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「Zoomとは戦う領域が違う」
ベルフェイス中島一明が明かす、ニッチトップを獲る事業哲学

インタビュイー
中島 一明
  • ベルフェイス株式会社 代表取締役 

1985年生。福岡県出身。起業を志し、高校を3か月で中退。15歳で土木会社に就職し、貯めた資金で世界一周の旅をしながら200枚のビジネスプランを作成。 2007年、21歳で一社目を起業し、各県の中小企業経営者を動画で紹介する広告メディア「社長 .tv」を全国展開。紆余曲折を経て同社を退任したのち、2015年4月27日にベルフェイスを設立。

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2020年2月、オンライン商談システム『bellFace』を提供するベルフェイスが52億円を調達した。導入企業数は2,000社を突破。新型コロナウイルス感染症で外出自粛が求められる影響もあり、オンライン商談のニーズは高く、世界的に経済成長が鈍化する中でもユーザー数を伸ばしている。2020年5月には、リモート環境での営業活動を支援すべく、60日間の無料トライアルを開始した

Zoom』や『Google Meet』、『Skype』といった世界的なWeb会議システムがしのぎを削るなか、ベルフェイスの挑む市場は、一見はレッドオーシャンのようだ。しかし、代表取締役の中島一明氏は「戦う領域が違う」と断言する。なぜなら、『bellFace』は「セールスに特化したWeb会議システム」ではなく、「電話営業の進化版」だからだ。

実は中島氏にとって、ベルフェイスは二度目の起業。21歳でディーノシステムを創業し、動画広告サイト『日本の社長.tv』を全国展開させたが、28歳で解任。2015年、次なるチャレンジとしてベルフェイスを立ち上げた。

中島氏の事業哲学を表すと、「地に足が着いた」という言葉が似合う。「大手にとっては小さすぎる」成長市場への狙い撃ち、“お客様のお客様”を考慮したターゲット選定、「ユーザーがユーザーを呼び込む」ビジネスモデルの構築……「オンライン商談システム」のパイオニアとしての地位を築き上げた経緯からは、その事業哲学が浮かび上がった。

  • TEXT BY ICHIMOTO MAI
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY MASAKI KOIKE
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“セールス特化のWeb会議システム”ではない

「電話を進化させる」

中島氏は『bellFace』のコンセプトをこう表現する。「セールス機能に特化したWeb会議システム」といったイメージを持っている読者もいるかもしれないが、中島氏はその見方を明確に否定する。

ベルフェイス株式会社 代表取締役・中島一明氏

中島Web会議システムと『bellFace』の違いはシンプルです。『Zoom』や『Google Meet』、『Skype』といったWeb会議システムは、コミュニケーションの始まりから終わりまでがオンラインで完結する“ネットイン”のプロダクトです。

一方で『bellFace』は、“電話イン”。電話が繋がった状態からスタートし、オンラインへと誘導していくのが特徴です。Web会議システムではなく、電話営業の進化版なんです。

営業担当者が、電話の繋がった相手に対し、その場で『bellFace』のホームページを検索して開くように指示。電話相手に、表示された4桁の番号を『bellFace』のシステムに入力してもらうと、オンライン商談が始まる仕組みだ。

このUXは、顧客のIT環境に依存しない。端末やOS、ブラウザが何であろうと、必ず繋がる。アプリのインストールや、URLの共有といった事前準備も、一切必要ない。

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「大手にとっては小さすぎる」成長市場で勝負せよ

2015年の創業後、約5年間でサービスを急成長させた中島氏。最大の要因は「大手にとっては小さすぎる成長市場で勝負したこと」にあったという。ピーター・ティールの名著『ゼロ・トゥ・ワン』でも、「小さく始めて独占すること」の有用性が説かれているが、中島氏も同様の考えを明かしてくれた。

中島まず大切なのは、「伸びが見込めるが、大手にとっては小さい」市場でNo.1になること。それを起点に、さらに別の小さなマーケットでトップを獲ることを繰り返す。これこそスタートアップが大手に勝つための秘訣です。

その際、ペインが大きい市場を見極めることも大切です。同じサービスでも、「なんとしても必要な人」に提供するほうが、「あったほうが便利な人」を狙うよりも短期間で急成長できますから。

ニッチトップを狙っているからこそ、グローバル企業の存在も気にならない。仮に、それらのWeb会議サービスが営業特化の機能を開発したとしても、「敵ではない」と言い放つ。

