「流行る動画は劇的に変化しない」
UUUM鎌田が考える、クリエイターとコンテンツの未来

Sponsored
インタビュイー
鎌田 和樹

1983年生まれ。東京都出身。大学中退後、2003年に19歳で大手通信会社入社。総務、店舗開発・運営、アライアンスなど多岐にわたる分野で実績をあげ、2011年よりイー・モバイル一次代理店の代表取締役を務める。 その後、孫泰蔵氏の薫陶を受け、起業を決意。ほどなくして、HIKAKINとの大きな出会いを得て、2013 年、29歳でUUUM株式会社の前身となる、ONSALE株式会社を設立。

関連タグ

5000以上のYouTubeチャンネルをネットワークしながら次々に新しいコンテンツを世に放ち、それらが若年層を中心に絶大な支持を得ているUUUM。クリエイターのマネジメント会社、インフルエンサー・マーケティングの会社というのは、UUUMの一側面でしかない。

創業者で代表取締役の鎌田和樹氏は、コンテンツを取り巻く社会環境や質的な変化をどのように捉えているのだろうか。

  • TEXT BY YASUHIRO HATABE
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
SECTION
/

動画コンテンツに限定しない。世の中に新しい「楽しみ」を提供し続ける

世の中的にはYouTuberの会社というイメージを持っている人も多いと思いますが、UUUMの現在の事業状況について教えてください。

鎌田 今は売り上げの85%以上を、所属するクリエイターの動画視聴に連動して得られる広告収益と、企業とのタイアップ広告による売り上げが占めています。残りは、自社メディアや、グッズ販売、イベント、自社で開発したゲームなどによる収益です。

いま仰ったように、UUUMは「YouTuberの会社」と言われることもありますし、実際に動画クリエイターをサポート・マネジメントする事業がベースにはなっています。

ただ僕自身は、マネジメント事務所をやりたくてUUUMを創業したわけではなくて。一つのビジネスモデルとして、自分たちの持っているリソースを考えたらいちばん成功確率が高かったし、創業当時にHIKAKINと出会えたという縁もあり、マネジメントから始めたに過ぎません。

UUUMは、「セカイにコドモゴコロを」という経営理念を掲げています。「コドモゴコロ」ある発想で、世の中になかった新しい楽しみを創り出し、「コドモゴコロ」を持った人びとに「新しい体験」を提供するコンテンツカンパニーであるというふうに、自分たちのことを定義しています。

だから、動画に限らないし、プラットフォームを限定する訳でもなく、面白く、価値あるものを世の中に生み出していきたいという考えが、UUUMのビジネスの一番のベースにあります。

昨年東証マザーズに上場されました。2013年の創業からわずか4年でここまで成長した背景を教えてください。

鎌田 一つは、動画にフォーカスしたこと、その方向性が良かったと思います。2015年頃に「動画元年」と言われて、世の中のオウンドメディアがこぞって動画を組み込み始めました。結局ほとんどのところは上手くいきませんでしたが、その頃に僕たちも、活発化した動画という領域の中で、かなりグロースハックできたんじゃないかと思っています。

もう一つは、YouTube上で活躍する個人のクリエイターが出てきて、2014年頃からアメリカでは「ハリウッドスターよりもYouTubeスターになりたい」という若い人たちが生まれ始めていたという背景があります。

さらに、動画を視聴する環境面でも、スマートフォンが急速に普及した時期と重なった。それらの大きな要素のタイミングがすべて合ったというところが大きいと思っています。

SECTION
/

UGCからPUGCへ。高まり続ける個人が発信するコンテンツの完成度

ここ数年の動画を中心としたコンテンツの変遷をどう捉えていますか。

鎌田 インターネットは「タコツボ化」するというふうにずっと前から言われ続けています。実際「タコツボ化」は今も続いていて、動画もよりニッチなものが観られるようになってきているんですね。

例えば、3年前だったら流行らなかった「釣り」とか「バスケットボール」などをやっているクリエイターの動画が、今は観られるようになってきていて、それで食べていけるようにもなっている人たちが増えてきています。

昔、東京オリンピックの頃はテレビしかなかった。でも今は、スマホもPCもタブレットもあって(ニンテンドー)Switchもあって、コンテンツを提供する側からすると、余暇時間の奪い合いになっています。

そういう選択肢がある中、YouTubeは世界的なプラットフォームで、公式に発表されている数字では世界で15億人以上が視聴しているといいます。その中で、僕たちのコンテンツも、視聴者数は増えていますし、視聴時間もどんどん長くなってきています。

