連載スタートアップを知りたいならここを見よ!FastGrow注目スタートアップ特集──FastGrow Pitchレポート

合成バイオ、旅行業界のDX、ファンコミュニティ。
注目領域の先頭を走るスタートアップたち──FastGrow Pitchレポート

登壇者
清水 雅士
  • マイクロバイオファクトリー株式会社 代表取締役社長 

2013年東京理科大学大学院修了(工学修士)。2014年Green Earth Institute株式会社に入社。同社にてコリネ型細菌を利用したアミノ酸、アルコール発酵の研究開発及びスケールアップに従事。その後、2018年マイクロバイオファクトリー株式会社を設立、代表取締役社長に就任。

辻 慎太郎
  • CUICIN株式会社 代表取締役 

1990年宮崎県生まれ。2014年、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科修士課程修了。大学院在学時に観光鉄道のプロモーションに携わり、代表としてROOM Inc.を設立。生鮮流通、不動産B2Cサービスなど、様々な企業で新規事業開発に取り組む。2019年からホテル運営会社で、ホテルのブランディングとシステム開発を推進する部の責任者として従事し、2019年11月にCUICIN株式会社を創業。

平良 真人

神奈川県生まれ、一橋大学社会学部卒。 伊藤忠商事、ドコモAOL、㻿ONYにて営業 ・マーケティング・ビジネス開発に携わる。 2007年、Googleへ。 2010年からは統括部長として第二広告営業本部を立ち上げ、営業基盤の確立を通して同本部の成長に尽力。 2014年、THECOO株式会社を設立。ファウンダー兼CEO。 三度の飯よりロックが大好き。

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「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。

登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。

本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、マイクロバイオファクトリー株式会社、CUICIN株式会社、THECOO株式会社の3社(登壇順)だ。

  • TEXT BY OHATA TOMOKO
  • EDIT BY HARUKA MUKAI
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マイクロバイオファクトリー株式会社
持続可能な化学原料をつくる合成バイオベンチャー

マイクロバイオファクトリー株式会社

最初に登壇したのは、マイクロバイオファクトリー代表取締役社長の清水雅士氏だ。

同社は、人工的に開発した微生物を活用して、染料や接着剤、化粧品などに必要な化学原料を製造している。

こうした化学原料は、従来は石油資源から製造されることがほとんどだった。しかし、石油を用いたプロセスでは、大規模な設備や大量のエネルギーが必要になるうえ、有害な物質が発生するなどの課題があった。さらに石油資源の枯渇も懸念されている。

そこで、生物学の知見をもとに、微生物や細胞などを人工的に開発し、化学原料の製造を行う「バイオ化学」が近年注目を集めている。清水氏は「日本酒やビールが、菌の働きによって出来上がるのをイメージすると、分かりやすいかもしれません」と語る。

清水氏は、東京理科大学で生物工学を専門に学び、一般企業でバイオ関連の研究開発に携わった後、2018年にマイクロバイオファクトリーを立ち上げた。かねてから起業に関心はあったが、バイオベンチャーへの世界的な注目にも背中を押されたという。

清水バイオ化学を活用したビジネスには世界的に注目が集まっており、たとえばソフトバンクグループの運営する『ソフトバンク・ビジョン・ファンド』も、積極的にバイオテックベンチャーに投資をしています。

日本でも、クモの糸を人工的に合成し、素材を製造するSpiberなどが知られています。今後もますます盛り上がるはずですし、その流れをマイクロバイオファクトリーが牽引していけたらと考えています。

マイクロバイオファクトリーでは、大阪産業技術研究所と共同で技術開発を行い、成果をもとにした事業化を進めている。有力な事業として、清水氏はジーンズの染料であるインディゴの製造を紹介した。

清水当社のインディゴは、化学合成のインディゴと異なり、有害物質を原料として利用せずに製造できます。現在主流である化学合成のインディゴは、原料に発がん性や生物毒性がある有害物質を利用しているため安全性が懸念され、国際的にも規制に向けた動きがあります。