中島ベルフェイスは「オンライン商談」に特化しています。例えば、最近は収集した大量のセールスデータを分析することで、ユーザーの組織づくりや営業パーソンの教育にも使える新機能の開発に力を入れています。営業の現場を深く理解し、営業パーソンが真に求める機能開発をしてきた我々にしか、提供できない価値だと思っています。

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既存のWeb会議システムは、使い物にならなかった

『bellFace』の萌芽は、中島氏が以前に経営していたディーノシステムで、『日本の社長.tv』事業を展開していたときに現れた。

『日本の社長.tv』は、社長インタビューが多数掲載されている動画広告メディア。福岡でスタートし、全国展開していく過程で、『bellFace』のアイデアにつながる原体験があった。

中島各地方の販売代理店の方に営業をお願いしていましたが、思うように成果が伸びなかったんです。そこで、福岡から電話営業を始めました。一度も訪問せずに趣旨を説明して、契約はFAXで回収。そうしたら、なんと2年間で6,000社の有料契約を獲得できました。

営業といえば、直接訪問することが常識だった時代。しかし、電話営業のほうが、ビジネスを急拡大させられる──中島氏は、そう確信した。

一方で、電話営業の限界も知ったという。

中島お互いの顔がわからず、資料や動画、実際のウェブサイトを見せることもできない。その場で契約を締結するのも難しいので、FAXを送っても放置されてしまうことが少なくありませんでした。

そこで中島氏は、すでに普及していたWeb会議システムの使用を試みる。対面に近い環境での商談を期待したが、「使い物になるツールは一つもなかった」。

中島「事前にアプリをインストールして、時間になったらURLをクリックしてください」なんて、ITリテラシーが高くないお客様にはお願いできません。そもそも売り込む立場の私たちが、お客様に色々と手間をかけてもらうことは難しいですしね。

電話営業のポテンシャルは高い。だが、今のままでは機会損失も大きい。このストレスを何とか解消できないか……。

そのとき、中島氏の脳裏をある考えがよぎった。

中島電話で話している状態から、対面と同じようにコミュニケーションを取れるオンライン商談に、スッとシフトできるツールがあれば便利なのに──。そうしたツールが今、世の中にないのなら、自分たちで作ればいい。そう思い立ったのが、ベルフェイスの出発点です。

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ターゲット選定時、“お客様のお客様”も重要な変数

出発点は見つかれど、勝算があったわけではない。

世の中にないコンセプトであり、ビジネスとして成り立つかも全く未知数。まずは構想段階から、見込み顧客へのインタビューを徹底した。

中島『日本の社長.tv』時代から、さまざまな人に会ってインタビューするのは得意だったんです。「通販業界や保険業界に売れるんじゃないか」「コールセンターにも必要とされるんじゃないか」と仮説を作っては、その業界の人に話を聞いていった。全部で100社ほど回りましたね。

その過程で見えてきたのは、「まずは全国に3,000〜4,000社存在する、BtoB SaaS企業を主要ターゲットとする」という戦略だ。

中島当初想定していた業界の方からは、「面白そうだけど、うちには合わないね」と言われました。例えば、コールセンターの場合はいかに短時間で処理するかが勝負なので、コミュニケーションが充実して対応時間が長くなっては困る、というんです(笑)。

一方で、BtoB SaaSは無形商材を扱っているうえ、マーケティング投資額も大きい。話を聞くうちに相性の良さがわかってきました。

事業を展開していくなかで、「“お客様のお客様”の属性も重要な変数だ」とも気付いた。顧客が『bellFace』を使って営業する相手のITリテラシーが低いほうが、どのような環境でも繋がるベルフェイスのシステムが重宝されやすい。例えば、決してITリテラシーが高いとはいえない幼稚園や保育園向けの業務支援システムを販売しているSaaS企業や、飲食店や美容院への営業を実施する企業などの満足度が高いという。

中島正直に言うと、プロダクトマーケットフィットについては、今でも100%の自信はないです。ユーザーを再定義したり、マーケットを見直したりしながら、フィットするポイントを探し続ける。これは終わりのない作業だと捉えています。

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なぜ「ユーザーがユーザーを呼び込む」のか?

