「終わりなき旅」と書いて「10XのBizDev」と読む!──三菱商事、マッキンゼー出身の若手BizDevが明かすStailer導入のプロジェクト全貌と、商社&コンサル出身者が活躍できる理由
Sponsored元メルカリ(ソウゾウ)の矢本真丈氏らが創業した10Xでは、ここ1~2年の間、トップティアの大手商社や外資系コンサルティングファーム出身者たちのジョインが次々と決まっている。同社の成長を牽引するECプラットフォーム『Stailer』は、イトーヨーカドーやライフといった大手小売チェーンのネットスーパーに利用されており、それら小売企業の事業成長に貢献している。そして、『Stailer』が持つユニークネスは「SaaSとSIerの良いとこどり」という点だと、矢本氏のインタビューで詳しく聞いた。
このプラットフォームによるネットスーパーの立ち上げを提案し、導入を進め、PMFさせ、グロースさせる。これが、10XにおけるBizDevの役割だ。つまり、パートナー企業とともに細かな課題解決をしながら事業を成功へと導くBizDevこそ、このプラットフォームによって日本社会で「10xを創る」というミッションの担い手なのだ。
今回インタビューした赤木努氏、田村治顕氏はそれぞれ元三菱商事と元マッキンゼー・アンド・カンパニーという、言わずとしれた著名企業出身の若きBizDev。両氏とも新卒入社から数年間、国内外の大きな事業規模の現場に身を置き、小売やテクノロジー、スタートアップとは縁遠い場所にいた人物である。そんななか、彼らが30歳前後でその肩書を捨ててまで10Xへ転職した理由とは何だったのか、そしてBizDevとして、具体的にどんな業務を通じて価値を創出しているのか。前後編の2記事に分けて、2人に真相を伺った。(後編は1日後に公開予定)
- TEXT BY TOSHIYA ISOBE
- EDIT BY TAKUYA OHAMA
確実な年収2,000万円より、不確実でも更なる成長機会と事業にコミットできる環境を求めた
赤木 30代のキャリアをイメージしたときに、三菱商事で管理職になれば年収は2,000万。豊かな生活ができるだろうし、海外駐在にもう一度いけるかもしれない。ただ、このままだと長期的にはリスクもあると思ったんです。
三菱商事で7年勤務し、南米駐在も経験し、大学生が憧れるキャリアを歩んできた赤木氏が表明したのは、高い年収や豊かな生活よりも、チャレンジングな業務や成長に対する意欲の言葉だ。そのエネルギーを存分に注ぎ込める業務に就くよう、社内に働きかけるという手もあったはず。しかし、赤木氏が選んだ選択肢は、10Xへの転職だったのだ。
赤木キャリアに悩んだ際よく相談していた上司がいました。会社の立場を脇に置いて「僕にとって何が一番良いか」を率直に言ってくれる方でした。彼が「元三菱商事の同僚を紹介するから、会ってこい」と言ってくれんです。それが今の10Xに入るきっかけをつくってくれた、DCMベンチャーズのジェネラルパートナー・本多 央輔さんとの出会いです。
面談の中で「VCとか入ってみたいんですよ」と軽い気持ちで話したら、「VCをなめるなよ」とボコボコに言われたんです(笑)。その後、彼からやりたいことを問われたときに、「いつかアルゼンチン・ステーキのレストランをやりたい」と伝えたら面白がっていただけたようで。
そこから、同じDCMベンチャーズのプリンシパル・原 健一郎さんを繋いでくださり、彼らの投資先である10X含むいくつかのベンチャー/スタートアップを紹介いただきました。
そのなかで10Xを選んだ決め手を聞くと、赤木氏は「一言でいうと余白ですね」と答える。
赤木2020年の春頃、10Xはまだソフトウェアエンジニアを中心に10人ほどで、専任のBizDevもいなかったため、一人目としてジョインできるというタイミング。やれることもたくさんあるし、自分が吸収できることも多いと思いました。デジタル化が進んでいないレガシーな小売産業に向き合う事業に対して、「とてつもなく大きなことができそうだぞ」という伸び代を感じたんです。
