「77年分のコンテンツ資産」と「最新テクノロジー」、君ならどう事業化する?──Gakken LEAPプロダクト開発の現場にみる、世代を超えて愛されるプロダクトづくりの肝

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インタビュイー
杉江 賢
  • 株式会社Gakken LEAP プロダクトマネジメント部長 

Gakken LEAP プロダクトマネジメント部長。(学研HDデジタル戦略室兼務)。複数のコンサルティングファームで情報通信、総合商社、自動車等の業界において新規デジタル事業開発、PMO、システム企画などデジタル関連プロジェクトを経験後、Gakken LEAPへ入社。現職では、学研グループのデジタルプロダクト開発、DX推進をリード。

山下 芳生
  • 株式会社Gakken LEAP PdM 

Gakken LEAP PdM。エンジニアを経てリクルート住まいカンパニー(現リクルート)入社後、新規事業開発にてプロダクトオーナーや開発チームリーダーを担当。その後、施工管理アプリを手掛ける企業へ転職しPdMとしてプロダクト開発を推進。Gakken LEAP入社後は新規サービス開発におけるPdM及びEM(エンジニアリングマネージャー)としてプロダクト開発をリード。

佐久 裕昭
  • 株式会社Gakken LEAP コンテンツチームリーダー 

Gakken LEAP コンテンツチームリーダー。学研(現Gakken)に入社後、パソコン、IT、ビジネス関連書籍・ムックの編集長を担当。その後、子ども向けのプログラミング教育事業と探究学習事業の立ち上げに携わったあと、Gakken LEAPへ異動し、現職。2018年から経済産業省の「未来の教室」に参画し、横浜市や岐阜市、福山市で教育に関する実証事業も行う。

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レガシー産業のDX。

近年、こうした既存の領域にDXを持ち込んで業界変革を企てるベンチャー/スタートアップの躍進が著しいが、こと教育業界にもその波は及んでいる。その中で今、教育業界のゲームチェンジャーを本気で目指しているのが、かの学研グループのDX組織、Gakken LEAPだ。

「学研」といえば、誰もが一度は同社の学習参考書や問題集を手にしたことがあるだろう。子どもや学生にとって身近な存在、それが学研に対する世間の印象ではないだろうか。

そんな出版、教育業界では老舗企業ともいえる学研グループ内で、次世代の教育ビジネス創出を目的として立ち上げられたのが、Gakken LEAPである。

前回の記事では、マッキンゼー・アンド・カンパニー出身で同社代表・細谷氏の独占取材から、昨今の教育業界が抱える課題や、これからDXを用いて巻き起こせる変革の可能性についてうかがった。そこで今回は、Gakken LEAPが具体的にどのような手法でDX時代の教育プロダクトを打ち出そうとしているのか、そこに活かされる学研グループの叡智とは何かを探るべく、取材を行った。

そこで今回お招きしたのが次の3名である。

まずは、現在Gakken LEAPのプロダクトマネジメント部長で、学研ホールディングスのデジタル戦略室のメンバーとしてグループ全体のDX推進を担う、コンサルティングファーム出身の杉江氏。

次に、レガシー産業のDXで著明なスタートアップから参画し、現在PdM及びEM(エンジニアリングマネージャー)として開発をリードする山下氏。

そして、元学研の出版編集者であり、現在コンテンツチームリーダーの佐久氏だ。

教育業界の過渡期となるこのフェーズで、豊富な「コンテンツ資産」を持ちながら現場起点の「DX・デジタルプロダクトの開発」に携わる魅力についてうかがった。

  • TEXT BY YUKO YAMADA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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「学研=子ども向けの本」から、「大人向け」に「デジタルコンテンツ」を提供する企業へ脱皮

学研といえば、「子ども向けコンテンツを提供している会社」というイメージを抱く読者は多いはず。そのため今回、学研がDXを推進していると聞くと、「単に子ども向けの教育コンテンツをデジタル化するんだろう」と思う人も少なくないはずだ。

