エクサウィザーズは、AIベンチャーでなく社会変革スタートアップだ──時代を先取る経営者、春田・大植の2トップが説く、本質的なエンプラ事業開発思想

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インタビュイー
春田 真

京都大学法学部卒業。株式会社住友銀行入行。同行退職後、株式会社ディー・エヌ・エー入社。同社の上場を主導するとともに大手企業とのJV設立や横浜DeNAベイスターズの買収等M&Aを推進。2011年12月、横浜DeNAベイスターズのオーナーに就任。2016年2月、株式会社エクサインテリジェンス(現・株式会社エクサウィザーズ)設立。2017年10月の合併を機に代表取締役会長に就任。2018年11月、取締役会長就任、2023年4月、代表取締役社長に就任。

大植 択真

京都大学工学部卒業。京都大学工学研究科修了(都市計画、AI・データサイエンス)。2013年、ボストンコンサルティンググループに入社。事業成長戦略、事業変革、DX推進、新規事業立ち上げなどの多数のプロジェクトに従事した後に2018年、エクサウィザーズ入社。2019年4月より、AI事業管掌執行役員として年間数百件のAI導入・DX実現を担当。企業の経営層や管理職向けDX研修の講師実績が多数ある。2020年6月に取締役、2023年6月に常務取締役就任。同年10月よりExa Enterprise AIの代表取締役も務める。兵庫県立大学客員准教授。兵庫県ChatGPT等生成AI活用検討プロジェクトチーム アドバイザー。著書に「Web3時代のAI戦略」(日経BP、2022年)。2023年10月からは新会社「株式会社Exa Enterprise AI」の代表取締役社長に就任。

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古くは1950年代の第一次AIブームに始まり、2010年代後半にAIベンチャーが日本国内でも存在感を増し、2022年11月にChatGPTが台頭した。これまでの決して短くない歴史を振り返っても、AIマーケットは間違いなく今が一番盛り上がっていると言えよう。言い換えれば、これほど一般大衆レベルにまですそ野が広がって盛り上がることはなかった。

ではそんな中で、マーケットをリードする存在になるのはどの企業なのか。この問いに対する答えを探し、今回迫るのは、ChatGPTの流行よりもずいぶん前から大手企業向けに腰を据えてAI活用を進めてきたエクサウィザーズだ。国内時価総額トップ100社の半数以上を含む500社超のエンタープライズ企業にAIソリューションを提供してきた同社は、2021年12月に上場を果たした後も、その高度な提供価値のサービスやプロダクト群により着実な成長を続けている。

そんなエクサウィザーズが遂に、生成AIど真ん中の事業を始めた。2023年4月には、大手企業から起こり始めた生成AIの利活用ニーズにいち早く答える形で、「exaBase 生成AI powered byGPT-4(以下、 exaBase 生成AI )」をリリース。そして、2023年10月には、exaBase 生成AIを含む生成AIプロダクトなどに関する事業を分割し、新会社Exa Enterprise AIを設立した。そして、2023年10月には各種IR文書をデータソースにIR業務の効率化を実現する新プロダクト「exaBase IRアシスタント powered by ChatGPT API(以下exaBase IRアシスタント)」もリリースしている。

うがった見方をすれば、「ChatGPTに始まる生成AI盛り上がりに乗じたもの」「儲かるから突発的に始めたもの」に思えるかもしれない。だが、冷静に考えてみてほしい。AI勃興期より、AIプラットフォーム企業としてリーディングカンパニーの地位を築いてきた同社の描くビジョンが、そんな単純なものであるはずはないだろう。

本項では、そんなエクサウィザーズの生成AIにまつわる新戦略を紐解いていく。2023年4月1日付で取締役会長から代表取締役社長に就任した春田 真氏と、同社の生成AI事業の立ち上げから拡大までを強力に推進し、今回の新会社Exa Enterprise AIの代表取締役社長に就任したエクサウィザーズ常務取締役も務める大植 択真氏にインタビューを実施。

「AIは手段であり、目的は社会課題の解決」というAI企業としては実にユニークな思想を持つ同社が新たなチャレンジを始めた背景や、Exa Enterprise AIの独自の提供価値についてとことん深掘りしていく。

  • TEXT BY REI ICHINOSE
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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「AIはあくまで手段、目的は社会課題の解決」。
首尾一貫した哲学が国内AIトップランナーの礎に

