連載SmartHR 特別座談会

【特別座談会・後編】国内トップSaaSのプロダクト開発実践論──SmartHR全メンバーで徹底する“顧客価値追究”の思想とは

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インタビュイー
芹澤 雅人

2016年2月、SmartHRに入社し、2017年7月にVPoE 就任。開発業務のほか、エンジニアチームのビルディングとマネジメントを担当する。CTOを経て、2020年11月取締役に就任し、プロダクト開発・運用に関わるチーム全体の最適化やビジネスサイドとの要望調整を担う。2021年9月以降、D&I推進管掌役員を兼任し、ポリシーの制定や委員会組成、研修等を通じSmartHRにおけるD&Iの推進に尽力する。2022年1月、現職に就任。

森住 卓矢

2012年からウェブ業界で働きはじめ、受託開発や事業会社でのSaaS開発を経て2018年8月にSmartHR入社。バックエンドエンジニアとしてSmartHRの開発に携わりつつ、スクラムやアジャイルの普及活動を行う。その後、オプション機能を開発するチームのプレイングマネージャーを担当し、30名ほどのマネジメントを行うエンジニアマネージャーを経て、2022年1月より現職。

安達 隆

大学院修了後、企画職として受託開発やプロダクト開発に従事。2012年に起業し、EC領域でSaaS事業を立ち上げ、KDDIグループに売却。メルカリにて顧客サポート部門の業務システム開発を担当したのち、2019年にSmartHRへ入社。2020年7月より現職。日本CPO協会理事。

宮原 功治

イベントオーガナイザー経験後、音楽スタートアップを共同創業しデザイン責任者を務める。2016年以降、プロダクトデザイナーとして複数社のプロダクトデザインを請け負い、その後freee株式会社でサービス開発とデザインシステムの立ち上げに従事。2019年6月にSmartHRへ入社後、プロダクトデザイングループの立ち上げと、コンポーネントライブラリ『SmartHR UI』のリニューアルを主導。2021年1月現職に就任、現在はメンバーの活躍支援や環境整備も担う。

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未上場ながら日本随一の成長を続けているSaaSプロダクト『SmartHR』の開発責任を負う4人がFastGrow記事のために集まり、まだまだ発展途上であるという現状を赤裸々に吐露する、この2記事連続企画。前編では「プロダクトの完成度が、ここ2~3年のうちに低下しているという自己採点」が語られた。

「SaaSプロダクトに、“完成”などない」。このように語ることができる人物なら、日本にもかなり増えてきた。だが、実体験を基に、具体例を示しながら語ることができる人物は、おそらくまだそう多くない。今回の4人は、そんな稀有な存在である。

さて、前編で語られた“未完成度合い”を前提に、この後編で迫っていくのは「顧客価値の実現」という理想に向けた実践論だ。

あなたが今、SaaSプロダクトの開発になんらか関わっているとしたら、間違いなくすぐに使える学びが得られるだろう。もし今はまだ関わっていないとしても、今後SaaS業界がより一層拡大することは間違いのない事実であるから、今後のキャリアに良い影響を与える知見となることも間違いないだろう。

  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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“顧客価値”は当然の前提でもあり、より一層意識すべきものでもある

「なぜ、サービスやプロダクトは存在するのか?それは、顧客の抱える課題を解決するためである」

言葉にしてしまえば“当たり前”とすら言えてしまうこの考え方の“実践論”を、日本を代表するユニコーンSaaS企業のプロダクト開発リーダー4人から聞き出すのがこの記事だ。先立つ前編では、「圧倒的成長を続けており、プロダクトや組織の礎はすでに盤石となっている」といったイメージを持たれがちなSmartHRの最新状況について詳しく聞いた。

現在代表を務める芹澤氏と共に3人のプロダクト開発責任者たちが口をそろえて語ったのは、なんと「全く以って未完成のプロダクトであり組織である。完成度を採点すれば、20~30点」という現状認識。

