連載エースと呼ばれた20代の正体──若手のノウハウ大全

救世主になる、実は簡単なことなんです──モバイルファクトリー大崎有季也の“エースたる所以”

登壇者
大崎 有季也

2017年大学卒業後、モバイルファクトリーに入社。モバイルコンテンツ事業、ブロックチェーン事業、位置情報ゲーム事業の配属を経て2022年1月より駅メモ!シリーズの管掌役員として執行役員に就任。

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会社のなかでひときわ活躍している社員がいる。群を抜いて優秀な社員がいる。そんな“エース”と呼ばれる人間は、いかにしてエースになったのだろうか──。

20代エースの正体に迫る連載企画「突撃エース」の内容を元に、本記事ではそのエースたる所以を考察した。

第二回は、株式会社モバイルファクトリーで新卒入社からわずか4年で執行役員となった大崎有季也氏。彼の仕事への向き合い方に触れると、いかに「当たり前のことを、当たり前にやること」が若手において差別化に繋がるのかが見えてきた。

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凡事徹底。果たして難しいことなのか

小さいことを重ねることが、とんでもない所に行くただひとつの道

ご存知の方も多いだろう、これはかの有名なイチローが残した言葉だ。「凡事徹底」「継続は力なり」「塵も積もれば山となる」。このような格言が現代までに多く遺されてることからも、我々人類にとって“継続”が、どうにも難しいことは原始時代から変わっていないのだろう。

今日一日だけならできることを、明日も、一週間後も、一年後も、同じように続ける。たったこれだけのことが一体なぜできないのか……。日々頭を抱える読者も多いのではないだろうか。かくいう筆者も、ご多分に漏れず“三日坊主”と言われるクチだ。「学びを毎日メモに残そう」「毎日少しでも読書しよう」「朝型生活にしよう」などなど、頓挫した計画は数えきれない。ここまでくるとどうやら、これこそ神が我々人類に与えし試練なのでは、と錯覚してしまうほどである。

そんな中これらをものともせず、わずか4年で東証一部(現プライム)上場企業であるモバイルファクトリーの執行役員にまで上り詰めた人物がいる。それが大崎有季也氏だ。

創業メンバーではなく、新卒社員としてスタートラインに立ち、これほどの速さで、急成長上場企業の経営に参画している20代は日本でも数えるほどしかいない。すぐに想起されるのは、レバレジーズの藤本直也氏、元ディー・エヌ・エーの赤川隼一氏くらいだろうか。

彼らのような、もはや伝説級のエピソードを期待する読者は直ちにブラウザバックをお勧めする。ただし、これよりお送りするのは、決して奇をてらった出世術の類などではない。誰もが一度は聞いたことのあるような、一見すると当たり前なことの積み重ねによりその座を掴んだ、ある1人の若手ビジネスパーソンのおはなし。自分には特別な才能はないと嘆きながらも、何者かになる事を諦められない、そんな天才になれなかった人に向けたバイブルだ。(努力を継続できることも大いなる才能の一つであるとのご指摘、今日だけはご愛嬌願いたい)さあ、さっそく1ページ目からみていこう。

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信頼残高なんていくらあってもいい。
とにかく貯蓄せよ

「その徹底ぶりは、もはや狂気じみている」。取材陣が真っ先に抱いた感想だ。新卒社員が入社してまずしなければならないこと、それは信頼を獲得することだろう。もはやいうまでもない。

文学部で哲学を専攻、学生時代はもっぱら部活動に勤しんだ大崎氏は、入社当初ビジネスに関して全くの初心者。まだ萎縮している部分もあったのだろう、新卒研修にて行われた現場にがっつり入り込む1週間のワークで「なんの成果も得られず」同期たちに完敗を喫したという。喜ぶ彼らの姿を横目にオフィスがある五反田からの帰路、1人涙を呑む、いや堪えきれず大泣きしてしまったと正直に吐露してくれた。

「トラウマですね」。”今となっては”なんてナレーションがお似合いなほど朗らかに当時の胸の内をあらわにする大崎氏ではあるが、何を隠そうここが彼の原点だ。そこからの彼は強かった。次の日よりさっそく自らの行動指針を定め、明確に戦い方を見定めたのである。そう、誰よりも社内で信頼を獲得することだ。

大崎信頼を得るために二つの事を徹底的に意識しました。「知らないことも拾いに行くこと」と「信頼関係を得るべき人をマークしておくこと」です。

Slackのメンション設定をカスタマイズし「汎用的に困っていそうな人が使いそうな言葉」や「信頼関係を得たい人がメンションされている言葉」は、全て自分に通知が届くようにしたのです。

一例ですが、あれ、ぐぬぬ、なんで、分からん、謎、誰か、助、無理、虚無、バグ不具合、重い、信頼値築きたい人の名前(英語漢字ひらがな)、その他上長宛てになりそうな語彙...などです。

例えば「休日出勤の申請方法分からん」という呟きを見つけると社内wikiで調べすぐさま回答。「開発環境が重くなった」であれば、過去チャットを徹底的リサーチし「この人と同じ症状かもしれません」とリンクを添えすぐに解決策にアクセスできるように、といった具合です。

なるほど、ここまですれば「困ってるときに必ず手を差し伸べてくれる人」という第一想起は間違いなく得られる。また、今後一緒に仕事をする可能性がある人へは特にアテンションを高めてチャットに目を光らせていた点には彼の嗅覚の鋭さも伺える。