長年AI技術による社会課題の解決を目指してきたエクサウィザーズ。2022年11月のChatGPTの台頭以降のAIマーケットの盛り上がりをどう感じているのだろうか。まずは率直に二人に聞いてみた。

春田ChatGPTが台頭するまで、AIは社会の人々にとって全く身近な存在ではなく、シンギュラリティや人の仕事が奪われるなど、負の面ばかりが話題になりがちでした。しかし、そのAIが“チャット”という、誰でも簡単に触れることができてそのアウトプットクオリティを肌感覚でとらえられる形になって現れたので、AIの価値を体感する人が爆発的に増えましたよね。

これによりエンジニアだけでなく大手企業で変革をリードするような経営層も「このAI技術は社内でこんなふうに使えるのでは?」と意見を持つことができるようになりました。これがChatGPTが社会に与えた大きなベネフィットだと感じています。

これまでAIは多くの場合、BtoBサービスとしてしか使われない、いわば閉ざされた技術だった。しかし、ChatGPTは公開後約2か月で全世界1億ユーザーを達成し、広く一般大衆に知れ渡った。

京都大の大学院在籍時を含め、10年以上AIに携わり、『Web3時代のAI戦略』の著者でもある大植氏は、生成AIが登場したことの社会へのインパクトについて語る。

大植マーケットはこれまでにないほど盛り上がりを見せています。社会に初めて根付いたAIが生成AIだったことも、その後押しになっていると感じています。

なにかを検知できるといった類のものだけでなく、ChatGPTのような生成AIには一部のクリエイティブな作業をさせることができます。これによりオフィスワーカーの単純思考・単純作業の多くをAIに任せられる目処が立ったわけです。これまで以上に、「人が人らしい業務」をできる世界に近づきます。

また、コロナ禍のビジネスシーンにおいて、DXやAI利用の話はたくさん交わされてきました。しかし、ChatGPTの台頭により、明らかに経営層のアテンションが高まりました。これからもたくさんのAIソリューションが世に生み出されると思いますが、早くからAI事業を進めてきたエクサウィザーズの強みが今こそ発揮できると感じています。

と言うのも、誤解を恐れずに言えば、我々はこれまではやや時代を先取りしすぎてしまっていたなと思います。しかし、環境や時代が追いついたことで、我々が本当にやりたかったことに取り組める環境になった。つまり、我々が導き出すソリューションも加速度的にアップデートできると確信しています。

人のルーティンワークを減らす手段としての生成AI技術が発展したこと。そして、ChatGPTが一般大衆に広がったからこそ、顧客や企業の経営層がAIの技術を受け入れやすくなったこと。この二つの条件が合わさったことで生成AIのフィールドは一躍ビジネスとして受け入れられるようになったのだ。

一方、AI関連のサービスを提供するスタートアップは多い。同社が国内トップランナーのAI企業としての地位を築き上げた背景にはどのような道のりがあったのだろうか?

春田エクサウィザーズの前身となる、エクサインテリジェンス時代から医療分野向けのAI開発・提供はしていたのですが、 2017年ごろにリリースしたAIの画像認識技術が、医療現場でしっかりと活用されたことがきっかけでした。

それまで医療現場では、日々大量のCTやMRIの画像が撮られ、それをドクターがひとつずつ目視でチェックしなくてはなりませんでした。ですが例えば、冠動脈の抽出には一般の医師で30分、心臓の専門医でも13分かかるところを、エクサインテリジェンスが提供するAIを使用すれば数秒で済む。

このような技術を当時から提供できていたことは、事業に大きなポジティブインパクトを与えましたね。AIのトップランナーとして世に認知され始めたのもその頃からだと思います。

さらに進んで、現在、同社は医療向けのAIソリューションの枠にとらわれず、さまざまなAIサービスを展開している。つまり、事業領域を絞っていないのだ。

春田私はエンジニアでもAI研究者でもありませんので、エクサウィザーズが保有するAI技術が、どうすればより社会に実装されインパクトを与えることができるのかを第一に考えていたんです。

というのも、医療の世界は皆さんもイメージする通り、なにかと制約が多いのが事実。保険制度があるため、「誰が何のためにお金を払うのか」という点が一般的な市場の原理とは異なるんです。医療業界に特化していては、それより大きなビジネスにはならない。生まれた技術を他に使える業界がないかを探して横に展開したい。