必要以上にも思えるほどストイックな姿勢を示すのは、なぜなのだろうか?それは、ゼロからプロダクトを生み出し、PMF、そして日本や世界での大きな社会的価値創出を目指すSaaSスタートアップにおいて、「“顧客の課題”にどのように向き合うべきか」ということ以上に重要なことはないからだ。

芹澤例えばエンジニアであれば「新しい技術の活用を追求したい」という思いは、仕事をするうえで大いにモチベーションになり得るでしょう。だけどSmartHRには、それが第一の原動力になっている人はあまりいないように思います。

自分たちのつくっているものが、この現代社会においてどのようにワークするのか。それによってどういった課題が解決されて、世の中の働く人たち一人ひとりが喜んでくれるのか。ここに楽しみを見出している人が、SmartHRにはとりわけ多いと感じています。

CEOの言葉を受けて、VP of Engineerである森住氏が紹介してくれたのは、管掌するプロダクトエンジニアグループが毎年変更して掲げているスローガンに関する思想について。2021年の「最短距離を行こう」から一変、2022年は「顧客の価値で語ろう」とド直球の表現となった。

森住今の話のテーマである“顧客価値”は、創業以来、プロダクト開発組織だけでなく全社で強く意識していたことです。会社のバリューにも「人が欲しいと思うものをつくろう」というものがあり、「未来を見据えて、ユーザーが自慢したくなるほどのプロダクトをつくろう」という認識が共有されています。

その前提の中で2021年は、プロダクト開発をする上での仮説検証のサイクルを小さく速くしようと考えて取り組んでいました。もちろん、このスローガンに基づき、良い開発ができた自負はあります。ですが2022年は敢えて、前提に立ち返り、さらに強く意識できるようにしようと決めたんです。

最も大きな狙いは、仮説検証のスピードだけ上げていくのではなく、質そのものも確実に上がるようにしていこう、という点です。

万が一、「ただ単に仮説検証を回しているだけ」という意識になってしまうと、一つひとつの開発がユーザーのためになっているのかどうかについて、深く思考できなくなってしまう可能性もある。この懸念を確実に排除しようと、改めて動いているのだ。

開発を担うエンジニア起点で考えた改善施策が最適な場合もあるだろう。だが、「それがユーザーの価値にどうつながるのか?」という“WHY”の部分の明確化を忘れてはいけない。そんな思いをスローガンとして掲げ、さらなる意識強化を進めているわけだ。

森住以前は、開発の方向性や優先度について、PO(プロダクト・オーナー)とPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)の2人で意思決定を行うことがほとんどでした。ですが最近は、ビジネスサイドとの接点を増やしつつ、エンジニアも加わって一緒に課題と解決策を考える場面が増えています。

こうした動きをより良いかたちにするため、エンジニアが商談やユーザーヒアリングの場に同席したり、カスタマーサポートグループと定例ミーティングを開いてプロダクトのフィードバックをより細かく把握したりと、連携施策を模索し、試しています。

これらの実践、実は森住氏からメンバーに細かく依頼しているわけではない。経営陣やマネジャーから言わずとも、現場で自発的に行われるのだ。まさにスローガンが機能していると言えよう。

芹澤どこまで意図したかはわかりませんが、スローガンが「語ろう」で終わっているのがすごく良いなと思っています。

組織の規模が大きくなると、各部署それぞれで専門性が高くなっていくので、部分最適な意志決定が増えてしまう恐れがあります。だから、現場メンバー同士が所属を超えて顧客の価値について語り合わないと、良いプロダクト開発ができなくなってしまうんです。

スローガンが、越境を促す役割も果たしているのではないかと感じますね。

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まだまだ手探りのプロダクトビジョンが、今後の伸びしろを大きく左右する?

