エンジニアは「開発をする人」ではなく、「問題解決のプロ」であれ!──経営イシューにも果敢に挑むLIFULL seniorの開発陣から、エンジニアとしてのキャリアを大きく飛躍させる思考法を学ぶ

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インタビュイー
望月 義隆
  • 株式会社LIFULL senior テックリード 

LIFULL seniorテックリード。新卒ではSIerに入社し、大手企業の品質管理業務を経験。その後、ゲーム会社での開発業務を経て2010年にLIFULL(旧ネクスト)に入社。

名和 厚樹
  • 株式会社LIFULL senior 

生物系の大学院修士課程を卒業後、金融系システムを開発するSIerに新卒入社。自社サービスを開発できる環境を求めて、2016年にLIFULL seniorに転職。

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エンジニアとは何をする人なのだろう──。「仕様書を元にプログラムを書き、システムやサービスを作る人」というイメージを持つ読者がまだ多いかもしれない。

だが、時代の波は常に移り変わり、AIの息吹によりプログラミングの風景も変容している。この移ろいゆく空の下で、未来のエンジニアはどのような姿になっていくのだろうか。

そこで、今回は、LIFULL seniorでエンジニアとして活躍する望月氏と名和氏にインタビューを実施。というのも、LIFULL seniorのエンジニア組織は、全員がフルスタックエンジニアの少数精鋭。ユーザーやビジネスサイドからのリクエスト通りに開発するのでは、もちろんない。サービスの企画から積極的に関わるという実にユニークな様相を呈している。

まさに「問題解決のプロ集団」。そんな実態を持つこのエンジニア組織の強みや特徴を今回は、紐解いていきたい。

LIFULL seniorは介護領域の企業だから自分とは関係ない?そんな読者ほど、この続きを読むことを推奨したい。LIFULL seniorが挑む社会課題は詰まるところ、「日本のお金と人」だ。同社エンジニアたちが、この大きな社会課題をどのように捉え、どのように開発を進めているのか、その在り方は間違いなく、他のどの領域にも通ずるはずだ。さあ行こう。

  • TEXT BY HANAKO IKEDA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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エンジニアは「開発をする人」ではなく、「問題解決のプロ」であれ

LIFULL seniorといえば、老人ホームや介護施設を検索できる日本最大級の検索サイト『LIFULL 介護』をはじめ、『みんなの遺品整理』『買い物コネクト』『tayorini』といった高齢者だけでなくその家族にも必要とされるサービスを次々と展開してきた。

しかし、驚くべきはLIFULL seniorの開発チームは、現在エンジニアの正社員が5名と業務委託が1名とかなりの少人数で構成されているということ。

なぜ、少数精鋭で複数のサービスをローンチし、改善し続けられるのだろうか。その背景には、LIFULL seniorの開発チームは全員がフルスタックエンジニアで構成されているというユニークネスが存在している。

望月現在エンジニアは正社員が5名と業務委託が1名ですが、この人数で自社サービスの開発と保守、オウンドメディアなどのサイト構築、社内のデータ分析やテクニカルサポートまで対応しています。もちろん各自の得意不得意はありますが、基本的には全員あらゆる分野の開発ができますし、やっている状況ですね。

私自身、入社してからはサーバーのインフラ設計からバックエンドのアーキテクチャ設計、アプリケーションの開発まですべて経験しました。

自分の得手不得手に応じて、設計から実装保守に至るまでフルスタックに関与できるのは、知見の幅を広げたいエンジニアにとっては魅力的に映るかもしれない。

とはいえ、フルスタックエンジニアは、フロントエンドからバックエンド、データベースやインフラストラクチャまで、多岐にわたる知見が求められるもの。それらすべてのスキルを持ち合わせたエンジニアの存在は非常に稀と言える。転職市場でも引く手あまた、つまり採用難度も高く、人材の引き留めが難しい。

そんな中、なぜLIFULL seniorは、フルスタックエンジニアとして活躍できる素養があるエンジニアを的確に採用し、実際に運用を進められているのか。これには、どうやらLIFULL senior社内における開発チームの独自の立ち位置が関係しているようだ。

名和LIFULL seniorのエンジニアの仕事は、ビジネスサイドから「こういう施策をやりたい」「こんな課題があって…」という相談を受け、どう解決するかを考えるところから始まります。つまり「開発をする人」ではなく、「問題解決のプロ」という立ち位置なんです。