そんな想いから、この技術は他の異物検知にも使えるのではないか、AIを用いるとデータ解析もできるのではないか、といった具合に他のあらゆる業界への横展開を実装していく選択肢をとったんです。

技術の横展開と新しい技術の創出を繰り返した今、ようやく私達のAI技術が社会に実装できてきたと感じています。

新しい技術の創出と、技術の横展開の繰り返しで、どんどんAI技術を社会に実装していく──。一方、その姿勢からは「“人工知能の進化を追求する”のようなミッションもあり得たのでは?」との取材陣からの問いかけに対して、春田氏はその胸中を赤裸々に明かしてくれた。

春田エクサウィザーズはAIを扱いますが、それはあくまでも社会課題の解決手段として。なのでこれからも、そして今後も「眼の前の困りごとをどう解決するか」、「私達が保有する技術をどう使うか」に注力し続けたい。

そのため、私たちが定めたミッションは「AIを用いた社会課題解決を通じて幸せな社会を実現する」。ミッションをつくる上で事業領域を絞らなかったのは当然とも言えますね。

大植事業領域を絞らない。この決断には当時、もちろん社内で賛否両論がありました。しかし、最終的には「AIはあくまで手段、目的は社会課題の解決だ」との共通認識が取れたからこそ、単一のプロダクトに縛られることなく、エンタープライズ企業に大きな価値提供ができるような、今のエクサウィザーズの事業の座組みが確立できたと感じます。

AIはあくまで手段であり、目的は社会課題の解決。この守備一貫した姿勢を取り続ける同社だからこそ、当然事業領域は絞らない。これがAIトップランナーであり続ける所以なのだろう。そんな同社が2023年から着手した生成AIにまつわる新事業。次章からいよいよその真相に迫っていこう。

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徹底的にエンタープライズに寄り添ってきたからこそ掴めた、生成AI活用への潜在ニーズ

エクサウィザーズの新会社設立の背景を理解するためには、まずは同社の顧客ターゲットについて知る必要がある。同社は創業当初から、エンタープライズ企業向けにサービスをリリースしてきた。現在は国内時価総額トップ100社の半数以上を含む500社超の企業にソリューションを提供している。

なぜ、創業当時から今まで、絶えず大手企業へのアプローチを重ねてきたのだろか。

大植海外に比べ、日本国内の大手企業の生産性は高くありません。最近の統計だとさらに落ちてきてしまっています。

また、日本においては依然大手企業の存在が大きく、それらの生産性を見直すことこそ、日本全体の生産性向上への近道だと我々は確信しています。

にも関わらず、依然DXは進んでいません。現に、MicrosoftやSalesforce、Sansanなど、大手企業で採用されるDXツールはまだまだ限られていますよね。

エクサウィザーズはこれまで、金融/保険、製造業/産業財、消費財、ヘルスケア、通信/インフラ、エネルギー、人材、物流などあらゆる業界を代表する企業にAIサービスを提供してきた。

そんな同社だからこそ、2022年11月末にリリースされたChatGPTを大手企業が利活用していくに当たっての悩みをいち早くキャッチすることができたのだ。そして生まれたのが、exaBase 生成AI である。

大植企業や官公庁などがChatGPTを使用するとき、入力情報がAIに再学習されるのではないかという懸念が存在します。また、従業員が入力する内容やどう使われているのかの管理が難しいという点も懸念材料でした。

そのため、情報管理のリスクへの懸念から使用を禁止したり、導入を見送ったりしているケースが少なくありませんでした。

一方で、セキュリティとコンプライアンスに配慮した生成・対話型AIサービスへの要望は日に日に急増していたのです。このようなニーズにいち早く応える形でエクサウィザーズは「exaBase」というAIプラットフォーム内に、ChatGPTをベースとして安心・安全に利用できるexaBase 生成を独自に開発しました。

今後は、自律型エージェントに昇華させ、一定の指示を出せばAIである程度の業務なら完結できる展開もあると思います。クライアントの業務フローにきちんと組み込まれるようサポートすることで、人間がより人間らしい、クリエイティブな仕事に就けるフェーズに来たと思っています。

エンタープライズ企業が生成AIを導入するうえで、まず懸念となるのがセキュリティ面だろう。このexaBase 生成AIは、ChatGPTに銀行口座やマイナンバーなど機微情報を送信しない仕組みや、企業のコンプライアンスを遵守するリスクコントロールがなされている。

