EVENTREPORT
工藤 慧亮 鈴木 淳一
19-02-18-Mon

「テレアポ」と軽んじられる時代は終わる。セールスフォース・ドットコムとSmartHRが語る、インサイドセールス組織の立ち上げメソッド

TEXT BY TAKUMI OKAJIMA
SaaS ConferenceTOKYO 2018
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BtoB SaaS市場は年平均成長率約15%の勢いで急拡大しており、
2021年には約5,800億円に到達すると見込まれている。
近年はSansan、フロムスクラッチ、SmartHR、プレイドなど
数十億円規模の資金調達を果たす国内スタートアップも現れはじめた。

2018年11月、国内で活躍するSaaSのスペシャリストが集い、
インタラクティブなセッションを繰り広げるカンファレンス「SaaS Conference TOKYO 2018」が開催された。
当記事ではセッション『高速インサイドセールスの立ち上げと拡大』での議論の様子をレポートする。

登壇したのは、「SaaSの王者」とも呼ばれる株式会社セールスフォース・ドットコム
インサイドセールス本部を管掌する鈴木淳一氏と、
サービス開始後3年でスタートアップから大手企業まで幅広く導入される株式会社SmartHR
インサイドセールス(SDR)チームを立ち上げた工藤慧亮氏だ。

インサイドセールス部門の立ち上げから、他部門とスムーズな連携ができる環境構築まで、
SaaS事業をグロースさせるための組織づくりのメソッドを包括的に探っていく。
あえてインサイドセールスに特化したノウハウを“教えない”オンボーディング手法、
高い連携力を保つために重要なKPIの設定方法など、二社の具体的なノウハウが存分に明かされた。

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営業組織を4部門に分化させ、ボトルネックを見える化せよ

2018年会計年度の年間売上高は、前年比25%増の100億ドル(約1兆円)を突破したセールスフォース・ドットコム。

同社が「SaaSの王者」と呼ばれるまでの成長を果たせた要因の一つとして、営業組織を4つに分化させたことが挙げられる。この組織モデルは「The Model」と呼ばれており、潜在顧客の獲得を行う「マーケティング部門」、見込み顧客を育成する「インサイドセールス部門」、商談を行い成約へと導く「フィールドセールス部門」、成約済の顧客からの収益最大化に取り組む「カスタマーサクセス部門」に分業化する仕組みだ。

「啓蒙活動の結果、The ModelはSaaS事業に取り組む多くの企業に導入されるようになった」と鈴木氏は話す。

SmartHRもThe Modelを活用して急成長を果たした企業の一つだ。人事労務SaaS「SmartHR」は開始から3年で大手企業をも獲得し、2018年の売上は前年比約3倍を達成。工藤氏は、インサイドセールス(SDR)チーム部門の立ち上げを担うべくSmartHRに入社した当時をこう振り返る。

株式会社SmartHR 営業企画 工藤慧亮氏

工藤訪問営業のメンバーや営業サポートチームが商談獲得の調整を行っていたため、自身のやるべきことに注力出来ていない状況でした。また、営業全体のプロセスを分解出来ておらず、課題も特定できていなかった。そうした状況下で「The Model」を本格運用してみると、現状と課題が可視化され、取るべきアクションも明確になったんです。

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立ち上げ期は、トップセールスをアサインせよ

続けて、インサイドセールス部門の立ち上げで大きな壁となる、「他部門から軽視され、連携がうまくいかない」問題について議論が行われた。ここで鈴木氏は「推進役に社内トップクラスのセールスパーソンを据えるべきだ」と力説する。

株式会社セールスフォース・ドットコム インサイドセールス本部​ コマーシャル事業部/スタートアップ戦略部 事業部長 鈴木淳一氏

鈴木インサイドセールスは「誰でもできる電話営業」と軽んじられ、他部門から下に見られてしまうことも少なくありません。しかし、インサイドセールス部門の立ち上げ時には、経験豊富でスキルの高いセールスパーソンをアサインすべき。KPI設定やヒアリング項目設計など、難易度の高いタスクがたくさんあるからです。

一方、SmartHRでは立ち上げ当初から他部門とうまく連携できていたという。

工藤立ち上げ時から社内でプレゼンスを発揮できたため、他部門とも対等にコミュニケーションをとれました。インサイドセールスの重要性を社内で繰り返しアピールしたり、成果をSlackでこまめに報告したりするなど、存在感を得るための手間を惜しまなかったからだと考えています。経営陣も、その重要性の啓蒙に積極的でした。

