が使いそうなものを実際に買ったりします。プロジェクトによってはメインターゲットが女性である商材を扱うことももちろんあるので、主に女性が使用する体調管理のアプリを使用してみたり、女性向けの雑誌を読んだり、流行りのお店に1人で行ったりすることもあります。

寝る時以外、全ての時間をターゲットになりきって生活することが大事。過去には女性としての感覚に入り込みすぎて、街中で歩く男性がいつもよりかっこよく見えたこともあります(笑)。一般的なマーケターがユーザーをイメージする解像度を「テレビ」だと仮定すると、僕は「VR」で見ているような感覚を、常に目指しています。

この思考の深さにこだわることは、マーケターやコンサルタントだけでなく、あらゆる職種でも応用可能だ。深い思考を繰り返し実践し続けることで、それは確かなデータとして、そして財産として脳に蓄積していくだろう。引き出しが増えることにより、どんな事象に対してもシームレスにデータを引き出すことが可能となり、いつでも臨戦態勢で深い思考ができるのだ。

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自分がどうなりたいかは絶対にブラすな。
18歳で40歳までのキャリアを描く

大胆な行動力と繊細な思考を高度なレベルで両立させる、ここまで読むとそんな小崎氏をエースたらしめる理由が十分に理解していただけたことだろう。また、これらの仕事術は“エースになるため”だけに当てはまるものではない。時には果敢にリスクテイクすることを恐れず、一方で細部まで思考を張り巡らせる。これは大成する事業家、ひいては経営者にも重要な素養と言えるのではなかろうか。

小崎氏は現在29歳。今後の同氏の更なる飛躍に期待せずにはいられない。それと同時に取材中に発せられた「18歳から40歳までのキャリアを決めていました」という発言をさらに掘り下げていくと、実に彼らしい人生感を伺うことができた。それは「自分がどうなりたいかブレずに生きる」ことの重要性である。

小崎新年になると今年の抱負や目標を決める方も多いかと思います。一方で、その多くが「できたらいいな」という理想状態にとどまっており、具体的なアクションプランに落とせていないことがほとんどなのではないでしょうか。

僕は18歳の頃に40歳までのキャリアプランを具体的に定めました。40歳時点で成し遂げたいことを定め、どうすれば達成できるか逆算的にマイルストーンを定める。それに則り、“今年は”何を達成しなければならないのか、具体的なアクションプランを決めて実行してきています。

もちろん年齢を重ね、視座が高くなることで都度目標の上方修正はありましたが、「自分がどうなりたいか」の部分がブレたことはありません。

“人生のキャリアプラン”を18歳という若さで定めることとなったきっかけは、意外にも「大失恋」の経験からであったという。

小崎失恋を機に自分の人生を長期的な時間軸で考えるように変化しました。

40歳時点で「どういう生活を送り、どういう人間であるべきか」を考えた時に、家族に一番時間を使えて、心にも経済的にも余裕のあるかっこいい大人像が浮かび上がってきたんです。そこから逆算すると必要な資産や経験などが自ずと浮かび上がってくる。

現在は当時の彼女のために、ではありませんが、そのステイトメントは確固たる信念として、今でもキャリアの道標となっています。

3年後の目標は?と最後に取材陣が尋ねてみると、改めて「イングウッドの現在の全社売上を超える事業をゼロから生み出すこと」と即答する小崎氏。また10年以内にはそれを再現性高く複数作り上げるという。一見スケールが大きすぎるため、そんなこと夢物語だと笑う人もいるかもしれない。しかし彼を知る社内のメンバーたちは、その未来を決して疑わない。それは取材を通して、彼の持つ壮大なポテンシャルに触れた我々も同様だ。小崎氏が描く未来の行く末を、FastGrowでも引き続き取り上げていきたい。

こちらの記事は2022年05月26日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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