また、月額費用はChatGPTそのものと比較して半額以下に抑えた900円。加えて、生成AIに限らず様々なAI利活用の知見を積み重ねたエクサウィザーズのメンバーがサポートを行う手厚い提供価値を準備している。

まさに、徹底的にエンタープライズ企業に寄り添ったサービス内容と言える。

もちろん、画像認識、FAQの自動生成、データを踏まえた予測分析、文書分類など、exaBase 生成AIで使える機能以外にも、エクサウィザーズは幅広くプロダクトを手掛ける。

例えば、歩行分析AIを備えた介護業界に特化したツール「CareWiz トルト」(関連する直近のリリースはこちら)や、表情分析AIを備えた教育業界向けのサービス「とりんく」(関連する直近のリリースはこちら)などがその例だ。

エンタープライズ企業から次々と増える生成AIを活用したプロダクトの開発要望。エクサウィザーズ内でも「すでに存在する技術を企業に導入することにリソースが割かれている状況」が続いてしまっていたという。

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日本の生産性を向上させるべく、もっと素早く大胆に動けるよう新会社Exa Enterprise AI設立へ

そんな状況を打破すべく設立されたのが、新会社「Exa Enterprise AI」だ。

大植生成AIに関連するマーケットは急拡大しており、大規模言語モデル(LLM)など生成AIを構成する先端テクノロジーは日進月歩で進化しています。こうした状況下で新たなサービスを機動的に生み出していくには、より新規のプロダクト・サービスの開発に特化した組織体制とカルチャーを確立し、スピード感を重視した意思決定・事業推進が必要でした。

そこで、エクサウィザーズの生成AIプロダクトを中心とした事業を分割し、100%子会社としてExa Enterprise AIを2023年10月に設立することを決定しました

これにより、個社最適のソリューションではなく、広くエンタープライズ企業向けに提供できるプロダクトラインナップをどんどん拡充させていくことが可能となる。

大植Exa Enterprise AIでは、まずは、エンタープライズ企業向けの生成AI SaaSプロダクトを複数展開していく予定です。

事実、エンタープライズ企業向けに「個社最適のソリューション」ではなく「汎用性の高いAIプロダクト」をつくれているエクサウィザーズのような企業は、日本にはほとんど存在していません。

数多のプロダクトを世に送り出す過程では、同社が長年、大手企業のAI利活用という深遠な悩みに立ち向かってきた独自の強みが、遺憾無く発揮される。

大植一般的なSaaSは広告宣伝費をかけてSMBの新規顧客を獲得するモデルが主流ですが、私達はその必要がありません。創業以来、電力会社や製薬会社など様々な大手企業とお取引してきたアセットを活かして進めることができるからです。

早速直近では、exaBaseのなかにIRアシスタントというソリューションが公開された。IR資料をアップロードすると、株主総会や決算説明会で使う質疑応答を予測し、回答のエビデンスまで準備してくれるという。もちろん先述のexaBase 生成AI同様の強固なセキュリティが担保されている。

大植エンタープライズ企業の数ある部門のなかで、まずはIRにアプローチしました。もちろん、TAMの拡大も視野に入れています。IRアシスタントを使った方は、これから生まれるかもしれないエクサウィザーズの企画・経理やHR系などコーポレート領域のソリューションの導入も合わせて検討いただけるようにしたいと思っています。

つまり、元々アカウント使用料が1,000円でも、100万人のオフィスワーカーが使用してくれればとても大きな事業になりますし、アカウント使用料自体、まだまだアップセルの余地もある、というわけです。

AIマーケットは盛り上がっているけれど、まだまだ競合が少ない。このタイミングでエンタープライズ企業にアカウントを作ってもらえると、クロスセルを狙えたり、そもそもスイッチングコストの観点で後々旨味がありますよね。なので今、ギアを上げて進めていきたいですね。

春田誤解のないように、けっして大手企業しかターゲットにしないわけではありません。SMBをターゲットにしたコーポレート領域のホリゾンタルSaaSはすでにいくつも存在しますよね。私達のこれまでの経験やノウハウを活かそうと思った場合、まずはエンタープライズ企業をターゲットにすることがナチュラルな流れだったというわけです。

