ブレークスルーに未だ有効打!急成長スタートアップ9社が展開するテレビCMまとめ

「テレビCMは時代遅れ」なのだろうか──。インターネット広告が2014年から4年連続で2桁成長を遂げている一方で、横ばい傾向にあるテレビCM。直接的な効果測定が難しいうえに、労力や費用面での負担も大きく、スタートアップにとってはハードルが高いとイメージする人も多いだろう。しかし実は、急成長しているスタートアップがテレビCMを展開するケースは少なくない。ここでは実際にテレビCMを展開するスタートアップ9社を紹介し、ブレークスルーするためのCM活用戦略について考えていく。

  • TEXT BY YUSUKE KANAMORI
  • EDIT BY MASAKI KOIKE
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1.ターゲットユーザーに人気のモデルを起用「LIPS」

資金調達概要

放映開始日
2018年12月8日
累計調達額
約16億円

概要

2016年に創業された株式会社AppBrewは、コスメのコミュニティアプリ「LIPS」を開発・提供している。

累計アプリダウンロード数は150万を超え、10代〜20代を中心に人気を集める。リリースから2年近く経った2018年12月から、モデルのローラ氏を起用し、初のテレビCMの放映を開始。

2018年10月には10億円の資金を調達しており、今回のテレビCMの出稿費用にも充てられたと推測される。

【LIPS公式】ローラ_CM_ドラッグストア篇_30秒ver.

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2.具体的な利用シーンで需要を喚起「スペースマーケット」

資金調達概要

放映開始日
2018年11月19日
累計調達額
約5億円

概要

2014年に創業された株式会社スペースマーケットは、空いているスペースを貸し借りできるプラットフォームを開発・運営している。

同サービスに掲載されているスペース数は1万件を越え、時間貸しプラットフォームサービス業界では日本最大級の掲載数を誇る。

テレビCMでは、お誕生会や会議、女子会、宿泊といったさまざまな利用シーンを提案。具体的な利用シーンを提案することで、サービスに対する需要を喚起する。

SPACEMARKET レンタルスペースならスペースマーケット 4scenes 15sec

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3.インパクト重視で興味喚起し、検索へと誘導「Origami Pay」

資金調達概要

放映開始日
2018年10月27日
累計調達額
約88億円

概要

2012年に設立された株式会社Origamiは、スマホ決済サービス「Origami Pay」等を開発・提供している。

加盟店は、全国の多業種・多業態で10万店舗へのぼる。テレビCMではモデルの水原希子氏を起用し、同氏がオレンジの液体から出てきて一言「Origamiで。」というメッセージのみ。

このインパクトの強さから、「Origamiって何だろう」と興味を喚起し、視聴者に検索エンジンで調べてもらうことを狙っているのではないだろうか。

Origami 「デビュー」篇

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4.人気タレントのコミカルなやりとりで、認知拡大を図る「助太刀」

資金調達概要

放映開始日
2018年9月4日
累計調達額
約5.8億円

概要

2017年に設立された株式会社助太刀は、建設現場と職人をつなぐアプリを開発・運営している。

TechCrunch Tokyo 2017のスタートアップバトルで審査員特別賞を受賞した、急成長のスタートアップだ。

テレビCMでは、人気お笑い芸人のサンドウィッチマンの2人が筋骨隆々な姿になり、謎の美女2人と「トモダチ?」「助太刀だよ」とコミカルな掛け合いを繰り広げる。

助太刀に限らず、ダウンタウンの松本人志氏(リクルート)や千鳥(スマートニュース)といった人気お笑い芸人を起用したテレビCMが増えている。CM中はスマホを見る視聴者が増え、広告を見てもらうことが難しくなりつつあるなかで、それでも印象に残るユニークなクリエイティブを作ろうとしている意図が伺える。

【公式CM】建設現場と職人をつなぐアプリ助太刀 『登場』篇

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5.課題と解決方法をダイレクトに訴求「SmartHR」

資金調達概要

放映開始日
2017年8月18日
累計調達額
約20億円

概要

2013年に設立された株式会社SmartHRは、企業が行う入退社の書類作成、社会保険・労働保険の各種手続きを簡潔に行えるクラウド人事労務ソフトを開発・提供している。

サービス開始から2年半で利用企業は1.8万社を超え、継続利用率が99%以上という急成長ぶりだ。

2018年の10月から放映しているテレビCMでは、数々のレシピ本を出す俳優の速水もこみち氏が、手間のかかる面倒な年末調整を、SmartHRを使って簡単に完了させる。

