連載エースと呼ばれた20代の正体──若手のノウハウ大全

固定観念を取っ払い、「何もないところ」から案件を生み出せ──DIGGLE松本氏の“エースたる所以”

松本 翔吾

大学時代は税理士法人でインターンを行い、財務分析ツール作成や学生を中心とした一般社団法人立ち上げを経験。その後、新卒で大手銀行入行。支店にて中小企業やベンチャー企業、そのオーナーなどへの営業を担当。営業経験9か月で大型案件を成約させ、役員表彰を受賞。その後、本社の営業部に異動し、日本を代表する大企業の営業担当として金融・非金融の提案営業を経験。2022年1月にDIGGLE株式会社にセールスとして入社。

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会社のなかでひときわ活躍している社員がいる。群を抜いて優秀な社員がいる。そんな“エース”と呼ばれる人間は、いかにしてエースになったのだろうか──。

20代エースの正体に迫る連載企画「突撃エース」の内容を元に、本記事ではそのエースたる所以を考察した。

第9回は、企業の予実管理サービスを提供するDIGGLE株式会社のセールスを担当する松本氏。大手銀行からベンチャー企業であるDIGGLEに転職した松本氏の仕事術は、言葉で見ると一見平凡なもののように思える。しかし、言葉を深堀していくことで、彼がエースたる所以が見えてきた。

  • TEXT BY WAKANA UOKA
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入社1年未満の新進気鋭のセールスのエース

実は、松本氏がDIGGLEに入社したのは2022年1月。まだ入社間もないルーキーだ。しかし、すでに現在フィールドセールス部門をほぼ一人で担当している。

かくいうDIGGLEとは、予実管理のSaaSプロダクトを提供している企業だ。Excelで作業することの多かった予実管理をクラウド化することで、意思決定をより早く正確に行える。国内予算管理市場の売上金額は2018年度から2019年度にかけて前年度比54.5%増加と、右肩上がりに増えており、2023年度には市場の約8割をSaaSが占める見込みだという予測も出ている。

そのような急拡大する市場に位置する同社は、現在営業に力を入れていくフェーズ。松本氏含め、なんと現在2名でセールスを支えているのだという。

若くして“The スタートアップ”なんて言葉が相応しいほどの環境に飛び込んだ松本氏ではあるが、決して初めからこの界隈を志していたわけではない。学生時代はもっぱら公務員を志し名古屋大学法学部に入学。そこからどのような変遷を経てDIGGLEと出会ったのだろうか。

松本公務員になるキャリアに憧れ法学部に進学したものの、入学早々に法律への興味が薄らいでしまったんです(笑)。大学時代より税理士法人でインターンをしていたので、地場の中小企業を始めとした経営者と話す機会に恵まれたこともあり、ついつい学業よりもビジネスの世界に傾倒していきました。

明確にターニングポイントと言えるのは、岐阜県のある中小企業の代表の方との出会い。その人が語る「地方から世界を見据えた事業拡大を狙う」という野心と意気込みに触発され、中小企業やベンチャー企業の成長に貢献できる仕事に就きたいと思うようになりました。そこで新卒の就職先では銀行を選んだんです。

大手銀行でファーストキャリアを歩み始めた同氏は、アーリーからレイターまで、さまざまなフェーズのベンチャー企業、中小企業と関わることになる。

ここで松本氏が今でも大事にしているというある価値観を築き上げることとなる。いかなる固定観念にもとらわれない、というものである。彼をエースたらしめた要因の一つだ。

松本融資先の企業の中には、銀行側から見てビジネスチャンスがないように思える企業も少なからず存在していました。しかし、私は周りが「ない」と判断するような案件に対しても、決して「ない」とは思い込まずに仕事をしていたんです。固定観念にとらわれないことで新たな可能性を見出すことができ、会社からの表彰に繋がる成果を生めることにも繋がりました。

仕事には特に不満はなかった。しかし、心の中では、徐々に「もっとベンチャー企業の支援をしたい」という想いが日に日に膨らんでいく。

とはいえ、大手企業において若手社員の異動希望は通りづらいこともある。結果、その後松本氏が担当することになったのは主に大企業。もちろんそれはそれで貴重な経験を積む機会となったが、学生時代に抱いた「スタートアップや中小企業の成長に貢献したい」という思いが溢れ、スタートアップへの挑戦を決意した。