だが、Gakken LEAPが2023年初頭にローンチしたのは、“大人向け”のプロダクトである『Shikaku Pass』だ。その名のとおり、オンライン上で資格取得を目指すこのプロダクトは、まずはトライアルとしてファイナンシャル・プランナー(FP)3級を皮切りにサービス開始した。

杉江読者の皆さんの想像の通り、これまで学研の教育事業は「子ども向け」が中心でした。しかし、もともと学研グループでは中期経営計画『Gakken2023』の中で、人生100年時代に向け生涯の学びを提供していくためのリカレント事業を掲げています。

昨今ではリスキリング分野も注目を浴びており、大人向けの学習サービスはレッドオーシャンではありますが、まだ明確な勝者が決まっていない段階です。しかも、Gakken LEAPが得意とするデジタルプロダクトは、子どもに限らず、むしろ大人の方が使い慣れているという観点で親和性もある。

そこで、学研グループでは初となる大人向けのデジタルプロダクトを提供すべく、Gakken LEAPがチャレンジすることになったんです。

既存の得意領域である「子ども向け」「紙媒体」に頼らず、「大人向け」「デジタル」へと進み出すGakken LEAP。なぜ、そうした未知なる挑戦に取り組み始めているのか。まずはその前段となる、教育業界の現状から見ていきたい。

前回、代表細谷氏の取材で語られたとおり、教育業界は今、大きな変革期を迎えている。

それは近年、教育業界においては顧客のニーズが多様化、細分化しており、個々の教育ニーズにあったソリューションが求められるようになったからだ。

そのため、もはや1つのマスプロダクトだけで世のすべての顧客の教育ニーズに応えきることはできなくなった。むしろこうした状況下では、多様なニーズを持つ個々の顧客へリーチできる「ネットワーク力」や、顧客の教育ニーズに応じてプロダクトを複数同時に提供していける「コンテンツ力」を持った企業が覇権を握ることができるのだ。

学研グループは、教育事業だけでも出版、塾、オンライン教育など幅広いポートフォリオを持つ、日本でも数少ない企業。つまり、同社のような企業こそがこれからの教育ニーズに応えていけるポテンシャルを持っていると言えるだろう。

そして先に触れた通り、既存のコンテンツ資産を維持しつつ、新しい領域にチャレンジができるのも学研グループの強みである。今回、学研グループ初となる「オンライン」による「リカレント教育」にチャレンジできたことが何よりの証拠。他の単一商材を扱っている教育企業と比べても、学研グループは今後の教育業界において競争優位性が高いということになる。

まずは教育業界の現状と学研グループが持つ独自性をおさらいしたところで、その中でデジタルを強みに立ち上がったGakken LEAPがどのように次世代の教育サービスを生み出し提供しているのかを探っていこう。

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紙媒体出身の編集者とテックエンジニア。
当初は不協和音から始まった!?

学研グループ初となる「リカレント教育」を「デジタルプロダクト」として届ける。

2023年初頭、今でこそ『Shikaku Pass』はトライアルとして無事にリリースされたが、約1年前の2022年初頭の開発スタート時は、試行錯誤の連続だったという。

まずはその背景から説明しよう。もともとGakken LEAPは学研グループのDX推進を掲げていることから、設立当初はエンジニアを中心に構成されていた。そこから徐々にデジタルプロダクトの開発へと領域が広がり、コンテンツづくりを担える人材が必要となった。そこで抜擢されたのが、学研の出版編集者であった佐久氏である。佐久氏は、Gakken LEAPのコンテンツチームリーダーとしてコンテンツづくり全般を担うことになったのだ。

学研の編集者がGakken LEAPへ参画するというこの一連の流れは、前回の取材でも語られているが、実際に開発現場では何が起きていたのか。当時の様子が赤裸々に語られた。

