経営とは、サステナブルなもの──ベクトル吉柳氏、マクアケ坊垣氏に学ぶ新規事業・起業に必要な本質的視点

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インタビュイー
吉柳 さおり

大学在学中にPR会社ベクトルに入社し創業に参画。2002年にベクトル取締役に就任。2004年にPR事業会社プラチナムを設立し代表取締役に就任。創業時よりマーケティングPRの市場創造に従事。多くの企業の事業コンサルティング、ESG/SDGsの企業・ブランド価値創造コンサルティングを手掛けると同時に、企業のESG/SDGs への取り組みの必要性をセミナー等で発信している。ベクトルグループCSO兼サステナビリティ委員長。2020年より日本パブリックリレーションズ協会理事。

坊垣 佳奈
  • 株式会社マクアケ 共同創業者 / 取締役 

2006年サイバーエージェントに新卒入社。サイバー・バズ他子会社2社を経て、2013年マクアケの立ち上げに共同創業者・取締役として参画。主にキュレーター、広報PR、流通販路連携部門の部門責任者としてアタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」の事業拡大に従事しながら、 全国各地で講演や金融機関・自治体との連携などを通した地方創生にも尽力。多様なライフスタイルを望む若い世代や女性社員が活躍できる組織運営を推進。

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コロナ禍において事業立ち上げや経営を取り巻く環境が目まぐるしく変わる中、事業や企業を自分の手で発展させていきたいと考えるビジネスパーソンは、変化やトレンドを的確に捉える必要がある。特に、注目を集め続けるSDGsやESG投資。これらのトピックを念頭に置く場合、どんな点に気を付けて事業を行うべきなのだろうか。

総合PR企業のベクトルグループは2021年10月、社会課題解決に対する具体的なアクションを提示した「Vector SDGs PROJECT」を発足した。一方マクアケは、「応援購入」というコンセプトを打ち出し、これから世の中に生まれ広がり残るべき商品やサービスの支援を通して、SDGsに貢献するサービス『Makuake』を展開する。

実はさまざまなかたちで交流があり、共通点も少なくないこの2社。著名なベンチャーである彼らの事例から、この時代における事業と社会課題との関連性を紐解く。

  • TEXT BY MAAYA OCHIAI
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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「やりたいこと、やっちゃおうよ」。
コロナ禍で生まれた空気感とは──

坊垣みんな変化の中で悩んで、進んだり戻ったりしているこの時期。何をやっても大変だからこそ、「納得できるものをやろう」という人は増えていると思います。

マクアケ共同創業者・取締役の坊垣佳奈氏は、コロナ禍の新規事業開発についてこのように切り出した。

コロナ収束がなかなか見えない世の中、確実に時代が変わっているのは確かだ。オンラインでの仕事やコミュニケーション、購買活動が珍しいものではなくなり、事業のあり方も変化してきている。そして、それらが不可逆な変化であることを肌で感じている読者も多いだろう。

この時代において、事業立ち上げの難しさはどのように変わっているのだろうか。ベクトル取締役副社長・吉柳さおり氏はこう分析する。

吉柳事業を立ち上げる難しさが、コロナ禍で変わったわけではありません。ですが、新規事業も既存事業も、様々な市場が先行き不透明な中、仮説を立てて、より速く行動し、より多く回し、学習し改善を重ねていく、非連続な未来を自ら切り開く必要性は、増していると感じます。

例えば、EC市場。コロナ禍で外出の機会が減り、消費者の利用機会が激増した。それに伴い、事業者側は改善を進めるための情報を多く得られるようになった。物販系ECの市場規模が、2019年から2020年の間に21%も増加した背景には、EC事業者らによる事業改善に向けた奮闘があるはずだ。

吉柳中期経営計画を立て、未来のあるべき姿から逆算して事業戦略を練り実行していくのが当然の経営ですが、逆説的ですが、それによって重要になったことは「近い未来の予測」です。

社会変化が激しいからこそ、半年後や1年後といった近未来の社会を的確に予測して打ち手を講じていかなければ、目指すべきゴールに近づくことができません。改善策を検討するために考えるべき時間軸は、少し変わってきていると言えるかもしれません。

短期での予測力や想像力が求められる時代、坊垣氏は「ロジックだけでは足りない」と指摘する。

坊垣環境保全や高齢化、ジェンダー平等など、社会が取り組むべき課題が明確になってきた今だからこそ、なぜ、誰の為に価値を生むかという背景やストーリーがより強く求められているように感じます。大事にすべきものをより大事にしたい、だから自分が本当にやりたいことをやっていいんじゃないか、という空気感が増した感じもします。

