連載FastGrow Conference 2022

完成されたとは言わせない。
メルカリグループ経営者3名に問う「今ここでチャレンジする理由」

登壇者
迫 俊亮

UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)卒業後、2008年三菱商事株式会社入社。その後、株式会社マザーハウスでの事業立ち上げや海外拠点開拓を経て、2014年4月にミニット・アジア・パシフィック株式会社代表取締役社長に就任し、APAC地域6カ国で展開する"ミスターミニット"事業を統括。ユニゾン・キャピタル株式会社 マネジメントアドバイザー。2021年11月に執行役員としてメルカリに参画し、オフライン×オンライン領域の新規事業に取り組む。

石川 佑樹
  • 株式会社ソウゾウ 代表取締役CEO 

東京大学卒業後、2012年任天堂株式会社入社。2014年にモイ株式会社(ツイキャス)に入社し、各種開発や新規立ち上げに従事。2017年6月メルカリグループの株式会社ソウゾウ(旧)に入社。その後、株式会社メルカリへ異動を経て、2020年7月より株式会社メルペイ執行役員VP of Product。2021年1月より現職。

進藤 智之
  • 株式会社メルロジ 代表取締役COO 

大学卒業後に、ヤマト運輸に新卒入社し、法人支店長など歴任し、2007年に、日本IBMへ入社。コンサルティング事業部にて、運輸・物流事業会社の事業戦略・プロセス改善などのプロジェクトを担当。2013年にアマゾンジャパンに参画し、主に物流ネットワークの中長期戦略及び、新規ネットワークの立上げ責任者を務める。その後、2020年にイオンネクスト準備株式会社の理事物流部長として、次世代ネットスーパーの構想策定に携わる。2021年10月より現職。

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2021年9月に時価総額1兆円超えも実現させた、メルカリ。月間利用者数が2,000万人突破も記録(2021年10月時点)したフリマアプリ『メルカリ』は、累計出品数が20億品を超えるなど、CtoCサービスとして圧倒的な存在感を放っている。

さらに、新規事業も複数展開。2021年1月にはソウゾウを設立し、Eコマースプラットフォーム『メルカリShops』を開始。10月にはメルロジを設立し、新たな集荷物流網の構築を目指している。

「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る 」というミッションを達成すべく、メルカリグループの人材やテクノロジー、顧客基盤といったアセットを活用し、次なる展開を見据えて事業に向き合う経営者3人が集結した。

2022年2月に開催したFastGrow Conference 2022のセッション「“完成形”とは言わせない!百戦錬磨の経営者もジョイン。時価総額1兆円規模のメルカリ、マーケットプレイス起点の『次なる一手』」では、メルカリ執行役員 VP of Business Growthの迫俊亮氏、ソウゾウ代表取締役CEOの石川佑樹氏、メルロジ代表取締役CEOの進藤智之氏に、新規事業の醍醐味やその戦略を聞いた。

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CtoCで培った“簡単に物が売れる体験”を、Eコマースにも展開

まずはじめに、メルカリが誇る新しい取り組みの数々について、概要が語られた。いずれも、前職も含め過去の経験をフルに活かし、新たな市場を創造していこうとする、ザ・事業家である責任者による紹介だ。

最初に口を開いたのは迫氏。靴やかばんのリペアサービス『ミスターミニット』を展開するミニット・アジア・パシフィックで代表取締役社長を務めたのち、2021年11月に執行役員VP of Business Growthとしてメルカリにジョイン。オフライン×オンライン領域の事業開発を担っている。

物を長く使い続けられる世界の実現に向けて、メルカリはこれまでCtoCフリマアプリという市場でシェアを拡大してきました。しかし未だに、使える物の多くが単なるゴミとして捨てられてしまう状況です。

前職で『ミスターミニット』を経営していたころ、世界中のリペア職人と一緒に働く中で、「どんな物でも長く使い続けられる」「物を長く楽しむことは素晴らしい体験である」ことを学びました。

もちろん、環境負荷の低いエコ素材を活用したり、新たにエネルギーを費やしたりしてリサイクルする手もありますが、一つの物を長く使い続けることの方がはるかに環境に優しいんです。

OMO(Online Merges with Offiline)の手法を用いて、物の売り方・買い方や付き合い方そのものを変えていきたい。使い捨てではなく、物を循環させて長く楽しむことが当たり前になる社会を今後は実現しようとしています。

実は『ミスターミニット』と『メルカリ』は、『メルカリステーション』というサービスで協業もしている。親和性の比較的高い事業であり、その経験を基にしたOMO施策に取り組んでいくという意気込みを、強く抱いている。

メルロジで物流領域の変革に挑む進藤氏は、ヤマト運輸やアマゾンジャパンでの経験を持つ、物流のスペシャリスト。テーマに掲げているのは、「サステナブルな発送体験の構築」だ。

