連載私がやめた3カ条

「不健康」では長期の成果にならない──サマリー山本憲資の「やめ3」

インタビュイー
山本 憲資

一橋大学商学部でゲーム理論を専攻した後、大手広告代理店の電通に入社。その後、コンデナスト・ジャパン社に転職し、雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。2010年4月に独立し、Sumallyを設立。とにかくモノが大好きな1981年生まれ。

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起業家や事業家に「やめたこと」を聞き、その裏にあるビジネス哲学を探る連載企画「私がやめた三カ条」略して「やめ3」。

今回のゲストは、宅配収納サービス『サマリーポケット』を運営するSumally Founder &CEOの山本憲資(けんすけ)氏だ。

  • TEXT BY RYOSUKE TAWARAYA
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山本氏とは?
中長期で成果を追い求める経営者

「過去記事を拝見させていただきましたが、ぱっと思いつかなくて……(笑)。20代でやめたこと、30代でやめたこと、40代でやめたことみたいな切り口はどうですか?」元編集者の片鱗が感じられる一言から、インタビューが始まった。

山本氏は、電通、そして『GQ JAPAN』の編集者というキャリアを経て、宅配収納サービス『サマリーポケット』を運営するサマリーを起業し今に至る。『サマリーポケット』はテレビCMも展開しており、ご存知の方も多いだろう。

2020年夏には東京から軽井沢に拠点を移し、サービスだけでなく、山本氏個人のライフスタイルも度々雑誌やメディアなどで取り上げられている。

今では、起業家としてもチャレンジを積み重ねる日々を送っていると話す山本氏。しかし、昔は「石橋を叩いて渡るような性格」だった。今日に至るまで、どんなことをやめて、どんなことを続けてきたのか。

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いわゆるエリート的キャリアにこだわるのをやめた

山本氏は、学生時代からジャンルを問わず、雑誌を読むのが好きだった。ただ当時、働きたいと思った雑誌社では、新卒採用をしていなかった。そこで、世の中のコンテンツと結びつきが強いと感じた広告業界を中心に就職活動を行い、電通への入社が決まった。

だが、日々の仕事にやりがいは感じつつも、なかなか10年先、20年先の自分の将来像が描けなかったという。

そんな折、コンデナスト・ジャパンの経験者採用の募集を見つけ、未経験ながらも応募してみたところ、かねてから希望していた雑誌編集職に就くことができた。編集者時代は『GQ JAPAN』を中心にファッションだけでなく、テック系やライフスタイルまで、幅広いジャンルの企画を担当した。

山本給与は随分下がりましたが、水を得た魚のように、楽しく仕事をしていました。プロフェッショナルとして自分の名前の下でフリーランスで仕事をしている人生の先輩方と一緒に仕事をする機会に恵まれたのはとてもありがたい経験でした。

このように、いわゆる“サラリーマン”とは異なるスタンスの存在の人たちとともに働くなかで、少しずつ山本氏の考え方や価値観が変わっていった。

山本自分が面白いと思うことを突き詰めて考え、そのことに熱中して話してみると、すごく目上の人たちが真面目に話を聞いてくれるんです。

そこで、面白いことを考えることが評価される環境のほうが、自分は居心地が良いと感じることに気がついたんです。

以降、山本氏は、「良い大学」や「大企業」というステータスにこだわることなく「面白いかどうか」の基準を大切にするようになった。そして20代も終盤となり雑誌社での仕事はあと30年できないなと感じたという山本氏はコンデナスト・ジャパンを退職し、2010年4月にサマリーを創業する。

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短期的な成功を追い求めるのをやめた

「良くも悪くも、僕はあまりガツガツしていないと思います。最短最速で上場したいといったことを強い目標にしているわけではありません。お金を手に入れることを目的に、というスタンスとは一線を引いているところがあるのかもしれませんね」と語る山本氏。経営者となって30代に差し掛かり、持続的に成長するサービスを作っていきたいという想いが強くなったという。

短距離走的な瞬発力とマラソンのような長距離を走り続ける持続力、ビジネスにおいてもこの2つはどちらとも重要だ。20代の若いうちは経験値を積むために、がむしゃらに働くのも良い。しかし、十数年から数十年と長期にわたって会社を続けていくのであれば、短期的なゴールに重きを置きすぎて働くスタイルを続けると、どこかで心身ともに限界がくるケースも少なくないのかもしれない。

山本長期的に成長し続ける構造を持ったプラットフォームを作りたいなと、30代半ばに差し掛かるぐらいからより強く思うようになってきて。やはり、自分としてはブームで一時的に流行るサービスというよりも、多くの人が永く使ってくれるプラットフォーム、インフラ的ななサービスを構築する方が好きだと気がついて。そういう意味では、Amazonのジェフ・ベゾス氏は、強く尊敬している経営者の1人です。

例えば、「最短翌日に本が届くようにする」など、短期的には赤字が出るような施策も厭わずに実行していて、仕組みを作ることへの意識や意欲が非常に高いですよね。

とはいえ、経営と投資は切っても切り離せない関係だ。投資家に対しては、成長や売上に対する説明が求められる。

山本もちろん、事業へ投資をしてもらう以上責任が伴うのは当然ですし、強い覚悟でそれ相応の結果を出していかないといけないと思っています。ただし、そのコミットメント自体がゴールにならないよう、もっと長期的な展望を見据えて経営をするということです。ですので、目先の目標設定、そして長期的な視座、やはり当然両方重要になると思いますね。

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東京に住むのをやめた

40代になって、健康にも一定こだわるようになったという。良いパフォーマンスを保つため、住環境へのこだわりを強めたのだ。

2020年、コロナ禍をきっかけとして、リモートワークが急速に普及した。山本氏は、その年の夏に軽井沢へ移住している。健康のために移住したわけではないが、結果的に「便利さもありながら、自然もあって、人を呼びやすい」軽井沢の生活が、とても気に入っているという。

山本特に、この夏の暑い時期でも、軽井沢なら気持ち良い風が吹くから冷房がいらないんですよ。これを知ってしまうと、東京の冷え切った部屋で仕事をしていた頃には、もう戻れないというか。すぐにリフレッシュができるんですよね。

山本氏が率いるサマリーも、全社でリモートワークを導入している。

リモートワークへの切り替えがうまくいかず、結局、原則出社に戻った会社も少なくない。しかし同社では、コロナ前から業務から極力属人性を取り払い、マニュアルから議事録までドキュメントへの落とし込みの徹底といった仕組み化を重視する働き方だったといい、そういった部分が功を奏したのか、リモートワークへの移行はスムーズだったという。山本氏だけでなく、地方に住む社員も徐々に増えてきているそうだ。

山本仕事をする上で、コミュニケーションはなくてはならないものです。1%の分かりやすさの差というのは、確かに、1回のコミュニケーションだけで考えれば、わずかな改善かもしれない。しかしPDCAのABテストの改善と同じ話で1%の差がついた状態で100回コミュニケーションする機会があれば、1.01の100乗、3倍弱の分かりやすさの差が出ます。チーム内のコミュニケーションにおいてもUXという概念がとても大事で、シンプルに、誰でもわかるクオリティを目指すのは重要なことと思いますね。

本質を追求する姿勢、中長期で成果を追い求める姿勢が、今回のインタビューで垣間見えた。事業成長や売上拡大に必死になり、健康を害してしまっては元も子もない。

経営者も1人の人間だ。自分を大切にし、自分と向き合い続ける者が、最終的に大きな成果をつかめるのだろう。

こちらの記事は2022年09月01日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

俵谷 龍佑

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