繰り返しにはなりますが、まだまだ日本社会では影響力を持つ、大手企業の生産性を上げるという課題にアプローチできる環境があるのでトライしていきたいですね。

生産性を上げるためDX一辺倒だった時代ももはや過去の話。気がつけば生成AIの利活用も選択肢に加わっている。この潮流をいち早く察知し、一気に現場での生成AI活用を通した生産性向上を推し進めるのがエクサウィザーズというわけだ。

しかし、エンタープライズ企業向けのプロダクトを提供している国内AI関連企業もいくつか存在していることは、読者の皆様ならお気づきだろう。

エクサウィザーズが提供するプロダクトにはどんな違いがあるのか。

大植個別企業の課題に対してAIというアプローチを取る企業はありますよね。ただ、私達にとってAIはあくまでも手段です。人手をかけずにできる業務をなくし、日本国内の生産性を上げるため、現場でのAIの利活用を推進しています。そのため今のところ、自社でLLMを作ることは考えていません。

春田もちろん生産性向上を推進するために、現存するLLMで不足があれば作るべきですが、既存のLLMでも十分ファインチューニング(微調整)して使えるのが事実です。エンジニアのメンバー含めて社会課題の解決を目指し、現場での利活用を重視していますね。

エンタープライズ企業のほうが儲かるターゲットにしたのではなく、大手企業の生産性を上げるためのアプローチを選択する。AIはあくまでも社会課題解決の手段であるから、LLMよりも現場での利活用に注力する。

一見すると抽象的なミッションからでは読み取りづらい同社のAIに対する向き合い方が徐々に浮き彫りとなってきたのではないだろうか。

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エンタープライズに導入されるうえで大切なのは「業務フローの把握」と「生成AIドリブン」

“ソリューション”ではなく“プロダクトの連続創出”によって、大手企業を起点に日本の生産性向上を狙う、と明言した両名。具体的にどんな業務をAIでカバーする想定なのだろう。

大植ルーティーンワークはもちろん、私が最近ノーマルクリエイティブワークと呼んでいる業務までAIは担えます。例えば、簡単なキャッチコピーを考えるような業務がこのノーマルクリエイティブワークにあたりますね。

オフィスワーカーの業務を自動運転のようにレベル別に例えるとすれば、次のように5段階に分けることが可能です。

Lv 0
ルーティーンワークを人間がやっている
(手動)
LV 1
一部をテクノロジーで効率化している
(半自動)
LV 2
ルーティーンワークを人間がやっている
(自動)
LV 3
ルーティーンワーク+ノーマルクリエイティブワークを条件付き自動化(=現アシスタントシリーズ)
(自動)
LV 4
業務プロセスの自動化範囲が拡大。自律型エージェントによる高度自動化
(自動)
LV 5
完全自動オペレーション
(自動)

大植IRアシスタントはまだレベル3の段階のサービスです。このサービスをフックに、たとえば、別領域でTAMの拡大を目指してサービスの開発、拡充を行おうと思います。

従来、生産性向上というフレーズはルーティンワークの効率化を指していました。しかし生成AIはノーマルクリエイティブワークまでこなせてしまうのが面白いですよね。

なるほど。一方このような疑問も思い浮かぶ。「エンタープライズ企業をターゲットにする以上、MicrosoftやSalesforceのような世界規模の大手企業と競合するのではないか」と。少し意地悪な質問だが、2人にぶつけてみた。

大植競合してシェアを取ることにこだわるよりは、クライアントの業務フローに深く入り込むことにこだわりたいですね。

春田そうですね。たとえばMicrosoftが生成AIを使って手掛ける領域はおそらく資料作成をどう使いやすくするか、ということです。しかし、私達の生成AIを使えば、資料を作って誰かに何かをシェアする、という業務自体が不要になるかもしれません。

もちろん、私達は生成AIそのものや、エンタープライズ企業がAIを導入することに関してはノウハウを有していますが、資料を作成するというフローにおける生成AIの活用に関しては知識が足りません。

このように、我々が有するノウハウとクライアントが有するノウハウ、その両者を補い合いながら協業することで生産性向上のお手伝いができるのであれば、実現したいですね。ビジネス面のメリットもありますし、もっと世の中に貢献できる機会になりそうです。

大植なんにせよ、まず社内で徹底的に生成AIを使いこなすべきだとも考えていて。”AIを日常的に利活用できる”という状態がどういうものなのか、私達も肌で感じる必要があります。そのために、Exa Enterprise AIの業務もなるべく生成AIドリブンで行おうと思っています。

