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連載私がやめた3カ条

「本来の自分」に立ち返り、やめるべきことを見極めよ──ハイヤールー葛岡宏祐の「やめ3」

インタビュイー
葛岡 宏祐

1996年生まれ、京都府出身。バックパッカーとして世界一周を経験後、独学でiOSの旅行アプリ『AminGo』をリリース。2018年にAIエンジニアとして株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)に入社し、数々のイベントに登壇。2020年2月、画像検索プロジェクトのテックリードとして株式会社メルカリに入社し、在籍中の2020年12月に株式会社ハイヤールーを創業。

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起業家や事業家に「やめたこと」を聞き、その裏にあるビジネス哲学を探る連載企画「私がやめた三カ条」。略して「やめ3」。

今回のゲストは、オンライン完結型のコーディング試験サービス『HireRoo』を手掛ける株式会社ハイヤールーの代表取締役、葛岡宏祐氏だ。

  • EDIT BY SHO HIGUCHI
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葛岡氏とは──計算力と行動力を兼ね備えた「コンピューター付きブルドーザー」

「敷かれたレールを行くのは時間の無駄だと思ったんです」。そう語るのがハイヤールーを創業した葛岡氏だ。実際に中学卒業時点で、「敷かれたレール」である高校進学をやめた。「地球の裏側に行ってみたかったから」という理由でいきなりチリに飛び、約1年半をかけて世界一周を果たしたという、明らかに「変わった」人物だ。

その後、ヨーロッパでの就業を経て、「旅の経験を活かして何かをつくりたい」という思いからプログラミングを学ぶと、わずか3カ月で初めてのiOSアプリをリリースした。そこからフォトラクション、ディー・エヌ・エー(DeNA)、メルカリと順風満帆にエンジニアとしてのキャリアを積み重ね、起業に至る。

「常にコンフォートゾーンから出たくなる」という葛岡氏。そのキャリアの軌跡を見れば、行動力が並大抵のものではないことがわかるはずだ。だが、ただアグレッシブなだけではない。その野心を実現するための計算力が備わっている点が同氏の真骨頂である。かの田中角栄氏にも使われた「コンピューター付きブルドーザー」という形容がしっくりくる。

そんな葛岡氏が、今まで何をやめる意思決定をし、人生を高めてきたのだろうか。耳を傾けてみよう。

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Googleへのチャレンジをやめた

「昔から起業したいと思っていました」と静かに語り出す葛岡氏。自分でつくりたいサービスをつくれるようになるために、DeNAからさらなるチャレンジを求めて、Google、Facebook、メルカリの3社の採用試験を受けた。そこで衝撃を受けたのが、日米スタートアップのエンジニア採用試験における質と量の大きな差だ。

葛岡Googleは、六本木の日本法人オフィスで6時間もの長い試験がありました。

Facebookは日本から一番近くてエンジニアがいるシンガポールオフィスに呼ばれ、みっちり8時間の採用試験となりました。採用試験なのに旅費も全て支給されました。試験の内容は、4分の3ほどがコーディング試験。しかも成果物ではなく、成果物作成に至ったプロセスを評価する試験でした。

このレベルの質と量でエンジニアの採用試験をしている日本のスタートアップはなかったので、衝撃を受けました。このときの体験が後に、ハイヤールーの起業アイデアにもなりました。

だが、Googleには通らず、Facebookはポジティブな選考状況の中だったが辞退することに。「いずれは起業を」という考えから、スタートアップを学ぶことができる国内で大成功していたメルカリに最初にオファーをもらい、入社を決めた。

「同僚のレベルも高く、楽しかった」とメルカリ時代を語る。しかしここでわりとすぐに新たなチャレンジを求め、「打算」をやめるに至る。

葛岡メルカリに入って、レベルの高い先輩や同僚と一緒にプロダクトをつくる日々はものすごく楽しかったですね。そうして経験を積んで、今度こそGoogleに、なんて思ってもいました。

でも、環境に慣れていくうちに「やっぱりイヤだ」と思うようになって(笑)。大体どの会社でも2年くらいすると、いわゆるコンフォートゾーンに入ってしまうじゃないですか。成長できる伸びしろを感じにくくなってきませんか?

