CSの超進化なくして、社会変革など起こせない──今までにないSaaSをつくる“シン・カスタマーサクセス戦略”を、ゼロボードに学ぶ

Sponsored
インタビュイー
坂本 洋一

三菱UFJ銀行にて、金利・流動性リスク管理、市場系取引システムの統一プロジェクトなどに従事。ロンドン支店に4年間勤務後、ドローンベンチャーのA.L.I. Technologiesに参画。エナジーソリューション本部にて事業開発を担当し、大手重電メーカーの電力関連新規事業のサポート、経産省マイクログリッド補助事業の組成をリード。ゼロボードでは創業メンバーとしてビジネス本部長を務め、企業とのアライアンス、営業、カスタマーサクセスを担当。2023年3月よりカスタマーサクセス本部長に就任。大阪大学理学部数学科卒。

畑田 真由子

不動産会社向けのSaaS業務システムの営業や、導入サポートに約10年間従事。前職では100社以上の会社のシステム導入を行い、お客様のシステム定着化サポート。ゼロボードには2022年7月にカスタマーサクセス部にジョイン。

関連タグ

SaaSプロダクトの普及に伴い、日本でも急速に増えてきたのが、カスタマーサクセス(CS)という職種。当初はセールスからのキャリアチェンジが目立ち、最近では新卒でCSとなり、キャリアを深めていく人材もいる。

だが、一つ、疑問がある。「CSはCS」と、考えすぎてはいないだろうか?

多くの場合、スタートアップでの話だ。特に創業から数年の間であれば、担う業務は流動的なはずであり、その業務を取り巻く環境も激動で予測不能な状況となるはず。つまり、企業におけるエース人材こそ、CSで果敢にチャレンジを行うべき、と言えるはず。

さてそんな中にあって、創業2期目ながら2,200社超のユーザー企業を抱えるゼロボードでは、創業メンバーの坂本氏がカスタマーサクセス本部長となり、他のSaaS企業とは一線を画した組織を構築しようとしている。その構想はまさに、“シン・カスタマーサクセス”とも呼べそうな、壮大なものだ。

本記事では、現場で躍動する畑田氏の話も盛り込み、新たなCS像の提起を試みた。社会変革を志すプロダクトカンパニーでの仕事に関わるものならみな知っておくべき考え方が、きっと得られるだろう。

  • TEXT BY YUI MURAO
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
SECTION
/

「新時代の経営課題」を扱う、唯一無二のプロダクト

ゼロボードのシン・カスタマーサクセスを掘り下げる前に、まずは、同社のプロダクトの概要を改めて押さえていこう。そう、「いかに特殊なSaaSなのか」という点について(詳細な事業戦略やビジネスモデルは、代表渡慶次氏のインタビューを参照いただきたい)。

2021年3月ローンチの『zeroboard』は、国内初の、GHG排出量を算定・可視化・削減するためのSaaSプロダクトだ。海外でもソフトウェアが存在する中、製造業を中心としたグローバルなサプライチェーン全体を可視化するプロダクトを強く意識して開発している。

キモとなるのは、「算定や可視化」にとどまらず、「削減」までを、その提供価値として当たり前に考えていることだ。温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を、2050年までに目指すと政府が掲げており、脱炭素化はもはや全ての企業の経営課題となっている。そんな現場に不可欠なプロダクトとなっていくわけだ。

以前の記事で渡慶次氏は「ゼロボードが他のBtoB SaaSと大きく違うのは、先行するプロダクトがない点」と語った。まだ誰も手をつけていない未知の領域で、市場を開拓していく。そのために、CSは最も重要なポジションであるとも言える。なにせ、ユーザー企業が本当にGHG排出量を削減できるか否かは、伴走するCSの実力値にかかっているからだ──。

やや大げさに表現してしまったが、実際のその意気で取り組んでいるカスタマーサクセス本部長の坂本氏と、メンバーである畑田氏から、その詳細を聞いていこう。

坂本今、脱炭素経営は大手企業のみならず中小企業にとっても重要な取り組みとなりつつあります。つまり私たちは、業種はもちろん、お客様の規模を問わずにプロダクトを提供できるという伸びしろを持っているんです。