所属や役割といった枠を超えて「顧客価値」に向き合う実践論を、まずは聞いてきた。その中でどうしても気になるのが、実際の意思決定について。プロダクト開発において方向性や優先順位などの責任を負うプロダクトマネージャーの思想に、何か特徴はあるのだろうか。この点もじっくり聞いてみたい。

安達氏がVP of Productに就任した2021年初めごろ、プロダクトマネージャーの役割には小さくない課題があった。全社でロードマップの合意に至ってから機能ごとにプロダクトマネージャーがアサインされるという仕組みになっていたため、「なぜその機能が今必要なのか」という議論に主体的に関われていなかったのだ。

そこで安達氏は、PM(Product Manager)グループとしての目標設定や体制を大幅に刷新した(安達氏自身が執筆・公開したこのブログもぜひご参照いただきたい)。行った施策の一つが、プロダクトビジョンの策定だ。安達氏は、「もともと顧客視点の強いポジション。“顧客の価値”を考えるのは大前提」と前置きしつつ、その目的を説明する。

安達『SmartHR』はPMFを達成し成長を続け、おかげさまで多くのユーザーを抱えるプロダクトになりました。現在も、追加機能などの要望をひっきりなしにいただいている状況です。常に新たなニーズに応え続けることが重要になる中で、ともすれば要望に対して順番にこなしていくだけになりかねません。

このままではチームとして、「自分たちはどこに向かうべきなのか?」という道筋が見えにくくなっていってしまうと、危機感を覚えました。そこで、チームの一人ひとりが主体的にロードマップを考えていくために、まずはプロダクトビジョンをつくろう、と呼びかけました。

なお『SmartHR』は、外からはワンプロダクトに見えるものの、開発組織は機能ごと分かれており、事実上のマルチプロダクト開発体制だ。プロダクトビジョンも、プロダクトチームごとに策定を進めた。

安達氏が苦笑いして語ったのは、「プロダクトビジョンをつくるのは、想定していたよりも難しかった」ということ。ビジョン策定は各プロダクトの担当プロダクトマネージャーが主導して進めたが、複数のプロダクトで同じような課題が出てきた。課題は主に二つ。一つは、主語を「プロダクト(自分たち)」で考えてしまいがちなこと。もう一つは、直近の課題に引っ張られて、1年程度で達成できる目標を掲げてしまうことだ。

例えばあるプロダクトでは当初、「○○業務を効率化する」のようなビジョンが案として出た。だがそれではビジョンとしてのインパクトが小さいと判断され、「効率化した結果として顧客をどういう状態にしたいのか?」「そもそもその業務はなんのために存在しているのか?」「それは顧客のビジネスにどう貢献するのか?」といった問いを投げかけ、議論を深めていった。

安達森住さんの話でもあったように、あくまで前提は「顧客価値」です。なので「プロダクトビジョン」とは言うものの、主語をプロダクトではなく、顧客とすべきなんです。

また、足下の課題解決も大事ではありますが、1〜2年以内に成し遂げられることをビジョンとして掲げてしまっては、将来的に社会に与えるインパクトが小さくなってしまう。大き過ぎず、小さ過ぎない絶妙な目標を立てなければなりません。

メンバーには、5~10年かけてようやくたどり着くくらいのスコープでプロダクトの未来を考えてほしいということを、何度も伝えました。「現状といくらかけ離れていてもいいから、まずはもっと夢を語ろう」といった具合で投げかけましたね。

あとは全社のミッションや戦略との接続を意識してほしい、ということも伝えていました。プロダクトごとに検討を進めていると、どうしても視野が狭くなってしまいがちです。そこは全体を見ている私や現場のマネージャーがサポートしながら、全体としての整合性を確認していきました。

この画像について語られたTech Blogの記事はこちら

試行錯誤の中で始まったプロダクトビジョンの策定と運用。プロダクト開発グループのスローガン同様、意外にもすでに効果が感じられていると話す。

安達プロダクトマネージャーだけでなく、開発にかかわるメンバー全員が、長期的な視点でプロダクトを考えられるようになってきました。例えばエンジニアから、「優先順位をこう変えたほうがいいのでは」といった、具体的かつクリティカルな意見が出る場面が明らかに増えたんです。