具体的な課題を提示したうえで、自社サービスによる解決シーンを紹介するというダイレクトな訴求だ。

2017年初めてテレビCMをスタートする際、社長の宮田昇始氏は自身のブログにてテレビCMを始める理由を「インターネット広告だけではリーチできない層へのアプローチを探るため」だと語っている。

SmartHR テレビCM「年末調整の時短レシピ」15秒ver

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6.生活の中での利用方法を、具体的に提示「kurashiru」

資金調達概要

放映開始日
2017年4月4日
累計調達額
約68.5億円(2018年7月、約93億円でヤフーが子会社化)

概要

2014年に堀江裕介氏が中心となり創業したdely株式会社は、レシピ動画アプリ「kurashiru」を開発・運営している。

同サービスは、2018年の12月には累計1,500万ダウンロードを突破しており、レシピ動画以外のコンテンツも拡充、レシピ内容やユーザーの嗜好などにあわせた広告配信も始めるという。

テレビCMでは、女優の木村文乃氏を起用。「冷蔵庫から具材を発見、同アプリでレシピを検索、動画を見ながら調理」と具体的な利用方法を提示していることが印象的だ。

【木村文乃 CM】ハナ歌クッキング その1 ピーマン kurashiru クラシル 美味甜椒,料理教學!

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7.搭載されている機能を直接アピール「SmartNews」

資金調達概要

放映開始日
2014年8月1日
累計調達額
約91億円

概要

2012年に創業されたスマートニュース株式会社は、同名のニュースアプリを開発・運営している。

日米で3,500万ダウンロードを突破しており、グルメ、エンタメ、スポーツ、クーポンなど多ジャンルに渡り豊富なコンテンツを提供。

テレビCMでは、人気お笑い芸人の千鳥を起用し、二人が軽妙なやりとりをする中で、クーポン機能や英語でニュースを読める機能といった具体的な機能をアピールしている。

「貴様」で話題!千鳥の軽妙なやり取りが笑いを誘うスマートニュースCM 新作7タイプ一挙公開

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8.WEB広告のノウハウをテレビCMに応用「Gunosy」

資金調達概要

放映開始日
2014年3月15日
累計調達額
約28億円

概要

2012年に設立された株式会社Gunosyは、情報キュレーションサービス「グノシー」やニュース配信アプリ「ニュースアプリ」など複数サービスを開発・運営している。

テレビCMは、特徴ある声のナレーターの方が視聴者が気になる情報を小出しにし、「グノシー、今すぐダウンロード!」と一言で締め、視聴者の興味を引くのが印象的だ。

複数パターンを用意してスモールスタートし、そこで得たデータをもとにCPAを改善させる、WEB広告の手法をテレビCMにも適用しながら運用したという

[グノシー]クーポンCM~使い方編~

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9.よくある悩みをドラマ風に仕立て、感性に訴えかける「Sansan」

資金調達概要

放映開始日
2013年8月4日
累計調達額
約116億円

概要

2007年設立のSansan株式会社は、同名の法人向けクラウド名刺管理サービスや、名刺管理アプリ「Eight」の開発・運営をしている。

名刺管理サービス市場でシェア82%を誇り、導入企業は7,000社を超える。テレビCMでは、実力派俳優陣を起用し、名刺にまつわるよくある悩みをドラマ風に仕立て共感を誘う。

具体的にサービスを説明することなく、印象的なシーンによって視聴者の感性に訴えかける手法が特徴的だ。

「面識アリ」180秒(シリーズ一気見!)

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先人の知恵を活かし、一つの手段として捉える

出稿コストが高く、効果測定も難しいイメージがあるテレビCMだが、インターネットにあまり馴染みがない層へのリーチや、ブランドとして幅広く認知してもらう目的では、依然として強力なマーケティング手法のひとつだ。

しかし、オンライン/オフライン問わず広告が溢れるいま、「とりあえずマス向けにアピールしたい」と見切り発車でテレビCMを放映しても、成功する確率は低い。たとえばWEB広告で得た知見をもとにテレビCMでもPDCAを回したグノシーのように、戦略的に広告を立案することが必要となるはずだ。

最近では、2018年5月に東証マザーズに上場したラクスル株式会社が、費用と制作時間を抑えたテレビCMに関する新たなサービスを始めており、参入ハードルがますます低くなると期待される。「マス向けのテレビCMは時代遅れ」と思い込まず、検討してみる価値は十分にあるのではないだろうか。

こちらの記事は2019年03月20日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

金森 悠介

編集

小池 真幸

編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。

デスクチェック

長谷川 賢人

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

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