連載Bic Picture──創業者たちが描く、スタートアップの壮大な未来絵図

「そのプロダクト、受注理由は本質か!?」──予実管理クラウド・DIGGLEの軌跡にみる”シリーズAの壁”、突破法

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インタビュイー
山本 清貴

早稲田大学ファイナンス研究科を終了。11年間にわたって米系ERPベンダーPeopleSoft、Oracle、Inforにて、会計・CRM・SCMなど業務系アプリケーションのセールス、およびアライアンスに従事。その後、デジタルマーケティングスタートアップにてセールスを率い予実管理に苦しむ。その経験から予実管理クラウドDIGGLEを創業。

荻原 隆一

東京工業大学大学院情報理工学研究科修了。大和証券にてデリバティブトレーディング業務に従事した後、海外留学を経て、大和証券グループ本社の経営企画部にてグループ全般の経営に関する、企画・立案・M&A等に従事。2020年よりDIGGLEへジョインし、グロース領域全般を担当。London Business School MBA修了。

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予実管理とは企業の“意志”である──。

ベンチャー/スタートアップが活況の昨今、毎年10,000社以上が立ち上がり、それと同時に経営者や事業家が生まれている。

経営者は、会社や事業のミッション・ビジョンにおいては思いを込めたメッセージを掲げるが、それらを支える予実管理においてはその想いを落とし込めていないケースも多々ある。

そういった思いやビジョンを経営管理に結びつけることを支援していきたい。そう語るのは、予実管理のSaaSプロダクトを提供するDIGGLE株式会社(以下、DIGGLE)の山本 清貴氏だ。Excelで作業することの多かった予実管理をクラウド化することで、意思決定をより早く正確に行えるプロダクトを提供。

今回の取材では、DIGGLE創業者である山本氏が描くBic Pictureから、改めて経営者や事業家が取り組む「予実管理」の重要性と、今まさに越えんとするシリーズAへの壁をどのように乗り越えてきたのかを学んでいこう。

  • TEXT BY WAKANA UOKA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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予実管理を怠るは、ライトを持たず暗闇を歩くのと同じ

予実管理の「予実」とは、企業の経営活動における予算と実績の管理を表す。それくらいは誰もが理解しているだろう。当然どの会社も行っているものではあるが、正しく予実管理ができていないことは「真っ暗闇の中を歩くようなもの」だと山本氏は例える。

DIGGLE株式会社 代表取締役 山本 清貴氏

山本「こんな会社をつくっていこう」というビジョン、ミッションを数字で具現化したものが予算です。掲げた目標に対する予算と実績とを比較することで、進むべき方向にどれぐらい進めているのかを確認できる。これが予実管理なんですね。運動するにあたって体幹が重視されるように、予実管理は経営にとっての体幹だと弊社では位置付けています。

予実管理をまったくしていないという企業は、非上場でもほとんどないはず。では、企業はどういった手段で予実管理をしているのか。その答えはExcelだ。わざわざ新しいツールを入れる必要はないと感じる人もいるだろう。しかし、ここで同社COOの荻原 隆一氏は「Excelには2つのペインがある」と指摘する。

荻原そのペインとは、「複数人がExcelを触る場合」「時系列で物事を見たい場合」に浮上します。例えば、複数人が編集に携わることで、誰かが数式を壊してしまうリスクがあります。また、数式を守ろうと個々が別のファイルで作業をした場合、最終的にいくつものファイルに記された数字を一つのファイルに転記していかなければなりません。これは地味にしんどい作業です。

DIGGLE株式会社 COO 荻原 隆一氏

荻原また、時系列を追うためにファイルの名前を少しずつ変えて保存していくと、フォルダ内にファイルが無尽蔵に増えてしまい、振り返ることが難しくなってしまいます。「あの数字を見たい」と思った時に大量のファイルを一つずつ開いて探さなければならないんですよね。こうしたご経験をされた方、多くいらっしゃるのではないでしょうか?

