三菱地所が超速でリリースした“空間シェアリングサービス”NINJA SPACEって?競合と何が違うのか聞いてみた

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インタビュイー
那須井 俊之
  • 三菱地所株式会社 新事業創造部統括 

2006年に三菱地所に入社。マンションや市街地再開発、住宅事業グループ各社のバリューチェーン構築に携わった後、2016年から新事業創造部へ。オープンイノベーションの実現と新たな事業での利益創出を目的として、スタートアップとの協業・資本業務提携を推進。社内のアイデアを活用した新規事業開発にも携わる。

浅子 将輝
  • 三菱地所プロパティマネジメント株式会社 サービスソリューション推進部 副主査 

2013年に三菱地所プロパティマネジメントに新卒入社。同社が運営するテナントに対してのソリューション提供などを主に担い、新規事業開発にも携わる。

篠江 梨紗
  • 三菱地所プロパティマネジメント株式会社 商業運営部商業企画室営業企画ユニット 

2017年に三菱地所プロパティマネジメントに新卒入社。グループ会社である三菱地所プロパティマネジメントにおいて、同社が運営する商業施設の企画全般及び、テナントとの日常窓口業務も担う。

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コロナ禍で大きく変化した「働き方」。この領域に、大企業もスタートアップもこぞって参入している昨今、新たな動きが気になった。三菱地所が「ワークスペースのシェアリングサービス」に乗り出すというのだ。

確かに、想像はしやすい。「多くの“場”を持つ巨大ディベロッパーなのだから、アセットを活かしたビジネスを始める」そういうことだろう、と。しかし、貸し会議室や、電話ボックスのようなリモートワークスペースのサービスなら既に多くある。にもかかわらず、この度参入を発表した。

ところが聞いてみると、競合に見える他のサービスとは完全に異なる、見事な「スキマ」のニーズを捉えていることが分かった。それはいったい何なのか?今、真っ向からぶつかる競合が存在しないとはどういうことなのか?俗にいう「大手企業がアセットを活かしただけのあまり意味のない新規事業」と何が違うのか?

応えてくれたのは、新事業創造部でスタートアップ投資を手掛けてきた那須井俊之氏と、若手チームメンバーの計3名。2020年9月の着想から半年足らずでの超速リリースに見る勝ち筋を聞いた。

  • TEXT BY MARIKO FUJITA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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次の会議まであと5分……
「今すぐ」使えるワークスペースはどこに?

忍者のようにささっと高級レストランの個室に身体を滑り込ませ、会議と会議のスキマ時間も有効活用。何かクリエイティブな企画を考えたいときは、キャンピングカーの中でじっくりアイデアを膨らませる──『NINJA SPACE』は、そんな柔軟なワークスタイルを実現する、テレワークをしたいビジネスパーソンと空いているワークスペースをマッチングするサービスだ。

ワークスペースにはテレワーク可能な飲食店やカフェ、コワーキングスペースなどが登録されており、利用者は近くの空いているワークスペースを検索して、手軽に予約・決済することができる。

このような働く場所のニーズは、やはりコロナ禍という状況を踏まえて一気に拡大したものだ。プロジェクトを主導した三菱地所新事業創造部の那須井氏は、事業が始まった背景について、次のように振り返る。

那須井コロナ禍になってリモートワークがかなり普及したものの、大事な商談やブレストはこれまで通り対面で行われることもあり、「会社勤務と在宅勤務が混在した状況が当面続く」と現在の状況を捉えています。こんなとき課題になってくるのが、ちょっとしたスキマ時間の作業場所や外出先でWeb会議できるスペースがなかなか見つからないこと。

毎日社外の人々と関わる中で、そういったスペースを求める声も多数寄せられており、かなりのニーズがあることを実感していました。

一方コロナ禍になる前から社内では、入居企業の会議室不足を解決するためのアイデアが寄せられたり、「Uberのように気軽に、働く人と場所をマッチングするサービスができると良いよね」という意見も出ていて、コロナ第二派渦中の2020年9月頃に事業化に向けた本格的な検討が始まりました。

「NINJA SPACE」と同様に空きスペースを検索・予約できるサービスや、駅や商業施設等で設置が進んでいる「テレキューブ」のようなテレワーク特化型のレンタルワークスペースは、既にたくさんあるようにも思われる。しかし、利用したことのある読者はまだそれほど多くないのではないだろうか。

いくつかの競合サービスがある中で『NINJA SPACE』が持つ独自の魅力は、まさにUberのような「即時性」だ。サービス名も「忍者のように素早く」というコンセプトに由来している。

