次なる大型調達企業とは?大きなファイナンスがありそうな未上場スタートアップ5選──FastGrow独自リサーチ<2022夏>

未上場スタートアップに関するニュースと言えば、やはりなんと言っても資金調達だ。年初から国内外で資本市場が冷え込んでいるこの2022年も、LegalForceやアンドパッドといったSaaS企業が100億円を超えるファイナンスを実施し、話題をさらった。

ところで、スタートアップパーソンのあなたは、こうしたニュースを受け身で待っているだけで良いのだろうか?そうではないだろう。次なる注目企業、いわば「大型調達予備軍」に、早くから目をつける。そうすることで、事業を創造するための目を養うことができるかもしれない。もちろん、投資の検討にもつながるだろう。

今回はまず、プレシリーズAラウンド以前程度を一つの基準として、未上場企業数十社を独自にリサーチ。編集部の独断と偏見により、注目企業を5社、まとめてみた。

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aifie
ノーコードLP運用『smartLP』提供

日本でもMarTech(Marketing Tech)の言葉が少しずつ使われるようになってきた。マーケティング関連のホリゾンタルSaaSと見れば、絵に描いたようなレッドオーシャンだと感じる読者も少なくないだろう。

そんな世界で少しずつ存在感を示し始めているのがaifieだ。Webでの集客や販売が当たり前になったこの時代、ランディングページ(LP)を効果的に制作していくニーズは高まるばかり。同社は、ノーコードでの制作はもちろん、その後の運用までAIで自動化する。具体的には、パーソナライズと自動最適化に強みを持つ。

パーソナライズ機能では文字通り、そのLPを訪れるユーザーに合わせて表示が変わることで、コンバージョンを含む全体のパフォーマンスを向上させる。自動最適化機能ではさらに一歩踏み込んで、LP内の各要素について最高のパフォーマンスを上げるものを自動で検証し、掲載していく。

代表取締役の萩原大樹をはじめとした創業メンバー全員がエンジニアであるからこそ、こうした機能性を徹底追及できるのだ。すでにその機能の詳細はnotionでしっかりまとめて公表されているので、マーケティングに悩むあなたは一度覗いてみるのが良いだろう。

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MJ
保育施設向けSaaS『Brain』提供

保育施設や幼稚園向けに、業務効率化やエンゲージメント向上をもたらすバーティカルSaaSも、上述のMarTech同様にレッドオーシャン化している。コドモンが業界シェアNo.1となっているが、全国で市場を独占できるわけでもなく、まずは2番手・3番手をめぐって激しい争いが繰り広げられている。

すでに、基本機能として求められる水準は定まっている様子で、どのプロダクトも似た形の価値提供を実現しつつある。となると、行く末を分けるのが、各企業のビジョンになるのではないだろうか。

MJを率いる代表取締役社長・藤田将氏は、これらのSaaSプロダクトが蓄積するデータに大きな価値があると説明する。施設や保護者への目先の価値提供ももちろん重要だが、その先に「日本経済をしっかり成長させる可能性まで秘めている」というのだ。

SaaSプロダクト『Brain』は一定の顧客基盤を獲得しつつあり、市場の拡大に合わせてさらなる拡販を図りつつ、プロダクトや組織の強化をしっかりと進める。数年後には、新規のプロダクトか、はたまた事業開発か、非連続的な成長に向けた何らかの秘策を実行に移すと明かす。

ここまで約20年、自己資金とデットファイナンスにより取り組んできた。次なる展開に向け、エクイティファイナンスも活用してアクセルを踏むタイミングがいつ来るのか。「BabyTech」という潮流には、また大きな転換期が近々訪れるかもしれない。

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StoreHero
Shopify×グロース支援で多彩なプロダクト

カナダ発のEC構築プラットフォーム『Shopify』を知らない読者はほとんどいないはず。世界170か国で170万以上の事業者から利用されており、EC界の覇者Amazon.comを脅かす存在となっている。