仕様書の通りに開発するのではなく、エンジニアが思うベストな問題解決の方法を企画段階で提案できて、それを実際の開発に活かすことができる。これはエンジニアとして働く上で、とても魅力的ですよね。

仕様書が先に出来上がっている環境だと、エンジニアが「もっと良い方法があるのに…」と思うことがあっても、どうしても仕様書の通りに開発を進めることが優先になってしまいがちです。エンジニアにとっては開発すること自体も楽しいので、もちろんそれも面白い環境ではあるんですけれども。

実際に、新サービスの立ち上げでも一人のエンジニアが企画段階からプロジェクトに加わり、設計からローンチまでをすべて実行するケースもあるという。フルスタックエンジニアとして幅広い経験を積みたい人にとっては最高の環境と言えそうだ。

同時に、「少人数のフルスタックエンジニアが社内の至る所から発案されたユーザーの課題を一挙に引き受ける」と聞くと、労働環境としてはかなりハードなのでは?という疑問も浮かぶ。また、ITの技術は日進月歩、常に知識をアップデートしなければならず、担当領域が増えれば、その分勤務時間も増えそうなところ。しかし、意外にも残業はほとんどないというのだ。

望月私が入社した数年前こそハードな働き方をしていた時期もありましたが(笑)、現在はチームとしてほとんど残業が発生していません。テックリードである私も、定刻の18時ごろには仕事を終えていることが多いですね。

開発組織の方針として、やるべきことと、やらないことのメリハリをはっきりさせる、つまり優先順位を明確にしていることが要因だと思います。

また、入社してすぐフルスタックであることを求めている訳ではないんです。まずは自分が得意なことからやってもらって、興味があることにどんどんチャレンジしていってもらえれば、自然とスキルの幅は広がりますから。

両氏は取材中一貫して「フルスタックエンジニアといえば、大変なこともたくさんあるが、困ったことがあれば必ず周囲の人が助けてくれるので乗り越えられる」と語っていたのが印象的だ。

そして、その相互扶助の精神はこれまでのLIFULL seniorの連載をご覧いただいた読者にとってはお馴染み、「利他主義」という社是に起因している。

思い返せば、前回LIFULL seniorの若手人材3名にインタビューした際も、利他主義について「相互の助けあいを意識して働くことは、組織として望ましいことであり、それが巡り巡って自分のためにもなる」と表現したメンバーがいたことは記憶に新しい。

そこで次章では、少数精鋭でも、複数のサービスを次々と立ち上げるLIFULL seniorの開発組織の強みを、同社の社是でもある「利他主義」という観点から紐解きたい。

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「魚を与えるのではなく、釣り方を教えよ」。
これが「利他主義」の本質?

LIFULL seniorのエンジニアはフルスタックであるがゆえに求められるスキルの幅が広く、加えて介護領域の知見がまったくない状態で入社する人も多いため業界知識のインストールも必要だ。それでも、「利他主義」の精神が作用することで、窮地を乗り越えることが可能だという。

望月緊急案件が突如として発生して、当初の開発計画を一時的に中止しなければならないことがありました。そんな状況で、私を助けてくれたのがチームのメンバーだったんです。

そのメンバーは、デザイナーとペアコーディングを実施して、エンジニア・デザイナー間で可能な限り手戻りが起こらないように進めてくれました。そのおかげで、無事に計画通りのリリースが実現できたんです。

このように、LIFULL seniorではエンジニアとデザイナーが密接に連携しながら作業を進めるスタイルを採用しています。例えば、デザイナーが主にHTMLやCSSの実装を担当するのですが、予期せぬスケジュールの変動で作業が滞ることもありますよね。

そんな時は、エンジニアが先行して一部の実装を進め、後からデザイナーとの確認を取るアプローチをとることもしばしば。おかげで、例えタイトなスケジュールであっても、計画通りに開発を進めることができるんです。

また、反対にエンジニアのテスト作業をデザイナーがサポートしたり、UIコンポーネントの実装をデザイナーが手掛けるケース、あるいはデータのチェックを他チームがサポートするなど、利他主義の精神が随所に見られます。

名和開発組織に限ったことではないのですが、LIFULL seniorのメンバーはチーム内外問わず「これは自分の仕事じゃない」と言わないカルチャーがあるなと思います。

例えば営業出身のディレクターが、介護施設側との調整をしてくれたりだとか。本来自分が直接関わっている仕事でなくても、自分に知識があって助けられる分野なら快く手を貸してくれる文化があると思いますね。

「支え合う」というと少しずれるかなと思うんですが、「自分ができることは惜しまずやる」というスタンスが皆んなにあって、それが結果的にお互い助け合うという形になっているのかなと。ヘルプを求めればちゃんと誰かが助けてくれるという意味での「利他主義」という文化なんだと思います。

「これは自分の仕事じゃない」は、場合によってはとても便利な言葉だ。人助けなどしない方が、自分自身のパフォーマンスにとっては良いと感じる読者もいるかもしれない。

人助けはある意味コストパフォーマンスが悪い行為という見方もあるが、なぜLIFULL seniorでは誰もが当たり前のように人を助けるのだろうか?