端的に言うなら、「全産業、全業種、グローバルな市場が対象になる」ということです。

GHG排出量の算定や可視化を行うサービスは、これまで国内にほぼ存在していませんでした。加えて、脱炭素の取り組み自体、各社で始まったばかりです。エクセルで管理する段階ですらなかったところから、私たちがサービスを提供することで、一気に取り組みを促進できる可能性がある。それはつまり、『zeroboard』をあらゆる企業へ普及させていけるということでもあります。

こんなにわかりやすく大きなポテンシャルを持つサービスは、なかなかありません。

坂本氏がまず強調するのは、プロダクトとしての伸びしろだ。「エクセルでの管理」すらほぼ存在しなかった領域で、一気にクラウドサービスを出現させようとしているのである。その伸びしろを、だれも正確には認識できない、そんなワクワクするフェーズなのだと、笑顔を見せる。

また、プロダクト導入後には経営層から現場まで多角的に入り込んでいけるのも魅力の一つだと、坂本氏は語る。

坂本ゼロボードが向き合う事業領域は、ユーザー企業にとって経営戦略そのもの。大企業では、サステナビリティ推進室のような新設部署を社長直下におくケースも多いですね。

実際に、東証プライム市場の上場企業と初めて商談に臨むと、いきなりCFOが出てこられることもあります。脱炭素への取り組みの成果が、役員報酬に連動するケースもあります。

CSはそんな経営層の意志を把握しながら、日々接する現場担当者様たちと一緒に手探りでGHGの算定や削減に向けた動きを進めていきます。実務担当者は、社内に脱炭素に詳しい人がほぼいない中で取り組みを広げていかなければならず、いわば孤軍奮闘している状態。しかし、脱炭素経営を成功させられるか否かは、「経営と現場の強いつながり」にかかっているとも言えます。ゼロボードでは、プロダクトを介して両者と深く連携していける点が強みだと言えます。

もちろん、前提としてユーザー企業一社一社に対する事業理解が非常に重要です。『zeroboard』はホリゾンタルSaaSですが、ユーザー企業の業務フローに深く入り込んでいく必要があり、そういう意味では、バーティカルSaaSが持っているような業務に対する深い知見を持ち合わせなければならないとも言えるでしょう。

ここまでに確認したのが、SaaSプロダクトとしての強みだ。加えて、「まさにゼロボードならでは」と言える、圧倒的な社会的意義について語ってもらおう。

坂本気候変動問題は今、地球、そして人類にとって疑いようのない脅威。ゼロボードは、非常に社会的意義の高い事業に向き合っているんです。

仕事をする中で「果たして社会に貢献できているのか」「自分の仕事には意義があるのだろうか」と、立ち止まってしまうような経験を持つ人は少なくないと思います。自分自身、過去にモヤモヤした気持ちを抱えたこともあります。

ですが、ゼロボードで働いていて葛藤を感じたことはありません。ゼロボードはミッションとして「気候変動を社会の可能性に変える」ということを掲げており、絶対に良いことをしていると、自信を持って言えるんです。

メンバーからも、「社会課題とお客様の経営課題に間違いなく貢献できているから、やりがいにつながっている」との声が多いですね。

ここまでの情報だけでも、CSとして多様なユーザー企業に広く深く向き合える醍醐味が伝わってくるのではないだろうか。だが、それだけではない。ゼロボードは、先ほども述べた通りグローバルへの展開を見据えている。プロダクトの提供範囲は、今以上に広がっていくに違いないのだ。

2022年8月には、すでにパートナー5社と共に、タイでの脱炭素経営支援を開始。同国での現地法人も設立した。2023年度中にシンガポール企業との機能連携を目指していることも発表した。

坂本企業の事業領域によっては、国内特有の法律や商慣習に合わせてビジネスを展開する必要があります。一方で脱炭素化への取り組みは、グローバルルールが策定されています。

ゼロボードは、一つのプロダクトで国内外問わずに支援できる企業であろうとしています。これから海外市場にも一気に展開していける可能性が大いにありますから、面白いに決まっていると思いませんか?