また、代表・矢本の人間性に惚れたということもあります。彼は全ての発言に自身の明確なスタンスをとって「俺はこうだ」と言い切るんですよね。30代中盤で僕と年齢も3つ位しか変わらないのに、人生に対するポジションの取り方やコミット具合が半端じゃないと感じまして。
商社では役員クラスであっても、「Aも良いけど、Bも捨て難い」といったニュアンスでコミュニケーションを取る人がほとんどでした。この違いがすごく魅力的に感じられて、「この人なら自分の背中を100%預けても良いんじゃないか」と思えたんです。
一方、マッキンゼー・アンド・カンパニーから2021年2月に10Xへとジョインした田村氏も、赤木氏同様、二社目にあたるキャリアに10Xを選んでいる。
田村すべてのコンサルタントが新卒数年目に頭を悩ませる、キャリアの二つの選択肢があります。プロのコンサルとしての真髄を極めるか、それともコンサルとしての能力をフル活用してコンサル以外に活路を見出し、新しい価値を出す環境に身を置くかという2択です。
そこで私は後者の、新しい価値を自らリードして創出することに挑戦したくなったんです。なぜなら、先々同じようなチャレンジをするのであれば、失敗を経験することも含め、早めに飛び込んでしまった方が良いですから。そう思った結果、スタートアップに狙いを定め具体的な企業を検討し始めました。
10Xとの出会いは、偶然にも赤木氏と同様DCMベンチャーズからの紹介。同社のアソシエイトであり、田村氏と同じく元マッキンゼーの猿丸 美喜氏より紹介を受けて10Xに興味を持ったという。
しかし田村氏にとっては、小売という業界も、社員数が数十人という企業規模も、はたまた『Stailer』ローンチから1年も経っていないというまだ浅い事業フェーズも、その全てが未経験の領域。自分が価値を出せるか、不安は大きかったという。それでも10Xが採用プロセスにおいて必ず実施している入社前の”トライアル”を経て、「ここで働きたい」という気持ちが一気に強まったと振り返る。
田村10Xでは採用プロセスの一貫として、実際に一緒に仕事をする”トライアル”を設けています。私のトライアルでは、『Stailer』の注文・配送のためのシステム作りを推進するプロジェクトを任せていただきました。具体的には、オペレーション構築のための要件洗い出しとプロダクトへの落とし込みがテーマ。
これまで関わったことのないドメインでしたが、お題だけ渡されて何もないところから仮説を作り答えを導き出すという流れは、前職でみっちりと経験を積んできたところです。ですので、スタートアップのような自ら課題を設定し、実行にまで落とし込むという環境においては戦略コンサルティングの蓄積があれば、業種自体が未経験でもやっていけるなと感じ、ここでなら楽しめそうだなと思えたんです。
まだ誰も着手していない領域で、自ら先陣を切って価値を創っていく。このチャレンジを思う存分できるという魅力こそ、彼ら2人を突き動かした正体だ。もちろん単なる衝動で前職を飛び出したわけではなく、「残るキャリア」と「飛び出すキャリア」、双方を中長期的な視点で比較し、どちらが自身にとって最適な選択となるかを熟慮しての決断だ。
裏を返せば、この決断があったという事実こそが、スタートアップという環境が持つ、挑戦者たちの心を掴んで離さない魅力を証明しているともいえるだろう。なかでも10Xは、市場や事業などあらゆる側面において伸び代があるだけでなく、代表・矢本氏が持つ強烈な求心力もわかりやすい魅力の一つ。優秀な同志を惹きつける要因は、このように複数の因子にまたがって存在しているのだ。
パートナーの成功に必要なことは全てやる。それが10X、BizDevだ
2人の決断の背景を掴んだところで、ここからは実際に両氏が10XのBizDevとして何をやっているのかをみていこう。とはいえ、BizDevという職種は企業によってその役割に違いがある。10XのBizDevはそもそも、どういったミッションを追い、どのような業務を日々行うものなのだろうか。
赤木氏、田村氏の説明によると、その業務範囲はものすごく広い。パートナー企業への提案(営業)からStailerの導入、さらには導入後のグロース(マーケティング、業務改善)や、終わりのないカスタマーサクセスまで含まれる。それぞれのフェーズを独立したプロジェクトとして捉え、推進していくのだ。