なぜ、これほどまでにユーザーに受け入れられているのでしょう。

鎌田 インターネット上も含めて、世の中に情報があふれています。一人の人間の趣味とか興味・関心に沿う情報に出合うためには、自分からその情報を取りに行く、つまり「検索」が一番の行動原理になっている。

テレビだと一方的に情報を与え続けられるだけで、中には興味がないものもあるし、視聴者はもう、テレビをつけっぱなしで別のことをする「ながら見」になっていたり、BGMになっていたりします。

UUUMを創業した2013年頃、クリエイターの動画の主流はいろいろな商品を紹介するレビュー動画だったのが、その翌年くらいからゲーム実況が流行はじめて、その後はおもちゃで遊ぶ動画が始まって、どんどんコンテンツが移り変わっている。最近だと、クリエイター自身の日常を面白おかしく伝える人が増えています。

その中で一つ言えることは、ここ数年で視聴者のリテラシーがどんどん上がってきて、目が肥えているということ。だから、少し前にウケたものと同じことをしても、「前にもやったじゃん」「再生回数欲しいだけでしょ」みたいな感じで叩かれてしまう。

逆にいうと、「応用」が必要になってきている。よりクオリティの高いコンテンツが求められているわけです。内容的により高い完成度のものが必要になってきているのが今なんですね。

よく、「UGC(User Generated Contents)」とか「PGC(Professionally Generated Contents)」というふうにいわれるのですが、いわゆるユーザーがつくった“素人感”のある「UGC」と、プロがつくった「PGC」には、クオリティの面で明確な違いがありました。

しかし今は個人がつくるコンテンツのクオリティが上がってきていて、「Professional」と「User」を足した「PUGC」なんていう言葉も出てきているほどです。

現にアメリカでは、僕らのような会社が本格的な映画をつくったり、動画クリエイターがつくったドラマをNetflixやhuluなどで配信するケースも出てきていて、旧来からある製作会社と比べてまったく遜色ない状況です。その意味で、動画クリエイターが関わる企画の規模も大きくなってきていますし、それに伴って動くお金も大きくなっていると思います。

今後、コンテンツの潮流はどうなっていくとお考えですか。

鎌田よく「Contents is King」という表現をされることがありますが、「どのプラットフォームを見たいか」ではなく「何のコンテンツを見たいか」に変わってきている流れは確かにあります。

例えばhuluを見る人は「huluが見たい」から見るんじゃなくて、そこにある「コンテンツが見たい」からhuluに登録しているんですよね。その「見たいコンテンツ」がNetflixにあったらNetflixを見るでしょう。

ですので、これまでのことを振り返れば、われわれは結果論としてコンテンツに重きを置いていますし、「見たいコンテンツ」が求められている今の流れがあることが、僕らがコンテンツカンパニーであり続けたいと思う理由です。

今後、動画の流行みたいなものが、あるタイミングで劇的に変わるということはないんだと思っています。その時々で、「今、面白いもの」「今、見られるもの」は何かを考えて、つくり続けた結果、「1年前と比べてこう変わったね」と言えることはあるだろうけど、それはあくまで結果論であって、意識的に変えていくということではないと思います。

あるとしたら、今だと動画クリエイターが制作する教育系のコンテンツは少ないので、そのような手薄な領域をやりたいという新しいプレイヤーは増えてくるんじゃないかなと思います。

SECTION
/

新規事業や新サービスに注力。海外展開も進む

「今、面白いもの」を追求するというお話がありましたが、鎌田さんの中で「面白いかどうか」の判断基準はどんなものですか。

鎌田一つは「新しいかどうか」。誰もまだやってないことをやるのが面白いですよね。僕はゲームチェンジャーという言葉で表現しますが、0から1を生み出すことが好きです。もう一つは、ある領域で「No.1になれるかどうか」ですね。

新しいことを仕掛ける場合には、自分たちがノウハウを持っているか、その業界に対する知見があるかどうか、生かせる強みがあるかどうかが、一定の判断基準になると思います。

企業理念にも通じていると思うのですが、そもそも動画をやるために会社を作ったのではなくて、何か、世界に「コドモゴコロ」を与えたいというところからスタートしているんですよね。たまたま今は動画とかYouTubeが主になっているんですけど、それも数ある「面白い」の一つであって、動画だけをやっていこうということではないのです。