前の記事からも繰り返しているが、まだ“2期目”である。それでいてこの戦略解像度の高さには驚きを禁じ得ない。現状、スタートアップでこれだけの要素を併せ持ったSaaSプロダクトはそうそうないと言えよう。

SECTION
/

ユーザーの事業モデルを、徹底理解せよ──
「プロダクト活用に、正解がない」という難しさ

ここからようやく、本題であるゼロボードのシン・カスタマーサクセスを徹底解剖していこう。まずは組織面。同社のCS部門は、大きく3つの機能で構成されている。

1つ目が、カスタマーサクセス部。プロダクトの導入・オンボーディングにはじまり、利用データをもとに分析や提案に至るまで、ユーザー企業にハイタッチで伴走支援を行う役割を持つ。プロダクトの提供先が多岐にわたる中で、社内での連携がしやすいよう、業種別にチームを分けていく予定である。

2つ目が、カスタマーマーケティング部。こちらはカスタマーサクセス部とは異なり、ロータッチ・テックタッチなユーザー企業アプローチを行うことで、より多角的な支援を目指すチームだ。FAQやマニュアルなど、ユーザー企業に有用なコンテンツ記事の作成や、ユーザー企業データの分析、そこから浮き上がってくる利用率・解約率改善に向けた施策立案と実行など、CS Opsの基盤構築にも取り組んでいる。

3つ目が、コンサルティング部。こちらはゼロボードの事業形態において必要となる特殊な組織で、カスタマーサクセス部よりもさらにハイタッチな形で、ユーザー企業の脱炭素経営を支援すべく高度なコンサルティングメニューを提供している。

現状、「脱炭素経営に取り組みたいが、何から始めるべきなのかわからない」と悩む企業は少なくない。いざ始めようと思っても、再生エネルギーの導入にはまとまった初期投資が必要だったり、取引関係の整理や見直しが必要だったりと、実践へのハードルが高い。そこで、経営戦略の策定から実際のアクション設計まで一貫してユーザー企業を支援する狙いで、サステナビリティ分野の専門家が集まっているチームを作ったというわけだ。この機能がCSに含まれるという点こそ、特に注目すべき部分かもしれない。

また、将来的には、グローバルリサーチファンクションを立ち上げる構想も立てている。各国の最新動向や、連動する複雑な規制状況をキャッチし、ユーザー企業へ情報共有を行うことでサービスとしての付加価値を高める狙いだ。

一般的なSaaSのCS業務として、最もイメージしやすいのは1つ目のカスタマーサクセス部だろう。多くの企業でCSといえば、プロダクトをうまく活用してもらうための支援を行うオンボーディングと、付加機能やプランのアップグレードでさらなる活用を提案するアップセルを主なミッションに据えている。

だが、ゼロボードのCS業務について詳しく聞いていくと、単なるプロダクトの活用支援に留まらない奥深さを感じることとなる。カスタマーサクセス部で、非製造業のユーザー企業をメインに支援する畑田氏は、担当業務についてこのように語ってくれた。

畑田脱炭素経営に向けては、まず自社およびサプライチェーン全体のCO2排出量を算定して、実態を把握するところからスタートします。私たちCSは、算定に必要なデータをどのように集めるべきか、具体的な方法や考え方を示しつつ、実際に算定を進めていくところまで伴走していきます。

自動算定の機能はプロダクトに実装されているが、GHG排出量の可視化において難しいのが、業界やビジネスモデルによって算定データ収集の進め方がそれぞれ異なることだ。そこで、冒頭にも坂本氏が述べていた通り、ユーザー企業の事業を理解するために丁寧なヒアリングが必要となる。

畑田たとえば、自動車メーカーのお客様なら「どのような製造工程で自動車を生産しているのか」にはじまり、工場を稼働させるための燃料の種類、その燃料を燃焼させるかさせないか、といった細かい用途や使い方までお聞きします。

また、物流業界のお客様なら、自社保有する船で運送するのか、船や乗組員を別会社に貸す形で運送するのか、はたまた船を借りているのか、などによって、算定の範囲や計算方法が異なってくるんです。なので、プロダクトの使い方を伝えたり、一律の決まった算定方法を伝えたりすればOKということがありません。