望月「自分の仕事じゃない」と断ってしまうのは短期的にはコストパフォーマンスがいいかもしれませんが、長期的に考えればコストパフォーマンスの悪い行為だと思うんですよ。

どんなに優秀な人でも、努力していても、困る場面は必ずあります。自分が困っているときに気軽に助けを求められることと、逆に自分に余裕がある時に人を助けられること。これらが両立できていて、お互い助け合える状態が本当の意味でのコスパだと私は思います。

誰かを助けることは、巡り巡って自分を助けることにもなります。それは結局組織のためにもなるので、短期的なコスパは考えず、シンプルに困っている人がいたら助けになろうというスタンスが「利他主義」なんじゃないかと考えていますね。

名和ほぼ同意見ですが、個人的には「利他主義=全方向に対しての最適解を考えること」という感覚もありますね。

例えばとある問題を解決する際は、サービスを利用してくれるエンドユーザーにとっての最適解だけを考えていては不十分です。サイトに掲載してくださる介護施設や、我々LIFULL seniorの社員にとって最適解なのかどうかも、平等に考えなくてはいけないと思っています。

「利他主義の解釈は、人によって違っていて良い」。望月氏の口から、前回の記事にて登場した同社の若手3名と同じ発言が飛び出した。

望月私と名和でも利他主義の解釈に少し幅があるように、人それぞれの答えがあるんだと思います。「上から言われただけ」で腹落ちするなんて単純な考え方では、本質的な利他主義はできないと思うんです。「言われたことを」を起点にして社員一人ひとりがしっかりと考えることが重要だと。

そんな私は、利他主義とは「相手のことを考え続けること」だと思っています。困っている人をただその場で助けるのではなく、何が一番相手のためになるのかまで考えることが利他主義なんじゃないかと。

例えば、水が乏しくて困っている発展途上国に井戸を建てるとしましょう。しかし、水がないところにひとつ井戸を建てても、のちにその取り合いの問題が生じるかもしれません。その後の現地の方々の生活を考えれば、井戸を建てるより、掘り方や工具の作り方を教えて自立を促す方が適切ですよね。「魚を与えるのではなく、釣り方を教えよ」という有名な老子の格言にも通じます。

仕事における人助けも同じで、相手の困りごとを表面上解決するだけでは意味がないこともあります。どんな手助けの仕方が相手にとって、ひいては組織にとってベストなのか?まで考えて行動するのが、LIFULL seniorが目指す『利他主義』なのかもしれないと思いますね。

「利他主義」が意味するところは、やはり前回記事とも共通点が多い。一方で、今回の取材においては、エンジニア視点ならではの新たな解釈も見つけることができた。

「エンドユーザーの最適解だけでなく、介護施設やLIFULL seniorのメンバーの立場も考慮に入れるべき」と力説する名和氏の言葉には、その背後にあるエンジニアとしての深い情熱や責任感が鮮明に伝わってくる。これは単に技術的な問題解決だけではなく、人と人との関係性や共感にも繋がる考え方である。

そんな2人のエンジニアとしての価値観は、どのようなキャリアを経て、どのような経験から生まれてきたのだろうか。

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自社開発ができる環境を求めてSIerから転職

現在はフルスタックエンジニアとして活躍し、後進メンバーの育成にもあたる望月氏・名和氏だが、両者とも新卒ではSIerでの品質管理や受託開発からキャリアをスタートしている。

望月SIer時代は、上から降りてくる仕様書の通りに開発することにやや物足りなさを感じていました。分業制だったので、自分が目指していたジェネラリストとして幅広いスキルを身につけるのは難しい環境だったこともあり、転職を決意。ゲーム会社を経て、2010年にLIFULL(当時の社名はネクスト)に入社しました。

