連載スタークス株式会社

ロボット vs クラウドソーシング。
労働力不足解決のカギはどちらか?

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インタビュイー
上ノ山 慎哉

1983年生まれ。大学卒業後、2006年に株式会社ファインドスターに入社。新規事業立ち上げ、営業マネージャー、グループ会社役員を経験。同社からの出資を得て、2012年7月にスタークスを設立。代表取締役に就任。インターネットを活用したサービスの開発、販売を行う。サービス利用企業数は、1,500社を超え業界シェアNO.1に。現在、クラウド型・物流プラットフォームサービス「クラウドロジ(旧:リピロジ)
を主軸に、社会課題ともなっている物流領域の変革を目指している。
孫正義氏の後継者プログラム『ソフトバンクアカデミア』最終合格。

成田 修造

1989年7月、東京都出身。慶應義塾大学経済学部在学中よりアスタミューゼ株式会社に参画。オープンイノベーション支援サービス「astamuse」の事業企画を手掛けるほか、大手人材紹介会社との提携事業を立ち上げなどに携わる。その後、アート作品の解説まとめサイトなどを手がける株式会社アトコレを設立し、代表取締役社長に就任。2012年に株式会社クラウドワークスに参画。2014年8月、同社取締役に就任。2015年4月から取締役副社長に就任し、現職。

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マーケット・イノベーションによって社会課題を解決することを目指す企業 「スタークス」代表の上ノ山慎哉が、イノベーティブなビジネスや組織を確立した起業家に話を聞き、 経営者としての考え方の本質、社会変化の捉え方に迫る。

第2回は、「働き方革命」をビジョンに掲げ、クラウドソーシングを中心に、個人視点のマネタイズプラットフォームを築くクラウドワークスの成田修造氏との対談。

  • TEXT BY YASUHIRO HATABE
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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働く個人の「こんなふうに働きたい」という思いが起点

上ノ山 スタークスでは、Eコマースを行っている企業向けに、「クラウドロジ」というサービスを提供しています。「クラウドロジ」は物流にまつわる業務をクラウドソーシング化したサービスです。

テクノロジーを活かして労働力不足を解消する、企業側のニーズと人的リソースを最適にマッチングするところがクラウドワークスさんと近いと思って、今日お話を伺えればと思いました。

成田 なるほど、確かに近いですね。

われわれは、これまで企業が担ってきた既存労働市場の一部が、個人・フリーランス主体に置き換わっていく流れを見据えて2012年にクラウドソーシング・プラットフォーム「クラウドワークス」を立ち上げました。

スタークスさんは物流・倉庫業務という領域特化型で人材流動を図っていると思いますが、クラウドワークスの場合は領域を問わず、広く一般的に「働く個人」の視点から新しい社会インフラを創ることを目指しています。

上ノ山 では、どこかの特定の分野に注力しているわけではないのですか。

成田 あくまでも個人側、働き手が起点ですね。ただ、それだけではビジネスとしてスケールさせるのが難しいので、需要側からも考えています。

サービス開始当初は、「エンジニア・デザイナーのクラウドソーシング」としてスタートしました。自分たちも含めてIT系の会社が周りに多かったので、そこの需要と個人のエンパワーメントがマッチする領域から始めたのです。

開始から3年ほど経って一定規模に成長した後は、エンジニアやデザイナー領域核にしながら、データ入力やライティングといった隙間時間を使って稼げる仕事の領域に拡大してきました。

今は、例えば英語やギターの「先生」と、それを学びたい人の教育系C2Cマッチングサービス「サイタ」や、ビジネス経験を20年30年と積んできた方がその経験を活かしてベンチャーを支援してもらうような「BRAIN PARTNER (ブレーンパートナー)」事業も展開しています。

領域を広げながら、一つ一つ需給を検証している感じですね。

上ノ山 ボリュームゾーンとしてはどこが今後一番伸びて行きそうですか?

