連載サイバーエージェントのDNAを受け継ぐ10名の起業家たち
スタートアップ界の挑戦者であり続けよ。サイバーエージェントのDNAを受け継ぐ10名の起業家たち(前編)
巨大企業PayPal出身の大物起業家たちが、シリコンバレーを席巻している。彼らは“PayPalマフィア”と呼ばれ、スタートアップ界隈の注目を集めてきた。
以前、FastGrowでは、日本のスタートアップ業界で活躍するリクルート出身の起業家を、PayPalマフィアならぬ“リクルートマフィア”として紹介した。第2弾となる今回、焦点を当てるのは日本を代表するIT企業「サイバーエージェント」だ。
入社数年目の若手や新卒でも見込みのある社員に裁量のある役割を任せ、急成長の機会を提供することでも知られる同社。重圧をはねのけて経験を積み重ねることで、個としても社としても圧倒的な成長を遂げ、業界を牽引してきた。
本記事では、「21世紀を代表する会社をつくる」というサイバーエージェントのDNAを受け継ぎ、スタートアップ業界に新たな風を巻き起こす10名の起業家を、前後編にわけて紹介する。
- TEXT BY MIKI OKAMOTO
- EDIT BY KAZUYUKI KOYAMA
坂本 幸蔵(株式会社リッチメディア 代表取締役)

2006年、サイバーエージェントに新卒入社。2007年、子会社である株式会社CAテクノロジー取締役に就任。常務取締役を経て退社。2010年、株式会社リッチメディアを創業。大学時代から将来は起業したいと考えていた坂本氏。就職活動中に出会ったサイバーエージェントの子会社社長の能力に圧倒され、同社への入社を決意したという。
入社後は、11ヵ月間連続で予算を達成したり、単月で1億円超の売上成し遂げたりするなど、数々の伝説を残した。その結果、半期毎の新人賞を連続受賞。入社2年目にはCAテクノロジーの取締役に就任した。
株式会社リッチメディア

スキンケア大学、ヘルスケア大学、メンズスキンケア大学などの医療・美容に関するメディアを運営。2018年7月、株式会社ベクトルとの共同出資により株式会社 HAIRを設立。国内最大級のヘア特化型メディア「HAIR」の運営を主軸に、ビューティー領域におけるさらなる事業拡大をねらう。
高場大樹(株式会社トランスリミット 代表取締役社長)

1986年生まれ。福岡工業大学卒業後、2009年にサイバーエージェント入社。全社システム・ネットワークの構築やゲーム開発を担当。2014年1月、株式会社トランスリミットを創業した。
学生時代から、世界を代表するIT企業をつくるという目標を掲げていた高場氏。世界の主要IT企業ではエンジニアが経営者であるケースが多いことを知り、工業大学でプログラミングを学んだ。
エンジニア志望でサイバーエージェントに入社するが、当初の配属先は人事部。予想外の展開ではあったものの、役員のもとで上場企業のコーポレート部門を体系的に知れることができたことは、その後社長として会社を経営するうえでとても役にたったと振り返っている。
株式会社トランスリミット

創業以来、世界的大ヒットとなるゲームを続々と生み出している。2014年にリリースされた「Brain Wars」はiTunes Apps Storeでフィーチャーされたのを機に爆発的に波及。2000万ダウンロードを突破した。
その後リリースした3タイトルをあわせると累計6,500万ダウンロードを超えた。海外ユーザー比率は95%とまさに「世界に響くサービスをつくる」というビジョンを体現する企業となっている。
竹林 史貴(株式会社LOB 代表取締役社長CEO)

2010年に、サイバーエージェントに新卒入社。広告代理店部門に勤務し、部門最優秀プレイヤー賞を受賞。その後、子会社である株式会社AMoAdの立ち上げに参画。2012年には、同社の代表取締役に就任。AMoAd子会社の株式会社Appelevenの代表取締役を経て、2016年4月に株式会社LOBを創業。2018年に楽天株式会社の子会社となった。
新卒入社から、子会社の代表取締役社長に就任した竹林氏。代表という立場になり、社外の起業家と出会う機会が増えていったことで、自らも起業したいという気持ちが徐々に強くなっていったという。
株式会社LOB