そして何よりも、こういったペインを抱えた結果、「経営の意思決定の根拠が間違っている」「経営の意思決定が遅くなる」といった致命的な問題につながることが大きな課題だと考えています。

DIGGLEでは当然、これらの課題を解決するプロダクトを提供しています。複数人での共同編集が可能で、常に自動保存がかかる。そしてワンクリックで過去の必要なデータも抽出可能と、Excelでは実現できないUXをウリとしています。そして、最終的には経営の意思決定に貢献するインフラとして価値を提供できていると自負しています。

Excelにはない利便性の高さが、クラウドサービスであるDIGGLEの強み。事実、荻原氏が述べた点は、クライアント企業から評価されている点なのだという。売上はこの1年で2.5倍に増加。現状ではIT企業の利用が中心で、規模としては従業員数が100~400人程度の企業から求められることが多い。これはまさに、Excelでの予実管理に限界を感じ始める規模だとも言い換えられる。

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ミッション、ビジョンはまだない。顧客課題の解決が先だ

ここで、創業者である山本氏が、なぜ予実管理のクラウドサービスを立ち上げるに至ったかを掘り下げていこう。山本氏は、新卒でトステム(現LIXIL)に入社。ファーストキャリアは住宅用建材を工務店に売るルートセールスだった。その後トランス・コスモス、オラクルと、IT業界へ移っていく。

山本予実管理に携わるようになったのは、オラクルの次に転職したインフォアジャパンからです。外資系業務アプリケーションの会社で、いち商材として予実管理のサービスを提供していました。その後、40歳を節目に動画マーケティングのスタートアップ企業へジョイン。ここで初めて、予実管理サービスを使う側として、既存サービスに対する課題に直面したんです。

私は当時営業マネジャーだったため、予実管理の中でも売上を上げるための打ち手を考える立場でした。営業の訪問回数を増やしたほうが案件が増えるのか、はたまた数を減らして1件1件に対して深い提案をしたほうがいいのかといった点について、予実でKPIを分解して見ていくわけです。その戦術を練るため私自身は顧客先に出向く機会がなかなか持てず、Excelの山に埋もれたまま1日が終わる日も少なくありませんでした。

山本また、地方出張に頻繁に行く部下に対し、トップから「東京でもシェアを取れていない状態で、地方出張の費用対効果はあるのか」と尋ねられたときがあったんです。私はその時マネジャーとして、その効果検証をすべく1週間もシミュレーションに費やしてしまったこともありました。

出張費や宿泊費のデータは経理に依頼し、訪問場所はSalesforceから洗い出す。訪問回数に至っては、Googleカレンダーにしかデータがない。そんな時間と手間をかけて検証できたころには、もう他の仕事が動き出し始めている。非効率の極みだと思いましたね。

Excelでの予実管理は非効率。であれば、何らか既存の予実管理サービスを入れれば解決する話だ。わざわざ新しくプロダクトをつくり上げる必然性はない。その疑問を、山本氏は次のように解きほぐす。

山本既存のプロダクトは、導入費用が高かった。そのため、資金的に余裕のないスタートアップ企業に限らず、多くの企業が結局Excelで予実管理をし、必要時には経理にデータを出してもらう状態にあると考えたんです。

ただ、予実管理は会社の意思である特性上、企業や事業ごとに個別性が高い。なので汎用性の高いクラウドサービスに落とし込むのは難しいと感じていました。おまけに、ベースとなるソフトウェアの開発費用とは別に、納品するエンジニアの導入作業だけで1,000万~5,000万円ほどかかる計算だったんです。そんなことから、プロダクトの仕様的にも、工数的にも、そもそも実現できるのか不安がありましたね。

ただ、そんな私の背中を押したのは、動画マーケティング会社時代の同僚で、現在弊社のCTOである水上でした。優秀なエンジニアである彼が「やりましょう!工数がどれくらいになるかは未知数だけど、半年くらいあればできるんじゃないですか。基本的に、半年もかけてプロトタイプすらつくれないプロダクトなんて世の中にはありませんから」と前向きな姿勢を示してくれたことで、チャレンジしてみようと思えました。