松本転職活動の際には絶対的な“軸”を設けました。銀行時代の業務に対して決してネガティブな気持ちを抱いていたわけではないので、軸に沿わないくらいなら銀行に留まって経験を積んだ方がいい。

そのため、「企業経営に近く、かつ企業の成長に貢献できるかどうか」を判断軸にしたのです。

DIGGLEへの入社を決めたのは、提供している予実管理サービスが企業経営に近いところに位置するものであり、企業の成長に貢献できるという軸にどんぴしゃなものだったからです。提供価値に非常に共感できる部分があったとも思います。

入社1カ月目は情報のキャッチアップに努め、サービスの知識を深め、DIGGLE流の営業を覚えることに費やした松本氏。入社から1カ月半も経つと、自分で提案をするようになり、冒頭に触れた通り今ではフィールドセールスをほぼ一人で担っている。

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新人であろうとも、自分で考え自分で案件をコントロールすべし

DIGGLEが提供している予実管理について、いまいちイメージを持てない人もいるかもしれない。予実管理とは、「予算」と「実績」を管理すること。同社代表取締役 山本清貴氏の言葉を借りると「予実管理を怠るのは、ライトを持たず暗闇を歩くのと同じこと」と形容できるほど成長し続ける企業にとって重要な事項だ。

まさしく、兼ねてよりの希望であった「企業経営に近く、成長に貢献できる」環境に飛び込んだ松本氏。入社早々驚かされたのは、前職と比べた自由度の高さであった。

松本まずギャップを感じたのは営業の自由度がかなり高いことでした。銀行には型にはまった営業スタイルがあり、創意工夫できる余地に限度がありますが、DIGGLEでは全方位的に考え、細かなところまでお客様の役に立つかどうかにフォーカスできる。

サービス自体が発展途上なものですから、お客様からのフィードバックを開発に伝えて新機能の実装に繋がるなど、日々進歩している感覚を味わえます。営業としても、DIGGLEの一員としても非常に楽しさを感じていますね。

銀行時代には「固定観念にとらわれないこと」をモットーに成果をあげてきた同氏。DIGGLE入社後は加えて、「自分で考えコントロールすること」に注力したという。二つ目の“エースたる所以”、じっくり伺っていこう。

松本性格的な問題なのですが、自分の持つ案件に過度に介入されるのが、少し苦手なんです(笑)。多少生意気かもしれませんが、自分で責任を取るから、まずは任せてほしいと思ってしまうタイプなんです。

銀行時代からも自分の案件のプロセス作りやゴールイメージ作りは自分で行うようにし、私の意思が介在しないポイントをできる限り作らないようにしてきました。ある種自分にとって、仕事が趣味のようなものなので、ついつい土日であっても仕事のことを考えてしまいます。

幸いDIGGLEの経営陣はみな懐が深いというか、こうした仕事の進め方に何か苦言を呈されることはありませんでした。とはいえ、自分の意思を突き通すための努力を怠ることはありません。

どういう考えで何をしようとしているのか、逐一上司に説明し、間違っていたら早めにフィーバックを得られる関係を築いてきました。だからこそ大失敗も回避してこられたのだと思います。

自分で案件をコントロールし、自分の考えで進めるためには、一定の自信がなければならないだろう。新人のうちは、なかなか難しいことのように思えてしまう。銀行時代からこうした仕事の進め方をしてきた松本氏は、その問いに対し次のような見解を示してくれた。

松本営業はお客様に一番接する立場です。ですから、自分のお客様のことに関しては自分が誰よりも知っているんだ、という強い自信があります。逆に言うと、それくらいお客様のことを理解することに全力を捧げるからこそ、自分で案件をコントロールできていたんです。

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目標達成は当たり前。
できなければ負けと同義

松本氏が3つ目に挙げた仕事術は、目標への貪欲なこだわりだ。「そんなこと誰もが意識していることだろう」とたかをくくる取材陣は、続く同氏の幼少期のエピソードに驚かされることとなる。そこには、厳しくも我が子を強い人に育てたいと願う、両親の愛が存在していた。

