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良い企業に就職したい人はいらない 異端ベンチャー「イタンジ」

「ナチュラルボーン経営者は誰だ?~注目すべき学生時代起業経験のある経営者10選~」で紹介した「イタンジ」代表取締役CEOの伊藤氏。「学生時代に起業で借金1000万円を抱える」「40名弱いた社員が9名まで減少」という修羅場を潜り抜け、現在では「不動産×IT」領域で一際異彩を放つ存在まで成長させた。見据えるのは財閥系の企業規模。率いる伊藤氏は起業ストーリー、経営マインド、人材眼までもちろん異端だ。
特集 一風変わったイノベーター集団 ITANDIの秘密
世界を変え、「新たな未来」をもたらす革新
PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
17-08-22-Tue
伊藤 嘉盛(いとう・よしもり)
イタンジ株式会社 代表取締役CEO
角 高広(すみ・たかひろ)
イタンジ株式会社 事業開発

異端児・伊藤

なぜ起業しようと思ったのか?その問いに対し、彼はあまりにクール。

伊藤「母方・父方の祖父、父、兄が全員起業しているという起業家一家だったので、起業自体に抵抗がありませんでした。それから、借金を返済する必要に迫られていたことも大きな要因です。実は今回が初起業という訳ではなく、学生時代にも起業しています。結果的に失敗し、1000万の借金を背負いました。借金を抱えて不動産領域の企業に就職したものの、社内の画一化された紋切型カルチャーに嫌気が刺しました。

このままだと返済が追い付かないということで、結局1年半で退職。モリスジャパンという不動産仲介会社を設立しました」

借金1000万という壮絶さを微塵も感じさせず、自身の苦労話を淡々と語る。社名のごとくタダ者ではない雰囲気を醸している。

不動産領域で起業した理由も興味深い。父親が不動産関連の会社を経営していたため幼少期から家庭では常に不動産の話題で持ちきりだったという。その影響で、物件を見ると坪単価のことが頭によぎるようになった。

伊藤「幼い頃から不動産関係に多く触れてきたので、自然と洗脳されていた可能性があります」

独力で起業したため、物件の入力から、広告、契約、経理、トイレの掃除のような雑務まですべて1人でこなす。

伊藤「おかげで不動産仲介業における業務フローの全体像を捉えることができ、改善すべき非効率性に気付きました」

思い立ったらすぐに実行する性分。自動化できる業務はすべて自動化した。最初に着手したのが、Excel VBAを用いた物件の自動入力だった。その過程でウェブに業務効率化の可能性を大きく見出す。

夢中になる余り、オンライン仲介の不動産会社として都内有数の実績を誇るようになっていたというから驚きだ。そして不透明で非効率な不動産業界全体をテクノロジーで変えたいという想いから、新たな不動産テック事業に集中するため、オフラインの仲介であったモリスジャパンを売却。これがイタンジの創業ストーリーだ。

イノベーション、イノベーション、イノベーション

ソフトバンクの孫正義氏、ファーストリテイリングの柳井正氏のように、大きく飛躍する企業の創業者は良くも悪くも個性的。そして会社の運営方法も独自のスタイルが貫かれていることが多く、伊藤氏の場合も例に漏れない。

ある社員は彼のことをこう評する。「0→1を生み出し、周りを巻き込んでいく力が誰よりも優れています。リスクを全く恐れない特攻隊長みたいな人ですね」

事実、伊藤氏の信条はこうだ。「誰もやっていないことをやるのが、実は破壊的イノベーションを起こす上で最も効率の良い方法」

その伊藤氏の人格が企業カルチャーに色濃く反映されている。

PayPal創業者であるピーター・ティール氏の言葉を借りれば、イノベーションは業界の均衡点を破るもので、論理で説明できないものだ。イノベーションを目指す以上、説明できることをやるのは理にかなっていない。社内ですら反対意見があるくらいの方がいい。

伊藤「社長の私が反対意見を述べているのに、それでも意志をもって事業を立ち上げようとする社員は認めるべきでしょう」

「マーケットがない」「シリコンバレーでは前例がない」といった合理的な理由で反対されたとしても納得しない。イタンジのメンバーは、強い意志をもって事業をやり遂げることが成功に繋がると信じている。

もちろん、目の前のことに全力で取り組む姿勢は衝突を生むこともある。2年前には組織の方向性について意見がすれ違い、ボードメンバーが去る。同時に40人弱だった社員が9人まで減少し、倒産の危機を迎えた。

また、投資家と意見が食い違う時もある。以前、「19時退社でも新規事業が生まれ続ける企業はいかにして誕生したか?」 という記事で紹介したように同社では、新規事業がすべて採用される。