佐久学研の出版会社にいた頃は、紙媒体におけるデザイナーやライターと一緒に仕事をしていたので、エンジニアと関わることがなかったんです。というのも、2021年にGakken LEAPができてエンジニアを社内に招き入れる前までは、学研グループ内のプロダクトの開発はすべて外注していたんですよ。

そのため、どうやってエンジニアとコミュニケーションを取るべきか分からず、最初は戸惑いました。例えば、エンジニアから「これはどう実装しますか?」という質問があっても、土地勘がないので自分でもどう答えるべきか分からない。そこは苦労というよりも、初めて味わう新鮮な体験でしたね。

杉江編集者を筆頭に、コンテンツ側の人たちはプロダクトを「どう見せるか」といった観点から入るのに対して、システム側の人たちは「どう実装するか」という観点から入りますからね。

本来、編集者とエンジニアの意見を取り持って最適解を提示するのが私の役目でしたが、私自身もこの組み合わせでプロダクトをつくるのは初めて。なので、プロジェクトが始まった当初は、お互いの意思疎通を図る共通言語が見つからず、コミュニケーションの難しさがありました。

ここで少し、想像してもらいたい。例えば、出版会社が書籍の見本を出す場合、誤字脱字の修正はもちろん、本のレイアウトやデザイン設計まですべて本番同様に仕上げた状態でつくることが基本。そして、そこからどう磨きをかけていくか、これが紙の編集者の視点なのだ。

対して、特にスタートアップでは顕著かもしれないが、エンジニアがアジャイル型でシステム開発をする場合、クオリティよりもスピードを重視する。「完璧を目指すよりも、まず終わらせろ」──、という格言があるように、それはプロダクトづくりにおける常識にもなっている。上記を前提に、フィードバックを受けながら改善をくり返し、最適解を見つけていくのがデジタルプロダクトのセオリーでもある。

紙媒体の編集出身の佐久氏が率いるコンテンツチームと、デジタルなエンジニアチームとでは、はたから見ても「真逆ではないか」と感じるほど、当初は方向性に違いがあったのだ。

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元著名スタートアップ出身者も目を見張る、プロダクトフィードバックの速さ

杉江コンテンツチームとエンジニアチームで互いに、「プロダクトのあるべき姿」と「そこにいたるフロー」を描いて進めていたものの、徐々に「ズレているかもしれない」と感じるようになっていったんです。それが顕在化したのが、最初にプロトタイプが出てきた時です。

紙媒体の編集者率いるコンテンツチームと、デジタル畑のエンジニアチーム。そして、子ども向け教育事業に強みを持つ学研グループが手掛ける「大人向けコンテンツ」を「デジタルプロダクト」で提供するという試み。ある種、いきなりうまくいかなくても当然かもしれませんが(笑)、「そこはもっと、UXを意識した仕様にしてほしかった…」「自分がユーザーだとしたら、このプロダクトを使うかな…?」というような伸び代がたくさん出てきたんです。これは、両チームをまとめあげる自身の反省でしたね。

佐久そうですね。今となっては理解できるのですが、当時バグのある状態でプロトタイプが出てきた時には「そこは最低限、開発側でチェックしてから出してくれよ…!」と感じることもありました(笑)。

しかし、私にも反省があって、エンジニアチームに対して明確に目的を言語化せずに、「〜な感じでできますか?」と漠然とした内容で開発を依頼してしまったんです。

エンジニアチームはおそらくもっと詳細な依頼背景や、その開発によって解消したい課題などを突き詰めて相談してほしかったと思うんです。しかし、私はこれまでの紙媒体で連携しなれている“ツーカー”のデザイナーに依頼する時と同じ感覚で進めてしまった。結果は杉江さんのいう通り──(笑)。

お互い目指す先のベクトルは合っていたとしても、きちんと双方の業務ミッションや業務内容を理解し合った上で協働しないと、ものづくりは思いもよらない方向へ進んでしまうということが分かり、私自身も大きな学びでしたね。