進藤メルロジは、『メルカリ』を利用してくださるお客様に最良の物流サービスを提供するための、物流基盤の構築を進めています。

現在、コンビニが発送する荷物のうち、『メルカリ』の出品物がその約8割を占めています。われわれとしてはありがたいことなのですが、コンビニ側の業務負荷は高くなってしまっているという課題でもあるんです。長期的視点に立って、コンビニでの発送体験の改善や新たな発送体験を検討していく必要があります。

協業パートナーの現場の負荷を下げるためにも、『メルカリポスト』や『メルカリステーション』などのタッチポイントを基盤に、データとテクノロジーを活用した効率的な集荷物流網を構築する必要性があります。チャネルが増えることにもつながるので、より良い顧客体験も合わせて実現できると考えています。

そして、過去にソウゾウで新規事業開発を担ったほか、メルペイでVP of Productも務めた石川氏が、現在トップを務めているソウゾウが開発・運営する『メルカリShops』について改めて共有した。

石川『メルカリShops』のコンセプトは、「かんたんで、売れる」。事業者がスマホ1つでメルカリ内にショップを開設し、商品を販売できるサービスです。

『メルカリShops』の誕生は、スマホ決済サービス『メルペイ』に加盟する店舗が、コロナ禍でオフラインの販売量が減少し、苦しんでいたことがきっかけです。オンラインで物を販売したいという店舗のニーズに応えるために、EC型サービスの立ち上げに至りました。

国内におけるEC事業が持つポテンシャルはまだまだ大きい。2020年の段階でBtoCにおけるEC化率はわずか8%。しかも、ネットショップを開設したにも関わらず、実際に継続的に売り上げをつくれている事業者は、その中でも限定的です。

我々はこれまで『メルカリ』を通して、CtoCで物が簡単に売れる仕組みを構築してきました。その強みを活用し、今度は事業者に対して簡単に物が売れる体験を提供していきたいのです。

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自分が描く未来を実現できるか?
メルカリだからこそ参画する意義がある

3つの大きな新しい取り組みから、話題はそれぞれがメルカリグループに参画した理由へと移った。特に気になるのが、2021年と最近ジョインを決めた迫氏と進藤氏。多様な選択肢があるなかで、なぜいまメルカリを選んだのだろうか?

私は「物が循環する社会を世界規模で作りたい」という思いを一貫して持ち続けています。

前職のミニット・アジア・パシフィックが扱っていた「修理」は、物の循環要素の1つです。なので、もしかしたら「前職でも十分に、『物が循環する社会』を実現できたのでは?」と思われる方もいるかもしれません。たしかにそれは間違いではありません。

しかし、メルカリがもつテクノロジーや圧倒的な顧客基盤と取引量に魅力を感じ、まさに、自分が描いている未来を実現できる環境がより整っていると思いました。

すでに触れたように、『ミスターミニット』と『メルカリ』は協業で、同じ目標に向かっている部分がある。しかし、いわばそれに満足していないかのように、さらなる大きなインパクトを実現しようと、挑戦の場を移す決断をしたわけだ。

その一方、進藤氏は前述のように、ヤマト運輸やアマゾンジャパン、イオンネクストなどで20年以上も物流関連事業に携わった経験を持つ。メルロジを選んだ理由を聞くと「メルカリにおける物流モデルは一般的な物流モデルとは明らかに異なっていて、新たなチャレンジができると感じた」からだと語る。

進藤一般的な物流と、『メルカリ』が生み出すCtoCの物流では、顧客体験やオペレーションに大きな違いがあります。

顧客体験においては、例えばEコマースではお客様のニーズとして「いつでも早く商品が届く」ことがあります。それに合わせ、物流もそのニーズに答えることが最重要KPIに掲げられることが多いですよね。一方で、『メルカリ』では、利用者は必ずしも、商品が早く届くことを重視しているわけではありません。

オペレーションの観点でも、Eコマースの場合は物流センターから個別にお客様の元へ発送するのが一般的。しかし、メルカリは様々な場所から商品が出荷される、CtoCマーケットプレイス独自のモデルとなっています。だからこそ、さまざまなかたちで存在するカスタマージャーニーを幅広く捉えながら、発送体験の向上と受取体験の向上を行なっていく必要があります。

物流における、売る人と買う人、そして届ける人それぞれの体験が、従来のものとは明らかに異なっているんです。だからこそ、私も新しいチャレンジができると感じたんです。

物流関連事業の経験がほとんどない読者でも、その違いは十分に理解できるだろう。ということは、経験の深い進藤氏は、その何倍もの新鮮さを感じることができたというわけだ。その想いの熱さが伝わってくる説明だ。

石川氏は4年半前にメルカリグループに参画し、一貫して新規事業の立ち上げに携わっている。「単に新規事業を立ち上げるのであれば、個人でスタートアップを立ち上げる選択肢もあったかもしれない」と明確に示しつつも、あえてメルカリで新規事業にかかわり続ける意義を力強く語った。

