100年先の未来をつくるBizDevの思考法──骨太な事業開発は、“with行政”の現場に。GovTech関連スタートアップ6社を大解剖
どのようなミッションを掲げようとも、それがビジネスである以上、売上や利益が得られなければ事業は続かない。何よりもスタートアップには業種に関係なく“急成長”が求められる。だからこそ、例えばIT系スタートアップであれば、ITリテラシーの高いベンチャー企業や資本力のある大企業の顧客を増やすことは、極めて重要なミッションだと言えよう。
そのような観点から見ると、「行政」という事業領域は魅力的とは言い難い。民間企業と違って営業を仕掛けにくく、予算の規模は限られており、前例の有無が明暗を分け、新施策が確定するまでの期間も長い……そんなハードルの高さを感じるビジネスパーソンが多いだろう。
ここを紐解くことは、ビジネス創造を志す若手ビジネスパーソンにとって大切な学びがあると見た。そこでFastGrowでは行政領域を攻めるスタートアップ6社を厳選。その挑戦と思想を分析し、他では得られない気づきや学びを届けよう。
「実現ハードルの高さ」こそ、BizDevに必須な要素だ
FastGrowが追い続けている大きなテーマの一つ、BizDev。言わずもがな、Business Developmentの略語、あるいは「事業開発」をカッコよく表現したもの、そんなイメージを持っている読者もいるかもしれない。目にする機会は増大し続けている。スタートアップを中心に、強いこだわりを持って「BizDevという求人」を定義し、公開している。
Meety で「BizDev」の募集を開始します!
— 中村 拓哉 | Meety | カジュアル面談プラットフォーム (@3kkabi) May 19, 2022
事業責任者・PMM・PM的な要件が入り混じった創業期っぽい要件・・・!
Meety は、夏秋にかけてマネタイズを開始予定。一緒に、事業・プロダクト戦略から練り上げて、事業立ち上げしませんか?? pic.twitter.com/GZzNQSXyKv
一方で、GovTechという言葉を使い、行政の課題解決を第一としているスタートアップが増えてきたイメージもまた、あるだろう。長期的な目線で行政の領域でビジネスを展開するのは確かに、理にかなっているように感じる。将来の大きなインパクトを期待して投資をするベンチャーキャピタルや事業会社も増えている。
そして実は最近、GovTechをメインで謳っているわけではないスタートアップが、参入ハードルの高そうな行政団体とビジネスを行ったり、パートナーになったりする例が見受けられる。
この、BizDevとGovTechという二つの言葉を紐づける思考実験を、今回の記事では試みたい。
BizDev × GovTech = ?
行政には、未だに紙を使った業務や仕組みが根強く残っている。ここでは決して、「古い慣習が残っているからデジタル化が必要だ、テック系スタートアップが入り込んでDXを促すべきだ」などと単純で安直なことを言いたいのではない。民間企業とはまた違う“独特”としか表現のしようのない行政の仕組みについて、「職員のITリテラシーがあまり高くない」という表現がしばしば聞かれるが、軽率だ。
今回のリサーチで感じたこと。それは今の現状を変えたくないと思っている行政団体は、今やむしろ圧倒的に少ないということだ。行政は自分達ではできない改革や改善を、推進してくれる存在を強く望んでいる。だが一方で、自ら改革者を受け入れたり、改革を進める体制をつくりだしたりすることが、非常に難しいということも理解している。しがらみを内側からほどくことがもしできるのなら、そう苦労しない。
しがらみを、力や勢いで取り払ってくれる存在が、必要とされている。行政を改革するのは、もちろん行政の人間であるが、その触媒となるのはスタートアップにおけるBizDev的な存在なのだ。
実際にこれまでの行政事業は、大手SIerや密なフォローアップが可能な地方ベンダーが担うという偏った領域だったとも言える。しかし、日本国内にも秀でたスタートアップ企業が増え、チャレンジを試みてきたおかげで、徐々に突破口が開かれつつある。
今回取り上げるスタートアップ6社は、その突破口を開いた者達であり、開かれた突破口を敏感にキャッチし変革をもたらそうとする者達だ。
行政サービスの利便性の改善は全ての国民が願っていることでもある。だが、生活者がその改善や変化を感じ取る機会は必ずしも多くなかった。今、ついに変わり始めている。各社の事例の裏にあるのは、徹底したBusiness Developmentの意志だ。チャレンジ精神と嗅覚、そして課題発見の力から、新たな事業の種やヒントを学び取ってほしい。