既存プロダクトには課題がある。だから、解決できるプロダクトを作りたい。そうした想いに加え、山本氏を衝き動かしたのは、「絶対に必要とされるプロダクトなんだ」という確信だった。

山本実は、私はfreeeやマネーフォワードといった、財務会計のクラウドサービスがこんなに浸透するとは想像だにしていなかったんです。日本の会社にはカスタマイズの要望がたくさんあるから、クラウドサービスでは満足できないだろうと。しかし、それらの会社はすごい勢いで成長していった。

また、1社導入で1億円というオンプレミス型サービスの営業をしていたときには、競合として出てきたSalesforceを見て、やはり「各社ごとに用いる情報や必要な要素が異なる顧客管理を1つのプラットフォーム上にまとめるなんて無理だろう」と思っていました。しかし、これも世の中が変化していき、受け入れられていった。であれば、管理会計もいつかはExcel主導ではなくなるはず。そんな確信がありました。

ニーズを信じる気持ちと、課題解決に懸ける想い。これらが先行してDIGGLEは設立された。会社としてのミッションやビジョンについて尋ねると、山本氏は苦笑しながら次のように語る。

山本正直、創業当時にはミッション、ビジョンという形での言語化はできていませんでした。とにかく、予実管理が抱える課題を解決したい、そのためのプロダクトをつくりたいという想いが強かった。今回、連載記事のテーマが「Bic Picture」だとお聞きしていて、さてどうしようと思ったくらいなんです(笑)。

“顧客課題は、ミッション・ビジョンに先立つ”。ビジョナリー・カンパニーという言葉があるように、経営者、起業家であれば社会に対し自分達の存在意義を示すミッション・ビジョンの策定はマストである。しかし、必ずしもこれらを掲げていないと事業が始まらないかというと、そうではない。このDIGGLEのように、何よりもまず目の前の課題にフォーカスすることで事業や組織ができあがっていく。真の顧客ファーストとは、DIGGLEのようなスタートアップを指すのかもしれない。

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本質価値に向き合え!Excelを意識するから、比較される

創業の経緯を掴んだところで、ここからはより具体的な事業やプロダクトについて踏み込んでいこう。今の『DIGGLE』のUIは、まさにWebサービスらしいものだ。しかし、立ち上げ当初はまったく異なり、ExcelライクなUIだった。これを辞めたのが、結果としてDIGGLEにとって大きな飛躍を遂げる転機の一つとなる。

そもそも、ExcelライクなUIにした狙いは何だったのか。その理由について、山本氏は「Excelで予実管理をしている会社が多いため、Excelライクな使い勝手のUIがマスト条件だと考えていた」と説明する。そこから今のUIに変わったのは創業からおよそ1年後のこと。決断を下した理由は、一体何だったのか。

山本Excelライクなサービスだと、いつまで経ってもExcelが比較対象になり続けてしまいます。その結果、「Excelではできるのに、なぜ『DIGGLE』ではできないんですか?」と聞かれることになる。例として、「Excelでは『戻る』ボタンでひとつ前の作業に戻れるのに、DIGGLEではそれができないから導入はできない」「この関数が使えないのは不便だ」といった声がありました。

また、Excelは無料で使っているような感覚になりがちなため、「わざわざお金をかけてまで『DIGGLE』を導入する価値があるのか」といった比較もされました。そこで、本質的な価値を見つめ直すことにしたんです。

DIGGLEが目指したいのは、あくまで”予実管理”の利便性向上だ。属人的な作業をなくし、省力化とスピード向上を実現する。その目的が達成できるのであれば、ExcelライクなUIである必要はない。むしろ、既存サービスに似通ったものにすることで比較され、必然的に競争に巻き込まれる事態を生む。

山本当時のDIGGLEには私の他にエンジニアが2名いまして、彼らから「ExcelライクなUIを辞めよう」という提案を受けました。ただ、私には自信がなかった。お客様は明らかにExcel的なプロダクトを求めていましたし、「便利だね」というフィードバックも頂けているこの状況で、本当にこのUIを捨てていいのかと。何日も悩みに悩んだことを覚えています。