石川やはり社会に大きなインパクトを与えることを考えると、メルカリにジョインした方が良いと感じています。なぜなら、メルカリにいる優秀な仲間やこれまで培ってきたアセットを活用できるから。

国内でも随一のクオリティを持つ仲間やアセットが整った環境で新規事業に取り組める。このことはどう考えてもここにしかない魅力ですし、自分の時間と経験を使っていきたいと強く感じています。

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新規事業に求められるのは、メルカリ級のインパクト

『メルカリ』というプラットフォームを起点に、人材やテクノロジー、顧客基盤など様々なアセットが培われてきた。その中で、前述の通り自身の経験をフルに活かして新たな事業に取り組もうとしているのが、この3人というわけだ。

次に、彼らが新規事業を成長させていく上で、どんなやりがいを感じているのか、具体的に語ってもらった。

プロダクトに造詣の深い石川氏が指摘するのは、「チームが一丸となって社会課題に向き合う点」だ。

石川プロダクトの価値を届けたい人に正しく届けられたり、社会的なインパクトを与えたりできるところには、非常に大きなやりがいがあります。

様々なメンバーがメルカリにかかわり、一丸となって社会課題を解決する事業を推進できるのが醍醐味ですね。

進藤氏はもう少しマクロな視点に立ち、「メルカリというテックカンパニーが物流市場で担う役割」について語った。

進藤メルロジは新規事業とはいえ、『メルカリ』の物流サービスの基盤を構築するなど、既存事業の延長線上でどう事業を作るか考えています。

さらに言えば、新たな物流を生み出している企業でもあるという観点でも考えています。というのも、社会インフラとして存在する物流のペインの解消にも、つなげていきたいし、そうしなければいけない。遠くない未来に、物流のマーケットリーダーとしての役割を担っていく必要があると感じています。

続けて迫氏も、いま必要とされる経営者としてのスタンスについて語った。

メルカリには、多種多様なアセットが豊富にあります。これが潤沢だからこそ、いかにして活用できるかが問われます。大きなWILLをもって新しい価値を社会に届けないといけない、そういう責務があります。

小さなWILLを掲げて、小規模な事業を作っても、多くの人に必要とされるものにはなりません。我々はこれからも常に『メルカリ』級の成功が求められているので、高い目線で事業に取り組む必要があります。

凄くチャレンジングですが、メルカリだからこそ経験できる事業開発の特徴として楽しみたいですね。

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「メルカリ=ある程度成功した企業」ではない

次なる『メルカリ』を目指し、大きなインパクトの創出に力を入れている3人。最後に、いまメルカリにジョインする意義を伺った。

石川メルカリグループが携わっている領域は、ちょうど社会においても産業を変革しやすいタイミングにあります。『メルカリ』というマーケットプレイスをより大きく成長させていくことはもちろん、メルカリグループ内でも新たな挑戦をするチャンスがたくさんある。

産業を変えるチャレンジがしたい方なら、メルカリグループは何かしら合う気がしています。

進藤メルカリやメルロジには、物流事業を成功させるための条件が整っていると感じています。強力なプロダクト、テクノロジー、社員のオーナーシップによる圧倒的な事業スピードなどが揃う、稀有な環境です。

そんな環境に私自身もワクワクしていますし、そんな環境を求めている方にとってメルカリは最高の場所だと思いますよ。

「メルカリ=既に成功した企業」というイメージを持つ人も少なくないと思いますが、全然違います。メルカリのミッションは、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る。」こと。まだまだ達成はしておらず、伸びしろがたくさんあります。

OMOなど新たな領域で、『メルカリ』級のインパクトがある事業をどんどん作っていきたいと思っています。一緒に挑戦したいと感じる仲間がいたら嬉しいです。

まさに迫氏が指摘したように、「すでに成功したフリマアプリ企業」というイメージを持つ人は少なくないのではないだろうか。だが、そうであるならば、この3人のような事業家人材が、次なる挑戦の場に選ぶことは考えにくいはず。

50分と短いセッションではあったが、「循環型社会の構築」という、大きな社会課題へのチャレンジを最前線で担う企業としてのスタンスは、参加者の中に確かに記憶されたのではないだろうか。そこに向かう手段として、石川氏はEコマースプラットフォーム事業で、進藤氏は物流事業で、そして迫氏はOMO事業で、それぞれの切り口でスケールさせていく。

今年で創業9年目を迎えるメルカリだが、そこには誰もがなし得たことがない大きなチャレンジや成長する機会が確かにある。真のグローバルテックカンパニーを目指す彼らが見据える先にはいったい何が描かれているのだろう。一挙手一投足に、今後も目が離せない。

こちらの記事は2022年04月01日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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