連載10兆円市場のコンテンツ産業を変革する起業家に学ぶ事業拡大法

武器は「変化を生き抜くマインドセット」。インフルエンサー事業で急拡大のBitStarに学ぶ“現場目線”の事業拡大法

登壇者
山下 雄太
  • 株式会社BitStar 取締役CTO 

慶應NY高を卒業後、慶應義塾大学理工学部電子工学科に進学し、ラクスル株式会社の創業に携わる。大学卒業後、グリー株式会社に入社し、SNSや国内外のプラットフォームの立ち上げに従事。また並行して国内外の新卒採用も関わり、同社のグローバルを担う人材採用にも貢献。2013年からラクスルにCTOとしてジョイン。
2016年より株式会社BitStar (旧Bizcast )にCTOとしてジョイン。

矢澤 孝明
  • 株式会社BitStar 広告ユニット 広告事業責任者 

2007年に大学卒業。広告代理店フルスピードにて、アフィリエイト領域での運用経験を積む。その後、2015年には株式会社ダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチにてザイ!FXのマネタイズを担当。2016年創業期のBitStarに参画。インフルエンサー市場の黎明期から営業として活躍し、2017年には営業責任者に抜擢。現在はインフルエンサーマーケティングNo1企業を目指すべく、広告事業の戦略策定に従事。

細根 克也
  • 株式会社BitStar プロダクションユニット リーダー 

都立高専電子情報工学科に首席で入学。在学中はバンド活動に明け暮れ、その経験がきっかけとなり歌手を目指す。その後、友人の紹介で美容科IKKOさんと出会い、そこから演者と芸能マネージャー両極のキャリアを選択。マネージャー時代は海外ロケで世界中を飛び回り、演者としてはモデル活動やCM出演をするなど多様な経験を積む。よりエンタメを盛り上げたいという思いとweb動画市場への期待が重なり、立ち上げ期のBitStarに参画。現在はインフルエンサーマネージャのリーダーを務め、YouTuber事務所E-DGEのマネジメント領域を取りまとめる。

渡邉 拓
  • 株式会社BitStar 代表取締役 

2011年に慶應義塾大学大学院 理工学研究科卒。在学中に現取締役と共に事業立ち上げを行う。大学卒業後には新卒でスタートアップに入社し新規事業の立ち上げに従事。独立後、BitStarを創業。現在はコンテンツ産業を担うメガベンチャーを作るべくインフルエンサーマーケティングのトータルソリューションを展開。現在100名規模の会社に成長。直近では大手事業会社との戦略的協業および13億円の資金調達の実施。

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AirbnbやUberのように新たなイノベーションを創出し、既存業界を脅かしたスタートアップは、いかにして事業を成功へ導いているのだろうか。成功の秘訣を探るべく、トークイベント「10兆円市場のコンテンツ産業を変革する起業家に学ぶ事業拡大法」をFastGrowでは開催した。

登壇したのは、2014年の創業から1,500%もの急成長を達成した株式会社BitStarの面々だ。前編では、代表取締役である渡邉拓氏の講演の様子をお届けした。後編となる本記事では、同社の取締役CTO山下雄太氏、広告ユニット事業責任者の矢澤孝明氏、プロダクションユニットリーダーを務める細根克也氏を迎えた、パネルトークの様子をお届けする。

  • TEXT BY TAKUMI OKAJIMA
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耳を傾けることを忘れない。渡邉氏の経営者としての求心力

まず、それぞれの入社遍歴が語られた。山下氏はグリー株式会社に新卒入社したのち創業期のラクスル株式会社にCTOとしてジョイン。その後、渡邉氏との学生時代の縁がきっかけでBitStarに参画した。

矢澤氏は広告代理店にてアフィリエイト広告の知見を身につけ、金融関係のメディア運営に携わった経歴をもつ。その後、渡邉氏と共通の知人を介してBitStarにジョインした。

もともとは歌手を目指していたという細根氏は、芸能事務所に所属して演者とマネージャーの両方を務めていた異色のキャリアの持ち主だ。事務所を退職後、美容やファッション領域のメディア立ち上げを志向していた際、渡邉氏の勧誘を受けてBitStarのメンバーに加わった。

BitStarに入社した決め手を問われた3名は、未開拓だったYouTuber事業への期待や、渡邉氏の経営者としての魅力を語ってくれた。いずれも「先頭を切っていくスピード感」や「負けず嫌いで突っ走ったら止まらない豪快さ」を挙げつつも、「主張に筋が通っていればしっかり聞き入れてくれる」といった誠実さを挙げた。

(左から、渡邉拓氏、細根克也氏、矢澤孝明氏、山下雄太氏)

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ポジションを獲得できるのは、事業と組織の二面でエンパワーメントできる人材

話題はBitStarの組織構成に及んだ。渡邉氏はリーダーや責任者を選定する際、事業と組織の2つを判断軸にしているそうだ。

リーダーを任せるのは、事業面ではKPIマネジメント、組織面ではメンバーの育成やモチベーション管理をこなせる人材。責任者には、事業面では戦略やビジョンの策定、アライアンス周りまで対応できる人材、組織面では自ら採用を推進でき、メディア露出にも強い広報力のある人材を登用しているという。