吉柳そうですね。ベクトルが最近立ち上げた『ヒロメル』というサービスがあります。これは、PRやマーケティングの事例や価格をオープンにし、ネット上で見積もりや発注ができるサービスです。価格をオープンにしないのが広告業界の常識ですので非常に画期的ではあるのですが、立ち上げ当初は、新しい発注の仕方をすぐに理解して発注できる企業の広告担当者があまりいなかったので、3カ月くらいの間、受注が数件にとどまり、苦戦したんです。私自身も改めて、新規事業の難しさを痛感しました。

でも、「クライアントに無駄なお金を使わせたくない」「広告業界を変えたい」と本気で思って立ち上げたので、そこに立ち返ることで前に進むことができました。そういう信念は昔から変わらず大事ですね。

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綺麗なコピーより、「刺さるビジョン」を

背景やストーリーは、事業立ち上げだけでなく、経営・マネジメントにおいても重視されるものだ。そこで、経営・マネジメント視点で注目すべきポイントも聞いた。

坊垣立ち上げの旗振り役が意思を持ってやることが必要なのは言うまでもないですね。ただ、その上で事業を「やり続ける」ためには、ビジョンや世界観の言語化がより重要なんです。

推進力を持って大きな何かを成し遂げようと思ったら、当然ながら1人や2人ではできないので、チームをつくり、一丸となる必要がありますよね。そこで求められるのが、つくりたい世界観やビジョンです。それらを、少なくともチームにジョインする人が強く共感できる形に言語化して、みんなで追いかけられる状態をつくる。ここまでできれば、今の時代、手法や施策は、世の中からいくらでも探せますから。

ベクトルの副社長だけでなく、PR事業を担うグループ子会社プラチナムの代表取締役を務める吉柳氏も、その経営において、強く意識していることについて同様に語った。

吉柳プラチナムは、社員の約7割が20代です。この年代のメンバーたちは、自分たちの仕事が社会にいかに役に立っているか「働く意義」を特に強く求めていると感じます。それにそもそも私たちは代理店事業を営んでおり、自社製品をつくっているわけではないため、どちらかというと意義を感じにくいんです。

なので、私は自社のミッション、バリューを言語化し、繰り返し繰り返し、しつこく伝え続けるようにしています。数年間しっかり取り組んだことで、自分たちの仕事に誇りややりがいや喜びを覚えてくれているようです。ここ数年で離職率の低下や業績成長など、目に見えて変化がわかるようになりました。

吉柳氏が言うように、若手ビジネスパーソンは上の世代と比較して、社会的意義を重視する価値観に変容してきている。この傾向はマクアケでも同様だという。そして、社会的意義を重視する会社だからこそ、離職率は低くなる。

坊垣若い人たちの感覚がだいぶ変わって、「心からビジョンに共感できる会社に入りたい」という人が増えています。そうやって入社してきた人はやっぱり、そう簡単には辞めないし、諦めないで事業に向き合ってくれますね。

ビジョンに共感して、みんなでその世界を目指すからこそ、似た価値観を持ったメンバーが集まってきます。人間関係でストレスを感じること自体が少なくなっているのだと思います。

では、企業はどのようなビジョンを掲げるべきなのだろうか。そう聞くと、坊垣氏は、「うちのビジョンはあまりかっこよくないんですよ」と笑った。マクアケのビジョンは、“生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る世界の実現”。これは、当時の社員が議論して言葉を出し合って決めたものだ。

吉柳広告代理店さんがつくったコピーじゃないですね、すぐわかります(笑)。

坊垣でしょ!?(笑)。

ビジョンに、コピーとして綺麗であることは必要ないと思ってるんです。むしろ綺麗な言葉にすると、他社と同じような言葉に見えてしまうんですよね。ビジョンはみんなが納得できるものであればいいと思います。

広く世の中の人々に向けた綺麗で曖昧な言葉よりも、社員あるいは社員になる人、つまり採用ターゲットに深く刺さるビジョンにすることで、やりがいを持って働く社員が増え、結果的に事業への推進力も増していくのだろう。

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あらゆる業界で、無駄を削減──マクアケが単なるCFではない理由

ここからは、コロナ禍でさらに社会から求められている著名なベンチャー企業である2社のユニークさを改めて見つめることで、今の世の中において事業に必要なポイントを更に深く探ってみたい。

まずマクアケだが「株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング」としてスタートした経緯もあり、クラウドファンディング(CF)の会社であるというイメージが強いかもしれない。