課題の先にある提供価値や、「社会をどのように変えていきたいのか」をそれぞれが思い描きながら語り合う文化が、醸成され始めました。目指す未来に最短距離で向かえる方法を、全員で考える環境をつくれたのかなと思います。

と言っても、ちょっとずつですね……。まだまだ道半ばです。

ARR数十億円という規模にまでSaaSプロダクトを成長させているのだから、「顧客価値の提供」はかなり強固に実現されているはず。そう見ることもできるだろう。

だがここまで見てきたように、最近もさらなる「顧客価値の提供」の実現に向け、多くの課題を発見し、新たな取り組みにチャレンジし続けているのだ。「組織は完成しつつあり、スタートアップ特有のカオスさなど存在しない」といった一部で感じられているイメージとは、全く異なる実態がこの現場にはある。改めてそう感じられたのではないだろうか。

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一人ひとりが、これからの国内SaaS業界をリードする存在になることも、裏テーマの一つ

プロダクトマネジメント界隈の“最近の流行り”とも言えるプロダクトビジョンについて、安達氏から熱く語ってもらった(まだまだ聞き足りないし、語り足りなさそうではあったが)。この取り組みと好対照になる動きが、プロダクトデザイングループにおいてみられる。

宮原SmartHRはプロダクトデザイナーやUXライターといった専門性の高い職能を要する組織です。

しかし、各職能の社内での期待役割はまだ浸透しきっていないようにも現場では感じるんですね。さらに、チームによっては職能のクロスファンクショナル化が進んでいるので、もしかするとキャリアに不安を覚える人もいるかもしれません。

そこで今取り組んでいるのが、職能ごとに主語を“自分たち”にして、個々人のありたい姿を描いてもらうことです。プロダクト開発組織全体のスローガンやPMグループのプロダクトビジョンのように主語を顧客にして考えるのとは、“真逆”のアプローチも並行して取り組んでいます。

ただし、あくまで「顧客価値」に基づいて、求められる成果基準が設けられるというのが大前提にはなっている。立ち位置を固めに行く過程では、個人の職能を高めていけたり、キャリアの可能性を広げていけたりするという安心感が、顧客価値やミッションの実現につながる、と位置づけたのだ。

宮原メンバーの中には、いずれ会社を離れて異なるフィールドで活躍する人もいるでしょう。SmartHRを経験したプロダクトデザイナーやUXライターが社会で偉大な仕事を成し遂げていき、ゆくゆくは「SmartHRマフィア」と称されるようになったらいいなと考えているんです。

もちろん、「マフィア化」は手段でしかない。だが、現時点で最適な手段であるという結論に達しているわけだ。この考え方には、安達氏も賛同の意を示す。

安達現在15人ほどいるプロダクトマネージャーのメンバーたちには、5〜10年後くらいに、もしSmartHRを卒業していたとしても、あらゆる日本のスタートアップやSaaS業界でめちゃくちゃ活躍できるようになってほしい。なれると思います。

そう思って、日々マネジメントをしていますね。

実はSmartHRにおいて、顧客価値の提供と常に繋がっているのが、組織力の向上である。だから一人ひとりの成長支援も当然重要になる。安達氏と宮原氏の取り組みが、一見“真逆”に見えるのは確かだが、目的意識は共通しているというのが下図も参照すればよりわかりやすいだろうか。

安達氏作成の社内向け資料(提供:株式会社SmartHR)

顧客だけでなく、人材市場や業界の将来にも常に目を向けている。日本のSaaS業界をリードする、SmartHRならではの決意表明とも取れる。

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「難しいパズルを、美しく解く」という理想を追い求め

ユニークな組織体制のもと、顧客価値の実現に向けたさまざまな実践について具体的に聞くことができた。ここからは芹澤氏を中心に、「SmartHRの実践論」の整理を試みたい。

大前提として、この変化の激しい現代社会において、顧客価値を実現するための課題の解き方は決して一つではないはず。解き方そのものに、プロダクトや企業としての“哲学”が反映されると言えるだろう。興味深いのは、「顧客の価値」をベースにして考えることを、芹澤氏が「難しいパズルを美しく解く」と表現したことだ。