しかし、Excelと比較された結果、導入を見送られるという現状が少なくない以上、変えるしかないと意を決しました。この決断には、数字的な根拠は何もありません。市場調査をしたところで、Excelライクなものに軍配が出ることは明らかでしたから。私たちの想い一つで下した、事業の成否を分ける意思決定でしたね。

真に新しいものを生み出すとき、既存サービスの顧客にヒアリングするのは必ずしも好手ではない。馬車が交通手段とされていた時代、顧客に求めるものを聞いたところで、出てくる答えは「速い馬」だ。世界を一変させる自動車という新市場誕生に繋がる声は出てこない。そう、近代自動車産業を生み出したHenry Ford氏が言ったとも伝わる。DIGGLEの意思決定も、これと同じことだといえるだろう。

そこから山本氏らは進行するプロジェクトを止め、3ヵ月かけてUIを移行する。しかし、ここでもまだ不安が拭えなかったという山本氏。いつでもExcelライクなUIに戻せるよう、コードをGitHubに残しておく指示をしたと、当時の心境を振り返りながら苦笑する。

しかし、その不安は杞憂だった。移行後、細かな改善を続ける期間は要したものの、UI移行は「正しい判断」だった。予実管理領域でイノベーションが起こり始めたのだ。

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そのプロダクトは誰の何を解決する?
大手企業に導入するも、結果は”未活用”

プロダクトのアップデートにより、事業成長の兆しが見え始めたDIGGLE。しかし、スタートアップの世界はそこまで甘くはない。その矢先でまた別の壁に直面するのだ。その詳細について尋ねると、山本氏は「今思えば、結果的にカスタマーサクセス(以下、CS)を軽視していた」と分析する。

山本プロダクトの磨き込みに執着するあまり、「お客様の成功」に向き合えていなかったんですね。「いいプロダクトをつくって提供すれば事業は伸びるはず」と、そう意識していたわけではありませんが、結果としてそうなっていたんだなと思います。

SaaSプロダクトは、継続課金であるがゆえに売上予測が立てやすく、VCに評価されやすいという特徴がある。そのため、とにかく営業に力を注ぐSaaS企業は少なくない。当時のDIGGLEも、そうした会社の一つだったのだ。確かに、積極的な営業により利用企業数を増やせば、数字は上がるだろう。「だが、それは事業として本質ではない」と山本氏が気づけたのは、どういった背景があったのだろうか。

山本プロダクトの利用データを見ていると、お客様がきちんとDIGGLEを使いこなせていないことがわかりました。「便利そうだから」と導入していただいたものの、「予実管理業務自体は結局Excelでやっています」という会社もあったんです。折角提供したサービスが、全く使われていない。これはクライアント側においても、提供側においても絶対おかしいですよね。

また、そもそも売るべきところではないところに営業をかけていたことにも気づきました。例えば、大手企業の新規事業部などがそうです。大手企業の新規事業部には予算に余裕がありますし、「何か新しいことをやらねば」というインセンティブが発生するため、我々のような新たな施策への共感をいただきやすい構造があります。ゆえに、僕らがプロダクトで目指すべき価値とは異なるところに導入の決め手があったんです。これも結局、使っていただけなくなった事例です。

営業という面だけ見れば、ビッグネームに活用いただけると嬉しいですよね。でもSaaSの価値を磨いていくためには、思想や提供価値といったさまざまな面で共感をいただいての導入のほうが、良い開発や改善につなげられる。そう気づきました。

またDIGGLEの投資家であるDNX Venturesの倉林さん、Archetype Venturesの福井さん、UB Venturesの岩澤さんから、「今はセールスに注力するフェーズではないのでは」と冷静な指摘をいただけたことも、気づきに繋がりましたね。

VCからの指摘も受け山本氏が下した決断は、1度セールスもマーケティングも辞め、プロダクトに向き合うこと。当時在籍していたマーケターやセールスメンバーにもCSという立ち位置でプロダクトの改善を考えてもらうなど、全員で既存顧客に向き合った。

どの機能が使われているのか、また使われていないのか。使われていない理由は何か。課題を洗い出す他、導入から利用までのステップもプログラムとして整備。「導入して終わり」ではなく、「顧客の成功」に照準を当てた。