同業種や似たビジネスモデルで運営している企業の事例などを調べながら、お客様に合った算定方法を見定め、提案し、一緒に進め、そしてより良い進め方を探って改善していく必要があるんです。

それならば「選択と集中」で、まずは提供先の業界を絞って対応していけばいいのではないだろうか……?といった疑問を覚える読者もいるかもしれない。だが、そこは敢えて広く攻めていく戦略で、スピーディーな拡大を図っているのがゼロボードなのだ。だから、CS経験者とサステナビリティ関連ビジネス経験者、双方でマチュアなメンバーを急ぎ集め、組織を構築しようとしている。

そしてさらに業務を複雑にさせているのが、国際ルール面だ。算定に関する大まかな国際ルールは決まっているものの、細かい凡例に対応する事例がまだ世に出回っていない部分も大きく、また業界によって動向も異なるという現状だ。「こうしておけば正解」という、明確な道筋が存在しないのである。畑田氏は、この状況を「まるで波乗りのよう」と表現する。

畑田GHG排出量の算定に関する新たな取り決めが次々に生まれる中で、大小かかわらずその“波”に乗って対応していかなければいけません。

何か変更があるたびにお客様が調べるのはとても大変なので、私たちが最新情報をキャッチアップしながら、必要な考え方や方針をお客様に伝えて理解してもらっています。「常にお客様と同じ目線に立って一緒に対応していく」のは、難しさを感じる一方で、「お客様に貢献できている」とCSならではの楽しさを味わえる点でもありますね。

SaaSのCSというと、「自社プロダクトをいかに効果的に使ってもらうか」の視点でユーザー企業と向き合うイメージが強い。しかしこの話を聞けば、それだけではない幅の広さ、そして貢献の大きさを感じることができるだろう。

SECTION
/

このプロダクトで達成すべき“サクセス”は何か?
を、先回りして提起し続ける

このように戦略的に組織を構築しようとしているゼロボードが、脱炭素領域における第一人者としての地位を確固たるものとし、トップランナーとして走り続けるために重要なことはなんだろうか?それこそ、「CSメンバーが、プロダクトと共に進化していくこと」だろう。

どれだけ温室効果ガスの排出あるいは削減に寄与したかを算定し、集計する取り組みを、「カーボンアカウンティング(炭素会計)」と呼ぶ。気候変動問題が深刻化し、世界で脱炭素の潮流が強まる中、取り組み度合いが企業価値に直結するようにもなってきた。

まさにニーズが高まっていることがうかがえるが、CSとしてこの事業に取り組む意義や面白さについては漠然としたイメージしか抱けていない読者も多いだろう。そんな思いを汲み取ってくれるように、坂本氏は、「私たちにとってまだ馴染みがあるであろう『企業会計』と比較すれば、ゼロボードの取り組みが理解しやすいかもしれない」と、語り始めた。

坂本世の中に普及している会計ソフトでは、仕訳のルールが明確化されていて、凡例もたくさん用意されています。ユーザーは会計知識に明るくなくても、少し調べるだけで難なくソフトウェアを使いこなせるようになるでしょう。もしくは、専門知識を有する会計士や税理士といったプロフェッショナルが社会にはたくさんいるので、その人たちに頼るという手もありますよね。

ですが、カーボンアカウンティングの世界では、憲法のような方針を指し示すルールはあるものの、実例的な凡例がまだあまり世の中に存在しないんです。

畑田つまり、私たちは「ソフトウェアの使い方を教える」という、いわゆる一般的なCSとしての役割を果たしつつ、炭素分野における「会計士」として専門知識を授ける業務も担っているようなもの。カーボンアカウンティングのスペシャリストは世になかなかいないので、私たちがやるしかないんですよ。

ということは、CSの各メンバーも、カーボンアカウンティングの世界における会計士の立場までを意識し、高い専門性を身に着ける必要があると言える。

さて、こう聞くと「脱炭素コンサルタントになるのか」と早合点する読者もいるだろう。いや、待ってほしい。それはおそらく、CSという仕事の奥深さをイマイチ理解できていない証拠だ。

2人は明確に言う。「CSは、決して算定のプロフェッショナルとなることがゴールではない」と。一体どういうことなのだろうか。ここで強調されるのは、GHG排出量の算定の先にある、「ゼロボードが本当に提供したい価値=カスタマーのサクセス」だ。

坂本『zeroboard』は、今はわかりやすく「GHG排出量算定クラウドサービス」と謳っていますが、お客様にとって「算定」は本当の目的ではありません。では、お客様にとって何を提供できればよいのか?