そういった認識のズレを早めに察知したことで、その後は両チームで密に連携しながらコンテンツづくりに没頭できるようになっていったという。ここまでは、Gakken LEAPとしても初期の、開発体制を模索していた時期の話だ。

その後、2022年末に入社した山下氏(PdMとして開発をリード)は、現在のGakken LEAPの開発体制を以下のように語る。

山下私がGakken LEAPに入った当初は、開発観点で言うと確かにシステム設計に伸び代を感じる部分があったのは事実です。しかし今ではUXの再設計が整い、実際にユーザーに利用してもらいながら改善をくり返しているので、見違えるほどよくなっています。

先ほど2人からチーム間のコミュニケーションにおける難しさが挙げられましたが、私が入社して3ヶ月みた印象ですと、大分改善されたなというか、むしろ「コミュニケーションが取りやすい環境だな」とすら感じています(笑)。

プロダクトの目指すべきゴールや方向性さえ間違えていなければ、「UXはこうやって整理して再設計しませんか?」「コンテンツ側との業務フローはこの形でいきましょう」と提案した意見がどんどん反映されますし、だからこそ素早いプロダクト改善ができる。

前職でもレガシー産業におけるDXを推進するスタートアップでプロダクト開発を担ってきましたが、そこと比べても遜色ない、いやそれ以上のスピード感がGakken LEAPにはありますね。

学研グループ初の、内製化によるプロダクト開発。個々のスキルセットだけで見れば玄人集団ではあるが、何しろ“初”が連続する取り組み。うまくシナジーを創出するには一苦労あったのだ。

しかし、いざ歯車が回り出せばお手の物。プロフェッショナル同士が連携し合うことで、立ち上げから僅か1年で「自社コンテンツありき」のプロダクトをローンチすることができた。このスピード感は、重厚長大な企業では実現困難なことかもしれない。「変革にはスピードが命」であることを熟知している学研グループと、その中でスタートアップ的な動きが主体的に取れるGakken LEAPだからこそ成し得たものだろう。

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「分かりやすさ」と「ワクワク感」。
学研編集者が紐解く秘伝のタレ

Gakken LEAPのスタートアップさながらの開発現場のリアルを伝えてきたが、読者が最も気になるのは、「学研グループにある77年分(創業から77年)という膨大な教育“コンテンツ資産”から生み出されるノウハウが、どのようにプロダクトに活かされているのか」といった点だろう。

そのノウハウを紐解けば、「これからの教育を創るプロダクトとは何か」がより鮮明に見えてくるはず。佐久氏は次のように話す。

佐久コンテンツにおいては、学研が培ってきた“ものづくりの力”が活かされています。具体的に言えば、「分かりやすさ」と「ワクワクさせること」です。言葉にすると普通に聞こえますが、この2つは学研が77年間、教育コンテンツの会社として大事にし続けている根幹の想いであり、学研のすべての教育サービスに注ぎ込まれています。

例えば、本や雑誌の場合、真面目な解説の文章をどうやって最後まで飽きさせずに読んでもらえるか。そのために本全体やページの構成を考えて、読者がつまづいて離脱しないように、至るところでモチベーションが上がる工夫をしかけていきます。

具体的には、「ある分野の専門家の先生の解説の前に図を入れれば、よりスムーズに読めそうだ」とか「読者が興味を引くトピックを最初に持ってこよう」などです。そしてそれは『Shikaku Pass』の動画コンテンツにおいても同じです。

『Shikaku Pass』は、資格取得に向けて誰もが無理なく続けられるよう、単に講師がホワイトボードに板書しながら教えるといったものではなく、アニメーションやモーショングラフィックを活用し、さらにその表示タイミングや表示時間、色使いなどの細部にわたってUI/UXを意識したつくりとなっている。