だが、2017年にマクアケに社名変更したことに加え、2019年の東証マザーズ上場時に『Makuake』を「アタラシイものや体験の応援購入サービス」としてリブランディングを発表。現在はクラウドファンディングサービスという言葉でサービスを表現していない。この変遷を坊垣氏はどのように捉えているのだろうか。

坊垣クラウドファンディングの仕組みを使っているのは事実です。この仕組みはお金の流れを変えうるものですし、人の想いや応援を乗せられる素晴らしい仕組みだと思います。だから引き続き活用していきます。

ただ、使われ方の実態としてはECにかなり近くなっています。オンラインで物を買う場所でありながら、作り手の想いや背景など詳細な商品説明が記載されているので店舗よりも情報を多く得られる状態で応援の気持ちを持って購入してもらえたりと、Makuakeオリジナルな体験が付加されています。これを私たちの価値として言語化しようと考えて「応援購入」としました。

また、中小企業の中には、商品の価値設計やプロモーションが得意ではなく、広告代理店に頼むほど予算もない企業がたくさんあります。そういった企業の商品情報も『Makuake』を通してターゲットに届き、大きな波を作れた事例が多数あります。

吉柳サステナブルな仕組みですよね。受注予測ができるから、無駄な在庫をつくらなくていい。

坊垣そこも時代の流れに合っていて、ご一緒しているアパレル会社さんなどもそれを理由にマクアケを使ってくださっています。

服飾業界の課題として以前から指摘されていたことですが、ヒットしない商品にものすごく大きな予算とリソースを投下してしまうケースが多々あります。これも、マクアケの仕組みを使ってテストトライアルすることで、改善できるかもしれません。

吉柳コロナ禍初期、BtoCのクライアント支援において、私たちが注力したのは、D2Cの支援でした。消費者の価値観がめまぐるしく変化する中で、D2Cが弱い企業がニーズを的確に把握するには金銭的にも人的にも莫大なコストがかかります。中小企業には苦しい時期でした。

そこで私たちは、多様な業界・領域を支援しているという強みを生かし、中小企業向けにノウハウやD2Cそのものの仕組みを提供してきました。これも一定の成果が出ています。

そんな先の読みづらい環境下ですから、マクアケさんの存在意義は大きいと感じます。この仕組みを使えば、応援してくれる人や人数、ニーズを把握した状態で生産を始めることができますよね。

さらに、マクアケさんの場合はECプラットフォームであるだけでなく、そこにマーケティングやプロモーションのサポートがついている。大量廃棄を防げるだけでなく、無駄な施策を打ったり人的リソースを割いたりしなくて済むので、企業にとっても社会にとってもありがたいサービスですよね。

マクアケは、大量生産・大量消費・大量廃棄社会からの脱却の一助となるとともに、低コストで商品展開できる、社会と企業のサステナビリティに則った仕組みであると言える。

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「必要なものを、必要なだけ」が、PRの本質。
だから、当然サステナブル

一方のベクトルは、創業期から「いいモノを世の中に広め人々を幸せに」という一貫したビジョンを持ち、約30年の歴史の中で幅広い事業領域へとグループ展開を進めてきた。

実は同社もマクアケに通じる特徴を持っている。それは、「必要なものを必要なだけ」というポリシーだ。

吉柳年数を重ねてコングロマリットな事業体になりました。でも、「モノを広めるFAST COMPANY」というコンセプトや、クライアントに無駄なお金やモノを使わせない効果のあるサービスを提供するというシンプルな事業方針は、創業時から変わっていません。

例えば、いくら認知獲得に役立つと言っても、BtoB企業がテレビCMを行うと、ROI(投資利益率)は低くなるケースがある。果たしてその業種にテレビCMが本当に必要なのか?そこで、新しいメディアであるタクシー広告というメディア(*1)を自分たちで創り、CMを創って、企業の決裁者層を狙った広告を打つことを提案する。これが、私たちが進めてきたアップデートの一例です。

あるいは、クライアント商品のターゲットがTikTokしか見ていないなら、TikTokによるプロモーションに絞った施策を打っていくような意思決定まで支援することもあります。

*1:みんなのタクシーとの合弁で創ったメディア事業『GROWTH

PRというと、日本では宣伝や広告、メディア露出といった印象を持つ人がまだ少なくない。「PR会社」を謳う企業も、そうした領域での事業支援を行う例が多いだろう。しかしベクトルは、旧来の慣習を打ち破り、さまざまなかたちでの事業支援を模索してきたのだ。

