INSIGHT
18-12-04-Tue

フィットネス市場のトレンドは「自宅」 ── 米国スタートアップ4社に見る開拓の鍵

TEXT BY TAKASHI FUKE

米国フィットネス市場で「デジタル」化が進んでいる。

従来、私たちはジムに代表される「リアル」な場でフィットネスコンテンツを消費していた。
しかし、企業価値1,000億円を超えるインドアフィットネス企業Peloton(ペロトン)の登場に見られるように、
フィットネス市場のデジタル化が急速に進みつつある。

本記事では、そのデジタル化の様相を、代表的なスタートアップ事例をもとに紹介していく。

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フィットネス市場の“Airbnb化” ── 「ClassPass(クラスパス)」「CoatchUp(コーチアップ)」

民泊サービス「Airbnb」は、サービス提供者である家主を集め、住宅市場で新たなプラットフォーム事業の立ち上げに成功した。同じく配車サービス「Uber」もドライバーネットワークを構築。これらと同様の現象が、フィットネス市場でも起こった。

2013年にニューヨークで創業し、累計2.39億ドル(約265億円)の資金調達を果たしたClassPassは、フィットネス市場において事業者と顧客を結ぶマッチングプラットフォームを立ち上げたスタートアップだ。

ClassPassは、様々なフィットネスジム事業者を集めた点に強みを持つ。利用者は月額定額制で、好きなジムのプログラムを好きなだけ楽しめる。

ClassPassが解決する課題は2点ある。

1点目は利用者がプログラムに飽きてしまう問題。

多くのジムでは、専属トレーナーが教えるフィットネスクラスが用意されているが、同じプログラムでは飽きてしまう人も少なくない。とはいえ、他のジムを探すのには手間がかかるうえ、仮に見つけても、メンバー登録なしでは1回当たりの受講料が高くなる。

ClassPassを利用すれば、月額料金を支払うことで、ネットワーク内の系列ジムが提供するプログラムからバラエティーに富むクラスを受けられる。結果として、飽きずにフィットネスを続けられるようになるのだ。

2点目はジム事業者の集客コストだ。

提供クラスの開催を一度スケジューリングしてしまったら、収益を最大化させるため、できるだけ多くの参加者を集める必要が出てくる。仮に最少催行人数を設定したとしても、クラスのキャンセルが多発しては利用者の満足度を下げてしまう。

しかし、ClassPassに提供プログラムを掲載しておけば、クラスの空き席をなくし参加数を最大化する機会を得られる。結果として、自社集客コストを削減することにつながるのだ。

ClassPassがジム事業者向けにサービスを提供する一方で、個人で活動するジムトレーナー向けのマッチングプラットフォームも登場した。

2011年にボストンで創業し、累計940万ドル(約10.4億円)の資金調達を果たしたCoatchUpだ。CoatchUpは利用者とトレーナーをマッチングさせ、個人もしくはグループレッスンを予約できるサービスを提供する。

米国の著名バスケットボール選手、Stephen Curry(ステフィン・カリー)氏がアドバイザーとして参画。2012年時点では、収益伸び率は毎月40%、コーチの数も6,000人以上が登録していたというデータがある。サービス利用料金として徴収している、6%の手数料が収益源だ。

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デジタルコンテンツによる自宅フィットネス── 「Peloton(ペロトン)」「GAINFITNESS(ゲインフィットネス)」

ここまで紹介したサービスは、全てのコンテンツがオフラインで完結する。しかし、昨今ではコンテンツの「デジタル」化が進んでいる。その筆頭が冒頭で触れたPelotonだ。2012年にニューヨークで創業し、累計9.9億ドル(約110億円)を調達している。

Pelotonは自宅でフィットネスクラスを受けられる、インドア・サイクリングバイクを開発した。マシーンには液晶画面が付属されており、動画を観ながら手軽にフィットネス体験ができる。動画コンテンツは、ニューヨークからリアルタイムで発信され、配信動画はアーカイブとして残るためいつでも視聴できる。

2,000ドルで販売される個人向けバイクに加え、2017年からは3,000ドルで企業向けバイクの販売も開始。これにより、ホテルや企業オフィスでも簡単にトレーニングが行えるようになった。また、同年からウェアラブルIoTデバイス「Fitbit」とのデータ連携も可能になった。

『TechCrunch』の記事によると、2017年1月時点ですでに75,000台の販売実積を持つ。収益源は、バイク販売料と、月額動画コンテンツ利用料39ドルを通じた継続収入だ。

家庭向けのバイクが20万円を超えるのは、高すぎると感じるかもしれない。しかし、ジムへ通う手間もなくなり、デジタルコンテンツを通じて好きな時間にトレーナーからコーチングを受けられることを勘案すると、案外妥当な値段ともみなせる。その証拠に、『Bloomberg』の記事によると、すでにPelotonは黒字化を達成。累計7億ドル(約777億円)の収益を計上したという。2019年には上場を目指していると報じられた。

Peloton以外にも、トレーニングのデジタル化の波は進んでいる。

2009年にサンフランシスコで創業し、累計280万ドル(約3.1億円)の資金調達をしたGAIN Fitnessも好例だ。同社は動画コンテンツを軸にしたフィットネスアプリを提供している。

ユーザーはスマートフォンアプリを通じ、専属トレーナーが作った動画プログラムに沿ってワークアウトをこなしていく。また、24時間対応でコーチとのチャットができ、月に1~4回トレーナーと直接会ってコーチングしてもらえる(会う場所は自宅や屋外)。動画と対面コーチングの2つの要素を組み合わせているのだ。

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日本市場進出の鍵は、エンタメ要素

ここまで米国フィットネス市場の変化を簡単に紹介してきた。

利用者がトレーニングプログラムを受ける接点が、「リアル」から「デジタル」へと移行している兆しが見え、ジムというリアルの場の優位性が崩れつつある。

それでは、日本のフィットネス市場ではどのような展開が考えられるのだろうか。動画フィットネスが流行る米国トレンドをもとに考察すると、バーチャル・ユーチューバー(VTuber)や、アニメやゲームに登場するデジタルキャラクターとのコラボレーションに商機が見えるかもしれない。

日本では独自のエンタメ文化が花咲いている。たとえば、ソーシャルゲームアプリを開発するDeNAやgumiなどがフィットネスプログラムを制作することで、自宅フィットネス市場の取っ掛かりを掴める可能性は大いに考えられる。

また、「初音ミク」やVTuber「キズナアイ」といった日本独自のコンテンツを活用し、エンタメ市場と掛け合わせで市場を開拓できれば、仮にPelotonのような海外企業が日本市場に参入してきても、大きく差別化を図れる。

従来のフィットネスの概念にとらわれず、日本独自のエンタメコンテンツと掛け合わせ、自宅で楽しみながら運動するための方法を考える必要があるだろう。

[文]福家 隆

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