山本新規営業を止めてまで、CSとプロダクト改善にコミットしたことは、のちのセールス改革にもつながりました。「結局Excelから乗り換えてもらえない」という先述の課題を、営業トーク起点で解決できるようになったんです。

CSの経験から、プロダクトを使う側の解像度が上がり「そこはDIGGLEにしたときに慣れが必要な箇所だから、最初はExcelの方が便利に思えるかもしれない。でも、長期的に見たらDIGGLEの方がミスなくできるというメリットがある」と具体的にお伝えできるようになりました。

導入はされるが使われず、自社も顧客もサクセスに至らないといった壁は、「誰に導入してもらい、使いこなしてもらうのか」に切り替えたことで打ち破った。「SaaSだから導入さえしてもらえれば安定して事業成長ができる」わけではない。そんな学びが詰まった体験だった。

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昨対比10倍の顧客継続率!
事業への深い共感が奇跡をおこす

先の新規営業やマーケティングを辞め、プロダクト見直しに要した期間は4~5ヵ月。この間、新規営業は一切行っていない。当時のDIGGLEは2度目の資金調達から1年が経過したころで、銀行の残高に底が見え始めていた状況だったという。目減りしていく資金、次のファイナンスまでに伸ばしていなければいけないというプレッシャー。この難所を、どう乗り切ってきたのだろう。

山本事業に共感してくれる優秀なCSやエンジニアに恵まれました。試行錯誤している期間中、エンジニアたちには「やっぱりこの開発は一旦辞め、こっちの機能の開発をしてくれ」と言うことも多かった。モノづくりをしている側の視点で見てみると、変則的な仕様変更は非常にストレスフルなことだと思うんですよね。

しかし、彼らは嫌な顔をすることなく、「今、必要だと思うことをやっていこう」と前向きなスタンスで取り組んでくれた。そうした事業推進に理解のある人が多い社風も大きかったですね。「売らない」と決めた4~5ヵ月は確かに厳しかったですが、悲壮感はなかった。この期間を経て、メンバー全員のプロダクト理解だけでなく、チームとしての結束も進んだと思います。

この転換の直後、COOの荻原氏がジョインする。前職では経営企画部にいて数値管理を行ってきた荻原氏が加わったことで、DIGGLEのCSはより強みを増した。そのインパクトはプロダクトの定着率にも如実に表れている。2019年に契約した顧客のうち、現在も使っている企業は10%程度。対し、この1年で契約した顧客の継続率はほぼ100%と、大幅に改善しているのだ。加えて、実際のプロダクト利用率のデータを見ても、ログイン頻度、各種機能の利用回数など、ほぼすべての指標において、顧客の予実管理業務に深く定着してきていることが示されているという。

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「経営の意思決定サイクルを早くする」
DIGGLEが描く最終地点

DIGGLEが何よりも重視するようになったCSだが、そもそも同社が位置付ける”顧客の成功”とは、一体どのような状態を指すのだろう。

荻原我々の定義では、「契約時に抱えていた課題をDIGGLEの利用により解決できたとき」をサクセスと呼びます。お客様によって抱えている課題が違うため、どうしても抽象的な言い方になってしまいますが。このサクセスに至るよう、営業段階から課題を深堀し、二人三脚で取り組んでいます。プロダクトやCSの土台が一定築けた今では、ほぼすべてのクライアント様が導入前の課題を解決できるようになっています。

「受注を増やせるのがサクセス」「採用が上手くいくのがサクセス」など、ゴール地点のイメージがつきやすいSaaSもあるが、予実管理はそうした領域ではない。顧客により課題が異なるからという理由以外にも、ゴールが想像しづらい部分があるのではないだろうか。DIGGLEとしては、どこをゴールとして見据えているのだろう。

山本私たちの最終目標は、『経営の意思決定サイクルを早くすること』です。繰り返しになりますが、予実管理は企業の意志。

ひとつ問いかけをしますが、企業が対外的に「これにコミットします」「削減目標を掲げます」と発表していることと事業が日々追いかけている数字の関係性を理解している社員はどれくらいいらっしゃるでしょうか。私たちは、今ここに改善の余地があると思っているんです。