『Stailer』というプラットフォームを活用し、パートナー企業のネットスーパーという新ビジネスを創り上げる。文字通り「ビジネス・ディベロップメント」と言えるだろう。
田村BizDevの役割を一言でいうと「パートナー企業に伴走し、そのビジネスの成功のために必要なすべてを実行すること」です。
BizDev一人ひとりが、ビジネスグロースやプロダクト開発のプロというわけではありませんが、社内外のスペシャリストたちと常に連携し、必要な知見を得ながらお客様と一緒にプロジェクトを前に進めています。
『Stailer』によるネットスーパー立ち上げフローは大きく四つのフェーズに分かれる。"提案” → "導入" → "PMF(プロダクトマーケットフィット)" → "グロース"といった括りとなっている。そしてこれらの各フェーズが独立した"プロジェクト"として切り出されていく。10XのBizDevは、これら4つの各プロジェクトの成功に向けて、オーナーシップを持って推進していく立場にあるのだ。
前提として、Stailerというプロダクトには大きく分けて2つの機能がある。ひとつは、エンドユーザーがスマホを通して買い物できる「ECサービスとしての側面」。そしてもうひとつは、店舗スタッフが行う在庫チェックや商品のピッキング、パッキングを円滑にする「業務管理・オペレーションとしての側面」だ。
ただしこの2つの機能は各社必ず同時にローンチするわけではなく、先にECサービス機能だけ、あるいは先に業務管理システムの一部だけといったケースもあり、そのタイミングはパートナーによって異なる。この判断を行うのもBizDevの仕事だ。
田村『Stailer』は、パートナー企業の特性によってかなり柔軟にそのかたちを変えます。というか僕らBizDevが提案や導入の際にパートナーに合った形で提案しているのですが(笑)。
例えば配送という切り口を見れば、トラックで運ぶのか、店頭で受け取るのか、はたまたドライブスルーなのか、いくつかのオプションの中から最適なかたちを、パートナー企業と一緒に模索します。他にも、事業展開するエリアやビジネスモデルによって変わる点が多くあります。フェーズ1の提案時やフェーズ2の導入時には、そういった議論を重ねて期待値を調整した上で、実際にネットスーパーを立ち上げ、運用していきます。
ここだけを聞くと、コンサルティングセールスやSaaSセールス、あるいはセールスエンジニアといった職種がイメージされるだろうか。しかしもちろん、これはほんの一部だ。
田村フェーズ3のPMFを目指すプロジェクトでは、ネットスーパー立ち上げ(『Stailer』導入)後の諸問題を解決しながら、提供価値を高めていきます。
実際に現場で使い始めると、エンドユーザーや店舗のスタッフからシステムに対してのフィードバックが上がってきますよね。それらを収集・優先順位付けしながら、UIの変更や現場のオペレーション改善だけでなくプラットフォーム自体のブラッシュアップまでしていきます。
ちなみに、このフェーズ3はあくまでも検証過程のため、フェーズ2までに見立てた機能要件とは異なる開発や改善を行う必要性も発生する可能性があります。そうした議論を繰り返して、「あとはエンドユーザーをより多く集客するマーケティングに踏み出せる」というPMFのようなタイミングを探ります。だからこそ「PMF」と名付けています。
田村フェーズ4はさまざまなグロース施策を実行していきます。例えば「3年以内にGMV1,000億円!」のような目標を定め、パートナー企業と10X双方のマーケティングチームなどと連携し、集客戦略を決めて実行していきます。ここまで来るともう「終わりのない旅」という感じですね(笑)。
このあたりはプロダクトマネジャー(PdM)やカスタマーサクセス、あるいはITコンサルティングといった職種がイメージできるだろうか。BizDevというポジションが広い守備範囲を持つことがよくわかる。