たとえば、採用業務などでは既にその取り組みが開始されています。エクサウィザーズへの就職を検討している方が企業情報を調べる際、ある程度の情報をストックしておけばチャットボット形式で情報をお届けできますよね。私が過去話したセミナー動画を生成AIに学習させておけば、ある程度のコンテンツにもなります。

やはり、生成AIを用いて効率化できてない企業が、生成AIを用いた業務効率化を推進しても中身のない話で終わってしまいますから。常にAI利活用のプロフェッショナルであり続けるためにも、採用業務に限らずどんどん社内で実験を重ねていく予定です。

また、生成AIの利活用が進むとエンタープライズ企業の”スタートアップ化”が起きると私は予知しています。ルーティンワークやノーマルクリエイティブワークがなくなるので、経営者とデータを握る現場のみで業務が完結し、中間管理の必要性が薄まります。

こちらも同様に、まずはExa Enterprise AIの社内で徹底的にデータドリブンを進め、これを体現していきます。

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エクサ流、生成AI事業の開発術

もちろん、ただ生成AIプロダクトに関する事業を分割した受け皿がExa Enterprise AIというわけではない。社会の生成AIに対する著しい認識変容を受けて、Exa Enterprise AIも独自の組織進化が求められているという。

そのきっかけとなったのが、大植氏が毎月経団連で開催するセミナーでの出来事。4月末と8月末に取得したアンケート結果の差分を見て、生成AIの利活用の推進スピードの速さに驚きとともに危機感を覚えたのだ。

大植4月にセミナーを行った時点では「毎日仕事で生成AIを使っている」という回答は約1割だったものの、8月末にはその回答は約2割になりました。このスピード感には流石に驚きを隠せませんでした。

また、「時々仕事で生成AIを使っている」という回答は8月末時点で4割ほどにも。つまり合算すると、セミナーに参加した企業の6割が仕事で生成AIを活用しているということになります。

エクサウィザーズは元来意思決定や作業スピード自体、効率的に、そして迅速に行う組織文化です。しかし、このアンケート結果を突きつけられた時、「このままではいけない、Exa Enterprise AIではさらにスピードアップしてプロダクト開発を行っていく必要がある」と認識しましたね。

早速、Exa Enterprise AIでは組織体制に変化が見て取れるようだ。

大植少数精鋭のチームで時間をシビアに捉え、高く掲げた目標に突き進んでいく。すばやく意思決定し、すばやく実行する。クライアントの業務フローを理解し、生成AI技術とマッチするいろんなアイデアをまず形にしてみる。

徐々にですが、そんな組織へと進化を遂げている実感があります。

また足元では、1つのプロダクトを2、3人の少数チームでどんどん生み出していけるようなチーム作りや、採用も進めています。

Exa Enterprise AIに「生成AIドリブン」というカルチャーをしっかり根付かせ、クリエイティブワークに特化できる組織を作り上げることで、本体のエクサウィザーズにもどんどん還元していきたいですね。

大手企業出身でスピード感に物足りなさを感じ、生成AIに興味がある方にジョインしてもらえるとさらにパワーが出せる気がします!

生成AIを用いて、どこまでも「現場の利活用」に焦点を当てたプロダクトを少数チームで次々と作り上げていく。そんな意欲を持った人にはうってつけの環境と言えよう。

春田私自身、面倒くさいことが大嫌いな人間でして。できたらやりたくありません(笑)。ただ、私のように思う方こそ、生成AIというフィールドでは活躍できると考えています。

自分の仕事をどうやったら楽にできるか考えたい。どんなプロダクトがあると楽になるのを考えたい。そんなワクワクを我々は大切にしていきたいです。

決して人がいらないと言っているわけではありません。自身が今100%の時間をかけていることが、80%の時間でできるようになったら20%で他のことができますよね。エクサウィザーズに入社する方には、こんなマインドで仕事に向き合ってほしいですね。

春田氏の口からは「面倒くさいことが大嫌い。だから楽をできる仕組みを考えたい」と近年のスタートアップ経営者らしからぬ発言が飛び出した。

しかし、プログラミング言語「Ruby」に大きな影響を与えたと言われる「Perl」の開発者ラリー・ウォール氏が提唱したプログラマーの三大美徳とは、「怠慢(Laziness)」「短気(Impatience)」「傲慢(Hubris)」。つまり良いプログラマーは「めんどくさがり」なのだ。そしてこのことは、生成AIのフィールドにも十分当てはまるだろう。