グラファー(Graffer)──まさに、The GovTech。
行政からの信頼も厚い先駆者
グラファー
実はすでに、このグラファーによるGovTechが、全人口のおよそ4分の1をカバーしているということをご存知だろうか。Graffer手続きガイドをはじめ、行政事務の効率化だけで終わらず市民側のサービス体験を向上させる事業を展開し、先駆者として着々とその範囲を広げている。
GovTechといえば「役所の窓口に行かなくて済むようになる」とイメージしている人が多いかもしれないが、グラファーは違う。例えば、災害支援とデジタルを組み合わせた広島市の取り組みとして「災害支援ナビ」というものがある。これはGraffer手続きガイドがあったからこそできた仕組みだ。災害支援ナビとはスマホから災害時に自分が受けられる公的支援策を洗い出せるサービスである。
スマホから洗い出せるのは全国でも初。広島市は2018年の豪雨災害の経験から、住民の利便性と職員の負担の両方をカバーできる仕組みが必要だと考え実装された。災害支援ナビが全国に広まれば、いつ起こるかわからない自然災害への対策スピードは大きく変わる。
市民が行政をより身近に感じ、市民にとって必要な行政サービスが使いこなせることでより良い社会がつくられていく。グラファーは私達の見えないところで私達の生活を守る仕組みを作り続けているのだ。
しかし、GovTechへの知識不足や必要性を認識していない自治体や、必要性を感じているが予算や人材不足で導入にいたっていない自治体など、課題は一様ではないため全国に広めていくのは簡単なことではない。
だがグラファーは2017年設立以来、そんな行政と根気よく向き合ってきた。サービスを提供していく中で「逃げたり、隠したりしたことは一度もない」とCEOの石井氏は断言する。その甲斐あり、国会議員からの信頼も厚い。場合によっては、グラファーから政府に、より適切な制度設計を提案することすらあるくらいだ。
冒頭お伝えしたように、グラファーの恩恵が受けられる市民はまだ全人口4分の1の3,242万人だ。だから今の延長線上においても、そのポテンシャルは単純計算で4倍の連続成長を生むことができ、かつ新規事業・新規プロダクトが増えていけば、その非連続成長規模の大きさは計り知れないものとなる。行政事務のフローと向き合い信頼を勝ち取ってきたグラファーなら、これからもきっと期待に応え続けてくれるだろう。
WiseVine──上流から下流へ還流しインパクトを最大化する
WiseVine
500兆円を超える日本の名目GDP。日本政府と自治体の歳出は補正予算を含めると百数十兆円にのぼるため、GDPの3分の1を占めるとも言える。そう考えれば、マーケットとして非常に魅力的だという点に、議論の余地はないだろう。
「行政とは、市場の失敗が起こらないよう、税金として集めた資金を再配分するための機構だ。日本の未来は、集めた税金をどの領域に張るのか決定することにかかっていると言っても過言ではない」。そう話すのはWiseVine代表取締役社長の吉本翔生氏だ。
WiseVineは予算編成の課題を解決するGovTechスタートアップ。行政の事業予算が決まる最上流の意思決定をサポートするサービスを開発している。その他にも、予算立案のアイデア探しに役立つ独自のデータベースに加え、事業の仕様相談や概算見積もりの依頼を企業に対して簡単にできる『WiseVine官民連携プラットフォーム』(現在アップデートのため休止中)も運営する。
予算編成期間は約8カ月。行政官は、一年のうち大半を日々、市民が求める具体的な施策を実行するための予算立案に頭を悩ませている。一方で、予算の9割はすでに使途が決まっており、DXやインバウンドなど新しい時代に即した施策の実行を求められる立場にありながら、財政は硬直化し、その手足は縛られている状態だ。
本来は、市長をはじめとしたマネジメント層がその投資先をダイナミックに変更していく事が求められているが、複雑な財政の仕組みの中でその示唆を得るのは極めて困難だ。アイデア創出から具体的な仕様の検討まで、難しい課題が山積している。
WiseVineは、そうした固定化された事業立案の仕組みそのものを変えていこうとしている。効果の薄くなった古い事業を止め、新しい事業に振り向け、新陳代謝を促す意思決定をサポートする。上流工程である予算編成を根底から変えるソリューションを提供するのだ。