ちなみに、BizDevの仕事としてユニークな点がもう一つある。それは「これらのフェーズ(プロジェクト)を推進する際のリードタイムを、いかにして短縮していくか」という隠れミッションも存在するという点だ。開発チームと一緒に、常に検討を進めている。つまり、ここまでの導入やPMFの実績に応じて、必要な機能やノウハウを効率的に蓄積していくことで、将来的にはさらに多くの小売事業者に対し、効率的なネットスーパー立ち上げやグロースを提供していこうとしているのだ。
『Stailer』はプラットフォームビジネスであり、プラットフォームの進化により導入先のサクセス事例が増えれば増えるほど、新たな導入企業に新たな価値を届けられる。単に10Xの業務効率を促進するという話ではない。パートナー企業が、よりスピーディに自社の新規事業立ち上げを達成できるようになるということだ。
10XのBizDevが「パートナーの成功に紐づく全てのことを実行すると掲げている所以」はここにある。
10X流、BizDev人材育成の仕組みはツーマンセルにあり
ここまでで、BizDevがカバーする領域を網羅的に把握することができた。しかし、こうした幅広い業務をすでに経験しているという人材はまずいないだろう。実際、2人も未経験から入社している。すべてをこなせるようになるまでにはかなりの鍛錬を要しそうだが、10XではBizDevの育成をどのように仕組み化しているのだろうか。この点に、より特徴的かつ10Xらしい事業推進のスタイルがある。
同社は、一つのプロジェクトに対して2名以上のBizDevをアサインする。そして、一人あたり複数の、それもフェーズの異なるプロジェクトを担当することが常だ。決して人的リソースが豊富にあるとは言えないスタートアップにおいて、なぜこのような進め方を採っているのだろうか。
赤木2つ理由があります。1つは、多面的な見方でプロジェクトを進めるためです。どんな人でも1人だと見落とすこともありますし、BizDev一人ひとり強みが異なるため、2名以上で補完し合うという意味合いを持たせています。
そしてもう1つの理由こそが重要です。それは、BizDevの急速な成長を促していくためです。新しく入ったメンバーや若いメンバーが、早く活躍できるようになるための近道は、スキルや経験が豊富な人と一緒にプロジェクトを進めるOJTです。そのプロセスを経て、すぐに自律してプロジェクトを回していけるようなアサインをしています。
このプロジェクトへのアサインを具体的に表すと、10Xではメンター役にあたる"PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィサー)"と、担当者にあたる"メンバー"という呼称で職位を設けている。例えばA氏が導入フェーズでメンバーとしてプロジェクトを完了したら、次回から同じフェーズを担当する際にはA氏はPMOを担う。
一方、既に経験したフェーズのプロジェクトとは別のフェーズのプロジェクトを新規に任される場合は、そのプロジェクト内においてはメンバーとしてプロジェクトに関わる、といった具合だ。そのため「A氏はフェーズ1と2ではPMO、3と4ではメンバー」といった表現でコミュニケーションを取る。
こうして10XにおけるBizDevの役割を見ていくと、パートナー企業に伴走し続け、『Stailer』を導入し、成功までリードしていく役割を持っていることがわかってきた。一方で、読者の中には「それって結局Stailerを売って終わりということじゃないの?」「ベンチャー/スタートアップに詳しくないからセールスとの違いが分からない」という懸念を持つ方もいるだろう。そこに対し赤木氏は定量目標を持っていないこと、パートナーの事業運営の中に潜りこむこと、という2つの違いを挙げた。
赤木「○社導入」や「受注額○円」といった、数値目標を追っていないのが10XのBizDevと一般的なセールスとの違いの一つです。短期的な数値指標を追っているのではなく、中長期な視点でパートナーの成功へコミットするというところに目標を持っています。
もう一つは、パートナーに対してサービスを提供するという意識ではなく、パートナーの事業成功のために伴走しているという関わり方そのものにあります。『Stailer』のビジネスモデルは従量課金制、つまりStailer経由の総売上高に応じて報酬をいただくという手法を取っています。これが意味することは、パートナーの事業が成功しないことには我々も成功できないということなんです。
