連載スタートアップを知りたいならここを見よ!FastGrow注目スタートアップ特集──FastGrow Pitchレポート

宇宙×農業、衛星データ活用、画像解析エッジAI。
テクノロジードリブンな注目スタートアップが集結──FastGrow Pitchレポート

登壇者
西田 宏平

滋賀県甲賀市信楽町出身。名古屋大学大学院環境学研究科修了。大手自動車部品メーカにてモータ設計や新事業立上等に従事しながら、2020年2月に副業としてTOWING社を立上。同10月に独立。農家の祖父母の影響で農業に恩返ししたいという思いと、漫画『宇宙兄弟』のような月面基地で人々が暮らす世界を創りたいという想いが創業のきっかけ。宇宙農業実現と地球農業発展を目指し、TOWING社で『宙農』を立ち上げる。

久米村 隼人

2007年ベネッセコーポレーション入社後、CRMやダイレクトマーケティングに従事。その後マクロミル・リクルートマーケティングパートナーズ・日本経済新聞社など複数の企業にて、広告・ヘルスケア・データサイエンスなどの領域で15サービス以上の新規事業を創出。2018年、データサイエンスと人間中心設計を軸に新規事業の立上支援を行う株式会社FACTORIUMを創業。2019年、データとサイエンスの⼒で社会課題を解決することをミッションに株式会社DATAFLUCTを設立し、同年JAXAベンチャーに認定。大阪府立大学大学院工学研究科修了(数理工学専攻)、早稲田大学大学院商学研究科(夜間主MBA)修了。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の招聘職員。

黒瀬 康太

在学中に自動車プレス工場の現場作業を経験。新卒で日本IBMに入社し、コンサルティング営業として多数のAI導入案件で顧客課題を解決。クライアントエクスペリエンスアワード3度受賞。後にフツパー創業。1995年生まれ。大分県出身。広島大学工学部卒業。

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「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。

登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。

本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、株式会社TOWING、株式会社DATAFLUCT、株式会社フツパーの3社(登壇順)だ。

  • TEXT BY OHATA TOMOKO
  • EDIT BY HARUKA MUKAI
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株式会社TOWING
宇宙でも持続可能な農業を実現する人工土壌

株式会社TOWING

最初に登壇したのは、TOWING代表取締役の西田宏平氏。同社は、人工土壌「高機能ソイル」を活用し、地球や宇宙における持続可能な栽培システムを開発・販売・運用支援を行っている。

高機能ソイルとは、植物の炭等の多孔体に微生物を付加し、有機肥料を混ぜ合わせて適切な状態で管理してつくられた良質な土のことだ。畑で良い土を作るためには通常3から5年くらいかかるが、高機能ソイルはわずか1カ月で良質な土壌となる。結果として、有機肥料で高効率の栽培が実現できるだけでなく、病気にもかかりにくく、作物の苦味やエグミを抑えることもできるという。

 

西田高機能ソイルの構想自体は1900年代から存在しましたが、実現には100年ほどかかっています。日本酒の製造方法をもとに、2014年に日本が世界で初めて開発に成功、2018年には技術が固まり良質土壌を安定的に生産できるようになりました。

ただ、まだ高機能ソイルは新しい技術のため、園芸や農業に利用するためには、技術への理解が必要です。私たちは技術を使いこなすための支援を行うことで、高機能ソイルの社会進出を促進したいと考えています。

今春から「仕事になる本格園芸」と「お金になる家庭園芸」という2つのサポートパッケージを展開予定だ。

「仕事になる本格園芸」は、ビニールハウスや露地などでの栽培パッケージ。また「お金になる家庭園芸」は、ビルの屋上などで作物を栽培し、店舗やカフェなどで作物を販売できる、循環型のパッケージだ。

さらに宇宙での土壌づくりにも携わっている。JAXAの共創型研究開発プログラム「SPACE FOODSPHERE」に参画。「地球以外の惑星でも農業を実現したい」と語る。

西田宇宙においても循環型の農業システムは必要不可欠です。これまでは微生物の制御が課題となり、NASAが取り組んでいた土壌づくりはあまりうまく進みませんでした。高機能ソイル使えば、月面や火星の基地でわずかな輸送物資量で土壌を創ることができます。これによって、宇宙飛行士の排泄物や非可食部などを肥料源に、循環型の農業システムを作ることができます。

2020年2月に創業し、一期目を終えたばかり。今後は資金調達を実施し、本格的に農業用の畑の開発に取り組みたいと語る。「ご興味ある方は、ぜひお声がけください」と西田氏はピッチを締めくくった。

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株式会社DATAFLUCT
データ分析を活用し、企業の新規事業創出を支援

株式会社DATAFLUCT

続いて登壇したのは、「データを商いに」をビジョンに掲げるデータサイエンス・スタートアップスタジオ、DATAFLUCT代表取締役の久米村隼人氏だ。

久米村氏は、データサイエンティストとして、マクロミルやリクルートマーケティングパートナーズ、日本経済新聞社などで複数の新規事業に携わった。

その後、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に新規事業の専門家として勤めた際に、衛星データの可能性を感じた。衛星データとは、その名の通り衛星から取得できるデータで、地表や海上、空の様子など、様々な情報が得られ、その活用が期待されている。

2019年1月にDATAFLUCTを創業。JAXAの知的財産や知見を利用して事業を行うJAXAベンチャーにも認定されており、衛星データを活用した分析はもちろん、位置情報からPOSデータまで幅広いデータを活用したアリゴリズム構築が強みとなっている。