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仕事は徹底して楽しむべき。
ただ、できるだけ楽をして最短で結果を出す工夫を

そんな職業感を持つ春田氏だからこそ、少し変わった独自の人材育成論を持つ。

春田企業数が増え、政府からも人員が配置され、様々整備されているスタートアップ界隈ですが、どんどん“普通の職場”になっている気がしています。

また、多くの経営者が言うようスタートアップパーソンのレベルは近年格段に上がってきていると感じる一方、個人の“意思”が感じられないと思う機会も増えてきました。

自身の意思を発揮したい思いがあるうえで、自分で考えて行動し、その行動に責任を持ってトライしてほしいなと思いますね。

やはりスタートアップの規模で大手企業と同じ働き方をしても、楽しみを享受できません。同じ働き方をするなら大手企業のほうが色々な側面で守られていますしね。だったら、エクサウィザーズにきてくれたメンバーにはこのスタートアップという環境を活かして、自身の意思を発揮して仕事を楽しんでほしいです。

だからこそ、ではありますが、チャレンジし続けることは当然と考えています。でも、結果は簡単に出ません。なので、なかなかでない結果に対してどう本気でアプローチしたかという過程も評価基準に入れています。

大植私もよく春田から「遅い」と明るく言われます(笑)。どうしても目前のことにとらわれて視野が狭くなってしまいますが、フィードバックをいただけると視野が広がるので感謝しています。

春田例えば、金曜日夜に自社サイトを見ていて気になる点が出てきた。これを金曜のうちに修正する会社か、月曜に修正する会社か。どちらを目指してコミュニケーションがとられるのかという違いによって、将来的には絶対に差が出ますよね。仕事をする以上、自社のプロダクトやサービスにプライドが持てるような向き合い方をしてほしいです。

もちろん、常に仕事のことだけを考えよ、と言っているわけではありません。体を壊すまで働けとも思いません。工夫して普段から自然に、良い仕事をしてもらいたいんです。

社内には数字に対してこだわりがあるメンバーが多く在籍しているというエクサウィザーズ。ただし、上から無理難題の数字を押し付けることは決してしない。ここにも春田氏の事業哲学が垣間見える。

春田これは持論ですが、どう頑張っても利益が出ない状態は“事業”とは呼べないと思います。今日頑張って利益が出るなら頑張るべきですが、変なことで売上を立ててほしいわけではありません。一方で、売上は自分たちの立ち位置を客観的に示す指標です。日々の仕事をきちんと行うことで売上を立て、会社を継続的に成長させて行きたいですね。

だからこそ、エクサウィザーズでは、コミットして頑張れば仕組みとして利益が出るビジネスモデルを取っているつもりです。

「仕事は徹底して楽しむべき。ただ、できるだけ楽をして最短で結果を出す工夫を」。春田氏の仕事の向き合い方には、現代のスタートアップパーソンが忘れがちな仕事の本質が詰まっていると感じる。同氏の哲学をインストールできるだけでも、エクサウィザーズに身をおく価値がありそうなもの。

最後に、同社が描く未来について語ってもらった。

春田何度も言うようですが、私達のミッションは誰のために何をする、という言い回しをしていません。社会課題を解決していくことに重きをおいています。AIのマーケットがこれだけ盛り上がるタイミングで、今年、小さなプロジェクト単位のビジネスからプロダクト単位へのビジネスへと事業が拡大する、一つの節目を迎える予定です。

大植私達社内の生成AI活用が進み、少数精鋭のチームでサービスをどんどん作れたら、”エンタープライズ企業のスタートアップ化”に向けて、サービスのラインナップを拡充させていきたいですね。

国内AIトップランナーにしては、「AIは手段であり、目的は社会課題の解決」というユニークな思想を貫くエクサウィザーズ。いや、このように首尾一貫した哲学を持つ同社だからこそ、国内トップランナーとしての位置を築き上げることができた、と言った方が正しいか。

日本のスタートアップの創世期を支えてきた春田氏、AIの第一線を走る大植氏の元で、エンタープライズ企業の生産性を引き上げる生成AIプロダクト開発に打ち込みたい。そんな欲張りなキャリアを志向する人は、ぜひエクサウィザーズについてより深く知ってもらいたい。

こちらの記事は2023年10月27日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

いちのせ れい

写真

藤田 慎一郎

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