「もともと僕は、敷かれたレールを歩みたくないタイプだったはず」ということを思い返し、すぐにやめて起業しようと決めました。

起業アイデアはすでにあった。それまで築いてきたキャリアのなかで出会ったエンジニア仲間もいた。決心さえつけば、チャレンジを遮るものはなにもなかったのだ。

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完璧主義を、きっぱりとやめた

企業とは、洗練されたノウハウやシステムの集合体である。特に数百人~数万人が所属する大企業では、一つのプロダクトをリリースするにも、多くの洗練されたプロセスを経て初めて前に進む。

そうした企業に在籍した期間も長い葛岡氏は「以前、私は完璧主義者でした」と語る。だが自ら起業するに至っては、完璧主義をやめたのだという。どういうことだろうか?

葛岡どんなサービスもそうですが、80%のクオリティまでつくり込むのはそこまで時間がかかることではありません。問題は残りの20%です。その20%をつくり切るために、多くの労力を必要とする。DeNAやメルカリのような大企業では、その20%をやり切るのが当然でしたが、スタートアップでは完璧を求めているといつまで経ってもサービスをリリースできません。

ハイヤールーのサービスは当初、3カ月でつくり切ろうと思っていたのですが、結局開発に5カ月ほどもかかってしまいました。それでも最後には、完璧主義へのこだわりに意味はないと考え、「エイヤ」とリリースした、というのが本音です。

ここで葛岡氏が得た教訓が、「仕事が人間を成長させる」というDeNA創業者の南場智子氏の言葉の本質だ。以前から好きだったというこの言葉を、改めてかみしめる機会になったと振り返る。

それ以降、組織づくりにおいてもいくつかの経験から、この言葉を何度もかみしめていると話す。

葛岡うちのサービスでエンジニアの技術力を見ることはできますが、パーソナリティまで見抜くことはできません。以前、僕とパーソナリティが合わないエンジニアを採用してしまったことがあります。ミスマッチ採用ですね。僕は何か失敗が起きたら必ず振り返るようにしているので、そのエンジニアが退職する際にもしっかりと面談をさせてもらって、何が原因でミスマッチが起きてしまったのかを言語化しようとしました。そこでまた一つ、成長できたと感じます。

組織づくりもそうです。成功体験ができるようにすること、そのためにメンバーみんなにオーナーシップを持ってもらうことを強く意識しています。OKRの目標設定を以前は僕だけで決めていたのですが、最近は必ず、メンバー一人ひとりが考えて決められるようにしています。そうすることで士気が高まり、会社全体の雰囲気もよくなってきています。

ハイヤールーで掲げているバリュー(出来上がったばかりの同社Culture Deckから)

「仕事が人間を成長させる」。まさにそれを体現している葛岡氏の今のあり方を知れば、古巣の南場氏もきっと喜ぶことだろう。

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コードを書くのをやめた

もともと、コードを書くのが大好きな葛岡氏。「本当はゴリゴリとコードを書いていたいタイプ」だというが、最近になってコードを書くのをやめたという。

葛岡出資いただいているCoral Capitalの採用イベントに出展者として参加する機会がありました。こういうのに出るというのは、少し前までほとんどなかったんです。とにかくコードを書くのに夢中で、採用活動にコミットできていなかった。

でもイベントのことを聞いて、登壇を決めて、考えていく中で「やっぱり、採用にも気合いを入れないと」と。自分がコードを書くのではなく、「より優秀なエンジニアを採用することで、組織全体をスピーディーに成長させていこう」という思いを強く持てるようになりました。

そのイベントに参加したスタートアップのなかでは比較的若い会社だったのですが、それでも採用候補者を集めることはできたので、「頑張れば意外と採用は拡大できる、しっかり考えていこう」と感じることができたのも大きかったです。

従来のプロダクトづくり中心の動き方から、投資家コミュニケーションや組織づくりなどに力を入れるようになった。

葛岡エンジニアにも2タイプいると思っていて、1つはギークタイプ。とことん技術を突き詰めて専門家としてやっていきたい人ですね。もう1つはマネジメントが得意な経営者タイプ。

僕は意外と後者なのだなと(笑)。今、組織をプロダクトのようにつくっていくのが好きになっています。コードを書くのを敢えてやめることで、徐々にこちらにシフトしてくることができました。常に組織全体の最適解を見つける。そのような動き方も「楽しいな」と思えるようになってきました。

バイタリティがグツグツと煮えたぎっているような人だ。喋っているときにも、内的なエネルギーが隠しきれていない。いちいち言動に筋が通っていて、行動力も半端ではない。

インタビュー冒頭、「友達がいないんですよ」とひとりごちたが、それは、行動力と計算力を兼ね備えたうら若きリーダーに、まわりの人が恐れをなしているからなのではないかとも感じさせられた。この個性が今後、どのように発揮されていくのだろうか。

こちらの記事は2022年12月14日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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編集

樋口 正

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