さらに鈴木氏は、KPIの達成状況を部門間で共有することが大切だと指摘する。セールスフォース・ドットコムにおいても、「The Modelダッシュボード」によるKPI進捗の共有をはじめたところ、各部門のメンバーが全体最適を意識して動けるようになったという。

鈴木各部門のリーダーが集まり、週に1回、「The Modelダッシュボード」を見ながらKPI進捗を確認するミーティングを設けたことで、組織の全員が各部門の状況を認識できている状態をつくれました。売上が落ち込んでいるとき、「マーケティングからの見込み客が少ない」「セールスのクロージング率が先月より下がっている」といった風に、ボトルネックがどこなのかプレイヤーが把握できていれば、The Modelの分業はうまくいきやすいです。

加えて鈴木氏は、部門間の連携を機能させるために大切な「KPIの見極め」にも言及する。セールスフォース・ドットコムでは5年ほど前まで、「アポイント数」をKPIに設定していたが、数値目標の達成を求めるあまり、アポイントの質が低下してしまったという。

鈴木「アポイント数」だけを追った結果、成約確度の低いアポイントが増えていきました。そこで「商談確定数(有効な商談の数)」「新規契約数」といった指標をKPIに設定すると、自然とアポイントの質も追求されるようになった。

追うべき指標も、定期的にチューニングする必要があるんです。セールスフォース・ドットコムでは、「SQL(Sales Qualified Lead、インサイドセールスが営業に引き渡すべき顧客)」の定義や、ヒアリングシートの項目なども毎年更新しています。

工藤SmartHRのインサイドセールス(SDR)チームも、営業担当やマーケティングチーム、カスタマーサクセスチームと常に連携し、お互いにアポイントの質について都度フィードバックしています。その際、原因をスピーディに探り対策できているのは、細かく数値を見ているからです。「アポイント数」だけ追ってしまうと、課題と認識がズレてしまいます。営業が商談を前に進めることができる「有効商談」を、“大きなカスタマーサクセス”の観点でインサイドセールス(SDR)チームがコントロールしていると言っても過言ではありません。

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インサイドセールスに必要なのは、テレアポの技術ではない

最後に、インサイドセールスの人材育成について議論された。セールスフォース・ドットコムでは、オンボーディングも戦略的に行なっているという。

鈴木入社後9ヶ月で自走してもらうことを想定し、緻密なオンボーディングプランを用意しています。さらに独自の試みとして、「インサイドセールス・ユニバーシティ」という社内制度を定め、大学の「単位」のように習得すべきスキルを整理し、社員レベルの底上げを図っているんです。

工藤SmartHRでも、オンボーディングプログラムを作成中です。これまで経験者でも6ヶ月かかっていた立ち上がりを、いかに3ヶ月、2ヶ月に短縮できるか。これは、立ち上がりが早かったメンバーの成功要因を探ることで実行しています。また採用チームへのフィードバックも行うことで次なる採用のマッチング精度向上にも繋がります。

一方で、鈴木氏は「インサイドセールスに偏ったスキルを磨くことは得策ではない」と話す。

鈴木見込み顧客をうまく育成するためには、テレアポのテクニックを磨くことよりも、顧客のビジネスへの理解を深め、相手の立場でトークできる力を身につけることの方が大切だと考えています。テレアポ時もまずはヒアリングから入り、製品の説明や案内は最後に行うよう指示しているので、総合的なセールストーク力が求められるんです。

注目度が高まりつつあるインサイドセールス。単なる「テレアポ」として軽んじられる時代は終わり、「カスタマーサクセス」のように一つのキージャンルとして確立されつつあるのではないだろうか。

スタートアップが新たにインサイドセールス組織を立ち上げる場合、暗中模索での試みになることも多いだろう。なぜなら、インサイドセールスの立ち上げに精通したプロフェッショナルはまだ少なく、頼れるメンターを見つけることも難しいからだ。強い営業組織をつくりたいのであれば、まずは工藤氏のようにSaaSのセオリーになりつつある「The Model」を取り入れて、自社にあった形に落とし込んでいくのも一つの手といえる。

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「テレアポ」と軽んじられる時代は終わる。セールスフォース・ドットコムとSmartHRが語る、インサイドセールス組織の立ち上げメソッド
株式会社SmartHR 営業企画 工藤 慧亮 株式会社セールスフォース・ドットコム インサイドセールス本部​ コマーシャル事業部/スタートアップ戦略部 事業部長 鈴木 淳一
[文]岡島たくみ

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