佐久是非これは実際にご覧になっていただければと思いますが、茶目っ気を出すためにうさぎの着ぐるみをきた演者が登場したりと、まぁ楽しくつくられていますよ(笑)。(サービスサイトはコチラ

Gakken LEAPのプロダクト『Shikaku Pass』の一コマ

佐久今回、運良く『Shikaku Pass』の制作を任せてもらい、「面白いコンテンツだ」とユーザーからお褒めの言葉を頂いておりますが、私に限らず、学研の編集者であればこうしたユーザーを惹きつけるコンテンツづくりは得意中の得意です。

一方で、デジタルだからこそ更にできることがあるとも感じています。例えば、プロダクトを利用してくれたユーザーのデータを収集して、「どこで離脱してしまうのか」を分析したり、もっとオンライン上でのコミュニケーションを活性化させたりという具合にです。

この辺りはジョインしてくれた新たなメンバーが得意とする領域だと思いますので、今後も学研のコンテンツをデジタルの力で何倍にも強化して世の中に提供していきたいですよね。

先の取材においても、細谷氏は「単にコンテンツをデジタル化して、オンライン上で教育サービスを提供するだけでは、顧客からは選ばれない」「だからこそ、顧客のニーズにしっかりと応えて、オンラインだからこそできることを目指す」といったメッセージを発している。Gakken LEAPが、コンテンツやUI/UXの質にこだわるのはそのためだ。

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77年分の「資産」は現状散り散り。
これを集合知化するだけでも刺激的

学研の編集者であれば、みなプロフェッショナルとしてユーザーを惹きつけるコンテンツづくりができる──。

非常に興味深い佐久氏のメッセージだが、学研グループにおいて、そのコンテンツ資産はどのように継承され、共有されているのだろうか。日々コンテンツを取り扱うFastGrowとしても、是が非でも盗み、いや拝聴したい内容だが、その実態はいかに。

杉江学研ホールディングスには、現在約50社のグループ会社があります。もちろん、この学研グループ内でコネクションを活かしたコンテンツづくりを進めることはできますが、今はまだ、それぞれのグループ会社にアナログな状態でコンテンツが蓄積されている状態なんです。

つまり、学研グループ全体でコンテンツ資産がデジタル化・共有化されていないため、誰もが簡単にその「コンテンツ資産」にアクセスして、プロダクトづくりに活かせる状態ではないんです。自社のことながら、非常に勿体ないですよね(笑)。

この散らばっている学研のコンテンツ資産を、デジタルの力でデータベース化し体系化することができれば、今後怒涛のプロダクト展開ができることでしょう。

このような学研グループ全体のDX推進も、Gakken LEAPの事業ミッションとして掲げられていますし、今まさに動き出しているところです。早く77年分のコンテンツ資産を各グループ会社から抽出し、学研グループの集合知としてデジタル上に設置したいですよね。そのプロセスを想像するだけでもワクワクしてきませんか?

杉江氏が熱を込めて語ったように、学研グループ内でシームレスなコンテンツ資産の連携ができれば、より統合的なプロダクトづくりが可能となり、デジタル上に“学研帝国”なる牙城を築けそうなほど、教育界におけるプラットフォーマーとなれそうだ。こうした学研グループ内のDX推進も、個々のプロダクトづくりと併せてGakken LEAPに期待される役割なのだ。

このように、他に類を見ない異色な立ち位置で教育業界に現れたGakken LEAP。特に、その学研グループのコンテンツ資産を用いてデジタルプロダクトを打ち出していける点は圧倒的な強みと言えるが、これはやはり他社においては実現が難しいことなのだろうか。

昨今、教育業界においても多数のスタートアップが誕生してきているが、自社で教育コンテンツを企画制作している企業は少ない。そのほとんどが社外コンテンツの活用や、学習効率を上げるための教育サービスを提供しているのが実状だ。ここにはどんな要因が潜んでいるのだろか。