これは投資家からすると、エクイティストーリーとは異なった事業展開の可能性を意味し、リスクとも取れてしまう。

伊藤「投資家にとって我々はあくまでポートフォリオの一つ。我々は人生を懸けているし、何十倍も事業について考えているので自信をもって決断しています。投資家の方には、事業経営スタイルまで含めて理解していただけると嬉しい」

危機の中で生まれたサービス「ぶっかくん」では、事業化の際には意図されていなかったことが起きた。サービスを通し、機械学習に必要なデータを質・量共に業界内でも群を抜いて取得可能になったことだ。

ぶっかくん | 物件確認(物確)電話の自動応答システム

伊藤「当時はこれほど良質なデータを取得出来るとは考えてなかった。むしろ、事業として成り立つかどうかも半信半疑でした」

将来的には、既存事業で取得した情報を基に、横断的なデータベースを構築する。各サービスを連携させることで、仲介会社によるリアルタイムな物件の空室状況確認と、AIによる自動返答の精度向上を実現していく。より一層、AI・ビッグデータの領域を強化していく方針だ。

伊藤「最終的には財閥系の規模感以上に成長したい。テクノロジーの力があれば不可能なことではない。むしろ勝算はあります。イノベーションのジレンマによって大企業が自社の既存サービスを縮小させてまでテクノロジーで代替を行っていくことは考えにくいからです。一方でスタートアップ企業は、既存サービスがないのでカニバリゼーションが起こらない。理想から逆算をすることで、業界にとってベストな設計をすることができると考えています」

ポジションや職種なんて関係ない。活躍する人材の共通項とは?

「僕はリクルートの社是である“自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ”という言葉が好きなのですが、入社前に感じたイタンジの社員の異常な主体性がまさにそれでした」

イタンジ事業開発部の角高広氏は、こう当時のことを振り返る。

例えば採用面接。角氏が参画する前には人事担当がいなかった。そのため社員で一番初めに応対した人が面接を行うなど、通常考えられないようなフローで行われていた。異常な主体性の成せる業だ。どうしてそのようなことが起きうるのか。

「事業が好きな人が多いからではないでしょうか。会社全体で、不足する役割があれば気付いた人が補おうとする。エンジニアだから開発しかしないといったような人はいません。そういった姿勢で働くと、空気が合わず辛くて辞めちゃうでしょうね」

入社した以上社員それぞれの主体性に委ねられて業務が行われる。新規事業はすべて採用されることを始め、業務、プロダクトレベルでの小さな改善点であれば、上司に報告義務はない。

イタンジがこの特異なカルチャーを希薄化させないために気を付けていること。それはエントリーを厳しくすることだ。採用目標を定めないことで絶対基準での採用を徹底している。

「各事業部から人材要件は来るものの、それが目標とはならない。本当に一緒に働きたいと思える人だけ採用します。どうしても人材が不足するようであればアウトソースしますね」

人間性、論理性に問題がなく、カルチャーフィットしている人しか採らない。時期によっては誰も採用されないこともあり得る。

外資系出身者のようなハイキャリアで優秀な人材は喉から手が出るほど欲しいはず。しかしイタンジでは関係ない。

「我々はイノベーションを起こすために人を採用している。最も重要なことはカルチャーにフィットすること。その上で優秀であれば採るが、優秀であることは十分条件ではない」

このような考えが徹底されるようになったのは、かつて経歴が優秀であることを重視し採用した所、事業が上手くいかなかった背景からだ。

「個人的にベンチャースタートアップの存在意義はイノベーションを起こすことにあると考えている。ロジカルを突き詰めて成功する事業は資本力のある企業に優位性があります。経験的に、論理的に導き出された結論は、他社も既に実践しているケースも多いです」

イタンジが目指すのは、あくまでも“イノベーションを起こすこと”。

そのためにはコロンブスのように常識を疑い、自らの信念を持ち続ける必要がある。

「イノベーションを必ず起こせるかはわからない。あくまでも我々にとって最善の方法を取るだけです。それが“非合理を合理的に選択”するということです。正直外部の人からすると回り道しているようにも見えるかもしれないですね」

話を聞いているうちに、有名なフレーズがリフレインした。故スティーブ・ジョブズ氏がスタンフォード大学で行ったスピーチの一節。“Connecting the dots(点と点を繋げる)”だ。

“自分の根性、運命、人生、を信じ、今目の前のことを全力でやりきること。
未来に先回りして“点と点を繋げる”ことはできない。
今現在非連続な点であっても、将来振り返ったときに、はっきりと繋がっている”

非合理という点が繋がった時、イタンジは異端から正統になっているのであろう。そうなっても常識にとらわれるイタンジなんて考えられない。この伊藤氏の言を聞く限りは。

「はっきり言います、良い企業に入りたい人は来ないでください」



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