日本国内にも、数千ものパートナー企業がいる。その中から、StoreHeroに今回はスポットライトを当てたい。

「単なる代理店だろう」と侮るなかれ。Shopify側から、「最もUXが優れたカスタムストアフロントを事業者のために構築し、ブランドの世界観を忠実に再現したことで、ブランドの成長に大きく貢献したパートナー」に送られるCustom Storefront Agency Partner of the Yearを、2021年に受賞している(リリースはこちら)。つまり、代わりに営業しているというだけでなく、Shopifyを的確に使いこなすためのグロースハックを、それぞれの事業者に適した形で提供することができているという強みを持っている。

たとえば、ANNA SUIやPAUL & JOEといった有名ブランドが、StoreHeroの支援を受けている。そして支援の幅を広げるため、オンライン接客ソリューションやライブコマースアプリといった新サービス・プロダクトの提供も進めている。

さらに、著名VCインキュベイトファンドから5,000万円の出資を受けただけでなく、共同代表のポール・マクナーニ氏がStoreHeroの取締役にも就任しているのだ(リリースはこちら)。マクナーニ氏と言えば、マッキンゼー・アンド・カンパニーでアジア全体を舞台に成果を残してきた著名な戦略コンサルタントである。そんな存在が創業期に惚れ込んだ事業というわけだから、期待しないわけにいかない。

以前の調達発表は2021年6月。これからおそらく、新たなエクイティファイナンスも検討していくのであろう。どのタイミングで、どのような驚きを世の中に生み出してくれるのか。楽しみで仕方がない。

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アポロ
予約システムアプリ『tol(トル)』

小規模事業者が、スマホで簡単にDX基盤を活用する。そんなニーズならこの時代、常に存在するであろう。

アポロが開発する『tol(トル)』というプロダクト。リクルートが大きな力をすでに発揮しているこの領域で、挑戦を続けている。

ネット予約やネット決済、予約に関する連絡など、店舗運営に必要な基本機能の多くを、無料で使い始めることができる。ビジネスとして本格化させる場合は約3,000円/月のBusinessプラン、そしてスタッフが増えるのなら約20,000円/月のShopプランなど、事業規模に合わせたオプション機能が備わっていくビジネスモデル、いわゆるフリーミアムのかたちをとる。

プロダクトとしてまだまだ初期フェーズと言えるわけだが、決済機能が当然備わっているため、昨今注目が集まりつつある“SaaS×FinTech”としての拡大も期待される、まさに時代に即した事業だともとれる。

利用する事業者の業種は、サロンやレッスンを中心として100以上にまで広がりを見せているという。どのような勝ち筋を捉え、PMFやその先の非連続的なグロースを描いていくのか。そしてエクイティファイナンスで加速を図るタイミングも見えてくるのだろうか。勝手な期待と応援を、ここに述べる。

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cory
チャットボット型広告・リード→アポ転換の2事業展開

サイバーエージェントグループのマイクロアドで新規事業開発の経験を積んだ諏訪優太氏が創業したcory。占いサービスの開発に続き、LINEを活用したチャットボット型広告システム『conel』、リード獲得からアポイント獲得を一気通貫で実現するサービス『LeadHack』という複数事業体制を築いている。

『conel』は、離脱してしまったユーザーをLINE活用により復活させ、チャットボットによって購買行動につなげる新たなマーケティング手法を実現。顧客企業の事業拡大に直結する「今までにないサービス」といえる。

『LeadHack』は2種類のプロダクトを描く点がユニークだ。『LeadHack for Contact』は、サイトやLPから離脱するタイミングでポップアップ型の診断コンテンツを表示し、そのポップアップ内にてリード獲得を推進する。『LeadHack for Call』は、ハウスリードに対して90秒以内にファーストコールを行うことで、アポイント獲得率を飛躍的に向上させることを狙う。こちらも同様に、顧客企業の事業拡大に直結するサービスだ。

だがもちろん、言うは易く行うは難し。開発を進め、顧客に提供し、成果を創出し始めているわけであり、仮説検証が進んできたフェーズといえるだろう。諏訪氏らの実行手腕がまさに問われる。

当然、PMFが見えたら、これら二つの事業それぞれを加速させる取り組みが始まるわけだ。その時、大きなエクイティファイナンスで、話題をさらっていくのだろうか。

こちらの記事は2022年09月30日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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