そのため、大手ジーンズメーカーなど複数社から好意的な反応をいただいており、量産化のための開発を進めています。今年中にはジーンズの販売までこぎつけたいですね。

清水氏いわく、世界のシーンズ市場の規模は約7兆円、インディゴ市場の規模も500億円だ。さらに「アジアの人口増加にともない両市場の伸びが期待できる」と語る。

もう一つの事業はヒドロキシチロソールという化合物の製造だ。ヒドロキシチロソールは、オリーブの実に含まれる成分の一つで、抗酸化、美白作用があることで知られる。「すでに製造に成功しており、​​​​​​​化粧品や健康食品への応用を検討している」という。

マイクロバイオファクトリーにとって、2021年は研究開発のフェーズを超え、事業化に向けて動き出す年になりそうだ。清水氏は「今年中にはシリーズAで資金調達を、2025年には約6億円の売上を目指します」と意気込みを語る。「日本発のバイオベンチャーとして世界に羽ばたいていきたい。ぜひ応援よろしくおねがいします」とピッチを締めくくった。

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CUICIN株式会社
宿泊施設と旅行者双方の“より快適な旅”を実現するOS

CUICIN株式会社

続いて登壇したのは、宿泊業のDXで施設の経営を支援するオペレーションシステム『aiPass』を開発・運営するCUICIN代表取締役の辻 慎太郎氏。

『aiPass』を導入すると、宿泊施設側は管理画面でチェックインから滞在中、チェックアウトまでの顧客情報を管理できる。

さらにプラグインを追加すれば、顧客分析やメール配信、管理・分析や集客力の向上、混雑状況の把握や予測、一部業務の自動化など、さまざまな機能を部分的に利用できる。

辻氏は、こうした自由にカスタマイズできる点が、従来の宿泊施設に導入されていたオペレーションシステムと大きく異なると語る。

これまでの基幹システムは、機能をひとまとめにした巨大なシステムであることが多く、10年から20年をかけて減価償却し、運用することがスタンダードでした。

『aiPass』はイニシャルコスト不要で即日から導入できます。さらに、マーケティングやホスピタリティ向上、業務効率化などの目的に沿って、自由にプラグインを追加できます。

『aiPass』は旅行者にとってもメリットが大きい。スマートフォンに送られてきた予約確認メールやQRコードから最短30秒でチェックインができ、周辺案内や館内案内、Wi-Fi情報などを確認できるようになる。

紙に個人情報を記入する仕組みだと、旅行者にとって煩雑なだけでなく、宿泊施設側も再びデータを入力する必要があるなど、非常に非効率でした。私自身も宿泊施設の運営に携わるなかで、なぜ紙ベースであるのか、疑問に感じていました。

もちろん、アナログな手法が続いている理由もあるんです。国の旅館業法に沿って、宿泊施設は定められた顧客情報を入手する必要があり、紙での運用であれば、内容の更新や、施設毎に違う情報を記載することも比較的簡単に出来ます。しかし、旅行代理店や予約サイトなどが宿泊施設に提供する顧客情報は統一されておらず、そこで取得した情報だけでは不十分であるし、抜け漏れが発生しています。そのため旅行者に再び顧客情報を提供してもらう煩雑なオペレーションが発生していました。

チェックインをスマートにするだけでなく、旅行代理店や予約サイトと宿泊施設で、得られるデータに格差がある状態をなくしたいと思っています。

『aiPass』は2020年11月にリリースされ、現在50施設以上に導入されている。将来的には蓄積した顧客基盤をベースに、旅行という体験全体を変革していくという。

現在は周辺施設と連携し、クーポン発行による宿泊施設から周辺施設への送客を行っています。今後は、宿泊施設の予約と同時にアクティビティの予約もできるサービスの提供も予定しています。

今後は宿泊施設を地域のハブにし、旅行における体験全体を変えていく。ミッションである「Making trip better for everyone.(すべての人たちにより良い旅を提供する)」を形にしていきたいと考えています。