吉柳「PR」をとにかくニュートラルに広く捉え、クライアントの事業拡大に必要なものを全て提供する会社なんです。私たちの中では、世間で言われている広告やPR、マーケティングといった言葉の間に垣根はなく、溶けあっているんです。

坊垣外から見ていて、ベクトルさんはPRを軸に、マーケティングやプロモーションの全体を支援している感じがします。サイバーエージェントの事業を「インターネットが軸」と言うのと同じくらい、柔軟に事業をされている印象です。

吉柳本当にそうですね。視点がPRなだけで、時代の変化とともに必要なやり方を常にアップデートして最適な方法を提案しています。

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スタートアップこそPR。価値を尖らせよ

スタートアップやベンチャー企業の経営者、事業家にとって、プロモーションや広告の優先順位は様々だ。PRの重要性を頭で理解していても、果たしてPRにリソースを割くことが本当に事業を伸ばす最短ルートなのか、信じ切れない読者もいるかもしれない。「SNSでの発信やキャンペーン等は乱立しているし、その効果も飽和状態にあるのではないか?」と。

そんな疑問を投げかけると、2人から即答で「いやいや、超最短ですよ!」と返ってきた。

坊垣私は新卒時代、ベクトル出身の杉浦さんという上司(現:NewsTV代表取締役・杉浦健太氏)に教わりながら、サイバーバズという会社を立ち上げました。そのときに身に付けさせてもらったPR視点とPRスキルはマクアケでも本当に生きていて。正直、マクアケはPRでうまくいった会社だと思っているくらいです。

マクアケは、クラウドファンディングサービスとしては後発参入だった。使ってもらうためには、競合他社との差分を強調する必要性を感じていたという。そこで役に立ったのが、坊垣氏が新卒時に身に付けたPR視点やPRスキルだった。

ターゲットを徹底的に分析した上で、他社に捉われず、自社の目指すべき姿を言語化し「応援購入」という、価値に辿り着いた。スタートアップには企業価値にエッジを効かせるPR戦略が必要だということを、身を持って証明したのだ。

スタートアップこそPR。その考え方をベースに、ベクトルではスタートアップのクライアントに対しPRの考え方・手法をクライアントに身に付けてもらうことを支援の最終ゴールにしている。

吉柳ベンチャー企業は、そもそも予算がなくて莫大な広告費をかけられないですし、資金調達をしても、その多くをブランディングの広告費に使うことは、VCをはじめとする株主にあまり好まれません。

その点PRは、広告より2桁くらい少ない費用で実施できますし、工夫次第で効果は無限大です。創業期からPR視点を持って施策を打ち出していくことは、そこまで難しい話ではありませんから、ぜひ貪欲にチャレンジしてほしいんですよね。

PRにおいて重要な点は、自社の強みや競合との差別化ポイントを見いだした上で打ち出すことだ。どこにでもあるような企業だと思われてしまっては差別化にならないことは言うまでもない。だが、ここを考え抜けていない事業家や経営者は少なくない。吉柳氏はこんなエピソードを語った。

吉柳ベクトルはベンチャー投資事業も行っているので、私は若い起業家さんとの交流もよくあります。最近、現役東大生の起業家たちに相談にのってあげてほしいと紹介され、ランチしながら話しました。

そのときに違和感を感じたのが、本人たちが「東大生起業家としてメディアに出られないでしょうか?」と言っていたことです。

多くの人が陥りがちなところなのですが、今どき学生起業家ってスペックにすぎなくて、唯一無二の“価値”ではありません。そういう肩書や、「パーパス経営」のような流行り言葉の定義ではなく、自分たちの本質的な提供価値、本当に社会で実現したいことを考えないと、競合から抜きん出ることはできないと思います。

坊垣本っ当にそう!いっぱいいますよねこういう方(笑)。

吉柳そうそう(笑)。

坊垣オリジナリティって、あまり左脳で整理しない方がいいと思うんですよね。市場でのポジショニングというのももちろん大事なことではあるのですが、それだけになってしまうと、新しい何かを生み出せないと思います。

例えば『Makuake』でいうと、クラウドファンディング業界というカテゴリーで捉えた時、競合はあるかもしれません。ただ、私たちは他のクラウドファンディングサービスのことを競合視していません。私たちは私たちのビジョンを実現したい。競合他社と比較し戦略を考えるのではなく、ビジョン実現のために何ができるかしか考えていないんです。