SmartHRは2022年8月、“well-working”をキャッチフレーズに、コーポレートミッションを「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」に改定した(詳細はこちら)。これまでのミッション「社会の非合理を、ハックする。」への想い、そして新たなコーポレートミッションを掲げての挑戦について、芹澤氏は「今の時代、より早急な働き方のアップデートが求められている」と強調するように話す。

芹澤私がSmartHRに入社した当時は「テクノロジーと創意工夫で、社会構造をハックする」というビジョンでした。学生時代に読んでエンジニアを目指すきっかけになったPaul Grahamの『ハッカーと画家』から影響を受けたこともあり、この「ハックする」という言葉にとにかく惹かれて入社したんです。

課題を解決するためにさまざまな方法が考えられるなかで、最もエレガントな解き方をしたいと常に思っています。「ハック」というのは、正攻法だけにとらわれず、遊び心を感じる表現で好きなんですよね。みんなが面白いと思うやり方で課題に向き合っていく、そんなSmartHRの文化が表れていると感じます。

でも、この「ハック」はどちらかといえば手段です。ではその先の目的として、何を目指すべきなのか。それが、先ほども言及したパーパスへの意識につながります(言及箇所はこちらの前編記事に)。

そもそも労働という営みはいつの時代も答えがなく複雑で不安定な存在です。そんな中で近年、労働に対するあらゆる価値観がより一層揺らいでいて、企業にも人にも早急なアップデートが求められています。

だからこそ、私たちは労働にまつわる社会課題に真摯に向き合い、一つひとつの課題を着実に、かつスピーディーに解決していきたい。それにより、ひとりでも多くの人がその人らしく幸せに働ける社会をつくりたい。

この想いこそが、SmartHRの企業活動の源泉であり、存在意義だと考えています。巨大で複雑な社会課題に向き合いながら、一歩ずつ挑戦を続けていきたい、そんな思いを新しいコーポレートミッションに込めています。

技術や手段も大切であり、それらが今のSmartHRをかたちづくったのは間違いない事実だろう。だが一方で、プロダクト開発の話をしている中でもミッション改定にかけた想いにまで自然と話が発展するのも、同社ならではと言えそうだ。

この新ミッションとのつながりを感じさせる取り組みはすでにいくつも存在している。たとえば、VP of Product Designの宮原氏が主導するプロダクトデザイン領域で最も注力している施策の一つに、アクセシビリティの向上がある。目的は、プロダクトを誰でも使える状態にすること。

宮原会社の中でたった1人でも使えない人がいるとなれば、そのプロダクトの導入を検討できない十分な理由になってしまう。つまり、プロダクトのアクセシビリティを向上させていくことは、あらゆるお客様の業務体験の向上につながると考えています。

例えば数千人規模の企業であれば、障害者雇用促進法に基づき、数十人の障害当事者を雇用している場合があります。身体的特徴によって「まったく使えない」が生じる可能性は、決して低くないと言えると思います。

障害の有無だけでなく、従業員一人ひとりの有する能力、置かれた環境、文化的背景はそれぞれ異なって当たり前。色の視認性や、音声読み上げによる操作、多言語対応などはすでに開発を進めています(詳細はこちら)。どんな人でも活用できるプロダクトの形を、これからはより一層目指していきたいと思い、専任のチームを置いています。

言葉通り、誰もが使えるサービスというシンプルなゴールに愚直に向かっている組織であることがうかがえる。

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価値を提供するため、「組織」として学び合い、成長する細かな実践

SaaSスタートアップの最前線を行くSmartHRの「顧客価値実践論」をさまざまに聞いてきた。総括するように芹澤氏が語ったのは、プロダクトが持っている大きな伸びしろについてだ。

芹澤やはり、SmartHRで働くうえでは、チームワークを重視するマインドは非常に大切です。”If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.”という、有名なアフリカのことわざがありますよね。