その中で、UUUMはこれから何に注力していくことになるのでしょうか。

鎌田 2017年11月末時点の数字ですが、UUUMがサポートするYouTubeチャンネル数が5,020チャンネルに達し、3カ月合計動画再生回数が約76億回という規模にまでなりました。ずっと右肩上がりで推移しています。

視聴者層は大まかにいうと、若年層・男性です。もちろん多様なクリエイターがいて、いろんな内容のチャンネルがありますので、一概には言えませんが。例えば、「釣り」だったら30代、40代の人もいますし、「コスメ」だったら女性の割合がぐっと上がります。ただ全体として、一番は10代〜20代前半くらいの若い男性であることは間違いないです。

その中で、今後、「自社メディア」に注力していきたいと考えています。すでに自社メディアはいくつかあって、講談社さんと共同で開設した「ボンボンTV」や、UUUMオリジナルの「えぬーんちゃんねる」などがあります。また3月には新しくKDDIさんと共同で「まいにちランキング」の提供を開始しました。

自社メディアに力を入れる意図は、創業からの数年で僕たちがクリエイターをサポートすることによって得たノウハウがあって、それをより幅広く発揮できる場をつくりたいということが一つあります。また、クリエイターの個々の活動をサポートするのとは別に、会社としてやっていくメディア、チャンネルができれば、それだけクリエイターが出演する場が増えるので、そうした新しいクリエイターサポートの形を実現したいとも思っています。

視聴者の年齢層を広げたい、シフトしたいということはお考えですか。

鎌田 特に考えていません。数年前は、若い人はお金を落とさないからターゲットにしても意味がないんじゃないかという人もいましたが、一方で今、世の中のサービスの多くにおいて、若年層へのアプローチ方法が分からない、リーチできないという状況にあります。そこには、少子高齢化で若年層向けのメディアが減ってきているということが関係しているはずです。

そんな中、僕らが若者にアプローチできている事実は、とてもポジティブなことだと感じているし、強みだとも感じています。面白いものを発信していく中で結果的に視聴者層が広がることはあっても、意識的に変えていくということはないでしょう。

これからUUUMがさらに成長していく上で、どんなメンバーが必要ですか。

鎌田 現在、従業員数250名を超える規模になっていますが、創業から5年程度。まだまだ立ち上げフェーズだし、新規事業やサービスも増やしていく段階にあります。変に安定していなくて、ずっと成長し続けている。こういう環境で仕事をしていくのって、楽なことではないと思うんですよね。いろんなことを常に考え続けなくちゃいけませんから。

研修制度も整備しつつありますが、まだまだ体系立った形にまではなっていませんし、先輩が1から10まで教えてくれるということもない。リアルOJTで、時には先輩と一緒に考えたり、むしろ「ここは自分の考えで進めてみて」と言われたりすることもあるかもしれません。だから、“指示待ち”ではなく自分で考えて行動できることが、UUUMで仕事をする上で前提条件になると思います。

現在、UUUMでは5000以上のチャンネルをネットワークしていて、その上位層の約240組のクリエイターとは専属契約を交わしています。そのクリエイターの方々と一緒に、番組のプロデューサーのように企画を考えること、企業とのタイアップならクライアントに満足してもらうこと、クリエイターが楽しんで活動できること、会社として求める数字を達成すること。そういういくつものベクトルを求めなければならない環境の中で、精一杯楽しめる人がUUUMには向いていると思います。

スキルの面で、「こういうスキルを持つ人が欲しい」ということはありますか。

鎌田台湾や香港、上海でYouTuberなどのインフルエンサーマーケティング事業などを手掛ける会社と業務提携をしたので、海外とのやりとりもかなり多くなってきています。北京語や英語が話せる人は、海外勤務の機会があるかもしれないため、留学経験者や、帰国子女のような、ネイティブレベルの人も、仲間に加わってくれると嬉しいなと思います。

ただ正直言って、若い人ってほとんどの人は「これができる」というものは持っていないと思うんですよね。だから若手メンバーに経験やスキルを求めてはいません。それよりは、新規事業をこれからも創っていかないといけないので、「何かやりたいけれど、その何かが思いつかない」という人や、将来的に起業したいけれどそれまでに武者修行したい、“前のめり”な人が、がむしゃらにチャレンジできる環境に、UUUMがなれればいいな、と思っています。

こちらの記事は2018年05月30日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

記事を共有する
記事をいいねする

執筆

畑邊 康浩

写真

藤田 慎一郎

おすすめの関連記事

会員登録/ログインすると
以下の機能を利用することが可能です。

新規会員登録/ログイン