吉本氏は「あらゆる変革を起こしうる最上流を変革すれば、その変革の果実はその下流へ還流し、インパクトを最大化できる」と指摘する。これを「難易度の高いBusiness Development」と言わずして、なんと言おうか。
先述したように、これまでは大手SIerや、密なフォローアップができる地元ベンダーが強かった行政の領域に、WiseVineのようなテック企業が入り込んできている。その背景にはDXブームなど近年の変化も影響し、抜本的な変化を加えることのできるスタートアップに道が開かれ始めている。
また、同社は事業推進と別に「プロボノ活動」として、全国110自治体と共に「新しい自治体財政を考える研究会」を運営している。こうした取り組みを並行して行うことが求められているのだろう。
身近であるはずなのに、コミットする機会の少ない「市民の生活を良くしたい」「税金を適切に使う国にしたい」などの社会課題。だが、あなたがBizDevキャリアを志そうと思うのなら、WiseVineのチャレンジがまた一つ、貴重な機会を提供する環境となるはずだ。
AI inside ──AIロジスティクスの思想は、当然民間だけでは進まない。
行政もAIを活用・創作できる世界を届ける
AI inside
ここから紹介するのは、純粋なGovTech企業とまでは呼べないスタートアップだろう。だが、民間・行政という区別を敢えて意識しすぎることなく、解決すべき課題に邁進している存在が多くいる。まずは、AI inside 。
当社のDX Suiteを取り扱うBlueship社が、東京都のAI-OCR運用支援業務委託を受け業務の効率化に取り組んでいる。東京都ばかりでなく、先進的な企業、エンタープライズ企業も次々にこの流れに参入しており、2,000社を超えるエンタープライズ企業がDX Suiteを使って、DXを実現し始めている。(2022年6月29日のイベントでの渡久地氏発言)
このように、東京都庁でも活用されている。
500以上の自治体で工数を大幅に削減。RPAなどの技術も活用しながら、申請から最短4日での給付が可能となる事例も報告(引用)
また、特別定額給付金の給付支給期間である2020年5月から7月までの期間、マートナーであるNTTデータを通じて、AI-OCR(AIを活用した高精度な文字認識技術)機能を持つ『DX Suite』を全国の自治体に無償提供。申請業務を支援している。
自治体には手書き書類に関する業務が比較的多いため、RPAの導入とともに注目されているのがAI-OCRだ。そんな動きが見られる自治会にとって、無償提供がどれほどありがたいことか、想像に難くない。直近では新型コロナワクチン接種の記録管理にも『DX Suite』が使われている。
こうした例からわかるように、行政に対してすでに深く入り込んでおり、紙に支配されていた行政サービスを変え始めている。だが、技術を提供すればすぐに行政が変わるのだろうか?そんなことはない、と多くの読者がお思いのことだろう。AI inside でももちろん、BizDevが躍動している。同社のミッションには「世界中の人・物にAIを届け」とある。そう、「人・物に届ける」のだ。現場での最適な活用につなげ、変革を起こすことを常に目指す。これがAI inside における事業開発だ。
同社のプロダクトと行政の融合には、さまざまな期待が持てる。例えば予測判断AIがノーコードで開発・運用できる『AMATERAS RAY』の活用が広がれば、給付金や各種制度の利用状況の分析や予測が、短時間かつ実用的にできるかもしれない。公務員の業務がラクになるという単純な話ではなく、生活者一人ひとりが行政の支援を受けやすくなり、日本全体で生活水準が底上げされ、好景気のきっかけとなる可能性すらあると言える。そこまでのスケールを見越して、行政との協業にチャレンジしているわけだ。
また、CEO兼CPOの渡久地択氏が目指す次世代のAIインフラ“Leapnet(詳しくはこちらの記事を参照)”が、行政サービスのあり方を抜本的に変える未来も想像できる。人類一人ひとりがAIの使い方を考えAIと共存する世界を目指すAI inside 。私達の生活を大きく変える構想なのだから当然、行政をも巻き込んでいくのだ。
hacomono──スマート・ウェルネス・シティへの参画によって日本の健“幸”社会を支える
hacomono
続いては、主にフィットネスクラブを対象として会員管理・予約・決済システムを提供するhacomonoだ。自治体が運営するレンタルオフィスにも導入されるなど、全国各地に散らばる約50,000の公共施設の体験を底上げする構想を進めている。