杉江数ある教育コンテンツの中でも、今回のような資格コンテンツや、従来の教科学習のコンテンツをつくる場合は、該当テーマにおけるコンテンツの全体像を整理・把握した上で、「どの順番で、どのような学びを提供していくか」を明確にすべく、開発のスタート段階でカリキュラムの全課程を用意しておく必要があるんです。

当然そこには数多くの人手や時間、資金が求められます。これに対し、最小限のリソースで最速の成長を目指すスタートアップがチャレンジするには、事業への投資対効果という観点で、なかなか踏み切れない境界線があるのかもしれません。何より、人手や時間や資金があったとしても、ユーザーに刺さる質の高いコンテンツを自前で生み出すのは容易ではありませんからね。

杉江一方、Gakken LEAPの場合、学研グループ内にすでに豊富なコンテンツがあるため、事前のカリキュラムの準備を大幅にショートカットできます。その分、デジタル上でコンテンツを届ける際の付加価値創出にたっぷりと時間を割くことができるんです。こうした取り組みを、学研のプロ編集者たちとディスカッションしながら推進し、プロダクトへと昇華できるのは、他社にはないユニークな点かもしれません。

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「教育業界=サチる?」、だからこそ、変えるんだ

Gakken LEAPのプロダクト開発を担う主要メンバーとして、『Shikaku Pass』の企画や開発に携わっている佐久氏、杉江氏、山下氏だが、そもそも3人はなぜGakken LEAPへ入社を決めたのだろうか。

「確かに話を聞けば、可能性を秘めた会社であることは分かるが…」と、読者も共感してくれるとは思うが、いざそこに飛び込んだ決め手となるものも聞いてみたい。

最初に口を開いたのは山下氏。彼はもともとレガシー産業のDXスタートアップとして注目されるリーディングカンパニーを経て、Gakken LEAPに入社を決めた経緯を持つ。

山下前職は、あるレガシー業界の生産性を向上させる、業務系システムを扱うスタートアップにいました。アナログな業務が主体で、非効率だった業界の課題解決に向けプロダクトを提供していましたが、業界特有の専門用語や独特の商慣習があるがゆえに、キャッチアップしていく難しさを感じていました。

特に創業期のメンバーたちは「自分たちがプロダクトを生み出し成長させてきたんだ」という想いが強いため、簡単には変えられないことがたくさんあるんだとも感じました。

そこで、よりシンプルにプロダクトづくりに携われる環境を求めて転職しようと考えた時に、真っ先に思い浮かんだのが教育業界でした。というのも、前々職の大手事業会社では保育系の新規事業を手がけた経験があり、またプライベートでは3人の子どもの父親ということで、もともと教育には関心があったんです。

山下Gakken LEAPは代表・細谷が語っている通り、他の単一プロダクトで勝負する教育系スタートアップとは異なり、複数プロダクトを扱うことができます。自分の子どもも年齢によって教育のフェーズが変わっていく中で、どんな世代のユーザーに対しても幅広く教育サービスを届けられることが魅力に感じ、入社を決めましたね。

続いて、新卒でコンサルティングファームに入社し、ITコンサルタントとしてキャリアをスタートさせた杉江氏。その後、総合系コンサルティングファームに転職。toB向け、toC向けの両事業の推進や立ち上げの支援を経験する中、「いつか自分が主体的に事業をやるならば、顧客の反応が間近に見えるコンシューマー系の事業がしたい」と考えていた。そんな彼が行きついた先が、Gakken LEAPだった。

杉江私の場合は、「教育業界」自体への関心というよりも、教育業界が直面している「変革期であるという状況」や、その中で興味のある「toC向け」の事業に携われるという点に惹かれ、Gakken LEAPに興味を持ちました。

