連載エースと呼ばれた20代の正体──若手のノウハウ大全

「いくら商談に同席しても売れない僕」が僕を変えた──スタジアム竪石新氏の“エースたる所以”

登壇者
竪石 新

プロフィール:2017年東京大学工学部卒業後株式会社リクルートライフスタイルに入社。広告営業を4年ほど担当。2年目には事業内TOP営業の通期表彰を受賞。2021年株式会社スタジアムに入社し、インタビューメーカー事業部でエンタープライズセールス・カスタマーサクセスに従事しながらAIプロジェクトのリーダーを担当。

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会社のなかでひときわ活躍している社員がいる。群を抜いて優秀な社員がいる。そんな“エース”と呼ばれる人間は、いかにしてエースになったのだろうか──。

20代エースの正体に迫る連載企画「突撃エース」の内容を元に、本記事ではそのエースたる所以を考察した。

第16回は、スタジアムのインタビューメーカー事業部でエンタープライズセールス・カスタマーサクセス兼AIプロジェクトリーダーを務める竪石 新氏。 

新卒でリクルートライフスタイルに入社し、2年目で全国2,000人のセールスの中から11人が選出される「トップイレブン」を受賞。現在スタジアムでプロジェクトの立案・実行に携わり事業成長に大きく貢献している彼だが、振り返ると決して順風満帆に人生を歩んできたわけではない。

元々コミュニケーションが得意ではなかった竪石氏は、新卒1年目で大きな試練を経験した。そんな彼はどのように自身の弱みを克服し、活躍の場を広げていったのだろう。今回はその過程から彼が独自に編み出した仕事術に迫る。

  • TEXT BY YUKO YAMADA
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入社1年目で試練に直面。弱みを消して強みを伸ばす

東京大学では再生医療工学の研究に打ち込んでいた竪石氏。彼がセールスという正反対のフィールドに足を踏み入れたきっかけは、大学の先輩が起業した会社にインターン生として参画したことだ。そもそも医療系の研究は社会に価値を与えるまでに時間がかかる傾向が強い。「スピード感のある領域でフィードバックをもらいながら成長したい」と考えて2年間インターンに打ち込んだものの、初めの1年はたったの1円も売上を作ることができなかったという。

竪石これから先、自分で事業を立ち上げたいと考えた時に、売上に直結するセールス力は必要。そのためにセールスをもっと自分の強みに変えたいと思いました。

そう決意した竪石氏は、新卒でリクルートライフスタイルに入社した。ホットペッパービューティーの広告営業に配属され、リード獲得のために1日100回の架電を試みる。しかし物事はそう上手くは運ばない。誰よりも量をこなしても大半はアポにつながらない。結果入社してからの半年間は1件も受注を達成することができなかったのだ。

竪石もともと人と話すことが苦手で、商談では開始15分でお客様の気持ちが一気に冷めていくのを感じることもありました。今思えば、お客様の気持ちを考えずに自分本位の話をしていたのでしょう。

ただ当時は、自分のダメなポイントがわからず、その状態が精神的に一番きつかったですね。

だが、竪石氏はそこで諦めることなく、スイッチを切り替えてまずは自分の課題を知ろうと200人以上の社内メンバーに話を聞くことから始めた。同時に1カ月で40~50人のメンバーの商談に同席して、自分のやり方と何が違うのかを比べていく。

わからないところは、アクションベースで質問して納得ができるまで情報を集めた。そこからどのように多くのアドバイスを取り入れていったのだろう。

竪石たくさんの人からアドバイスをもらうと、当然実行すべきことが大量に出てきます。それを一度整理するためにアドバイスをすべて並べて、次の4つのカテゴリーに分類したんです。

  1. 致命的にできていないもの
  2. できた方がいいもの
  3. 伸ばしたらインパクトが大きいもの
  4. 伸ばしてもインパクトがないもの

その中で自分の致命的な弱点に焦点を充てて、弱みをつぶすことから実践していき、一方で僕が得意なデータ分析やマーケティング戦略の強みは水準を上げてインパクトを出していきました。