このように、10Xは短期的に利益が出る方法ではなく、あえて長期戦に持ち込むようなビジネスモデルでサービス提供をしている。極端な話、1年後に『Stailer』の導入数が10倍に増えたとしても、2年後に各パートナー企業のネットスーパー事業が伸びていなければ、10Xの売上や利益には結びつかないということだ。
また、田村氏が挙げた例として、例えばパートナー企業が展開しているエリアの人口密度が少なく、ネットスーパーを始めても利益を上げることは難しいと判断すると、ネットスーパー事業の導入決定を行う前に、そもそも展開しないという提案をすることがあることもBizDevの責務だという。
前人未到の領域ゆえ、ハマるスキルも無限大
ここまでくると、読者も10XのBizDevについてはもはや社外で誰よりも精通した人物となっていることだろう。そしてここからは、より臨場感を持って10Xでの仕事を自身と重ね合わせて理解してもらうべく、赤木氏と田村氏には現場での生々しいエピソードを語ってもらった。元商社、元戦略コンサルタントというそれぞれの立場から現場やお互いの活躍ぶりを見て、どのような印象を持ち合っているのだろうか。
赤木田村さんは戦コンだっただけあって、社内でも随一のプロジェクトマネジメントのプロフェッショナルなんです。要は、プロジェクトを前にすすめる力が半端じゃない。
スキル面でも、物事を体系的に理解する力がとにかく高いですね。特に学ばせてもらっている点として、「仕事の準備の仕方」があります。
赤木2人で担当しているパートナーとのプロジェクトでは、ゲームプランといって、毎週金曜日に翌週の金曜日までの目標とそのための計画を挙げる取り組みをしているのですが、田村さんはその精度がとにかく高い。
1週間後にあるべき状態から逆算し、予定されているミーティングに向けたドキュメント準備はもちろん、そこに向けて必要な作業、社内外の調整を全て計画しているため、確実に進捗を出すことができるんです。
ここで田村氏の緻密さを物語るエピソードとして、大阪出張時のひとコマがある。行きの新幹線の中で2人がミーティングのシミュレーションをしていた際に、赤木氏はアジェンダを3つに整理して準備していたが、田村氏は各アジェンダに対し、「おそらく先方はこのように返してくるから、このときのカウンタートークはこれで大丈夫か」と、コミュニケーションの先の先まで想定しており、とても驚いたそうだ。
田村準備に関しては前職で痛いほど失敗経験をしましたから(笑)。準備が浅いと、クライアントとのミーティングを計画通りに進められず、納期やクオリティの観点で結果的に自分たちの首を絞めることになる。
どうすればパートナーも自分たちもスムーズにコトを進められるかを、多数のプロジェクト経験から分析した結果、事前準備で差分が出ることがわかり、準備にこそ時間をかけることが重要だなと学んだんです。この捉え方はコンサルティングに留まらず、スタートアップでも使えるポータブルスキルだったと今振り返って思いますね。
その他、前職のコンサルティング経験が10Xでのプロジェクト推進に活きたポイントに「何もない状態から問いと答えを出すこと」を田村氏は挙げる。
例えば、ある大手スーパーとのプロジェクトにおいてこれまでの『Stailer』では実装していなかった配送や商品マスタ(商品コードや型番を指す)に関する機能を求められたそうだが、その際に課題に対しゼロから仮説を設定。そこから必要となる要素を落とし込み、開発につなげた。まったくの更地から、オペレーションとしてなにが必要かを定義するという戦略コンサルタント流の問題解決力が活きたのだ。
コンサルタント時代には、ある製造業のコングロマリットに対し、どうすれば事業を最適化し成長戦略を描けるかといったスケールの大きいテーマから、車の板金のコストをどうしたら下げられるかといったテーマまで、粒度もテーマも異なるイシューに向き合ってきた。これらの経験は、10Xの今のBizDevに求められている「未だ生み出したことのないプロダクトを作り、価値を出す」という業務において遺憾なく発揮されている。