現在は、経営の意思決定を支援するデータ分析事業、経営の全体最適を支援するSaaS構築事業、DX支援事業などを主に展開する。久米村氏は「収集・分析・活用まで一気通貫で支援できる」ことが同社の特徴だと語る。

久米村弊社では顧客課題のヒアリングから実際の提案、分析、運用後のフォローまで、すべて自社で担います。そのための専門知識とスキルを備えたメンバーが揃っています。

DATAFLUCTでは、モビリティや金融、スマートシティなど幅広い業界・業種にソリューションを提供。独自のDMPを軸に、各顧客の業種や業界に合わせ、創業から18カ月で13プロダクト(SaaS)をローンチした。

例えば、支援事業では不動産テック向けのリサーチソフトウェアサービスを開発した。

久米村マンションデベロッパーは土地の取得を決定する際に、その土地の犯罪率、学校の数など、周辺情報について情報収集を行います。DATAFLUCTでは、これらのデータを簡単に収集できるレポーティングサービスを展開しています。“不動産業界のSPEEDA”を掲げ、開発・運用に取り組んできました。

さらに業種や業界を問わず、気軽に利用できるプラットフォームも展開している。『DATAFLUCT cloud terminal.』は、機械学習や深層学習の知識がなくても機械学習モデルの構築が可能なプラットフォームだ。月額5万円でデータ分析ができ、マルチクラウドにも対応している。 https://youtu.be/XhbYO9KqwAY

今後も多様な領域でデータ分析を活用した新規事業創出を行いたいと語る。「データサイエンスを担えるプロダクトマネージャーや、AI・データを活用し、企業に提案できる人」を随時募集中だ。

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株式会社フツパー
中小企業にとってAIを「誰もが使える道具」へ

株式会社フツパー

最後に登壇したのは、フツパー取締役COOの黒瀬康太氏。「はやい、やすい、巧い、AIを」をコンセプトに掲げ、中小企業向けエッジAIシステムを提供する。

エッジAIとはデバイス自体に搭載されるAIを指す。AmazonやIBMなどがクラウドで提供するAIに比べ、複数のデバイス間でより素早い処理を行う手法として注目されている。

フツパーでは、画像認識AIモデル『Phoenix Vision』やエッジAI特化型SaaS『Phoenix Insight』などのAIソリューションを展開する。

『Phoenix Vision』では、顧客の業務課題に画像認識AIモデルを開発し、小型デバイスに搭載できる。画像認識率は9割以上と精度が高く、処理も高速だ。

また『Phoenix Insight』では、画像認識AIの判定結果やNG判定理由をリアルタイムで表示。エラーが発生した際には、エッジAIを搭載した各種端末に通知が届く。

黒瀬氏は導入例として製造業における検品作業を紹介した。

黒瀬検品作業は多くの場合、2人以上の体制で行われるので、時間がかかります。ですが、画像認識AIを導入することで、1秒間に最大30回の判定を行えるようになります。

不良品が見つかれば『Phoenix Insight』にリアルタイムで通知が届くため、素早く対応できます。コストやリソースを抑え、業務効率化を実現します。

現在、製造業は人手不足が深刻だ。特に中小企業では、人材不足や検査工程の削減によるクレーム発生、仕事の属人化などの課題が挙げられる。AI導入も「一筋縄ではいきません」と黒瀬氏は語る。

黒瀬国内の製造業において、AI導入の動きは進んでいません。約8割が実証実験で止まっており、本格的な導入にいたっては2割ほどです。

なぜかというと、検品業務などは売上向上よりも品質を維持するためのものだからです。導入コストが高いと、投資対効果が見合わないと判断されてしまう。

だからこそ私たちは、低コストのエッジAIを提供し、あらゆるお客様が画像解析などAIの恩恵を得られるようにしたい。いずれはパワーポイントやエクセルと同じくらい、誰も使える道具としてのAIを実現したい。

製造業、なかでも中小企業のAI利用を後押しする背景には、黒瀬氏が自動車工場で働いた経験があった。

黒瀬学生時代に自動車工場で働いていたのですが、激務で体を壊す人が多くて.....。そこでロボットが導入されたら大幅に作業が効率化されたんです。テクノロジーの凄さを改めて感じましたね。

その後、新卒でIBMに入社し、大手企業でAI導入を支援する業務を担いました。ただ、きっとあの時の自動車工場のように、中小企業にもAIを必要としている人は多いのではないかという気持ちがあって。創業を考えるようになりました。

2020年4月に創業し、2021年1月にはシリーズAラウンドで1億円の資金調達を実施。「まだまだ人材を採用しています。中小企業の現場で役立つAI開発にご興味ある方は、ぜひお声がけください」と呼びかけた。

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第34回目となったこの日は、人工土壌や衛星データ、画像認識AIなど、先端技術を強みとする、テクノロジードリブンなスタートアップが登壇した。

今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。

こちらの記事は2021年03月17日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

大畑 朋子

1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。

編集

向 晴香

inquire所属の編集者・ライター。関心領域はメディアビジネスとジャーナリズム。ソフトウェアの翻訳アルバイトを経て、テクノロジーやソーシャルビジネスに関するメディアに携わる。教育系ベンチャーでオウンドメディア施策を担当した後、独立。趣味はTBSラジオとハロプロ

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