同社は、少子高齢化社会が訪れる日本で、高齢者が心身ともに健康的に生きていきていける健“幸”社会の実現を目指した、スマート・ウェルネス・シティへの参画を目指している。だからこうしたwith行政の取り組みが、これから大きく増えていく期待ができる。
健康寿命を伸ばすべく、各自治体が生活習慣病への対策を進めているが、すべてがスムーズに進んでいるとまでは言いがたい。例えば、健康維持のためにしている運動が、何らかの形で自治体独自のポイントに交換され、そのポイントを活用して地元の店で買い物ができる仕組み。確かに合理的で良さそうに思えるものの、利用者が大きく増えるには至っていないようだ。
それでも、こうした地道な取り組みは必要不可欠。なぜなら、国民の健康寿命が伸びていけば、社会保障費の削減という大きな社会課題解決にまで繋がるからだ。これを、フィットネスを起点に、最前線で推進していこうと構想しているのがhacomonoなのだ。
代表取締役の蓮田健一氏は力強く語る。hacomonoが持つバイタルデータと行政が持つ住民データを紐付けて、国民の健康を維持するプラットフォーマーを目指す、と。そして、今後も国家レベルの投資が増えるため、マーケットポテンシャルとしてはこれ以上ない魅力がある、そんなビジョンを描いているのだ、と。
妻のおばあちゃんや親戚の家がある種子島にもhacomonoが。
— 蓮田 健一 / hacomono CEO (@kenhasuda) June 11, 2022
種子島にはコロナ後行けてないけど、大好きな場所。この施設にも行ってみたい。
行政が運営するサテライトオフィスとのことで地域や利用シーンの広がり進んでいる。1,500拠点突破したそうです。 https://t.co/vutcxdyBWm
hacomonoのBizDevといえば、ウェルネス業界における取り組みが注目を集め始めている。フィットネスクラブ業界の売上トップ10のうち、9社が導入を決めており、導入店舗数はすでに1,400店舗を突破している。クライアント企業から「中期経営計画の策定に関して相談がしたい」といった話も舞い込む。
そんな実績を残せている秘訣が、「圧倒的にこだわりつくしているUXにある」と蓮田氏は強調する。これを、自治体などの行政団体にも横展開しているわけだ。“対企業”で培ったBusiness Development力を、“with行政”でも発揮していく。これからの激しい事業展開に、期待が高まる。
CUC──行政の本丸、“医療”におけるベスト・パートナーとはこの企業を指す
株式会社シーユーシー
既存の枠組みだけでは目の前の医療課題をスピーディーに解決できない。ぜひプロジェクトをオーガナイズしてほしい、プロデュースしてほしい──。
これは、社会が未曾有の危機に陥ったコロナ禍真っ只中において、行政からCUCに向けられたメッセージである。この一言で、行政がCUCをどのような位置付けのパートナーとしてみているのかが分かるだろう。
まず前段のおさらいとなるが、医療という市場は40兆円という巨大なマーケットである。この規模感は、ストレートにこの業界が抱える課題のサイズや量を表していると捉えてもらって構わない。そしてこの時点で「確かに…」と感じる読者もいるはずだ。そう、コロナ禍のような緊急事態において、行政主導の医療サービスの提供“だけ”では、課題解決が追いつかないのだ。
そこで登場するのがこのCUC。同社は、他社に見られる様な業務効率化SaaSや人材紹介などといった、“医療における、ある一部分の課題解決”のみにフォーカスする企業ではなく、あまねく医療課題を解決する“モデル”そのものを創りあげることを生業としている。これを読者向けに言い換えると、同社には、医療現場が抱える課題に対して、“常に事業を開発し続ける”環境が備わっているということだ。
では具体的に、ここからは“with行政”で取り組んだ同社の事業推進事例を紹介しよう。時を遡ること2021年初頭、コロナ禍で苦しむ社会情勢のなか、CUCの『コロナ対策プロジェクト』なる取り組みがパートナー企業及び医療機関らの協力のもと始動した。
このプロジェクトは、行政だけでなく医療機関の連携も構築しながら、通常は3カ月〜半年掛かるであろう取り組みを、僅か2週間という速さで実行まで取りまとめた。それも、ボランティアではなく、事業として収益が見込めるモデルを組んだ上での話だ。CUCはこのスピード感で行政団体を中心とした複数のステークホルダーを巻き込みながら、数百人の人命を救い、事業収益も得ることができたのだ。