それは、脱炭素経営の実現によって自社の売り上げが伸びたり、コストを削減できたり、市場の評価や株価が上昇したり……そういった経営上の効果が現れて、はじめて成功だと言えると思います。私たちは、その状態を実現することを目指しているんです。

ただ、日本全体でカーボンニュートラルへの取り組みはまだ始まったばかり。ひとまず算定がゴールになってしまう企業も少なくない中で、私たちがやるべきは、「その先」を提示し続けることだと思っています。

畑田お客様のフェーズに合わせて、現状、私たちカスタマーサクセス部が取り組んでいるのは「算定の支援」がメインです。それも、コンサルティング部に所属する脱炭素のスペシャリストたちに知見をもらいながら業務にあたっているかたちです。

まずは今後、カスタマーサクセス部のメンバーだけで、プロダクトを活用したスピーディーな算定業務を進められるようにしていきます。そうなれば、コンサルティング部はその先の削減目標設定を含めた経営戦略策定の支援と、実際の削減業務支援にリソースを充てられるようになるはずです。ここまで進んで初めて、カスタマーにとってのサクセス=事業成長が見え始めると思うんです。

今は、その体制構築に向けて、部全体の底上げを行っているところです。

そして坂本氏は「“算定ができる”というだけの価値なら、遠くないうちにコモディティ化していくと見ています」と続ける。

目指すのは、プラットフォームとしてプロダクトのユーザー同士を結びつけ、「脱炭素のエコシステム」を構築することだ。それも、国境を越えて。

実際に、ゼロボードが直接コンサルティングを行う以外に、仲介役となってユーザー企業間の連携を支援する事例も増えてきているという。

坂本多くのSaaSプロダクトでは、導入いただいた個社ごとへの支援を行って使いこなせるようになってもらえれば、価値が提供できたと言えるでしょう。ですが、私たちはそこに留まらず『zeroboard』を起点に、脱炭素を推し進めるエコシステムの形成を目指しています。

お客様がGHG排出量を算定して可視化ができるようになると、次のステップである「削減」に目が向けられるようになります。そうすると、共に削減に取り組めるパートナーを探したり、CO2排出量がより少ない取引先を選ぶようになったりする動きが生まれるはずです。

ユーザー企業を深く理解している私たちCSが、お客様同士を結びつける仕組みを作ることでさらにシナジーをもたらせるのではないかと考えています。

畑田最近でも、ゼロボードのCSが仲介役となってお客様同士を結びつけた事例がありました。業務上、移動による交通費が多いお客様に対して、自動車や航空機などのモビリティの燃料に使用される環境に優しいバイオ燃料を扱う企業を紹介したんです。

お客様の脱炭素経営実現に向けて、まずは算定の支援をメインに行っていますが、こういった連携を生む事例もどんどん増やしていきたいと考えています。

坂本現状、プロダクトの提供価値と、実現したいビジョンの間には、ものすごく大きな距離があります。算定の機能を提供するだけでは、お客様が真に実現したい脱炭素経営をほとんど支援できませんからね。

この距離をどのように近づけていくかの明確な答えは、正直まだ持っていません。ただ、市場にも絶対的な解が存在しない中、お客様と一緒に模索していくプロセスはとてもやりがいがあると感じています。だから、CSこそが重要なんです。

CSとしてプロダクト活用の支援を行うだけでなく、コンサルタントに近い立場でユーザー企業の経営戦略立案から伴走し、さらにユーザー同士を繋ぎ、脱炭素の取り組みを加速させていく。ゼロボードが見据えるプロダクト提供の「その先」は、明るいようにも見える。