成田 日本では働き手がますます足りなくなることは間違いないと思っていて、そう考えると「全部」という答えになります。ただ、特にエンジニアの人材不足は世界的なテーマですし、デザイナーも今後同様に課題が大きくなっていくはずなので、その意味では成長ポテンシャルは大きいと読んでいます。

これまで「スタンダードな働き方」といえば、やはり会社に属して働くという形態でしたよね。でも、フリーランス化率、副業化率はこれまでも、そして向こう20年くらいのスパンで必ず上がっていくと思うんです。どの領域のフリーランス化、副業化が進んでいくのかを捉えながら、この新しい市場を拡大していこうとしています。

一方で、フリーランスになりたての人や、副業を始めたばかりの人もいるので、そういった方たちのスキルを底上げして、付加価値を高めていくことも必要ですよね。

実際、自社でも人材育成事業をスタートしていますし、エンジニア育成事業を行っている他社さんとパートナーシップを組んで、ワーカーさんにサービス提供することも始めています。

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成長余地が大きいクラウドソーシングの市場規模

上ノ山やはり育成したほうが報酬の単価が上がるということですね。報酬の伸びは、育成にかけるコストに見合うものだと思いますか?

成田 報酬は上がっていくと思いますが、その教育サービスのコストと成果が見合うかどうかはこれから検証していくことになると思いますね。

ただ、報酬の単価を上げる、ワーカーさんのスキルや付加価値を高めることは、われわれとしても重要な課題として捉えています。

当社では「働き方革命」を会社のビジョンとして掲げているのですが、これにはサブタイトルがあります。それは「世界で最もたくさんの人に報酬を届ける会社になる」というもの。

だから、「インターネットを通して個人に届けた報酬額」をわれわれのイノベーション指標として測っているんです。私たちの売上や利益は、あくまで報酬額を最大化した結果だと考えています。

上ノ山今の報酬の総額はどのくらいですか?

成田 今期の開示では年間で110億円です。これをどれだけ伸ばしていけるかというところですね。短期目標は1,000億円、長期目標だと1兆7,000億円を会社としては掲げています。

日本の国民全員の「収入」の総額は年間で約300兆円。その大半は企業が支払う給与です。これを、「個人として働いて得る報酬」に変えていくことがポイントです。

現在、日本の「消費」は約400兆円あり、そのうちの約5%、約17兆円がECを通じて行われているのだそうです。個人が個人として働いて報酬を得るマーケットもそれと同じくらいのシェアになると考えると、300兆円の5%、15兆円くらいの規模になる。仮定の話ですが、今が数百億円の市場だと考えていくと、今後拡大していく余地は大きいと考えています。

上ノ山クラウドソーシングの市場は海外のほうが先行しているんですか?

成田 アメリカでは大手のUpworkが最大手で、だいたい1000億円の流通があるそうです。オーストラリアのFreelancer.comの年間流通額が約500億円、中国の猪八戒(witmart)は約1000億円の流通があるといいます。グローバルではその辺りが先行していますね。

日本の人材派遣のマーケットは1980年の派遣法改正ともに立ち上がりました。それから40年近く経ち、市場規模は6兆円にまで成長しています。人材市場すべてをクラウドソーシングがリプレイスするわけではないとしても、今後の流れとしては大きなビジネスになるとは考えています。

上ノ山やはり、海外で先行している市場規模や、フリーランス化率などから逆算して未来を描いているのですね。

成田マクロトレンドはそういう捉え方、組み立て方をしていますね。ただミクロでは「個人に発注できる仕事ってどんなものがあるんだろう?」「多くの会社が個人に求めるスキルって何だろう?」ということを考えながら、より需給のニーズが合致する面積が大きそうな領域を探っている感じです。