その要因は、CUCの事業開発室長・広田 幸生氏いわく、大きく分けて2つある。1つめは、行政から“下請け”や“発注先”としてではなく“志を同じくするパートナー”として認められているということ。2つめは、ヘルスケアマネジメントの領域で幾度となく事業開発をしてきた経験を持っていることだ。
そんなCUCだが、実は意外にも「医療バックグラウンドを持つ人材は多くはない」というのだから、驚かされる。
医療というと、一般的な感覚では専門性が求められそうな領域だが、同社において求められるものはそこではない。むしろ、業界の常識や慣習に疑問を持ち、「変えていこう」という信念を持って事業を推進する気概こそが求められるのだ。まさに事業開発、BizDevの最前線の一つと言えるだろう。
コンサルやメガベンチャー、大手事業会社など様々なバックグラウンドを持った人材が集まるCUC。今後どのようなイノベーションをwith行政で実現していくのか、要注目だ。
TRUSTDOCK──迫るオンライン時代の本人認証の必要性。100年後、安心できる未来をつくる
TRUSTDOCK
あなたは、Slackなどチャットツールで業務上のやりとりをしている相手が、本当にその本人なのかどうかを気にしたことはあるだろうか。実はいつの間にか、その先にいるのは別の誰かになっていたとしたら……。考えるとゾッとしてしまう。
コロナ禍をきっかけに、リモートワークやハイブリッドワークは急速に浸透した。その流れに伴い、オンライン上のセキュリティへの関心も高まっただろう。安全なネットワークを使っているのか、公共の場で機密情報を取り扱っていないかなど気をつけているはずだ。しかし、先ほど述べたようにリモートワークで繋がっている人の「本人性の担保」が今後ますます必要となる。そう語るのは、TRUSTDOCKの代表取締役CEO、千葉孝浩氏だ。
2020年9月、ドコモ口座で不正引き出し事件が発生。デジタル時代の本人確認に焦点が当たりました。デジタル時代の身元証明の第三者機関を目指すTRUSTDOCK代表の千葉孝浩さんに、現状の課題と今後やってくる本格的デジタル社会の本人確認のあり方について話を伺いました https://t.co/tFhbhWaAfd
— Coral Capital (@coral_capital) November 8, 2020
TRUSTDOCKはeKYC(electronic Know Your Customer)を専門に扱い、オンライン上の本人確認をスピーディーかつ安全に行えるソリューションを展開している。そしてこのeKYCの導入がもっとも求められているのが、行政の手続きなのだ。TRUSTDOCKとMMD研究所が調べた情報によれば、「eKYCの導入を拡大してほしいと思うサービス」で行政手続きが41%と1位だった。
具体的な取り組みもすでに進んでいる。例えば、農林水産省共通申請サービス、通称「eMAFF(イーマフ)」において、本人確認証明の領域をTRUSTDOCKが担っている。また、同社によるとマイナンバーカードの普及率は2022年2月の時点で5,200万枚と41.8%を超え、いよいよ普及期に入ってきたという。今後ますます行政サービスにおいて、eKYCの必要性が高まっていくことは間違いない。
なぜ、導入ハードルの高そうな行政という事業領域で、このような展開を進めることができているのだろうか?それはCEOの千葉氏自身が、eKYCの必要性と、その仕組みを担っていくことの責任をもっとも強く感じて活動しているからだ。「デジタルにおける基本的人権」と捉え、行政における必要性をひたすら思考し、伝え続ける(参考記事はこちら)。見ているのは目先でなく、100年先のあるべき社会像だ。
社会から望まれていることは革新的でインパクトのあるイノベーションだけではない。足下を固め、現実的なソリューションをしっかりと社会に根付かせることにも大きな意味がある。TRUSTDOCKからはそんな堅実さを教えられる気がする。
私たちの生活を本当の意味で豊かにするため、行政は切っても切り離せない。むしろ新しい仕組みやサービスをつくりだすよりも、行政が用意しているわかりづらいサービスの利便性を、向上させることが本質的な社会課題の解決とも言える。
今後何十年、何百年と続く価値を創出するのは、今回紹介した6社のようなスタートアップではないだろうか。
こちらの記事は2022年06月28日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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