超大型シリアルアントレプレナーが仕掛ける、シンガポール発REAPRAが日本で投資する5条件とは?
シンガポールに本拠地を置くREAPRA(リープラ)グループが、日本での投資・事業立ち上げを強化している。
REAPRA Venturesとして、既に日本のスタートアップ10社に投資。
今後もさらに20社を設立時から関わり立ち上げる予定だ。
ほぼメディア露出をせず、ベールに包まれたREAPRA Venturesの全貌を明らかにすべくFastGrowによる独占取材をおこなった。
シンガポール発のユニークな事業投資会社
今回日本での投資・事業立ち上げを行うREAPRA Venturesを徹底解剖するつもりだが、そのためにも、まずREAPRAについて触れないわけにはいかないだろう。
REAPRAは、研究と実践(経営)を通じて産業創造を一般化することをミッションとする会社として設立された。社名がResearch(研究) And Practice(実践)の略称であることからもわかるように、新産業創造に向けて、実践だけでなく研究を組み合わせることで価値を追求するところにユニークネスが存在している。
産業を構成すると呼べる規模として、まずは最初の10年(2024年まで)で東南アジアをコアマーケットととしながら2,000億円規模の事業価値のビジネスを複数創出し、その後の10年(2034年まで)でグローバルなマーケットで1兆円規模の事業に成長させていくことを如何にして再現性高く実現するかに挑戦している。
ファウンダーは医療・介護領域で事業をおこなうエス・エム・エス(東証一部上場)創業者の諸藤周平氏だ。自ら設立して以来11年間にわたり務めてきたエス・エム・エス代表取締役を36歳の若さで退任し、2014年にシンガポールに渡り、REAPRAを設立した。
エス・エム・エスは2017年5月時点で時価総額1,300億円を超える規模であることを考えると、四桁億円を超える時価総額企業のファウンダーがシリアルアントレプレナー(連続起業家)となったレアケースだ。
日本人としては他に類を見ないトップクラスのシリアルアントレプレナーであることは間違いない。
REAPRA本体は2015年設立ながら既に、東南アジアで20社以上を抱えるホールディングス会社になっている。
よくVC(ベンチャーキャピタル)やPE(プライベートエクイティ)ファンドとも対比されることが多いようだが、その実態はどちらとも違う。既に存在したスタートアップへの投資でグループ化している会社も一部あるが、大半を自らが共同創業的に立ち上げている。

100億円かけて3年で30社! 東南アジアに新産業を興す日本人 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
https://forbesjapan.com/articles/detail/12123/1/1/1
VCではなく、自ら事業を立ち上げるスタイルというと、ドイツのロケットインターネットのような会社だろうかと思う読者もいるかもしれない。しかし、それも同社を表現するには適切ではないアナロジーだ。
ロケットインターネットは他国で成功したモデルをある国に展開するコピーキャットモデルが殆どであるが、REAPRAはむしろコピーキャットはやらない方針としている。
そうしたユニークなREAPRAの活動の枠組みの一つとして、日本国内での事業立ち上げ・投資をおこなうREAPRA Venturesがある。日本での活動はまさに2017年5月から東京・青山にオフィスを構えて活動を強化し始めるタイミングであるが、既に10社への投資を行なっている。
設立時の共同創業に近い形での投資がほとんどだ。今後も2年ぐらいかけてさらに20社近くを創業に近いタイミングから仕掛けて行く予定だ。
どんなビジネスが有望なのか?今後仕掛けていくビジネスの条件とは?