開発業務自体はSIerでも経験できたのですが、「デザイナーや営業、企画のメンバーと連携して問題を解決していく、問題解決のプロとしてのエンジニア」の仕事は、自社開発を行っているLIFULL seniorだからこそ経験できるものだと実感しています。

名和私も新卒ではSIerに入社して、金融系のシステム開発を経験しました。SIerはスケジュールや開発規模によって多くの制約がある中、期限内に発注元から依頼された仕様通りに開発していくことが最優先です。自分が思う「いいもの」「いい開発」をするには自社開発ができる環境の方が合っていると考え、2016年にLIFULL seniorに転職しました。

LIFULL seniorは親会社(LIFULL)が上場企業ということもあり、開発環境が充実していたのも魅力でしたね。エンジニア全員にMacBookProが支給されるなど、当時のWEB系の会社の中でも、開発環境はかなり恵まれていたと感じます。

直近では、エンジニア向けのプログラム支援AIツール『GitHub Copilot』がエンジニアの要望起点で導入されました。書きかけたプログラムの内容からAIが完成形を類推して出力してくれるので、生産性の改善という観点で非常にありがたいです。

SIerではプロジェクトによっては業務中のインターネット利用にも制限があり、技術情報を調べることすら苦労したこともあった。受託開発ならではの難しさを経験した両氏だからこそ、企画からローンチまで関わることができ、エンジニアの意志でより良い環境にできるLIFULL seniorに惹かれたことが伝わってきた。

一方で、近年では自社プロダクトを持つからこその“とある難しさ”に直面しているという。順調にサービスを拡大している背景に、一体どんな課題があるのだろうか?

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「検索サイトからどう進化させるか」が『LIFULL 介護』の次のステップ

LIFULL seniorの主力事業である『LIFULL 介護』は、全国の有料老人ホームや介護施設からニーズに合った施設を探せる検索サイトだ。掲載施設数は日本最大級の52,000件以上と充実しているが、実は「検索サイトだけでは解決できない課題」も見えてきているという。

望月現在の『LIFULL 介護』は検索サイトである以上、明確なニーズを持っていない・ニーズが分からず検索ができない人に対して提供できる価値には限界があると感じています。

介護施設は実際に入居する高齢者ではなく、その子ども世代が探すことが多い、つまり「施設を探す人」と「実際に入居する人」が異なるので、探す側がニーズを明確にしづらいという前提があります。

さらに、介護施設が必要な場面はある日突然やってくることがほとんど。「親や祖父母が倒れて、入居する施設を急いで探さなければならないけれど、どんな条件で検索すればいいのかまったく分からない」というケースが非常に多いんですね。これらの特性が、例えば不動産などのポータルサイトと決定的に違う部分です。

本来であればこれらは経営陣や、事業責任者が考えるべきイシューかもしれない。しかしLIFULL seniorのエンジニアは単に“受け売り”ではなく、この課題への対策を自ら模索している。

望月ユーザー自身も言語化できていないニーズをいかに紐解き、具体化していくかの段階からサービスが提供できれば、施設を探す人や入居者自身によりぴったり合う施設を紹介できるようになるはず。

また、「介護施設を探す」は一生のうちで何度もあるイベントではないですし、施設によっては入居するまでに数十万円から数百万円、場合によっては1億円以上もかかるところもあります。介護施設の入居を「大きなお金が動く、絶対に失敗できないイベント」と考えてもらうと、「最適な施設を提案すること」の価値がどれだけ大きいかイメージしやすいですよね。

そもそも介護施設側の情報がまだまだデータベース化されていないなど課題も多いですが、今後は『LIFULL 介護』を「ユーザー自身も自覚していないニーズを掘り起こし、本当にその人のためになる施設を紹介できるサービス」に進化させていきたいんです。これが『LIFULL 介護』の次の大きなステップ。私自身非常にワクワクしながらも、やりがいを感じています。

検索でカバーしきれないニーズに対して、最初の取り組みとして『LIFULL介護入居相談室』という有人の電話相談窓口対応のサービスをローンチ。一方、人が対応するため、どうしても受付時間や電話の繋がりやすさに制限が発生してしまうというのも課題だ。

名和経験豊富な相談員が丁寧にヒアリングして施設を紹介するので、利用者の満足度は非常に高いです。ただ、やはり人力で対応するのには限界があります。介護施設を探す子・孫世代は日中働いている方も多いですから、理想は24時間対応できるようにしたい。これを解消するためには、今後はAIも活用し、24時間いつでも相談できるような体制も考えていきたいですね。