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個人の趣味や生活をマネタイズする市場も出てくる

成田 あと最近捉えているのは、「仕事」ではなく個人の生活の中のアクティビティや趣味が、実は大きなマーケットになるということ。例えばハンドメイドで何かモノをつくるのが趣味の人がいて、それを買いたい人がいる。何か得意なコトを教えられる人がいて、それを教わりたい人がいる。これまで趣味・特技でしかなかったものが、実はマネタイズ可能なケースが、グローバルでも日本でも出てきているんです。

「仕事」については、需給のバランスを見て事業を組み立てていくのですが、「仕事じゃないもの」で個人の趣味に紐付くスキルや特技が報酬につながるポイントはどこなのかということも、最近はずっと探しています。

上ノ山 そのケースは先行事例があるんですか?

成田 あります。ハンドメイドだとEtsyが一番グローバルでも伸びていて、ハンドメイドの流通額だけで年間5000億円もあるそうです。あとはGMOペパボさんのminneも100億円くらいトランザクションがあるという情報もありますからハンドメイド以外の何かを見つけられたらと考えると、大きなマーケットになる可能性を秘めていると思います。

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感情報酬と金銭的な報酬

上ノ山スタークスでも人材シェアリングサービスをかなり利用していまして、エンジニアやデザイナーのほか、先ほどお話しされていた顧問人材も活用させていただいています。

「とても有用だな」と思う一方で、一部の希少価値が高いプロフェッショナルな人材を皆で取り合っている印象を受けています。一方にはスキル・経験の市場価値が高くない人がいて、そういう人には軽作業的な仕事をしてもらうしかない。そうやって二極化していくように感じます。その辺りはいかがですか。

成田表現が難しいですが…そこは、われわれとしてはあえて定義をしていません。なぜかというと、どういう仕事をしたいと思うか、それによっていくら報酬を得ようとするかは、人によって、あるいは条件によって千差万別だと思うからです。

例えば黙々とやる作業も、ある人にとっては時間を少しでもお金に換えられるという意味では価値がある仕事かもしれませんし、その仕事を純粋に面白いと感じているかもしれません。そこにニーズがあるのであれば、マッチングは成立します。また、お金だけでなく、社会とのつながりを大事にされてるワーカーさんも実際にいます。

だから、ある価値観を元にそうした仕事を無理に排除しようという選択はしません。その仕事をしてほしいクライアントがいて、ワーカーさんができる状態である限りは取引は残るし、価値があるものだと思います。

上ノ山われわれも物流業務のクラウド化をしているため、実際に現場を見てみようと、お付き合いのある倉庫を見に行ったことがあります。

そこで働いていた方の中には主婦の方もいらっしゃるのですが、仕事はどうか話を聞いてみると「ストレス解消になる」というんですね。家事をしても誰も「ありがとう」と言ってくれないけど、ここに来ると「ありがとう」と言ってもらえる。常にこなすべき仕事があって、集中して黙々と作業できるのが楽しいそうなんです。

それを聞いて、こういう、ゆくゆくは機械に置き換わる可能性のある作業も、まだしばらくは「その仕事をしたい」というニーズはあるんだなということを改めて実感しました。

成田僕も、まさにそう思いますね。ワーカーさんと会って話をすると、仕事のやりがいは人によって全然違う。それを一方的な価値観でひとくくりにするよりは、多様な価値観があるなかで、適切なマッチングを一つ一つ成立させていくのがベストだと思っています。

クラウドワークスでも、取引相手に気軽に感謝の意を伝えられる「ありがとうボタン」を導入しています。1日1回しか「ありがとうボタン」は押せないのですが、それでもそろそろ1000万回に到達しそうなんです。