まさにビジョンドリブンの経営である。これは前半で語られた「事業立ち上げや経営には信念が重要」という吉柳氏の考えとも共通する。

吉柳今のお話、めちゃくちゃ共感します。やっぱりまずはコアがないと難しい。その上でPR戦略を考えるときには、競合や市場、自社の立ち位置など、世の中を俯瞰して分析し、自社の唯一無二のポジションを決める。マクアケさんはクラウドファンディング業界では後発として参入し、自分たちの存在価値を考え抜いて「応援購入」と名付けたことで、PRバリューができました。

ベクトルも同じで、我々の創業当時は広報のアウトソーシングをするPR会社が多い環境があったので、私達は市場になかった「マーケティングPR」という新しいカテゴリーをつくってその価値を広めながら営業をかけていきました。その分野のソートリーダーになるために、価値を考え、言い続け、自ら創造していく。すると新しいマーケットができていくのです。

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幸せを追究したら、自然とSDGsに。
ビジネスチャンスはそこにある

ここまでの内容をまとめると、事業の立ち上げや経営においては、「自分たちが何をやりたいのか」というビジョンを、その背景にある「信念」とともに言語化し、PR視点を持って世の中に問うていくことが重要だということだ。

そして坊垣氏は、そのような事業こそ、自然にSDGsへとつながるものだと考える。

坊垣世の中に負を生み出していることに積極的に加担したいと思う人はいませんよね。誰かを悲しませたり苦しめたりはしたくないと思うはずです。だから、「自分が何をやりたいのか」を突き詰めていくと、社会や環境に対する負を生み出さないこと、つまりSDGsにつながる意思決定が増え、自然とそういう世界がつくられていくんじゃないかと思っています。

起業も、新規事業も、「SDGsやESG投資を重視しよう」とわざわざ意識するよりは、本当に自分たちがやりたいことを考え抜き、追求することが大事なのではないでしょうか。

吉柳自社のサステナビリティを考えていくと、社員が幸せであることが事業成長や永続性を支えていく重要なひとつだと思っています。社員の幸せ、今で言うとウェルビーイングですが、事業云々の前に大事なことだと思うんです。

成長意欲のある弊社の社員にとってウェルビーイングというのは、福利厚生とか物理的な面だけでなく、“やりがい”によるものが大きいと思うので、会社の成長と社員のやりがいがマッチングする環境づくりとどんな才能をもった社員でも認められ必ず輝ける環境づくりに努めています。それが、ベクトルにとってのサステナビリティだとも思います。

坊垣そうですね。自分が幸せだからこそ、「お客さんがどうなったら幸せかな」「このサービスがもっと良くなるにはどうしたらいいかな」といったことを、本質的に追求できるのだと思いますね。

吉柳氏、坊垣氏はまた、近年のスタートアップは社会課題解決型の事業が多く、特に若手はSDGsをはじめとする社会課題への意識が高いと感じているという。

坊垣Z世代と呼ばれる層を中心に若い方は、環境問題や人権問題など本当に自分たちの問題として受け止めています。そういう意味では、SDGsが注目されるのは必然的な流れですし、今特に世の中の変革が迫られていると思います。

むしろ利益追求最優先を軸として経営すると、世の中に負を生み出していても稼げることをやるという発想になってしまうことがあります。そういう場合は、あえてSDGsを意識することで、感覚をつかめる可能性があると思います。

吉柳SDGsにコミットすると表明する大企業さんも増えてきていますが、成果を出し続けるのは簡単なことではありません。すでに沁みついた考え方があるから、坊垣さんが指摘したように「稼げることをやめる」といった発想になりがちで、亀裂が産まれることすらあるからです。日本は長寿企業が世界的にも多い国ですが、日本企業はサステナビリティはあっても、スケーラビリティ(拡張性)が欠如していると言われています。事業が成長しないと元も子もないので、両輪が大事であることを忘れてはなりません。

一方で若者が多いスタートアップやベンチャー企業では、もともとその価値観をもっているので、素直に経営していけば、自然とサステナブルな意思決定を積み重ねていけると思うんです。なので、もっと自信を持って、やりたいことに邁進してほしいですね。

若手の事業創造や経営においては、SDGsやESGなどの今標榜されているバズワードを変に意識することなく、素直に考えていくことで自然とあるべき方向に向かうべきだ。吉柳氏はその視点が「ビジネスチャンス」にもなると断言する。

吉柳誰かや社会の役に立ちたいなと思った時に、世の中を見渡すと社会課題は特に見つかりやすいはずです。そこへのソリューション提供は大きなビジネスチャンスですし、比較的若いスタートアップはそこに目が向いているので、今後も伸びていくのではないでしょうか。

こちらの記事は2022年02月21日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

落合 真彩

写真

藤田 慎一郎

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