那須井たしかにレンタルスペースを予約できるサービスは他にもあるのですが、これらは基本的に予め決まった日時・用途のために利用することを想定したUIになっています。たとえば前のミーティングが長引いてオフィスへ戻る時間がなくなってしまった時などに最寄りの「今すぐ使える」スペースを探すのにはやや不向きです。

『NINJA SPACE』では、こうした既存サービスにはない「手軽さ」を実現したいと考えました。

実際にアプリを開いてみると、そのUIは驚くほどシンプルだ。現在地から、今すぐ使える近隣のワークスペースのみを検索することができ、気になったスペースへマッチングをリクエスト。リクエストが承認されれば予約・決済が完了する。ここまでわずか3タップだ。

提供:三菱地所株式会社

「とにかく場所を早く確保したい」というユーザー向けには、複数のワークスペースに同時にリクエストを出し、最も早く承認されたスペースに自動でマッチングできる機能もある。個室の有無や電源・wifiといったサービスの有無は、アイコンによって一目でわかるようになっている。

誰にでもわかりやすく直感的な操作性は、ユーザーの使い勝手はもちろん、スペースを貸し出す店舗側への配慮にもよるものだ。特に普段は飲食店として営業している店舗にとって、新たに場を貸し出すという業務に関して複雑な操作が必要なアプリだと、通常のオペレーションを妨げるものとなってしまう。

また、『NINJA SPACE』の他サービスとの違いについて那須井氏は、貸し出されるワークスペースの特徴を挙げる。

那須井『NINJA SPACE』のもう1つの特徴は、貸し会議室などのレンタル専用スペースではなく、カフェや飲食店の空席をメインのワークスペースとして提供している点です。

たとえばカフェの場合、3時間後にどのくらい店内が混むかは分からないため、3時間後の予約は受けづらいのですが、「今すぐ」の空き状況だったら分かる。この席の確保の必要がない「超直前の予約のみできる」という点が、面白い部分だと考えています。

もう一点重要な点が、金額設定も店舗が自由に設定できること。施設のグレードや設備は様々で画一的な料金体系は難しいと考えました。

確かに、レンタルされることをメインの目的とした貸し会議室では、利用日の数日前には予約が埋まってしまい、直前予約はできないことが多い。貸し出す側も、いつも直前に予約できるような会議室では売上が見込めないからだ。

あくまでメインの営業に支障が出ない範囲でワークスペースを貸し出すカフェや飲食店だからこそ、『NINJA SPACE』の売りである「即時性」を実現できたというわけである。

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新事業を創る専門組織は、
事業開発とベンチャー投資のスペシャリスト

既存サービスでは絶妙に満たせていなかった「今すぐ作業できるスペースを探したい」ニーズを満たす『NINJA SPACE』は、現時点では丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町エリアの略)を起点に開始した段階だが、ローンチからわずか2日で数百件ダウンロードと、さっそく反響を呼んでいる。いかにもスタートアップらしいプロダクト開発と立ち上がり。そうした空気を醸し出している。

そんな『NINJA SPACE』を生み出した三菱地所の新事業創造部とは、いったいどんな組織のだろうか。見えてきたのは、社内で新しいビジネスを立ち上げるという機能だけではなく、スタートアップのイノベーションを応援するCVCとしてのオープンマインドな一面。これが、今回のカギとなっているようだ。

那須井三菱地所はご存知の通り、長年にわたり、オフィスビルや商業施設、住宅の開発といった事業をメインに展開してきました。しかし、現在はこうしたハード面を自社で保有しない事業、つまり既存施設の運営や、自社でのシステムやソフトウェア開発を軸とした「ノンアセットビジネス」で売上を伸ばしていくことにも力を入れています。

新事業創造部として取り組んだ最も大きな事例は、空港の運営事業と、それに付随するリゾートホテル開発です。

その他にもいわゆる新規事業らしいものとして、高糖度ミニトマトの通年栽培を行う農業事業や、コリビング事業の『Hmlet』、都度利用できるジムのプラットフォーム事業『GYYM』、マインドフルネス事業『Medicha』など、これまでさまざまな事業開発を行ってきており、いずれも順調に伸びています。

こうした事業は社内のリソースだけでやるには限界がありますし、ビジネスモデル変革を促進させるためにも、いろいろなスタートアップ企業に出資させていただいたり、協業しながらオープンイノベーションという形で進めています。