ユーザーの課題をより良い形で解決するため、基幹サービスの根本設計自体を進化させていきたいと語る両氏は、まさに「問題解決のプロ」である。介護にまつわる色々な問題に試行錯誤し、時に壁にぶつかりながらも、その過程に心からワクワクしていることが伝わってきた。

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ユーザーの課題に向き合うのは当たり前。
大事なのは社内メンバー含めた「全方向に対しての最適解」を追求すること

検索サイトから次への進化が目下の課題だという『LIFULL 介護』。名和氏の発言から頭出しがあった通り、今後最も力を入れていく開発分野の一つがAIだという。

とはいえ、介護施設探しは、入居者本人とその家族の人生に深く関わり、大金も必要になるイベント。だからこそ、一口に「AIの活用」といっても、「閲覧履歴と問い合わせ履歴からその人に合った施設を紹介する」程度では本質的な問題解決には至らないのだ。

単純なデータの紐づけだけではない、ユーザー一人ひとりに合わせたきめ細やかな設計が求められるという。

望月まずサイトを訪れた人がどんな悩みを抱えているのかを詳細にヒアリングする必要があります。施設への入居を検討されているのか、そもそも入居するべきかで迷っているのか。入居者の方の健康状態はどうか、資金はどの程度あるか…困りごとや状況は本当に人それぞれ違います。

仮に入居者の方が持病をお持ちの場合、理想は「この持病がある方は数年後にこちらの疾患を発症する可能性があるので、最初からその疾患まで対応できる、この施設に入居しておいた方が安心です」というレベルの提案をAIで自動生成することを目指したい。そのためには、過去の膨大な事例や施設の情報を元に最適な施設を提案できるAIを開発する必要があります。

今はこの一連の流れを『LIFULL介護 入居相談室』のスタッフが担ってくれていますが、その回答パターンを機械学習に活用することも考えられるはずです。相談員の人格や提案能力をトレースしたチャットボットなんかも作れるかもしれませんね。

加えて、名和氏はユーザーの幸せのみならず、LIFULL seniorメンバーにとっても最適な解を追求し続けたいという胸の内を明かしてくれた。

名和ユーザーにとっては便利な『LIFULL介護入居相談室』も人力だけだと、LIFULL seniorのメンバーにとって最適とは言えないですよね。

「利他主義=全方向に対しての最適解を考えること」を目指す私にとって、ユーザーのことを考えるのはもちろん、社内のメンバーもサポートし、幸せになることも同時に目指したいんです。

日本最大級の介護施設情報が集まる『LIFULL 介護』には、AIの学習データの元となる施設やユーザーの情報も豊富に存在する。検索サイトとして蓄積してきたアセットをフル活用して、AI分野で最先端のサービス開発に携われる可能性があるのも、LIFULL seniorでエンジニアとして働く魅力の一つと言えそうだ。

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全社の組織課題もエンジニアが解決したっていい

フルスタックエンジニアとして自社サービスの開発に企画から携わることができる、今後はAIの活用にも力を入れていくなど、LIFULL seniorのエンジニアが得られる成長機会について掘り下げてきた。またエンジニアから見た「利他主義」を通して、開発部門のカルチャーも垣間見えたことだろう。

せっかくなのでここからは、LIFULL seniorのエンジニアが描く組織の未来にも切り込んでいきたい。現状は少数精鋭のフルスタックエンジニア集団、今後はどんな開発組織にしていきたいのだろうか?

望月組織としては、「エンジニア」という枠ではなく「会社全体で抱えている課題を解決するチーム」にしていきたいですね。

正直に言うと、今のLIFULL seniorのエンジニアは営業や相談員など他部署のメンバーから見て「よくわからないけどすごい人たち」という漠然とした印象を持たれることがあります(笑)。

というのも、他部署からはエンジニアが具体的に何をやっているのか分からないので、エンジニアの抱える課題感が理解しづらい。同様に、エンジニアからも他部署の課題が見えづらい状態になっていると感じることがあるんですね。

今後我々がエンジニアとして取り組むべきは、こうした部署間コミュニケーションの改善です。エンジニアなら即解決できる課題が他部署にたくさん転がっているのに見えていないという状況なので、まずはそれらの課題を可視化し、エンジニアの方から積極的に解決しにいける体制を整えたいですね。