「弱みを消して、強みを伸ばす」、シンプルなやり方ですが、優先順位をつけて実行できたことで徐々に成果も現れ始めました。

その結果、目に見えて変化が起きた。

竪石入社半年目から担当していたお客様は、当初、僕の対応に不満を感じて別の担当者に変わってほしいと思っていたそうです。しかし2年目の終わりには、5〜6倍の広告予算が投下されて、店舗数も2店舗から8店舗まで一気に拡大していきました。

またエリア選定やスタッフの採用など、広告以外も僕を信頼して全部担当させていただくようになって。最終的に「竪石さんに相談してよかった」という嬉しい言葉をいただきました。

その後、持ち前の分析力や統率力を遺憾なく発揮しながら、広告営業にとどまらず、店舗開発や事業の立ち上げ、部署の立ち上げなどの支援まで任されるようになっていった竪石氏。

リクルートで4年間経験を積む中、自分のキャリアをセールスだけに尖らせるのではなく、仕組み作りやプロジェクトの立ち上げなど新たなフィールドで価値を提供していきたいという思いが芽生えるようになった。そして2021年、スタジアムとの出会いを機に転職を決めたのだ。

なぜ入社半年間は鳴かず飛ばずだった竪石氏が、1年足らずのうちにリクルートで表彰されるほど変化できたのか。次章から、成果を生み出すその仕事術を実際に紐解いていこう。

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自分が味わった苦労を、絶対周りのメンバーにはさせない。行き着いた答えは「仕組み化による永続的な価値提供」

竪石氏がはじめに挙げた仕事術は、「誰にもできないことを、誰にでもできるようにすること」だ。その背景には次の想いがあった。

竪石自分の持っているスキルを、誰でもできるアクションとして展開したいと常に意識しています。おそらくセールスで売れていない時のフラストレーションがバネになっているのでしょう。

リクルート時代、事業部の中で誰よりも他の人の商談に同席して、アドバイスをたくさん聞いて、それでも全く売れない自分がいて、精神的に厳しい毎日でした(笑)。

それでも諦めずに分析を続けていくと、学ぶべきことを新たにたくさん言語化できたんです。つまり、成果を出している人たちが、どうしても経験やセンスにもとづいて行っているだけになっており、属人化しているスキルやナレッジはまだまだ多いということに気づいたんです。

そういった経験から、“1人しかできない”という状態をなくしたいと考えるようになりました。それはお客様に対しても同じで、永続的に価値提供できる仕組みを作りたいと常に考えています。

実際にリクルート時代、竪石氏は自身で開発したクライアント分析ツールや、約200人のメンバーにアドバイスを受けて蓄積したノウハウを周りに共有していき、組織全体での売上を伸ばすことに成功。その影響力の高さが評価されて、入社2年目に全国2,000人の中から通期表彰を受賞したのだ。

竪石仕組みを作りたいという気持ちはスタジアムにおいても全く変わりません。現在、自社で初となるAIプロジェクトに取り組んでおり、僕は第一線に立って施策を実行していく立場です。

とはいえ、自分1人のパワープレイでお客様に納得してもらおうとは思っていません。自分の成功体験、失敗体験を言語化してメンバーと共有し、他の人がやっても「うまくいく」という型作りをしたい。また人に教える時は、再び似たような事象が起きてもその人が自分で結論が出せるよう、伝える情報の粒度も意識しています。

入社1年目に味わった苦労を周りにはさせたくない──。そのブレない想いが今の竪石氏の価値観を作り上げていることは間違いない。

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すべての枠を取っ払って、自分が提供できる価値の最大値を考える

リクルート時代、入社1年目で約200人のメンバーからアドバイスを聞き自分で道を切り拓いていった竪石氏だが、同時期に彼にとってもう1つ大きな気づきを得る出来事があった。