ただ、実際のところ、私が新事業創造部に配属されてからの5年間は、不動産Techを中心としたベンチャー企業への出資を行う、CVCとしての活動が多かったのですが、まさにこれから三菱地所は新たなフェーズに入ろうとしているところだと捉えています。

こうして、新事業の開発のみならず、ベンチャー出資担当者としての経験も積み重ねてきた那須井氏が満を辞して開発をした新事業が『NINJA SPACE』というわけである。

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事業開発のチャンスは誰にでもある
──社内イノベーションを促す2つの制度とカルチャー

三菱地所には社員全員が新規事業開発に取り組むための制度として、「新事業提案制度」と「アイデア公募制度」がある。「制度があるからといって有用なアイデアが出るわけでも、実際に事業化に至るわけでもないだろう」という読者の声も聞こえてくるようだが、今回取り上げる『NINJA SPACE』はこの制度が非常によく活きた事例である。

新事業提案制度は、発案したチームや個人が実際の事業開発まで携わる制度であり、現在100億円規模のビジネスに成長しているマンション買取再販事業のように、グループ全体に利益貢献しているものが複数あるという。

その一方でアイデア公募制度は、新事業のアイデアのみを新事業創造部に共有する制度だ。『NINJA SPACE』は、この公募制度を通じて寄せられたアイデアを取り入れる形で事業化に至っている。実際にアイデアを提案した三菱地所プロパティマネジメントサービスソリューション推進部の浅子氏は、このアイデアを思いつくに至った経緯について次のように振り返る。

浅子私たちの部署では、三菱地所のビルや商業施設に入っているテナントさまに向けてサービスやコンテンツを開発しているのですが、日々のヒアリングの中で見えてきた課題の1つに「会議室が不足している」というものがありました。まだテレワークがそこまで普及していなかった2019年度のことです。

この課題に対して自社として何ができるのかを考えた際に、同じく自社でリレーションを持っている飲食店舗さまのランチとディナーの間の時間、すなわちアイドルタイムを有効活用できないかと思い至りました。

このアイデアはしばらくの間、新事業創造部にて温められていたが、那須井氏が新たなニーズを掴んだ際に応用を決め、浅子氏に声をかけたのだという。ディスカッションを重ねる中でアイデアをブラッシュアップした。

那須井浅子は、そもそもの提案者だったというのもありますが、実は以前に他のプロジェクトでも一緒に仕事をしていた時の働きぶりが鮮明に記憶に残っていたので、「また機会があれば仲間に入ってもらいたい」と思ってもいたんです。

浅子以前の働きを覚えてくれていたのも嬉しいですが、このように積極的に声を上げていれば、魅力的な新しい事業に携わるチャンスがある。そんな会社だということも、この際ぜひ伝えたいですね。

さらに、飲食店舗との直接のリレーションを持っている三菱地所プロパティマネジメント商業企画室の篠江梨紗氏も仲間に誘い、プロジェクトチームが結成された。

篠江普段関わる飲食店の方々が、コロナ禍で困っているのを間近に見ていて、なにかできないかといろいろ考えていたんです。そこでこのプロジェクトの話を聞いて、「これならきっと役に立てる」と強く思いました。

100年以上の歴史を持つ老舗の大企業ながら、積極的に社内のイノベーションを促す制度や部署間で柔軟に連携するカルチャーの存在は、どこかスタートアップ企業に通じる部分があると言えよう。また、この“スタートアップ的”とも言える新事業創造部の機動力の高さは、『NINJA SPACE』の開発スピードにも現れている。

那須井浅子に声をかけ、事業化に向けた本格的な検討が始まったのが2020年9月頃です。そして10月にはアプリの開発が始まりました。引き続きコロナ禍の影響を受けている飲食店舗さんも多い中で、少しでも早く事業化したいという想いがあり、特にスピード感を持って進めてきましたね。

アプリ開発のチームはあえて内製化せず、部署として外部の開発パートナーと固定的かつ柔軟な契約をしていることで、プロジェクトが立ち上がった際にすぐに開発に入れる体制を構築しています。また、ブランディングやマーケティングのためのメンバーも外部の方に業務委託し、このプロジェクトを進めるために必要な人材をチームアップしていきました。

こうしてプロジェクトチーム結成からわずか半年でアプリをリリース。「意思決定が遅そう」「他部署との連携が難しそう」という大企業への先入観を見事に覆してくれるスピード感だ。浅子氏は、会社全体に流れる変革への前向きな機運が、このスピーディな事業開発を可能にしていると指摘する。