このように「誰でもできるけど、誰もやりたがらないこと」を徹底的に継続した結果、関わりのない他部署の人とも関係値を築き上げることに成功。なかなか成果だけでは大きな差がつきにくい入社1〜2年目の時点で、際立った存在感を放っていた。

勘違いしないでほしい、これは決して打算的に仕事をせよ、と説いているわけではない。天才でないなら努力するしかない。もしあなたが若手エースと呼ばれる日が来ることを望むのであればだ。1年やり続けることが億劫なことを、4年間やり続ける。才能はいらない。ただ努力すればいい。本来であれば誰でもできるはずのことを。

ここまでで十分に信頼残高の貯蓄はできた。さて、次はビジネスパーソンとして避けては通れない“評価”について考えて行こう。

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息をするように期待値調整を行え

「上長から評価されるときは、大体の場合『期待値を超えたとき』なのに、そもそも『期待値を把握していない』のはおかしいですよね」。開口一番、“評価”というものの本質に触れる発言には、思わず取材陣も背筋を伸ばしてしまう。

言われてみると至って当然。だが、若いうちは自分がこんなことを言ってもいいのかなと遠慮してしまうのか、意外とこれが難しい。たった今画面の前でドキッとした方もいるのではないだろうか。

上長が自分に求める期待値を知る。これは、ある種で自分の”現在評価”を残酷にも映し出す。求められる期待値が高すぎる場合、それを認知することは少なからず恐怖もあるだろう。そんな時の突破口を授けてくれた。

大崎期待値調整に課題感を持つ人に意識してみるといいんじゃないかと思うことが2つあります。「指示や依頼が来たタイミングで実現したいものをなるべく具体的にすり合わせること」と「常に本来達成したい事に立ち戻ること」です。

例えばリサーチを明日までにお願いしてと言われた場合、どう考えても圧倒的に精緻なリサーチを行うには時間が足りない場合は、まずそれを何に使うのか?を尋ねることで「それならこの粒度でも大丈夫ですかね?」とすり合わせていく。

言われたことは、言われた通り、とにかくやる。もちろんそれも若手の戦略としては正しい。ただそれが唯一解ではないはずだ。上司にとにかく気に入られようと愚直に目の前の仕事に取り組むだけでなく、少しばかりのエッセンスを加える。大崎氏の言動には常にその意図が強く垣間見える。

とはいえ、ややもすれば「生意気な後輩」という烙印を押されるリスクも孕んでいるのでは...?ご安心を、自分という人格をしっかり認知して良好な関係を築く術を、「多少ストーカーみたいなところもあるのですが。笑」と前置きした上で抜け目なく披露してくれた。

大崎上司と良好な関係を築くために、媚びへつらう必要はありません。ただし、上司を理解しようと勤めることは決して怠ってはいけない。

例えば普段の雑談から、その人がやっているゲームだったり、趣味や関心事のキャッチアップをしてみたり、施策レビューで何を話しているか全部目を通したり、過去書いているドキュメントをすべて読んでみたりする。

そうすることで、だんだんとその人の考え方や好みを把握できるようになります。相手が気にしている事柄をしっかり把握できるようになると、相手が納得してくれる提案のツボを押さえることができるようになります。

自身を理解して欲しいと嘆く前に、まずは相手を理解する。そういった最大限のリスペクトがあれば、自ずと施策提案や、ひいては進言も通りやすくなります。

これには直接の上司である、常務執行役員 塩川氏も「常に期待を超えてワクワクさせてくれる」と太鼓判を押す。

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組織の「緩やかな死」を回避せよ!

インタビュー中、終始徹底して「自分だからこそ共有できる特別なノウハウみたいなものは正直思い当たらないですが...」と謙遜に謙遜を重ねる同氏であるはあるが、その眼差しは揺るぎない自信に満ち溢れている。決して若手にありがちな、根拠のない...という類のものではない。それは、事実として、彼が組織にとって”救世主で”あり続けたからこその答えだ。

大崎大凡の事柄は「ゴール設定⇒構図の設定⇒手段の洗い出し⇒検討・実施⇒振り返り、の繰り返し」で対処できると考えています。

自分の昇進の早さはその時その時に合わせ、自分の所属している組織にとって一番必要な貢献を考えて行動したことが評価につながった、という話だけでこれも特に特別な話ではないですね。

ただこれまでの「組織にとって一番必要な貢献」は共通して、上記のプロセスが健全にできていない、もしくは継続的に不可能になっていそうな箇所を組織の中で見つけて対応する、のようなもの。

このフローができてないことには継続的に組織・プロジェクトはよくなっていかない。つまり「緩やかな死を迎える」を迎えるんです。それを避けることは、組織にとってまさに救世主。これを自ら探しに行って報いる、貢献する箇所を定めるとよい、というのがノウハウかもしれません。

新卒入社のあの日、文字通り唇を噛みしめ、忸怩たる思いと共に定めたミッションステートメント。それはいまだに彼の行動指針となっている。臥薪嘗胆とは、今の時代にはそぐわないだろうか。いや、やや大袈裟であろうとも、薪の上に眠り、苦い肝をなめる、そんな「苦労を耐え忍ぶこと」を知る人間は強い。

もしまだ、それほど自分の闘志を突き動かす出来事に出会えていないのであれば、どんどんチャレンジしてみて欲しい。失敗なんてしたもの勝ちだ。多くの人は死地に赴くことすらできていない。荒波に揉まれた魚は旨いのだから、あなたも常に今の居場所を確かめよう。今日が大海を知るきっかけになればと思い結語とする。

こちらの記事は2022年04月28日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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