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返品の増加はビジネスチャンスでもあった。Eコマースの成長で生まれた、3つの海外スタートアップ

2017年における全世界のEコマース市場規模(BtoC)は2兆3,000億ドルにのぼる。2021年まで対前年比18%以上の成長が見込まれるほど、急拡大を続けている市場だ。一方で、その成長にともない、商品の返品率が上昇していることが問題視されている。

実店舗で商品が購入された場合の返品率は8%ほどで推移する傾向にあるが、Eコマースにおける返品率は15%~30%というデータがあるほどだ。

2017年の小売業界における返品額の市場規模も2015年から53%増加し、その額は4,000億ドルにものぼるという。返品処理にかかるコストは、小売業者にとって看過できない課題といえるだろう。

このような状況の中で、いち早く返品の増加をビジネス機会と捉え、課題解決を志向するスタートアップが登場し始めている。本記事では、返品率の増加によって新たに生まれた市場へと挑む、海外スタートアップ3社について紹介していく。

  • TEXT BY TAKUMI OKAJIMA
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まるで「返品版ヤフオク」。返品でつくるB2Bマーケットプレイス

最初に紹介するのは、過剰在庫や返品を売買できるB2Bマーケットプレイス「B-Stock」だ。AmazonやBest Buy、Walmartといった大手小売業者から中小企業まで、幅広い事業者が出品しており、バイヤーはそれらの商品を安く仕入れられる。

オンラインオークションの仕組みによってアパレル、家具、家電製品といった様々なジャンルの商品が世界中から集まるB-Stockは、まるで「返品版ヤフオク」のようなサービスだ。

B-Stockは2008年に創業後、数十億ドルもの在庫を販売しており、2018年6月にはプライベート・エクイティ企業のSpectrum Equityから6,500万ドルと大型の資金調達を行っている。B-Stockは10年間にわたり黒字だったとしているが、さらなる規模拡大を狙う。

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購入しなくても楽しめる。視聴者参加型オークション「Gravy」

次に紹介するのは、大手小売店で余った在庫を安く買い取り、オークションで販売するライブ配信サービス「Gravy」だ。このサービスの特徴は、スマートフォン上でテレビショッピングのような体験ができるだけでなく、視聴者参加型のショーになっていることだ。

毎晩決まった時間に行われるGravyのライブ配信では、最初にその日販売される商品の詳細が明かされる。商品の割引率は30〜70%の間で変動し、オークション開始から時間が経つにつれて価格は下がっていく。低い価格で商品を手に入れるためには待つだけで良いが、在庫の数量は伏せられているため、長く待ち過ぎると商品は売り切れてしまう。そのため、商品を最安価で購入するために他の参加者と競い合うスリルを楽しむことができる。

商品がいくらで売り切れるかを予測し、もっとも正確な予測をした者が賞金を得られるゲームも用意されており、商品に興味がない視聴者も楽しめる仕組みとなっている。

Gravyの収益源は製品の販売にともなう手数料ではなく、商品の製造業者から支払われる広告料だ。製造業者は広告機会を得るために、Gravyへ広告料を支払い、製品を提供する。

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送料も箱詰めも不要。近場で気軽に返品できる「Happy Returns」

最後に紹介するスタートアップは、実店舗を持たないEコマース事業者向けの返品仲介事業を手がける「Happy Returns」だ。

顧客はEコマースで購入した商品をショッピングモールやブティックなどに設置された有人ブースへ持ち込み、簡単な手続きを済ませれば、無料で返品を完了できる。面倒な箱詰めなどの作業も必要なく、近場の店舗へ足を運ぶだけで気軽に返品可能だという。

Happy Returnsに返品物を一括管理してもらうことで、Eコマース事業者は返品在庫の管理コストが削減される。製造元への返品もHappy Returnsがまとめて行ってくれるため、返品をするときに支払っていた送料も軽減される仕組みだ。このとき、1商品あたり数パーセントの手数料を請求することでHappy Returnsは収益を得る。

Happy Returnsがショッピングモールにブース出店することによって、来客増が期待できるというメリットもある。ブースを訪れる顧客の75%は普段ショッピングモールに訪れない人たちで、そのうち25%は商品を購入するようになったという

日本では「メルカリ」や「CASH」といった中古品ビジネスに注目が集まっている一方で、本記事で紹介したような返品ビジネスに焦点が当たることは少ないと感じる。

しかし、Amazon Primeが普及し始め、無料返品が当たり前になっていくなか、返品コマース市場はますます拡大していくはずだ。日本においてはまだ顕在化していないこのBtoB市場には、大きな商機が眠っているのではないだろうか。

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執筆

岡島 たくみ

株式会社モメンタム・ホース所属のライター・編集者。1995年生まれ、福井県出身。神戸大学経済学部経済学科→新卒で現職。スタートアップを中心としたビジネス・テクノロジー全般に関心があります。

こちらの記事は2019年04月15日に公開しており、記載されている情報が異なる場合がございます。