坂本一般的なSaaSはデータを「サービスをちゃんと使われてるか」っていうところで活用することが多いと思うんですよね。ヘルススコアと呼ばれるような発想で。

それももちろんやるんですけれども、せっかく「前例の少ない脱炭素の取り組み」に伴走し続ける仕事ですから、もっと日々の業務や活動の情報データを集められるようにして、そこからより高度な提案をしていきたいですね。CSがハイタッチでやる部分と、テックタッチでやる部分とをしっかり整理して。

あくまで、テクノロジーカンパニーなんです。プロダクトやシステムの力で、大きな課題を解決していきたい。今も良い仕事をすでにさせていただけていると思いますが、このまま連続的に進んだら、コンサルティングファームと何ら変わりがない企業にもなりかねません。そうではなく、日本やアジアの何十万社を対象に価値をあまねく提供していくので、そのためにはとにかくCSとしての進化が問われますよね。

SECTION
/

「プロダクト⇔CS」が、企業理念実現の根幹。
人材を最適に配置すべし

続いて、ゼロボードのシン・カスタマーサクセス組織を語る上で欠かせない、人材についても迫っていく。先ほど、経験のあるマチュアな人材をそろえようとしていると書いた。だが、決して、GHG排出量削減の業務経験者は多くない。それもそのはず。そんな市場はこれまでに存在しなかったのだから。

坂本最先端の知見が必要なコンサルチームにはGHGについて研究してきたような専門家がそろい始めていますが、CSのそれ以外のチームメンバーはほぼ全員、この領域が未経験ですね。私もメガバンク出身ですし。

そう、坂本氏も含め、まさに新たなチャレンジを力強く進めるメンバーがそろっているということなのだ。

坂本ゼロボードの母体だったA.L.I. Technologiesに入社したのは、面接で渡慶次(現ゼロボード代表)から熱く誘われたからです。私としては「ドローンビジネスって、なんだか面白そうだな」と思っていたくらいだったのですが、それで入社を決めました(笑)。

それから、ドローンではなくエネルギー関連の新規事業にいくつかチャレンジし、行き着いたのが脱炭素化のためのプロダクト開発でした。これらすべてを渡慶次たちと一緒に立ち上げ、挑戦してきたんです。

ようやく今、ゼロボードという会社として顧客が順調に伸び始め、大きな資金調達もさせていただけて、グロースに向けて集中できるタイミングがやってきました。ここで私が取り組むべきは「お客様にもっともっと向き合うべきだ」ということ。それで、コーポレートやビジネス全体の管掌から、CSだけに集中してコミットすることに決めたんです。

一方、畑田氏の前職は不動産業に特化したSaaSの営業職。物件やユーザー企業情報を一元管理するシステムの販売を通じ、IT化支援に取り組んでいた。そう、つまり、プロダクトを売って終わりというかたちではなく、その後の活用や事業変革まで支援することを当たり前に考えていたのだ。

畑田不動産の会社にいたときには、そもそもカスタマーサクセスというポジションがなかったんですけれども、お客様とわりと長い期間一緒に寄り添ってサポートできるような営業スタイルを取れたのが面白かったんです。

システム一元化がゴールなので、一つの情報群をシステムに取り込んだ後にまた別の課題が発生する。そんな特徴がある商材だったので、中長期的な支援が必要でした。

受注後のお客様との関わりが長そうで、プレッシャーを感じ続けるわけですよね。それがちょっと難しそうと思う人もいるかもしれませんが、私はそれが好きだなと思って。ゼロボードもそういうプロダクトだと感じ、魅力的だと思ったんです。

実際のCS業務も、想像通り、難しいことだらけだという。だが、畑田氏にとってはむしろそれが大きなやりがいだ。

畑田「脱炭素」の領域はとても奥深く、どんどん新しい事が出てくるんです。でも、それがとにかく面白い。社内でも社外でも、決まっていないことが多いので、調べて答えを見つけたり、答えのない状態からなんとかして答えを設定するための問いを立てたり、そんな繰り返しが面白いんです。

加えて、先ほど坂本も言っていたように、お客様の事業理解がものすごく重要になるので、いろいろな業界のいろいろなことを知れるのも面白いですね。そんな感じなんですよ(笑)。

もちろん、知ることが目的になってはいけません。お客様のことを考えると、私がたくさんの知識をつけないといけない、そうすることで道が拓ける、そんな感覚です。

好奇心のある人にとって、こんなにも面白くかかわり続けられる事業環境って、そうそうないのではないかと思います。

坂本ちなみにほかにも、コンサルティング会社や商社、大手自動車メーカー、大手食品メーカー、地方自治体といった、非常に多様なバックグラウンドのメンバーが集まっているCSチームです。こんなSaaS企業、なかなかないと思いませんか?

