連載Reapra Ventures Summit

起業家が共に学ぶコミュニティ形成 RVSのイベント設計思想に迫る
〜REAPRA主催 REAPRA Ventures Summit 2018イベントレポート〜

昨今、ベンチャー界隈では、コミュニティを強化するミートアップ、知見を交換するため登壇者を集めたディスカッション、投資や提携を呼び込むピッチイベント など、様々なイベントが昼夜開催されている。

FastGrowは、各種イベントの設計思想をキーマンにインタビューし明らかにすることで、ベンチャーを取り巻く起業家やCxOがどのように社外の人や組織と連携していくことが理想的なのかを考え、スタートアップエコシステムに関わる人材レベルの向上に貢献していきたい。

そこで今回は、REAPRA(リープラ)出資先企業の経営陣、アドバイザリーボード、その他パートナーが一堂に会して関係者のみで実施された、REAPRA(リープラ)グループの手掛けるREAPRA Ventures Summit(RVS)の設計思想に迫った。

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出資先経営陣が共に学び、成長する機会を提供

なぜイベントを開催するのか?その目的は?

グループ内で知見を共有することによりレバレッジをはかることと、共有を日常化させるコミュニケーション基盤の構築の2つです。

REAPRAは、研究と実践を通じた、中長期の企業経営および産業創造の一般解の導出を東南アジアおよび日本の起業家とともに目指しています。

社会構造やトレンド・市場・事業モデル・競合やパートナーの状況・組織・経営者自身の価値観など、経営に影響を及ぼす変数は数多く、複雑です。そこでその複雑性を取り込みながら、現場に向き合っているREAPRAの出資先や経営陣が、自らの事業経営に、そこで得た学びやノウハウを活かせるよう、常にリアルな知見・経験を交換し合う場、また先達の経験から学ぶ場として開催しています。

さらに共有を日常化させるためのコミュニケーション基盤の構築も目的ですね。

日々Hard Thingsに立ち向かう起業家は多忙なこともあり、自身が文脈を理解した一部の関係性の中で課題解決に取り組もうとしがちです。しかし、そうするとインプット情報が業務から得られるものに限定されてしまう。

REAPRAでは、日々投資先複数社の状況を理解しているハンズオンの担当者を通して、各起業家にナレッジ共有を進め、インタラクティブなコミュニケーションを行なっています。しかしそのような、第三者を通したインプットに留まらない、グループ内の起業家同士での開かれたコミュニケーションの場をオフラインでも設けることでも、各経営陣に新たなインプットを提供し続けたいと考えています。

Summitでの話や議論を踏まえて、その後参加者同士が社内外で知見を交換し、深め、フィードバックし合う、知の循環を促す場として開催しています。

今回はどのようなコンテンツを実施されたのですか?

基調講演と、CxOセッション、そして懇親会(ディナー&ディスカッション)という形式で行いました。

基調講演(90分)

多種多様な事業・企業フェーズのご経験から、再現性の高い独自の経営論を紡がれている先駆者をお招きし、講演いただく基調講演には、アナログ要素が多い調査市場にイノベーションを起こした先達として、株式会社マクロミルの創業者であり、現在はメディアプラットフォーム構築を目指す、株式会社グライダーアソシエイツの代表取締役社長である、連続起業家・杉本哲哉氏をお招きしました。

基調講演

テーマ:事業創造と経営

  • レガシーな領域×ITでの事業機会・プロダクトの見出し方
  • ベンチャー文化と管理強化を両立した組織マネジメント
  • 複数社/成長フェーズの経営を踏まえ、経営者としての器をいかに拡げるか

講演者

  • 杉本 哲哉 株式会社グライダーアソシエイツ 代表取締役社長

REAPRAの投資領域である「複雑性の高さゆえに足元では小さいが、長期的には今後伸び得ることが予測される領域」は、あまり業務/構造のIT効率化が進んでいないレガシーな領域と重なることが多いです。そんな領域の1つである調査市場において、投資先の経営にストレートに活きると考えました。また、急成長を遂げる中で、スピード上場、非上場化(MBO)と再成長、多角化、海外展開など、多用な経営環境を経験された同氏の経営論は、0→1の経営に再現性を模索するREAPRA Venturesにとっては、非常に学びの多いものでした。

CxOセッション(2会場同時進行で90分間)

CxOの役割を踏まえ、登壇者/参加者ともにトピックを絞ることで密な議論の場を設計しました。

CEOセッション

テーマ:経営者のエフェクチュアルを高め、エフェクチュアルさを組織に反映させる、Mission/Vision をオペレーションまで落とし込んだ成長組織のマネジメント