続けて自身が役職を与えられている要因を問われた3名は、それぞれの見解を述べていく。

細根チームメンバーを「部下」とは思わず、フラットな視点で接している点が評価されているのかもしれません。俯瞰的にチームを見つめ、メンバーが気持ちよく仕事できる環境を構築することが自分の仕事だと思っています。

矢澤僕はある意味ワーカホリックな面があり、渡邉と仕事への向き合い方が共通していると思います。無限には働けませんが、プライベートの時間はあまり必要ないタイプなんです。

渡邉細根も矢澤もともに会社や組織のことを第一に考えてくれるタイプ。顧客に対するプロフェッショナリズムも高く、社内外からの信頼も厚いです。

山下僕が貢献できている点として思い浮かぶのは、代表の渡邉が一人でさばききれない仕事を率先して行っていることでしょうか。技術面をリードするだけでなく、経営者視点に立ち、採用から事業のBS / PL管理まで行えるのが理想のCTO像ですから。

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まずは「できます、やりましょう!」組織下部まで浸透する“渡邉イズム”

続いて、話題はBitStarの成長の軌跡に移った。インフルエンサー市場拡大の波に乗り、今や大きな存在感を放つまでに成長した同社。しかし、インフルエンサーマーケティングの価値が世の中に浸透するまでは、クライアントの説得に苦労したという。

矢澤面と向かって「本当に効果があるの?」と聞かれることもありました。当時は「固定費+成果報酬」のような報酬体系でサービスを提供する工夫をし、案件を獲得していましたね。

その後、成果が出るようになってからはリピート企業も増えていきました。最初はゲーム業界のクライアントが中心でしたが、徐々に美容や食品、健康など幅広い領域から支持されるようになったんです。

山下企業に評価していただいているのは、タレントの人柄やおもしろさではなく、自社のデータベースを元に定量的な数値を使って説得している点かもしれません。現在の事業をはじめてからは、YouTuberごとの再生回数の推移を毎日追いかけ続けているんです。

続けて細根氏は、プロダクション領域を率いる立場から、自社事業が伸びている理由について提言する。

細根YouTuberがBitStarに所属する意義を見誤らないようにしています。既存の芸能タレントと異なり、彼らは自身でコンテンツ制作を一気通貫して行うことができる。活躍の場を自ら創出できる彼らにプロダクションが提供できる価値は、自身の力では限界がある部分の支援なんです。

戦略面だけでなく、組織カルチャーも成長要因の一つとして挙げられた。クライアントから相談を受けたとき、「できます、やりましょう!」と勢いで快諾してしまう渡邉氏の“イズム”が、入社1年目の社員にまで受け継がれていると矢澤氏は語る。

加えて渡邉氏も、いかにクライアントに価値貢献できるかを突き詰める風土が成長のキーになっていると述べる。

渡邉自社の利益だけを追い求めるのではなく、各ステークホルダーにとって最善なサービスを提供することを大切にしています。そうした姿勢をインフルエンサーの方やクライアントに評価いただけたおかげで、今があると思っています。

また、山下氏はCTOの立場から、事業成長のために留意している点に言及する。

山下自分たちが慣れ親しんだ技術を使い続けるのではなく、時勢にあった技術へと切り替えていくことが成長の秘訣だと思います。これからも動画プラットフォームがYouTube一強かと言えば、そうとは限らない。いつYouTubeを代替するような新しいプラットフォームが登場したとしても柔軟に対応できるよう、組織全体で学習できる風土を大切にしながら、新技術を導入するようにしています。

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YouTubeも永遠じゃない。業界変化を生き抜くマインドセット

パネルトークの締めとしてBitStarで各部門を率いる3名に、さらなる成長を続けていくための展望を伺った。山下氏は「若年層が利用するプラットフォームの変化をいち早く見極める力が重要だ」と主張する。

続けて矢澤氏は、山下氏に同意を示しつつ、インフルエンサービジネスの構造について持論を展開する。

矢澤渡邉の講演でも述べられていましたが、ラジオやテレビからYouTubeなどへプラットフォームが移行したと見れば、芸能人の役割がインフルエンサーに代替されただけで、芸能ビジネスの根幹は変わっていません。

どのプラットフォームが伸びるかは本当に予測が難しい。たとえば、現在のTikTokのように新たな戦場が生まれたとき、戦局をいち早く見極め、最適な戦略を組み立てられるかが勝負を分けると考えています。

細根僕も同じ意見です。プラットフォームを見極める際には、それぞれの強みをしっかり理解する必要が出てきます。たとえば、TikTokはフォロワーを得やすいけれど、マネタイズは難しい。その点、YouTubeは広告を通じて収益化しやすい強みがあります。そういった差異を理解したうえで、最適な戦い方を実行していく必要があるんです。

BitStarを牽引する面々は、事業領域における変化を洞察する力と、その変化に適応する力に長けていた。だからこそ、目まぐるしく変化する業界において急成長を果たせたのかもしれない。今後あらゆる業界構造が転換していくなか、彼らのような洞察力と適応力は、ますます重要度を増していくのではないだろうか。

こちらの記事は2018年12月05日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

岡島 たくみ

株式会社モメンタム・ホース所属のライター・編集者。1995年生まれ、福井県出身。神戸大学経済学部経済学科→新卒で現職。スタートアップを中心としたビジネス・テクノロジー全般に関心があります。

連載10兆円市場のコンテンツ産業を変革する起業家に学ぶ事業拡大法

2記事 | 最終更新 2018.12.05

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