当時コンサルティングファームの上司からは「なんでわざわざサチる(飽和した)業界に行くんだ…?」と訝られましたが(笑)、私の気持ちは変わりませんでしたね。

そして、Gakken LEAPへの入社の後押しになったのが、代表細谷とCTO山内の2人の存在です。

まず細谷は外資系の戦略コンサルティングファームでパートナーまで登り詰めて、その後、事業会社である学研で経営者となりました。同じコンサルタント出身として、キャリアにおける1つの成功モデルだと思ったんです。加えて細谷は私と同年代でありながら、視座が高くビジョナリー。そこに惹かれて、「細谷の近くでもっと自分を成長させたい」と率直に思ったんです。

一方でCTOの山内は、前職の事業会社の中で、今まさにGakken LEAPが取り組んでいるように、デジタル事業を大幅に成長させてきた実績があります。そしてこれは山内本人が語っていたことですが、「DXは、本気でその業界を変えようという熱いパッションがないと実現できない」というもので、その真摯な姿勢と熱意に惚れました。この2人の強力なリーダーのもとであれば、Gakken LEAPは進むべき道を見失わず成長していけると、そう確信が持てたんですよね。

そして佐久氏は前述のとおり、学研において15年間、紙の編集を担ってきた人物である。そこからどのようにして今に至るのだろうか。

佐久だんだん紙の本の売れ行きが縮小していく中で、2016年頃だったでしょうか、ある時マインクラフトのゲーム攻略本をつくったところ、これが結構売れたんですね。「今、子どもたちにプログラミングが流行っているんですよ」というライターからの後押しもあり、そこで試しに1回15,000円でマインクラフトを使ったプログラミングイベントを開催すると、あっという間に100人の枠がすべて埋まったんです。それに手応えを感じて、これまで手がけていた本の編集をすべて辞め、プログラミング教育の教材づくりに2年ほど携わりました。

その後2021年に、主体的に個人の好きなテーマで勉強をする「探求学習」の新規事業が始まり、その時の上長が今のGakken LEAP・CTOの山内でした。その新規事業自体は伸び悩んでいたこともあり、今後の事業を模索していたところ、山内から「Gakken LEAPで一緒にやらないか」と誘われたんです。

これまで長く紙の本に携わってきましたが、これだけ急速にデジタル化が普及していっている世の中ですから、紙媒体の将来に少し限界を感じていたところもあって。「学研で培ってきた本づくりの経験をデジタル領域で試してみたい」と思うようになり、Gakken LEAPへの参画を決めましたね。

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マーケットリーダーは不在。
狙うは教育業界のゲームチェンジャー

Gakken LEAPでは今、リカレント教育の第一弾となる『Shikaku Pass』がスタートしたばかり。この取材を通して、プロダクトづくりのリアルな現場と共に、学研グループが持つ膨大なコンテンツ資産の一端に触れることができた。

しかし、そのコンテンツ資産はまだまだ活用しきれておらず、Gakken LEAPが主導するDXによって、これから加速度的に具現化されていくのだ。佐久氏が述べたように、まさに読者を「ワクワク」とさせるエピソードをふんだんに聞くことができたが、直近ではどのような展開を予定しているのだろうか。最後に同社のネクストステージをうかがい、幕を閉じよう。

杉江『Shikaku Pass』はFP3級の資格取得からスタートしたので、次は基本情報処理技術者試験講座やFP2級、ITパスポートなどを開設する予定です。こちらについては、学研グループ内で社員研修をおこなっているTOASUと連携しながら、実用的なビジネススキルに関連した講座のラインナップも増やしていけたらと考えています。

他にも、TOEICや英検といった英語学習ですね。こちらも学研グループ内の出版会社と連携しながら進めていく予定です。

リカレントやリスキリングは政府も注力しているテーマですが、その中でも「金融、テクノロジー、英語」、この3つが特に重要なテーマだと捉えています。この3テーマについて、『Shikaku Pass』を中心にプロダクトを展開していくことを重要戦略として計画しています。