松本私、負けず嫌いなんです。それも極度の。生まれ持った性格もなのかもしれませんが、加えて親の教育方針も負けず嫌いに磨きをかけるようなものでして(笑)

例えば、幼稚園児のころから「うんていを渡り切ると自分で決めたなら、渡り切るまでは家に帰ってきてはだめ」みたいに言われて育ちました。その結果、与えられた目標や、自分で決めたことを達成しないことは「負けだ」と思えるマインドが培われました。

泣きながらうんていを渡り切ることもありましたが、そのおかげで今の目標達成に対する強いこだわりを持てていると考えると、親には大変感謝していますね。

持ち前の負けず嫌いと言う性格をバネに弛まぬ努力を続け、目標を達成し続けてきた松本氏。しかし、一つひとつをコツコツ積み上げることだけで達成できる目標ばかりではないだろう。時には一段と大きな目標を達成するための“飛躍”も欠かせない。その秘訣について、同氏は次のように説明する。

松本想像できないような案件を引っ張り出してくることが大切だと思っています。前職時代、上司から「よく何もないところから案件を生み出してくるね」と言われていました。何もないのではなく、「何もない」と思っている固定観念を取り払うことが大切なんです。

例えば、「金額が合わないから無理」と言われてしまうとどうしようもないように感じますが、機能がその企業が求めるものにバチっとハマっていたら、予算を多少オーバーしていたとしても導入してもらえるケースはある。「ない」「無理」と決めつけないことで、他の人が思いもよらないところから目標達成に導く成果を上げられる可能性が生まれるんです。

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失敗から学び、繰り返さざるべし。
当たり前のこともこだわり続けることが武器となる

固定観念にとらわれない。自分で全てをコントロールする。目標達成は当たり前のものと思え。これらに続く4つ目の格言は、「失敗から学び、繰り返さざるべし」だ。これも、目標達成の項目と同じく、言葉尻だけを見れば、至って凡庸。皆が意識していることのように思える。しかし、どんな些細な、当たり前のことも、とことん徹底し続けることこそがエースをエースたらしめるのだ。

そんな松本氏は、DIGGLEに入社してからどのような失敗をし、何を学んだのだろうか。

松本これは今も模索中ですが、お客様との距離感、関わり方には迷いがありました。新規顧客とのやり取りは、DIGGLEに入社して初めて行うようになった仕事です。そのため、どの程度の距離感で接すればいいのか測りかねていたんですよね。

私自身がお店で店員さんからぐいぐい来られるのが苦手なこともあり、当初は押し売りと思われなくないがために、あまり積極的に連絡を取れていなかったんです。

しかし、営業経験を積むうちに、遠慮しすぎるのも良くないんだなと気づいて。提案は積極的にした方がいいと反省し、今に至っています。

銀行時代の営業スタイルは、顧客との商談中に商品の説明をし、次回商談までは基本的に連絡を取ることはなかった。一方、DIGGLE入社後では新規顧客に対して、提案内容の感触を確認するなど、定期的なやり取りをした方がいいのだと悟ったのだ。

また、提案依頼書の作成にも松本氏の細やかなこだわりが垣間見える。

松本汎用的な提案書では、お客様には刺さらないのではと常に考えていました。そのお客様の抱える課題やニーズを調べ、それに沿った内容のものを用意する方が、当たり前ですが反応はいいですよね。逆の立場であれば、名前だけ変えられた汎用的な資料を渡されたら、「大事にされていないのでは?」と当然のように感じると思うんですよね。

もちろんカスタマイズには手間も時間もかかります。知識のインプットを蓄えるまでは、1件1~2時間もかけていたこともありました。しかし、こうした地道な手間を惜しまないことがお客様からの信頼に繋がっていくんです。「他社に比べて最初からこちらの話をよくわかってくれる」とFBをいただくことも多く、確かな手ごたえを感じています。

今も、学生時代に抱いた「企業の成長に貢献できる人材になりたい」との想いに揺らぎはない。その想いを叶えられる環境で、松本氏は今日もセールスの腕を振るい続ける。

こちらの記事は2022年06月06日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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