「ありがとうボタン」|クラウドワークス

それだけサービス上で「感謝」がやり取りされているということ。このプラットフォーム上の「感謝のつながり」は、今後も追求していきたい価値だと考えています。

上ノ山なるほど。それは興味深い取り組みですね。僕はマーケットインでEコマースの物流に参入したので、発注側、つまり労働力を求める需要側の要望は分かるんですね。

でも、今お話を聞いて思ったのは、逆に労働力を安定的に供給するという視点が重要だし、今後はそれができるところでこそビジネスが成り立つのではないか、ということです。

日本の人口は減っていきます。仕事や働き方に対する価値観も多様化して、高い給与があれば労働力を確保できるわけではなくなってきている。それは、今の物流業界で運び手が大きく不足している状況を見れば明らかです。

ただ実際に総体としてキャパシティを超えているかというと、地域ごとの中小の運送会社を見ていくと、余力があるところもあるんです。

だからそこに、金銭ではない「感情報酬」のようなものを組み込むことが、人材不足という課題解決の一つのカギになるのではないかと感じました。

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必然的に訪れる労働力不足という社会課題をどう解決するか

上ノ山 日本は課題先進国ともいわれ、少子高齢化による労働力不足も世界に先駆けて取り組んでいる課題の一つですよね。僕はそれをある意味チャンスだと捉えていて、これが解決できれば他の国のモデルケースになり得ると思っています。

そういった社会的な意義を僕自身が感じて、今の仕事に取り組んでいるのですが、クラウドワークスさんはどうですか?

成田 解決策はいくつかあると思っています。

1つは、人材の流動性や働き方のフレキシビリティを上げていくことで、労働量全体を膨らませていくということ。2つ目はテクノロジー。AIやロボットの活用。3つ目は、移民の受け入れがあるかなと思います。

われわれは労働のフレキシビリティを高めるという意味ではかなり先進的な事業に取り組めていると思います。また自社の社員の働き方についても、副業OKにしていますし、リモートワークやフレックスタイムも積極的に取り入れて自社の中でも多様な働き方を模索しています。

また、テクノロジーについても、自分たちでもRPAサービスを活用していますし、チャットコミュニケーションやリモートコミュニケーションも当たり前のものになっています。また、プロダクト上でも、いかにテクノロジーを使って日本全体の労働生産性を上げていくかは追求していきたいと思いますね。

上ノ山 ただ、例えば倉庫の作業をロボットがするにはもうしばらくかかりそうですよね。その意味で、この先少なくとも10年くらいは、労働力シェアの仕組みの最適化が、労働力不足の解決に対して一番効果的な策と考えられるのではないでしょうか。

成田 おっしゃる通りです。働き手1人のスキル・付加価値の大きさと、労働時間。それを掛け合わせたものが国としての「労働総力」だと思うんです。

その「労働総力」をいかに最大化するかということが社会からは求められていることだと思いますし、われわれがしていかなければならないことだと思います。

上ノ山 労働人口が減少し、社会が成熟化して人々の労働観の変化している日本において、どう「労働総力」を増やしていくかは私も大きなテーマだと思います。

クラウドワークスさんが実現したように、インターネットを活用して働く場所や時間に囚われずに働けるようにする事で「労働総力」を確保する。そこにうまく「感情報酬」という概念も組み込むことで、人々が働きがいを感じられる環境も整えられる。

そうやって「労働総力」を高めていくことが日本のGDP増加にもつながり、結果的に日本の成長、豊かさ向上に直結すると思うんです。だから私自身も、スタークスの事業が「労働総力」を増やすことにどう貢献できるのか模索し続けたいと思います。

成田 日本の「労働総力」の最大化のために、クラウドソーシングは必ず重要なものになるはずです。その重要性を社会に対して啓蒙していく役割をクラウドワークスも担っていると思っています。また、われわれのミッションは「”働く”を通して人々に笑顔を」ですが、一人ひとりが自分らしく働ける世の中を創るということもとても重要なテーマです。われわれも「働き方革命」を通じて日本全体をよくしていきたいと思います。お互いにがんばりましょう。

こちらの記事は2018年05月31日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

畑邊 康浩

写真

藤田 慎一郎

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