本来、全社の組織課題を解決するのはエンジニアの役割を超えているかもしれない。しかし、繰り返しになるがLIFULL seniorのエンジニアは「問題解決のプロ」。自分たちの限界を取り払い、最大限に思考を巡らせるというスタンスは、その自負から来ているのかもしれない。

エンジニアが積極的に全社の課題を取りに行き、解決できるようになれば、LIFULL seniorは会社としてもさらにパワーアップするはずだ。

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介護領域の知見は一切不要。
あくまでものづくりが好きか、問題解決にワクワクできるかどうか

LIFULL seniorでエンジニアとして働くとは、単なる自社サービス開発の枠を超え、時には組織課題まで幅広い問題解決能力が求められることが分かってきた。同時に、フルスタックの開発経験も積むことができる。エンジニアという枠におさまらず、自分の可能性を広げたい人にもうってつけの環境とも言えるだろう。

一方で、やはり「介護領域」であることに不安を感じる人も多いのではなかろうか。介護の問題は誰もがいつかは直面する課題とはいえ、その瞬間が来るまでは自分ごと化しにくいもの。ユーザー理解が乏しい状態でチャレンジして本当に大丈夫なのか不安に思う候補者もいるのでは?と尋ねると、両氏ともに「まったく問題ない」と言い切った。

名和私自身、介護領域の知見は全くない状態で入社しました。入社後に祖母の入院・介護を経験したので結果的にそれが仕事にも活きたという経緯はありますが、介護の当事者でないことがLIFULL seniorで働くことの障壁になったことはありません。社内には介護業界での経験が豊富なメンバーもいるので、困ったら詳しい人に聞けば解決できるという安心感もありますね。

望月LIFULL seniorで提供しているのは一見「介護施設を探す」「介護領域の問題を解決する」ためのサービスですが、最終的には「日本のお金と人の問題を解決するためのサービス」なんです。

「日本のお金の問題」とは、つまり財政問題。今後ますます少子高齢化が進み、社会保障費は増大していくのに現役世代は減ってしまいます。それに伴い社会保険料もどんどん上がっていますが、このままだといずれ介護という業界自体を揺るがしかねない事態になる可能性もあります。

「人の問題」はすべての業種に共通することですが、現場で働く人材が足りないという問題です。介護の現場はまだまだアナログな作業が多いので、少ない人材で現場を回せるようにするには、いかに業務を効率化しデジタルに移行していくかが大事です。

我々は介護領域でデジタル化を進め、現場の無駄な仕事やコストを減らすことで、「介護業界のお金と人」の問題を解決しようとしています。介護という枠組みで見ると多くの人にはまだ訪れていない、自分とは遠い世界のように感じるかもしれませんが、「財政と人材不足」という枠組みで見れば、同じような問題はあらゆる業界で共通しますし、今後さらに顕在化してくることは間違いありません。我々が今取り組んでいる問題解決のノウハウには、他の業界や業種で活かせるものも数多くあるはず。

今いるエンジニアも、介護とは関係ない業界出身のメンバーがほとんどです。業界の知識や経験よりは、純粋にものづくりが好きな気持ちや、問題解決にワクワクするかどうかの方が重要だと感じますね。

介護は誰もが避けて通れないものだが、顕在化するタイミングには人によって差がある。特に若い世代なら、「我々は介護領域に挑む企業です」と言われてもピンとこない人も多いだろう。だが、介護領域への関心と、LIFULL seniorでエンジニアとして活躍できるかどうかには直接の関連はないという。あくまでもものづくりが好きか、問題解決にワクワクできるかどうかの方が重要だというのだ。

日本の出生数は2022年に過去最少の77万人となり、出生率も過去最低を記録した。少子高齢化はもはや止まらず、今後は「いかにしてこの人口バランスでも社会を維持していくか」に目を向けていく必要があるだろう。「日本のお金と人」の問題が、介護、医療をはじめとした社会インフラや、あらゆる領域で顕在化してくることは疑いようがない。

だからこそ、LIFULL seniorのような環境で「問題解決のプロ」として働くことは、エンジニアとしてのキャリアを大きく飛躍させる可能性を秘めているのだろう。プログラミング自体はAIによる自動化も進んでいる昨今、エンジニアに求められるスキルも変化していくはずだ。フルスタックエンジニアとして開発スキルを高めながら問題解決の経験も積めるとは、今後エンジニアとして生き抜いていく上で非常に魅力的な環境。率直にそう思わされた取材陣であった。

こちらの記事は2023年09月28日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

池田 華子

写真

藤田 慎一郎

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