【独占取材】メルカリの0→1事業家・石川佑樹氏が、汎用型AIロボットで起業した理由とは──新会社Jizai立ち上げの想いを聞く

石川 佑樹
  • 株式会社Jizai 代表取締役CEO 

東京大学卒業後、2012年任天堂株式会社入社。2014年にモイ株式会社(ツイキャス)に入社し、各種開発や新規立ち上げに従事。2017年6月メルカリグループの株式会社ソウゾウ(旧)に入社。その後、株式会社メルカリへ異動を経て、2020年7月より株式会社メルペイ執行役員VP of Product。2021年1月から株式会社ソウゾウ代表取締役CEO。2022年7月から株式会社メルカリ執行役員VPを兼任。2023年5月から株式会社メルカリ執行役員 VP of Generative AI / LLM。2024年6月にメルカリを退職し、株式会社Jizaiを創業。

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シリアルアントレプレナーによる新たな起業や、それに伴う多額の資金調達が目立ち始めた、2023~2024年の日本のスタートアップシーン。FastGrowでもより一層、そうした存在による大きな社会変革を期待し、一挙手一投足に注目していこうという考えを強めている。

2024年4月には、クラウドサイン事業責任者を務めてきた橘大地氏の独占取材記事をFastGrowで制作・公開した。同氏が立ち上げたPeopleXはシードラウンドで16億円を調達し、複数プロダクトの立ち上げ・展開に取り組んでいる。

そして、橘氏に続いてFastGrowが注目している起業家が、石川佑樹氏だ。メルカリで執行役員VP of Generative AI / LLMを務め、その前には『メルカリNOW』や『メルペイ』、『メルカリShops』の立ち上げを担ってきた経験を持つ。まさに、日本を代表する“0→1事業家”と言っても過言ではない。

2024年7月、ついにメルカリを離れ、Jizaiと名付けた新会社を立ち上げた同氏。なんと「汎用型AIロボット」という、フリマアプリとは全く異なる事業を始めるとのこと。その背景にどのような思いがあるのか。今回は一問一答形式で聞いた。

  • PHOTO BY EMIKO HARA
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メルカリを卒業しての起業について

──ちょうど会社立ち上げのプレスリリースも発表されていましたが、以前から起業意欲を強く持っていたのでしょうか?

石川以前から起業意欲はありました。プロダクトをつくるのが好きで、これまでのキャリアの中で何度も、面白いと思ったプロダクトについて自分でつくったり、つくっている人に対してエンジェル投資をしたりしてきました。

メルカリ時代も基本的にはずっと、グループ内の新規事業を担当し、プロダクトをつくってきました。たとえば『メルカリNOW』『メルペイ』の立ち上げを担当。『メルペイ』の与信機能の立ち上げなどでは、マシンラーニングにも関わりました。ソウゾウで代表取締役CEOとして『メルカリShops』の責任者も務め、生成AIの責任者としても『メルカリAIアシスト』を始めとした新プロダクトの開発を進めていました。このように、0→1を多く経験してきました。

──いつどのような理由で、起業を決意したのですか?

石川生成AIの進化と、その汎用性を目の当たりにし、「非常に広範な領域でソフトウェアとしての活用可能性がある」と確信したんです。それで、自分の手でつくりたいと思いました。

一方で、2023年のGoogleのRobotics Transformer(RT1, RT2)での試行錯誤や、2024年1月のStanfordのMobile ALOHAの試みを見て、ハードウェア化については課題も感じつつ、自分でやったらどうなるだろうか?という可能性を感じたことが大きなきっかけです。

──メルカリ社内でも、さまざまな新規事業ができると思いますが、敢えて退社して独立起業したのはなぜですか?

石川もちろん、メルカリ社内でも一定程度、こうした事業領域で取り組むことは可能だったと思います。

ですが、メルカリではメルカリのミッションに沿って事業が展開されていくものです。私がやりたいのは、AIとロボットという事業領域で、先端技術の探索と社会実装を極めていくこと。そのための最適なかたちとして、起業を選びました。

──メルカリマフィアと呼ばれる起業家やスタートアップのCxOが多くいると思いますが、何か受けている刺激などはありますか?

石川いつも、多くの良い刺激を受けています。一緒にプロジェクトを進めてきた戦友たちが、今もいろいろな持ち場で活躍や奮闘をしており、刺激が多いです。

──起業家として尊敬している先輩はどなたかいらっしゃいますか?理由と共にお聞きしたいです。

石川年齢には関係なく、学ばせていただいた人が多すぎて、具体的に何名かの名前を挙げるのが難しいですね(苦笑)。

ご一緒させていただいたメルカリグループの経営陣はもちろん、メルカリ以外の経営者の方々とも交流がありましたし、海外のアントレプレナーさんたちにも学ばせていただく機会があります。直接的にも間接的にも、とにかく多くの先輩たちから学んでいます。

ちなみに、どなたも大変リスペクトしている一方で、同じ人間だと考えており、「別の世界の人間だ」と感じるようなことはないですね。

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「ロボット×AI」という事業領域について

──ロボット開発×AIという領域でどのような事業に挑戦していくのか、可能な限り具体的にお聞きできますか?