竪石入社1年目の終わりに、あるお客様から次のような相談を受けたんです。「とにかく売上が上がるサロンにしたい。そのためなら広告費はいくらでも構わない。店舗メニューも竪石君に決めてもらいたい」と。

それまではお客様の要望に合わせて、言ってしまえば“いい感じ”にプロジェクトを仕上げていく術ばかりを磨いていたことに気づいたんです。当然、「何をやってもいい」と言われた途端、頭が真っ白になり働かなくなってしまいまして......。

それと同時に、お客様が想像する以上の価値提供をするためには、どんな状況でも既存の枠にとらわれず物事を思考する必要性を痛感しました。

今あるもの、今できることだけに固執していては、どうしても価値提供の天井は決まってしまう。。また限界があると思うことで、本来解決すべき課題から、目を逸らしてしまうことになると竪石氏は言う。

たとえ今はできなくても、将来新しいサービスや機能ができるかもしれない。自分から可能性を狭めずに、どれだけ枠を取っ払って物後を考えることができるか。“事業開発の目線”でお客様への価値提供にこだわることが大事なのだ。

実際、竪石氏はどのように価値を提供していったのだろう。

竪石お客様の理解を深めるために徹底的にヒアリングを行い、まずは同じ目線に立つことから始めました。そして自分が店舗を出すのと同じ温度感で納得した提案がしたいと思い、当時エリア内で展開している競合約300店舗のメニューをすべてピックアップし、強みや弱み、金額をまとめていったんです。

すると必ず穴が見つかる。それを見逃さず「私たちはこの商品をこの価格でいきましょう」「これはまだどこの店舗も取り入れていない施策です」など具体的な提案をしていきました。そのプロジェクトがきっかけで一気に意識が変わり、自分の中で視座が上がるのを感じましたね。

常に自分が提供できる価値の最大値はどこか。チャレンジをする上では当然失敗もある。だが、成功したところをその分、伸ばしていけばいいだけだと竪石氏は強調する。そのマインドこそ、彼が挫折をしてもなお自信を失わず成長をし続けてきた秘訣なのだろう。

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考え、調べ続けよ。
自分が一番“知識を持っている状態”になるまで

「同じ領域で事業をやっている人の中で、自分が一番知識を持っている状態になりたいんです」そう語る竪石氏。

それを裏付けるように、彼は事業開発で競合店舗を調べる時は、今あるエリアに限らず、全国まで広げて1,000件単位のレベルで調査をしていく。“自分にしかもっていない知識”というのはそれだけ与えられるインパクトも大きくなるからだ。そのため自分が納得するまで考え、調べ続けることを諦めない。

竪石人にものを聞く時は、あらゆる視点を取り入れるために、連絡が取れる全員に話を聞こうと決めています。同じくネット情報はとにかく調べるだけ調べて、すべて自分の目で見て判断していますね。

また1つの領域を学ぶ際は、一気に本を10〜15冊を購入して読破してから事業に取り組んでいます。同じ事業で10冊以上本を読んでいる人はそう多くはないですよね?だからそれだけで差別化になる。そしてお客様にとって「こんな考え方があるんだ」って気づいてもらえることが新たな価値につながると思っているんです。

圧倒的なインプット量を誇る竪石氏。自身の事業と並行してこれらを行うのは並大抵の努力ではできないはずだ。だが、ここまで徹底的にこだわることができれば、確実にアウトプットの質は変わる。成果を出し続けている人は、見えないところでとんでもない努力をしているのだ。

そんな竪石氏にこれからのキャリアの目標について尋ねると、「プロダクト作りと組織の仕組み作り、これらを両立できる人になりたい」と熱く語ってくれた。試練すら持ち前の粘り強さと冷静な分析力で突破してきた彼だ。これからも圧倒的な知見を備えて周りに好影響を与えながら、自らのキャリアを切り拓いていくことは間違いないだろう。

こちらの記事は2022年07月22日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

山田 優子

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