浅子本業であるビルの開発や運営は引き続き注力しつつも、全社的に「新しいことをやっていかなきゃいけない」という空気感があります。なので、良いアイデアがあれば実現に向けて積極的に検討するし、プロジェクトのために必要な人材を巻き込むための部署間連携も活発です。

そういう意味で繰り返しになりますが、アイデアと意欲さえあれば若手でもどんどん新事業を提案できますし、多くの人に新事業に関わるチャンスがある職場と言えると思います。

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苦境に陥る飲食店を救え!
三菱地所だからできた“Win-Win-Win”のプロダクト開発

Uberしかり、Airbnbしかり、「持たざる者がプラットフォームをつくる」というある種の定石がある中で、都市部の不動産という強力なアセットを持つ三菱地所がこのようなプラットフォームサービスを開発する必然性は少ないように思われるかもしれない。実際、スタートアップとのリレーションも多い那須井氏のこと、他社との協業にする方がスピーディーに進められたのでは?という疑問も浮かぶ。

しかしその背景には、コロナ禍において大きな打撃を受けている飲食業界を少しでも応援したいという現場の想いと、開発過程と展開戦略における三菱地所ならではの圧倒的な強みがあった。

今回のプロジェクトにおいて飲食店舗への営業や現場調整を務める篠江氏は、ワークスペースを貸し出す飲食店側からのニーズについて、次のように語る。

篠江コロナ以前から、飲食店舗のアイドルタイムを何か有効活用できないかという課題感はあり、私たちもよくお悩みをお聞きしていました。ですが、コロナ禍によって苦境に立たされ、改めていずれの店舗さまも、「今まで通りのやり方では売上が構築できない」「何か新たな取り組みをしないといけない」といった具合で焦っている、そんな状況に追い込まれていました。

「とにかく、何かできることはないか、この苦境を変えられないか」と。

『NINJA SPACE』ではワークスペースを貸し出す店舗側が、自由に料金やサービスを設定できます。飲食の目的ではやってこないようなお客さんの来店も期待でき、認知度向上のきっかけにもなる。

このようにメリットも分かりやすかったため、実際に飲食店舗さんへご提案した際には「ぜひやってみたい」「うちの個室ならワークスペースに使っていただけるかもしれない」といった前向きな声を多くいただけました。

こうして、まずは丸の内エリアの飲食店舗に一斉に営業をかけることができ、現場からのリアルな声を拾えるのも、三菱地所ならではの強みだと言える。

那須井「せっかく利用しようと思ったのに、近くに利用できるスペースがぜんぜんない」となると、サービスとしての意義が薄れてしまう。最初からある程度の参加店舗を確保することが重要です。

そうなると、既に各エリアの飲食店舗さんとのコネクションを持っている三菱地所は、参加店舗を増やす上で有利です。また、参加して下さっている飲食店舗さんからの声を直接吸い上げて、日々機能を追加・改善しています。こうした飲食店舗さんとの密な連携も、三菱地所だからこそできることだと思います。

また、ユーザーとなるビジネスパーソンへの訴求を考える上でも、各エリアに特化したリソースと知見を持っている三菱地所は有利だ。

現在『NINJA SPACE』は、丸の内エリアを中心としたエリアでの実証実験が始まった段階ではあるが、将来的にはみなとみらいや池袋のサンシャインシティといった首都圏の他エリア、名古屋や福岡といった全国に規模を拡大していく予定だ。また、飲食店やコワーキングスペース以外に、キャンピングカーをワークスペースとして追加する予定もあるという。

那須井想像してみてください、車の中って、機密性が高く、Web会議や作業をするのに意外に向いていると思いませんか?

さらに、自動車全体でみれば、日本全国に8000万台あると言われています。動かずに駐車場で止まっているだけの車もいっぱいありますよね。これらをワークスペースとして活用できるようになれば……と思うと、サービスの広がりはすごいことになると思いませんか?非常に強力なインフラになりますよ。

さすがに駐車場に止まっているすべての車をワークスペースにするのは簡単ではないと思ってはいますが、でも車は置いておくだけでも駐車場代などのコストがかさむもの。「使っていない時に車を貸し出して有効活用したい」というニーズは、一定数あるのではないかと思います。

現在は、出資しているスタートアップ企業とのつながりも活かして、「NINJA SPACE」を単なるワークスペースのマッチングに留まらない、より多機能なアプリへ拡張していくことについても既に具体的な構想を始めている段階だという。「NINJA SPACE」で私たちの働き方はどうアップデートされるのか。今後の展開に、目が離せない。

こちらの記事は2021年02月26日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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執筆

藤田マリ子

写真

藤田 慎一郎

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