早く行きたいなら1人で行け。遠くに行きたいならみんなで行け。本当にその通りだと感じています。そもそも、SaaSという事業はものすごい長期戦なんですよ。私はSmartHRに入社してもう6~7年になりますが、技術の発達と社会変化が激しい環境下で、どんどんゴールが遠くなっていっている。プロダクトとしての伸びしろが大きくなっているわけです。

これまでもこれからも、決して短期で勝ち逃げできるビジネスではありません。チームを組んで戦い抜く姿勢を強化し続け、今以上の顧客価値を、プロダクト開発を通して一人ひとりが実践していきます。

最後に、現在のフェーズにおいてSmartHRで活躍できる人物像を聞いてみた。

森住エンジニアなら、常にユーザー視点に立ち、「プロダクトをどのようにつくるのか」ではなく、「なぜそれをつくるのか」を考えられる人ですね。安達さんが言っていたように、「プロダクトマネージャーが引いたロードマップに沿って、的確に作業を進めて実現するだけ」といった役割ではないんです。

また、会社としてのフェーズが年々変わる中で、求められるエンジニア像も少しずつ変化があります。そういった環境で学びを続けて楽しめる人は、とても面白い挑戦ができると思います。

安達森住さんの話とつながりますが、一言で表現すると、「ラーニングアニマル」な人です。2022年に、PMグループの方針として「大きく考え、小さく動き、ともに学ぶ」と掲げました。日本を代表するSaaSを開発・提供する会社に所属しているプロダクトマネージャーは、当然日本を代表するレベルのプロダクトマネージャーであってほしい。ただ、私も含めてそこまで言い切れるレベルには達していません。

では、どうするか?会社の成長に追い付き、追い越すためには、1人だけでがんばるのには限界があります。チームとして、お互いに学び合う姿勢が必要不可欠なんですよね。

「自分だけが成長するのではなく、チームで偉大なことを成し遂げよう」という気概を持って、全体のレベルアップにも貢献してくれる人に来ていただけたらうれしいですね。逆に言うと、そういう人材が集まる環境なので、個人としての成長も絶対に速いと思います。

宮原私たちプロダクトデザイングループでは、日ごろから「デザイナーとして業界のベンチマークになる組織をつくろう」と話しています。

プロダクトを改良し、事業の成長に貢献するのは当たり前。そこに加えて、職能のあり方を磨いていける人は、今のSmartHRにフィットすると思います。「自分たちがプロダクトデザイナーという職業の未来をつくっていくんだ」という意欲にあふれたメンバーばかりなので。

芹澤プロダクトを通じて日本の働き方をアップデートすることが、私たちSmartHRの使命。ミッションへの共感は大前提としてありつつも、自分たちの働き方も楽しくアップデートしていく創意工夫にあふれた人と一緒に仕事がしたいです。私たち自身がミッションを体現できていないと意味がありませんから。

会社のフェーズとしてはレイターステージと言われる段階ですが、いい意味で今も「安定」とはかけ離れた環境です。既存事業の爆発的な成長も、さらなる新規事業・プロダクトの創出も、手を止めるつもりはありません。そういう意味では、アーリーステージにも負けない、ひりひりとした面白い環境はこれからもずっと存在すると断言できますね。

特に、SmartHRがまだ3人の組織だった創業期から参画している芹澤氏の言葉には、一層の重みと説得力を感じる。

前編では、それぞれが捉える市場や未来像、事業の伸びしろの部分について聞いた。そしてこの後編では、プロダクトの開発思想、組織の実践論と展望について踏み込んだ。

今後のSmartHRは、さらなる高みへの到達を目指している。インタビュー中には「日本を代表する」という表現が何度も出てきた通り、国内のSaaS業界をリードする使命感も同時に背負っている。まだまだ「未完成」なプロダクト、そして組織をたっぷりと堪能できる環境であるに違いにない。

こちらの記事は2022年08月31日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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藤田 慎一郎

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