石川OpenAIが汎用AI(AGI)の実現を目指しているように、私たちは独自で汎用型AIロボット(General-Purpose AI Robot)の実現を目指していきたいと考えています。まだまだ開発最初期のタイミングですが、次の3年~5年、あるいは10年ほど先を見据えれば、達成の可能性は十分にあると感じています。

OpenAIも最初は研究に近いところから始まっています。私たちもまず研究的なところから始めつつ、できるだけ早期に社会との接点を持って、実社会のデータを集めながら進めていこうとしています。

具体的には、Day1から2つの事業に着手しています。生成AIを活用したソフトウェアのプロダクトの事業と、生成AI ×ロボティクスの事業です。

──フリマアプリに関する事業開発から、ロボット開発となると、大きく異なる領域だと感じる人が多いと思います。「本当にこの事業でうまくいくのか?」と生意気にも聞かれたら、どう答えますか?

石川「うまくいくまでやる、うまくいくまで続けられるような形をつくりながらやる」ということに尽きますね。

すでに、ロボット開発の経験豊富なエンジニアに、専任としてフルタイムで入ってもらっています。

また、トレンド的なところで言うと、昨今のアメリカや中国におけるヒューマノイド開発でも、AI含むソフトウェア開発を経験してきたエンジニアがハードウェア開発の現場に入ってきている例が散見されます。私もこれまでのソフトウェア事業の知見を活かせるのではないかと感じています。

これから日本でもソフトウェア・ハードウェア問わず、たくさんの先輩たちから学ばせていただいたりご協力をいただいたりしながら、私たち独自の強みを活かして進めていきたいです。

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今後の事業構想や企業拡大について

──社名に、どのような思いや構想を込めたのか、お聞きできますか?

石川Jizaiという社名には、今後の人間社会を大きく変えてしまうかもしれない技術と真正面から向き合い、変幻自在・自由自在に変化しながら、大きな社会価値を作れるよう進めていきたいという想いを込めました。

生成AIに関わる領域は非常に変化が激しいため、柔軟に変化できるものが強いと考えているためです。

──これから、社会や経済に対してどのような影響を与えていきたいと考えているのか、事業構想におけるビジョンや野望についてお聞きできますか?

石川AI x ハードの特性を活かし、市場としても、日本だけでなく、海外の市場も捉えるチャレンジをしていきたいですね。

次の10年を考えると、日本の人口減少は深刻化し、様々な分野で人手不足が起こる可能性があります。そこで、ソフトウェア・ハードウェアという手段に関わらず、「生産性を劇的に向上させていかなければならない」という課題が待ったなしだと考えています。

すでにアメリカや中国では、AI x ハードウェアという領域に投資が大きく増え、プレーヤーも出てきています。日本にも、ハードウェアの知見やタレントが潤沢に存在しているはず。新たな挑戦をするプレーヤーがもっと増えるべきだと思っています。

──事業規模や組織規模に関して、目標に掲げているサイズはありますか?

石川まだ言及できる具体的な数字はありませんが、世界のAI×ロボティクスのプレーヤーと肩を並べていけるような成果を出していきたいです。

まだそもそも汎用型AIロボットに関する技術研究自体が、かなり初期のフェーズにあります。だからこそ、世界中のプレーヤーがまだ横一列であり、チャンスがあると考えています。

そんな中で、まずは技術研究と社会実装にひたすらフォーカスして突き詰めていき、すでにロボティクス領域やAI領域への挑戦を進めているOpenAIさんやNVIDIAさん、Googleさんのような企業さんにも興味を持ってもらえるようなレベルまで最速で進んでいけるよう取り組みたいと考えています。

──組織拡大にあたって、どのような採用をまずは進めていきたいと考えていますか?

石川創業メンバーを募集しています。足元はFullstack×MLの経験があるエンジニアと、プロダクトマネージャー(PdM)の募集を出している。ハードウェア開発に関わるポジションはまだ募集を出していませんが、興味ある人は連絡してくれると嬉しいですね。

また、海外出身者や海外在住経験のある方、特に英語話者は大歓迎です。

AI×ロボティクスの領域で、似たようなことを考えていたり進めたりしている方や企業や研究機関があれば、協業の検討もぜひしたいです。同じビジョンを見ていると感じたら、気軽にお声がけをいただきたいですね。

こちらの記事は2024年08月07日に公開しており、
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原恵美子

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