初期の顧客ターゲットをBtoB SaaS企業に絞った中島氏は、マーケットを開拓するうえで、新規営業よりもカスタマーサクセスを重視した。

中島1年後の継続率が異常に低かったからです。2016年頃は、契約更新のタイミングで多くのユーザーが解約する状況でした。これでは、新規契約数を増やしても、売上が積み上がらないので意味がない。

主な原因として、日本独特の「会うこと」重視の商習慣に加え、プロダクトの未熟さも大きかった。アプリのインストールや特定ブラウザの使用を前提とした一般的なWeb会議システムよりも、開発のハードルが高かったんです。2016年当時は、まだ完全に繋がる状態ではありませんでした。

またお客様も、サービスを導入したものの、今までの営業スタイルをどう変えていけばいいかわからない状態で、利用が定着しないことが課題でした。「まずはお客様に利用価値を感じてもらえるようにしなければ」と思い、プロダクト開発とカスタマーサクセスに注力することを決めました。

カスタマーサクセスへの注力は、「守り」であり「攻め」でもあったという。

中島『bellFace』のビジネスモデルは、既存ユーザーの使用頻度が増えると、あわせてサービスの認知が高まる仕組みになっています。『bellFace』で営業を受けた人は、そのメリットを体感することになるため、そのままユーザーにも転換してもらいやすい。

ユーザーがユーザーを呼び込むので、アウトバウンドで新規開拓に勤しむよりも、既存ユーザーの満足度を高めるほうが効率的にユーザーを増やせるんです。短期間で急成長するためには、プロダクトを磨き込むことがそのままマーケティングにもつながるモデルが一番強いと考え、こうしたビジネスモデルを構築しました。

難易度の高いプロダクトを育てつつ、カスタマーサクセスを中心に据えた独自のビジネスモデルを展開したことで、ユーザー数が拡大。2018年10月にJR山手線と日本交通のタクシーで放映された「ヒラメ筋」CMも、カスタマーサクセスの一環だと中島氏は説明する。

中島CMを打ったことで「カスタマーサクセスに注力するフェーズは終わった」と思われることもありますが、逆ですね。カスタマーサクセスにもっと注力するために、CMを打ちました。

成長の一番のボトルネックが、セールスパーソンの商習慣だったんです。「営業は足で稼ぐもの」という意識を変えるためには、マスに訴求する必要がありました。なぜなら、『bellFace』は一人で利用するものではないからです。

せっかくお客様に「いいサービスだ」と思っていただいても、同じ会社の人や取引先に理解してもらえなければ、導入してもらうことも、気持ちよく利用してもらうこともできません。CMで社会的認知を広げ、お客様によりスムーズに使ってもらえるようにしたかったんです。

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成長率日本一のスタートアップを目指す

オンライン商談の広がりと共に、ベルフェイスは拡大フェーズに突入した。2020年度は昨年対比で売上高250%を目指す。今年2月に調達した52億円の資金は、広告・開発投資に加え、人材採用(2020年度で400名予定)に投資するという。

新型コロナウイルス感染症外出自粛が求められる状況で、多くの企業がオンライン商談にシフトしようとする一方で、課題もあるという。

中島プロダクトの価値が、まだ世の中へ正確に伝わっていないと感じています。いまだに『Zoomと何が違うんですか?』と聞かれるのが、何よりの証拠です。ターゲットを定義してコミュニケーションを設計し、マーケットに価値を訴求する──このプロセスを引き続き繰り返していくことで、さらなる急成長を実現していきたいです。

とはいえ、「世界数十ヵ国で新たなビジネスを生み出すセールスプラットフォームをつくる」というビジョンに対しては、ようやく「素材を仕入れた」ぐらいのフェーズ。理想にはまだまだ遠く及びません。まずは成長率日本一のスタートアップになって、日本人でも世界に通用するグローバルベンチャーを作れることを証明したいです。

ペインの大きさを重視して市場を選定し、カスタマーサクセスに注力することでニッチトップを獲得したベルフェイス 。「レッドオーシャンでは戦わない」を是とする戦略が、オンライン商談システム市場における唯一無二のポジションを実現したのだ。

こちらの記事は2020年06月15日に公開しており、
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執筆

一本 麻衣

フリーライター。1987年生まれ。東京都在住。一橋大学社会学部卒業後、メガバンク、総合PR会社などを経て2019年3月よりフリーランス。関心はビジネス全般、キャリア、ジェンダー、多様性、生きづらさ、サステナビリティなど。

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藤田 慎一郎

編集

小池 真幸

編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。

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長谷川 賢人

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

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