日本は「隠れユニコーン」大国だ!
設立20年以内、時価総額10億ドル超え上場ベンチャー全25社

未上場で時価総額10億ドル超の急成長スタートアップはユニコーンと呼ばれ、米国で100社以上、中国で60社以上あるのに、日本ではほとんど存在しない。彼我の差は大きく、数少ない日本のユニコーンと言われたメルカリは上場し、あとはプリファード・ネットワークスぐらいだ、などと語られることが増えています。

2018年6月には日本の政府も未来投資戦略2018にて2023年までに20社のユニコーンを創出する方向性を示し、ベンチャー支援を促進する官民イニシアチブとしてJ-Startupプロジェクトも発表されました。

  • TEXT BY FastGrow Editorial
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日本にユニコーンが少ない本当の理由

なぜ、日本はユニコーンが少ないのか、という論点においても、日本人は起業家精神が低い、起業への心理ハードルが高い、リスクを回避する傾向が強いなどの日本人の気質や環境を原因として指摘する声は多いです。

勿論、そうした起業家精神の低さも無関係ではないでしょうが、日本においてユニコーンが少ない根本的な理由は、別のところにあるとも考えられます。ベンチャーファイナンスやIPO周りに詳しい専門家や起業家の方々は指摘していることですが、諸外国に比べて日本は上場のハードルが低いことが関係していると考えるのが自然です。

まず、日本においては、東証マザーズの存在があります。マザーズは、新興成長企業のためのマーケットです。成長性が高ければ、事業規模が小さくても上場できます。通常は、経常利益で1億円を超えるような規模が目安とされますが、それを下回る利益水準での上場実績も散見されます。

早くに上場できるのであれば上場して社会的信用を得てしまおう、と考えたり、ベンチャーキャピタルなどの外部投資家のExitのためにも市場での流動性を提供するために上場を急ぐケースもあるでしょう。

※上場したことないくせに、ハードル低いとか言うな、というお叱りの声もあろうかと思いますので、ひと言補足させてください。上場ハードルが低いというのは、あくまで外国との比較において利益水準の基準が低いという意味で、上場準備にかかる苦労の大きさ、公開企業たるべき条件を満たすための準備は相応の困難を伴います。準備中の皆様、経験者の皆様の多大な努力と苦労へのリスペクトは持っておりますのでどうかご容赦ください。

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実質ユニコーン並みの実力派?設立20年以内の時価総額10億ドル超の上場ベンチャー25社のリスト

実際に、20年以内に設立された会社で上場している会社(すなわち急成長してきたベンチャー的な会社)の中で、2018年8月15日時点での株価になりますが、時価総額が10億ドル(1ドル=110円として、1,100億円)以上の会社をリストアップしてみました。

下記の表にあるような25社が該当しました。

会社名 時価総額
(百万円、as of 8/15/2018)
設立から上場までの年数 設立年
エムスリー 1,423,607 4.0 2000
スタートトゥデイ(ZOZO) 1,154,642 7.7 2000
LINE 1,092,508 15.9 2000
サイバーエージェント 730,746 2.0 1998
MonotaRO 701,474 6.1 2000
SBIホールディングス 620,913 1.4 1999
メルカリ 521,630 5.4 2013
ペプチドリーム 463,247 6.9 2006
カカクコム 425,843 3.4 2000
RIZAPグループ 404,371 3.1 2003
ディー・エヌ・エー 281,864 5.6 1999
エン・ジャパン 262,998 1.0 2000
シーズ・ホールディングス 225,911 4.1 1999
ガンホー・オンライン・エンターテイメント 210,415 6.7 1998
ミクシィ 201,366 5.9 2000
エス・エム・エス 190,271 4.9 2003
TATERU 166,201 9.8 2006
インフォマート 151,378 8.5 1998
PKSHA Technology 150,396 4.9 2012
リンクアンドモチベーション 147,554 7.7 2000
サンバイオ 144,379 14.2 2001
ティーケーピー 135,254 11.6 2005
マネックスグループ 133,504 1.3 1999
CYBERDYNE 131,854 9.8 2004
グリー 129,088 4.0 2004

表中トップのエムスリーは医療情報サイトm3.comの運営を中心に、ヘルスケア領域で事業を多角化して急成長中で、2018年3月の決算でも売上944億円に対して税引前純利益で297億円と、大変な高収益企業となっています。医療関連ということもあり、一般の人が目にすることは少ないので注目度が相対的には低いのではと思いますが、世界に誇れる日本独自のビジネスモデルを有していると思います。海外事業の比率も年々高めているようです。

エムスリー同様に、消費者向けの派手で目立つサービスを持っていない企業こそ注目かなと思います。例えば、MonotaROは製造業、工事業、自動車整備業などの現場で必要とされる間接資材の通販事業、エス・エム・エスは医療・介護分野での人材紹介とシステム提供など情報インフラ事業、インフォマートは企業間取引の電子化プラットフォーム事業、ティーケーピーは貸会議室事業、など研究してみると面白い企業ではないでしょうか。

表中25社の設立から上場(主に東証マザーズ)までの年数は平均で6.2年でした。日本では、東証マザーズが存在するため、早期で上場企業となってそこからさらに成長していくスタートアップが多いため、未上場のままとどまって評価額が10億ドルを超えてくるようなケースは稀少となっているとも言えるのではないでしょうか。

ちなみに、表中の25社以外にも、時価総額10億ドル超ベンチャーは存在します。設立25年未満まで範囲を広げると、楽天(1兆1,389億円)、GMOペイメントゲートウェイ(4,472億円)、ベネフィット・ワン(2,805億円)、MTG(2,495億円)、アウトソーシング(2,266億円)、ディップ(1,662億円)、UTグループ(1,475億円)など7社が該当します。

さらに、上記表中25社の予備軍という意味では、設立20年以内で時価総額が10億ドルに迫る勢いの企業もあります。FPG(1,053億円)、マクロミル(1,044億円)、マネーフォワード(931億円)、じげん(909億円)、アイスタイル(883億円)、コロプラ(841億円)、ラクス(785億円)、レノバ(779億円)などが存在します。

さらに時価総額300億円から800億円の間にも、上場後も順調に業績を拡大し、着々と時価総額10億ドル超えを狙える成長企業が多数存在します。

※いずれも時価総額の表記は2018年8月15日時点の数字。

※ベンチャーの定義は曖昧ですが、ここでは、設立年で区切っており設立年の浅い会社で大きくなっている、すなわち急成長を実現しているFast Growing Companyである、という程度の意味合いで使っております。

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ユニコーンにこだわらない日本独自のエコシステムを目指せばよい

上記のような事実を把握もせず上場ベンチャーに言及せずに、日本はユニコーンが少ないから起業環境として圧倒的に劣っている、という議論をするのは短絡的だと思います。むしろ、上場というハードルおよび公開企業として果たすべき開示義務などを伴いながらも、なお時価総額10億ドル超に成長している会社がこれだけ存在するという事実は、誇らしいことだとも言えるのではないでしょうか。

上記表の中には、独自のビジネスモデルで急成長している企業が多数含まれていますが、ユニコーンとして注目されたメルカリほど注目されたり称賛される機会が少ない、比較的地味な企業もあります。そうした企業にこそ注目して、次の時価総額10億ドル超を狙う企業がどんどん生まれていくことで、いわゆるユニコーンの数に固執せずに、日本独自のエコシステムを堂々とつくって行けば良いのではないでしょうか。

今後の日本のスタートアップシーン、起業家を取り巻く環境がますます良いものになることを期待して筆を置きたいと思います。

こちらの記事は2018年08月31日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

FastGrow編集部

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