「CSがやりたい!」というよりもむしろ、「脱炭素化を、プロダクトの力で、日本に広げたい!」という想いでジョインし、難しいチャレンジをしてくれているメンバーがそろっているんです。ものすごく刺激的な毎日になりますよ。

これからも採用は拡大していくので、「どこよりも面白いビジネスチャレンジができる環境はどこだろうか?」と考える際にぜひ、ゼロボードのCSを思い浮かべてほしいですね。

事業開発チーム、あるいは新規事業チームのアピールで、このようなメンバーの陣容を誇るような企業なら、他にもあるかもしれない。だが、今回はCSチームの事例である。

それはやはり、企業理念の実現に向け、「プロダクトの進化」が至上命題であり、そのためにCSの活動成果が大きく影響するから、と言えるだろう。誤解を恐れずに表現すれば、「CSはCSがやればいい」のではなく、「社内のエースをCSに集め、重要なチームとして考える」という考えになっているわけなのだ。

こう聞くと、ゼロボードにおいてCS本部がいかにチャレンジングな環境があるのか、感じられることがあるのではないだろうか?

SECTION
/

シン・カスタマーサクセスまとめ

CSが日本でも一般化し、SaaS企業を中心にさまざまな進化を遂げてきた。その一例としてゼロボードのCSチームに迫り、「シン・カスタマーサクセス」として解剖してきたこの記事、いかがだっただろうか。最後に、改めてまとめていこう。

まず、組織構造。ハイタッチでの支援を推進する部署と、テックタッチ・ロータッチを担う部署。この分類自体は他社でも見られるが、創業2期目ではっきり分ける例は珍しいかもしれない。そこに加えて、スペシャリストチームが存在する。人数をそろえ、明確な整理を行い、かつ流動的に業務を進める。チーム全体を引っ張る坂本氏の思想がよく見える、洗練した組織構造を早くも構築していると言える。

そして事業・プロダクト面では、「脱炭素プラットフォーム」として進化を続けていくために、CSが担うべき役割や責任が非常に大きなものであると確認してきた。ユーザー企業(カスタマー)にとってのサクセスとは、脱炭素経営の実践によるさらなる企業成長である。算定も削減も、そのための手段でしかない。そんな大きな価値提供に向け、プロダクトを進化させていくためのCS業務が重要になるわけだ。

さらに、最も重要とも言えるのがやはり“人”だろう。CS経験者を集めれば良いわけでなく、むしろ経験はなくとも、大企業・スタートアップ含め、厳しい環境で成果を残してきた力強い人材がこのチームを構成すべきと考え、採用・育成が進められている。そうした経験豊富なメンバーたちが、さらなる難しいチャレンジを求めて集まっているわけだ。この2人が放つエネルギーもすさまじいが、他のメンバーもまったく引けを取らない。

創業2期目のゼロボードにおける、これまでの国内SaaS企業とはひと味違った「シン・カスタマーサクセス」構築への挑戦ストーリーは、いかがだっただろうか。

まずはぜひ、あなたの脳内にある「CSとは」という考えを、しっかりアップデートしてみる。そんな思考をするきっかけにしてほしい。日本のCSは、まだまだ進化の途上である。その急先鋒としてゼロボードのCSが存在感を増していく日が楽しみだ。

こちらの記事は2023年05月30日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

記事を共有する
記事をいいねする

執筆

村尾 唯

写真

藤田 慎一郎

おすすめの関連記事

会員登録/ログインすると
以下の機能を利用することが可能です。

新規会員登録/ログイン