CUICINは2021年1月にプレシリーズAラウンドで総額6,000万円の資金調達を実施。さらなる飛躍に向け、「サービスやミッションに共感した方はぜひお声がけください」と呼びかけた。

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THECOO株式会社
ファンとインフルエンサーをつなぐファンコミュニティアプリ

THECOO株式会社

最後に登壇したのは、THECOO代表取締役の平良真人氏。「『できっこない』に挑み続ける」をビジョンに掲げ、インフルエンサーマーケティングを中心としたコンサルティング事業やインフルエンサーマネジメント事業を展開している。

平良氏のインタビュー記事はこちら:事業創れる条件は、マグロ漁船に7年⁉メンバーの“やりたい”を最重視する起業家が生んだ、複数事業体制の妙

同社が展開する『Fanicon』は、「アイコン」と呼ばれるアーティストやタレントと、ファンをつなぐファンコミュニティアプリだ。

ファンは月額会費を払うことで、クローズドのファンコミュニティに参加できる。ファンコミュニティ限定投稿の閲覧、ファン同士で交流するためのスレッドの作成が可能になる。

またアーティストやタレントは、導入コストを抑えながらファンコミュニティを開設して、ファンとの関係を構築できる。ECサイトでのグッズ販売や各種プレイガイドとの連携にも対応している。

2017年のローンチ以来、順調にユーザー数を伸ばし、現在2000名以上のコミュニティが運営されている。

『Fanicon』の特徴は、熱心なファンとの深い交流を可能にすることだと平良氏は強調する。

平良ファンビジネスでは、「ファンを広く知ってもらうこと」「熱量の高いファンを増やすこと」の2つが重要だと言われます。

SNSは「認知の獲得」に向いていて、アーティストやタレントが新たなファンと出会うには最適です。

一方、『Fanicon』は認知を増やすというより、数は少なくても、熱心なファンと深く交流するための空間だと捉えています。あえてクローズドな設計にすることで、いわゆる「アンチ」との衝突を避け、安心安全に、ファンとの交流を楽しめる空間をつくっています。

「アイコンとファンが楽しめる」ことは、『Fanicon』の提供する重要な価値であり、サービスのコンセプトでもある。「With fan, More fun.」には「ファンとともに『楽しさを増やす』」という意味も込められている。

平良氏が『Fanicon』を立ち上げたのは2017年。ファンコミュニティ事業を選んだのは、戦略的な理由ではなく、顧客の要望に応え続けた結果であり、“たまたま”だったと振り返る。

平良2014年に創業して、元々は前職で培ったGoogle Adwordsの知見を活かして、オンラインマーケティングを中心にコンサルティング事業を展開していました。

ですが、ゲームアプリ会社のお客様から「YouTuberに協力してもらって米国でプロモーションを行いたい」と要望があって。対応しているうちに、世間でもインフルエンサーマーケティングが盛り上がり、主要な事業として育っていきました。

そして、同事業の一環で開催した、インフルエンサーとそのファンミーティングで、クローズドなファンコミュニティの可能性を感じ「Fanicon」を開始しました。Faniconはわずか2年半で2,000以上のコミュニティ開設に至り現在も急成長しています。

今後も、現状の事業領域にとどまるつもりはなく「中長期的には、アーティストやタレントを支えるファンを育てるサービスも育てていきたい」と展望を語る。インフルエンサーマーケティング事業に興味ある人を中心に、積極的に採用にも取り組んでいる。

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今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。

こちらの記事は2021年03月10日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

大畑 朋子

1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。

編集

向 晴香

inquire所属の編集者・ライター。関心領域はメディアビジネスとジャーナリズム。ソフトウェアの翻訳アルバイトを経て、テクノロジーやソーシャルビジネスに関するメディアに携わる。教育系ベンチャーでオウンドメディア施策を担当した後、独立。趣味はTBSラジオとハロプロ

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