一方、田村氏から見た赤木氏の印象についてはどうだろう。
田村尊敬しているのは、「パートナーと信頼関係を構築して絶妙な距離感を保ちつつ、その信頼関係をてこにして、物事を全速力で進めるところ」ですね。
まず、BizDevの真価が問われる瞬間って、プロジェクトがうまくいっていない時こそだと思うんです。10XのBizDevは、チャレンジングな状況の中で説明責任を果たし、パートナーの理解・納得を得ながら事業を進める力が求められます。
実際に赤木さんは相手の腹に落ちるコミュニケーションとは何かを考えてアプローチできているので、パートナーの懐に入り込み信頼獲得するのがとにかくうまい。その点は是非僕も学びたいなと思っているところです。
赤木商社出身者って、突出したスキルを自覚しておらず市場価値に不安を覚える人も多いですが、実はコミュニケーションスキルが大いに役立っているという感覚はありますね。10Xでは、パートナーと信頼関係を作ることがBizDevに対して強く求められる要素です。事業成長という結果を出して信頼を獲得するのはもちろんですが、日々の細かいコミュニケーションにおいてもパートナーに寄り添いながら信頼を勝ち取っていくスタイルを意識しています。
赤木氏が信頼関係を作る重要性を強烈に実感したのは、前職でペルーに駐在しているときだった。文化や言語が違うなかで、取引先である自動車のディーラーに対して指摘もしなければならない立場。「店舗の看板が曲がっているので直してほしい」「ビーチ横の店舗なんだから店内の砂は掃除してくれ」と訴える赤木氏。しかし、当初は連携が噛み合わず「なんであなたにそんな事を言われないといけないんだ?」と現地のディーラーから逆に文句を言われていたそうだ。
しかし諦めることなく、相手の立場を尊重したコミュニケーションを泥臭く取り続け、少しずつ話を聴いてもらえるようになったという。こうした経験に裏打ちされたコミュニケーション手法が10XのBizDevにも活きているとのこと。そこで赤木氏に具体的なコツを聞くと、「人によってコミュニケーションを取るタイミングと量を調整する」というコメントが返ってきた。
赤木人によっては、頻度高く話したほうがいい人もいれば、そうではない人もいます。加えて、話すべきタイミングというのもあるため、例えば「Aさんに対して今話すべきか、いやBさんに聴いてから話そうか」、といった細かい調整も気を配りながらプロジェクトを推進してきました。
細かいHow論ですが、人によってコミュニケーションの量とタイミングを調整するのは信頼関係を築く上で有効だったなと振り返っています。
このように、異業種からの転職に不安感を持っていた赤木氏と田村氏だが、前職の経験をフルに活かし、BizDevとして活躍している様が窺える。
ここで読者に伝えておきたいポイントは、彼ら自身も今挙げた前職でのスキルが活かせるとは認識していなかったというところだ。既に述べてきた通り、10XのBizDevの管掌領域は多岐に渡る。また、そもそも事業として未開の領域に切り込んでいるため、アレとコレとソレ、と求められるスキルを限定的に明示するのは現時点では不可能。
つまり裏を返せば、自身の築き上げてきたプロフェッショナルな経験とフロンティア精神があれば、活躍の機会は10倍、いや無限大となり得るだろう。
後編では、反対に「前職からアンラーニングしなければならなかったこと」や、「実は入社前は代表の矢本氏とは気が合わないと思っていた話」など、より赤裸々なエピソードを伺い、「10xを創る働き方」のイメージをその手に掴んでもらいたい。
こちらの記事は2021年11月25日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
磯部 俊哉
編集
大浜 拓也
株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。
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