上記以外に、今後は2年ぐらいかけて、20社近くを事業立ち上げから仕掛けて行く予定だ。気になるのは、どんな事業をどんなやり方でやるのか?ということだろう。
まず、どんな事業なのか?という点だが、下記のような前提条件で考えているようだ。
- 10年スパンで見て、選んだビジネス領域でマーケットリーダーになれば事業価値1,000億円規模になることが見込めるビジネスであること。かつ、参入してから5年で100億円の事業価値になる見込みがあること。
- アイデアベースでの1プロダクトで突き抜けるタイプの事業ではなく、やりながら経験学習し、プラットフォーム事業か垂直統合によるマーケットリーダーを目指すようなタイプのビジネス。
- 上記を満たす領域ながら、現時点ではマーケットの複雑性が原因で、そうなりうるプレイヤーがまだ現れてない状況。
つまり、市場規模が一定の大きさがありながら、複雑性や規制などが要因で、中小事業体が多く分散している領域や、イノベーションが起こりにくく大手で寡占されている領域。
※すでにスケールしたプラットフォーマーは不在か、もしくは、棲み分けが可能な状態。 - ITを活かして、スピーディに事業価値を向上させられる余地がある領域。
- 目立つ分野(若い起業家や既存VCがシリコンバレーのコピーとして思いつく範囲)ではなく、地味でニッチなBtoBもしくは日常から見えづらいBtoCに注目する。
BtoBの例で言えば、既存投資先のグローマスが手がける歯科業界が当てはまるだろうし、他にも産業用機械や部品、建設、運送などの領域は地味で目立たない領域だろう。
日常からは見えづらいBtoCの例としては、まさに既存投資先のA-crossのような車内クリーニングサービスなどが当てはまりそうだ。
若い起業家ポテンシャルをリクルーティングして事業を立ち上げる
最後に、上記のような条件を満たす事業領域をどんなやり方で取り組むつもりなのかについても触れておきたい。
これから2年ぐらいかけて20社をゼロから設立する、もしくは既に始めている人に投資していくためにREAPRA Venturesでは若い起業家タイプの人材を探し続けている。
若い起業家が事業を創るのに向いている事業はある程度やり尽くされつつある中で、あまり目立たない領域でまだまだ事業機会が眠っている。
そうした領域に挑戦しようとすると、産業における複雑性をいかにマネジメントするか、そして、既存産業におけるインターネットをどう活かすかなどの知見・経営ノウハウが必要になる。
その点、REAPRA Venturesは複雑性をマネージして経営することに特化しているため、その領域における経営ナレッジが豊富に蓄積していることが、若い起業家タイプの人材が自分たちだけで創業するのではなく、REAPRA Venturesと組む理由になるだろう。
REAPRA Venturesでは、前述した諸藤周平氏のみならず、グルーポンジャパン、エニグモのCFOを歴任した松田竹生氏が投資先の経営陣をハンズオンでサポートしている。
投資先経営者と密に信頼関係を構築して、何でも腹を割って話せる関係を目指すのも特徴だ。その後、ミッション、ビジョンの設計から事業計画の設定、短期数字目標の設定と施策の実行管理をウィークリーで進捗フォローしていく形でかなりハンズオンするスタイルだ。
そして、REAPRA Venturesがユニークな点がもう一つある。投資先への人材供給である。経営企画の役割を担う人材を出向させる仕組みとして、外資金融出身や外資コンサルティングファーム出身、総合商社出身の若手(25-29歳ぐらい)が投資先各社に担当としてつくのだ。
彼ら彼女らもいずれ起業家として事業を立ち上げるという目標を持っており、今後立ち上げる20社のどこかを担う可能性のある起業家人材のパイプラインを形成する仕組みとして機能している。

経営企画に限らず、営業やマーケティング、財務・会計、採用HR、PRなどの領域で、投資先を横断でサポートするメンバーも今後充実させていく方針だ。通常のVCスキームよりも、出資比率が大きい分、サポートも手厚くなっているのだ。
これから起業しようと思っているが、まだ明確に筋の良いプランが描けてない若手起業家ポテンシャルの人がいたら、是非REAPRA Venturesの扉を叩いてみてほしい。
もしくは、既に起業したのだが、当初のプランはピボットしなければならず、次の展開を思案している起業家がいれば是非相談してみてはいかがだろうか。
REAPRA Venturesに興味を持った方で、起業前提で準備中もしくは起業済みの方、もしくは、経営企画として参画しながら起業準備したい方は、以下から登録ください。ご記入内容をもとにREAPRA Venturesから順次お声掛けするとのこと。
また、REAPRA Venturesとして投資先を横断的にサポートするポジション、具体的には、営業、マーケティング、会計・財務、IT、HR、PRなどのポジションに興味のある方は、以下から応募できるのでご確認ください。
今後も引き続き、REAPRA Venturesの全貌解明に向けて、投資先各社の取材などを行なっていく予定だ。
こちらの記事は2017年06月14日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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