「流通のケタを変える、広告プラットフォームを創る」というミッションのもと、広告プラットフォームの開発を行う。ECモール事業者に向けた広告配信製品を開発していたが、2018年、楽天株式会社の子会社化に伴い、現在は楽天向けの製品開発に注力している。
宇佐美進典(株式会社VOYAGE GROUP 代表取締役社長兼CEO)

1996年、早稲田大学を卒業後、株式会社トーマツコンサルティング(現デロイトトーマツコンサルティング)に入社。ソフトウェアベンチャー企業を経て、1999年にVOYAGE GROUPの前進となる株式会社アクシブドットコムを創業。2001年に株式会社サイバーエージェントの連結対象子会社化。2005年から5年間は、親会社であるサイバーエージェントの取締役も兼任した。
サイバーエージェント在籍時、企業としての成長スピードに衝撃を受けたという宇佐美氏。 その秘密は同社の強い採用力にあると考え、VOYAGE GROUPでも以前の10倍の予算をかけ採用力の強化に取り組んだ。優秀な人材が集まる無人島インターンシップ「Island」もこのとき生まれた。
株式会社VOYAGE GROUP

幅広く、スピード感をもった事業を展開するため、あえてビジョンは掲げない。「世界を変えるようなスゴイことをやる」という創業時の想いのもと、時代の変化にあわせて多領域にまたがる挑戦を続ける。現在は、 アドプラットフォーム、ポイントメディア、インキュベーション分野で、十数の事業を展開している。
出典:VOYAGEの経営理念はなぜ社員を突き動かすのか? 宇佐美進典さんに聞く、【宇佐美×吉田×諸藤】CEOこそ身に着けるべき「エフェクチュエーション」とは?
早川与規(ユナイテッド株式会社代表取締役会長CEO)

1992年、早稲田大学卒業後、株式会社博報堂に入社。アメリカの経営大学院への留学を経て、1999年サイバーエージェントに入社。常務取締役に就任。2000年、同社取締役副社長兼COOを務める。
2004年にモバイルサービスを展開する株式会社インタースパイアを設立。2度の合併後、2012年ユナイテッド株式会社と社名変更。
博報堂在籍中に海外大学院に留学。大学院の夏休みに、当時社員20名程度のサイバーエージェントでインターンをはじめた。その後、藤田晋氏や社員の前のめりな姿勢に刺激を受け、正式入社を決めたという。翌年には副社長兼COOに就任。ネットバブルの崩壊による厳しい時代を乗り越え、2004年に黒字転換を果たした。
ユナイテッド株式会社

「日本を代表するインターネット企業になる」というビジョンの実現に向け、アドテクノロジー・ゲーム・コンテンツ・インベストメントの4領域で事業を展開。2度の合併を経て生まれた企業のため、多様な経歴をもつ役員陣がそろう。経営陣の人的ネットワークを生かした投資やM&Aにも力をいれている。
サイバーエージェント出身の起業家に共通するのは、起業当初から日本一、さらには世界一を目標に掲げ、爆発的な推進力で企業を成長させていることだ。「21世紀を代表する会社をつくる」というサイバーエージェントの企業文化のなかで、仲間と切磋琢磨した経験が、彼らをより高い目標へと駆り立てるに違いない。
後編では、2016年以降に創業したサイバーエージェント出身の起業家5名を紹介する。
こちらの記事は2019年03月25日に公開しており、
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1991年生まれ。児童養護施設での学習支援ボランティアを通して、貧困・格差問題に興味を持ち、東京大学大学院で教育社会学を専攻。発達障害等のお子さまをサポートする学習教室LITALICOジュニアで指導員・教室長を経て、現在はフリーライターとして活動。
編集者。大学卒業後、建築設計事務所、デザインコンサル会社の編集ディレクター / PMを経て、weavingを創業。デザイン領域の情報発信支援・メディア運営・コンサルティング・コンテンツ制作を通し、デザインとビジネスの距離を近づける編集に従事する。デザインビジネスマガジン「designing」編集長。inquire所属。
1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。
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2記事 | 最終更新 2019.03.26おすすめの関連記事
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