大人の学び、資格のフィールドはまだまだ広い。これからも『Shikaku Pass』は多種多様なコンテンツで拡大していくのだろう。さらに、Gakken LEAPは、学研グループ全体のDX推進という壮大なミッションも持っている。それを実現していくためにはこれから多くの仲間が必要となる。そんなGakken LEAPが今、求める人材とは。

山下開発側でいうと、バックエンドエンジニアとプロダクトマネージャーの方に来ていただきたいですね。本日伝えた通り、Gakken LEAPは驚くほどフラットな組織でやりたいことが実現できるので、「もっと自分のアイディアをプロダクトづくりに活かしたい」と感じている方には是非オススメです。

杉江そうですね。あとは本日何度もお話した通り、学研グループには膨大なコンテンツ資産があるので、ユーザーの視点に立って、ユーザーが使う時の感情や印象を考えながらデザインに落とし込めるUI/ UXのデザイナーを求めています。プロダクトづくりにおいて、「自分であれば、こうしたい」という強い想いのある方に来ていただきたいですね。コンテンツ側の佐久さんはどうですか?

佐久私は自身の経験から言うと、今、紙の本の出版に限界を感じている方に来てもらいたいですね。編集者という仕事は、企画を打ち出し、ライターやカメラマンに方向性を示しながら、プロデュースしていくプロフェッショナルな仕事です。その編集技術をデジタルのコンテンツに活かせれば、できることがもっと広がっていくと、私は思っています。これからですよ、紙の編集者の時代は(笑)。

取材終わりに、「今」、Gakken LEAPに参画する面白さは何かと尋ねてみた。すると、杉江氏は「ゲームチェンジャーになるチャレンジができること」だと自慢げに答えてくれた。

杉江ここ数年でEdTech企業が躍進し、新たなデジタルプロダクトが続々と誕生していますが、まだ明確なマーケットリーダーがいるわけではありません。リカレント事業に関しても同じです。だからこそ、我々Gakken LEAPが教育業界のゲームチェンジャーになれると思っているんです。我々と同じように「マーケットリーダーになるんだ」という強いマインドを持っている方に来てもらいたいですね。

「これからの社会や国を創る上で必要とされる教育の領域で、自分のアイデアやスキルを発揮していきたい」と、そう考える人にとってはやりがいのある環境だと思います。

今、教育業界は変革期を迎えている。個のニーズが多様化し、新たなデジタルプロダクトの誕生で教育業界全体のイノベーションが加速し、盛り上がりを見せている、しかし、一方でまだ明確なマーケットリーダーがいるわけではない。

その中で、本気で教育業界のゲームチェンジャーになろうとしているのがGakken LEAPである。長年にわたり教育業界で実績を積み重ねてきた学研グループのコンテンツ資産と、デジタルの力を融合させてこの業界の変革に携わることができれば、他の教育系スタートアップでは味わえない社会的インパクトを創出できる。

教育は、社会にとって次世代の人材を育成する上で重要な役割を持つ。そういう意味では、高い志が求められる業界に見えがちかもしれない。もちろん、彼らと同じように「教育業界を変えたい」という想いからこの業界に足を踏み入れてもいい。一方で、「教育」というキーワードよりも、「社会を変えたい」「業界の変革期を勝ち抜き、マーケットリーダーになる」という想いからの参画でも構わない。

目の前に、これまで積み上げてきた学びのノウハウが詰まった「コンテンツ」という財宝と、それを現代の世に広める「デジタル」という武器が用意されていたら、諸君はどう動くだろうか。

こちらの記事は2023年03月31日に公開しており、
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執筆

山田 優子

写真

藤田 慎一郎

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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兼久 隆行
  • TFHD digital株式会社 取締役執行役員 
  • 東急不動産ホールディングス株式会社 グループDX推進部統括部長 
  • 東急不動産株式会社 DX推進部統括部長 
公開日2024/03/29

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