パネラー

  • 宇佐美 進典 株式会社VOYAGE GROUP CEO
  • 吉田 浩一郎 株式会社クラウドワークス 代表取締役社長 兼 CEO

モデレーター

  • 諸藤 周平 REAPRA PTE. LTD. グループCEO

REAPRAでは、市場を取り巻くあらゆる変数に対して経験学習しながら事業機会を紡ぐことが起業家にとって重要だと考えています。そのため、経験学習を進める概念としてエフェクチュエーション(未来は不確実である前提に立ち、行動の中から仮設検証を繰り返すというマーケティングの概念)を重視しています。また、変化の兆しをいち早く察知するためにも、エフェクチュエーションという概念が組織的に浸透していることが望ましいです。多くの人が、そのような「走りながら学習し続ける」スキルを先天的なセンスと捉えがちですが、経験学習を主軸に、起業家の変容と成長を信じるREAPRAでは、継続学習によって身につけられると考えています。そこで、多様な事業を開発されてきた起業家の方々をお招きし、エフェクチュエーションというの要諦を題材に、どのように、それが生まれ、成長し、また組織に伝播していったかに迫るセッションとして企画しました。

セッション記事|【宇佐美×吉田×諸藤】 CEOこそ身に着けるべき 「エフェクチュエーション」とは?

CFOセッション

テーマ:攻めと守りのCFO 企業フェーズごとのCFOの役割の際の変化

パネラー

  • 成松 淳 ミューゼオ株式会社 代表取締役CEO(元クックパッド株式会社 CFO)
  • 川崎 隆史 Fringe81株式会社 取締役 CFO 経営管理部長
  • 松田 竹生 REAPRA PTE. LTD. Managing Director
 

モデレーター

  • 矢野 方樹 REAPRA PTE. LTD. グループCFO
 

REAPRAの投資先の中にも成長して組織規模が数十名となり、管理や統制の強化に関するアジェンダが増えてきています。その中で、中核を担うCFOという役割について、今一度、組織成長に合わせた在り方や、またCEOとの関係性の上で、どう主体的に組織をリードしていくのか、各社が考える機会を提供したい、と考え今回のセッションを行いました。そこで、非上場/上場問わず、様々なフェーズの企業においてCFOを経験されてきた方々をお招きして、各人の経験の棚卸を通して、CFOの有り方を思考するセッションとして企画しました。

セッション記事|“攻め”と“守り”のCFO──参謀が果たすべき役割と攻守のバランスを探る

懇親会ディナー&ディスカッション

立食形式で、当日の学びを交換し合い、リラックスした場でコミュニケーションを図ります。

今回は投資先の株式会社アグリゲートが提供する有機野菜中心のケータリングを用意しました。見た目にも華やかな雰囲気で、日々忙しい起業家たち、スタートアップの経営陣が、多忙で不足しがちな栄養を補いながら、参加者全員で懇談しました。

アグリゲート社 旬八青果店

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起業に向き合う人が集うオープンな場作りを目指す

多数ある投資先の経営陣が一堂に会することは難しいのではないでしょうか?

ご指摘のとおり、日程調整はなかなか難しいですね。登壇者の方々も多忙でいらっしゃいますから、本当に学びの大きなコンテンツを作れるように、担当として真剣に取り組んでいます。

どうしても参加できない投資先に対しては、RVS当日の議論動画や、参加した各社経営陣からのアンケート結果などを、随時展開し、グループ全体に共有しています。さらに、事後に実際に経営に取り入れてみてどうだったのか、活用事例などについても交換・共有をはかることで、一度のオフラインの場で終わらない、継続したコミュニケーションをはかっていきたいと考えています。

参加者の方の声などあれば教えていただけますか?

参加者からの声です。アンケートや反応からの一部抜粋してまとめています。

成長企業を作るのは構造という話が印象的だった。予期せぬ変化に対応できる事業・組織の構造を意識的に作ろうと思った。またそのためにも、経営者として不確実性の高い市場の中で、”誰よりも考えていると思える領域”をちゃんと持つこと、そこでの役割定義の必要性を自分に惹きつけて感じることができました。(投資先CEO)

大きな意思決定をしたら、何かを失いうるものである、ということ。失うこと覚悟で、ないしは失ったとしても、それでも意地でも意思決定を正解にする強いスタンスが印象的だった。自分も、嫌われないように、失敗しないようにという気持ちになる時があるが、強くスタンスを持つことの大事さを感じた。胆力なのか。(投資先CEO)

当事者ならではの非常にリアルな話の連続で大変学びになった。経営者の人となりにまで踏み込んで深堀りする機会は意外と少ないので。イベントなので難しいと思うが、正直もう少し時間をかけて聞きたかったぐらい濃密だった。(投資先CFO)

CEOへの向き合い方。是々非々で議論をするあくまで対等な関係。私自身が役員に就任するときに決意したことだが、もう一度強く意識したいと思うと同時に、そういう信頼関係をより強化していきたいと思った。(投資先CFO)

非常に興味深いフィードバックですね。今後のRVSの方針などあれば教えていただけますか?

REAPRAの世界観に触れていただくとともに、0→1の一般解導出に向けて多様な分野で起業に向き合う方と知見を共有し、切磋琢磨していきたいので、将来的にはもっとオープンな場にしたいと思っています。また、目的に照らしてもっと話題を呼ぶような企画にするのもいいかもしれません。工夫を凝らして、起業家、経営層が共に学び会える、より良い場作りをしていきたいです。

こちらの記事は2019年01月04日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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