対外的に発表はしているものの、現場はその内容を把握できておらず、与えられた数字をがんばってこなしている。逆に、現場がいろいろな声を拾ってきても、上にフィードバックされることがあまりないといった事態が割と起きているのではないでしょうか。データをスピーディーに取り出せるようになることで、適切な意思決定を素早くできるようになる。我々はここを目指したいと思っています。

単に予実管理の効率化を促進するだけでなく、企業が掲げる定性目標に対し、裏付けとなる定量目標もスピーディに構築していける世の中をつくることがDIGGLEの目標。ここが現在、まだまだ整合性の取れていない状況だというのが、山本氏のだ。『経営の意思決定サイクルを早くする』、これが実現できれば確かにすべての経営者、起業家から数値責任を負う事業部長にまでイノベーションが起きる。まさに壮大なBic Pictureと言えるだろう。

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VCとの協業でベンチャーのエコシステムにも寄与

こうして波瀾万丈のシード期の壁を乗り越え、次のラウンドの資金調達やその先のIPOといったマイルストーンに向かい成長を続けるDIGGLE。2年後に社員数を4倍に、取引者数を5倍程度にまで増やしたいと考えているという。最後に、前進するためのモチベーションについて、両氏に尋ねてみた。

荻原私はもともと経営企画出身で、プロダクトに魅力を感じて入社を決めていることもあり、やはりいいサービスだと思えることは大きいですね。今までいいツールがなかった領域、いわばホワイトスペースだと思っていて、切り拓いていけること、お客様に提供して役立っている実感が得られることがモチベーションになっています。

山本難易度は高いですが、非常に面白い事業だと感じています。顧客企業でお会いするのは、意思決定に関わるCFOや経営担当役員といった方々で、導入により変えられるのは業務効率レベルではなく、経営の意思決定という大きなものです。そこに寄与できるものを提供できていることが私のモチベーションになっています。チャレンジの波が大きいんです。

荻原氏は、今この領域をホワイトスペースだと表現した。今後、競合他社が現れてくることはないのだろうか。例えば、VCのような事業モデルの企業が類似サービスを出すことも十分に考えられそうだが。

荻原新規参入企業が現れる可能性はもちろんあると思います。ただ、弊社には創業以来練り上げられてきた柔軟性の高いプロダクトと、事業に共感した優秀な予実管理経験者が揃っていて、お客様の業務変革をハンズオンで支援することもできる。同じようなことを参入してきた会社が、うちより良いプロダクトを創り、より良い支援をする、というのはかなり難しいのではないかと思っています。

山本VCや監査法人といったところとは、競合ではなくパートナーになる可能性があるのではないかと思っています。予実管理表の提出はIPOの際に必須ですから、VCがスタートアップ企業に「DIGGLEを使ってください」と言う可能性もある。今はまだそういった動きはありませんが、投資しているVCがIPOの準備に入るレイター企業に紹介してくれるといった事例は出てきています。

競合ではなく、あくまで共創していくというスタンス。VCとのタッグが進むことで、よりベンチャー/スタートアップのエコシステム強化に繋がる未来が見えそうだ。

そして組織面では2年後に社員数を4倍に伸ばしたいDIGGLE。どういった人材を求めるかとの問いかけに、山本氏、荻原氏は揃って「真摯、誠実な人」だと答えた。

山本新卒入社してからというもの、「競合他社の悪口は言うな」と教わってきました。弊社はCSにコミットしている会社なので、真摯・誠実といった素養がない人はそもそも合わないと思いますね。また、私は予実管理のトップベンダーを目指したいと思っていまして、トップベンダー企業は競合他社を憶測で語ることはしないと考えているんです。トップベンダーを目指すからには、自分たちにできることを正々堂々とやった上で、成長していく会社でありたいと思っています。

その上で、弊社に来てほしいと思うのは、仮説を持って事業を立ち上げられる人ですね。業種によって、予実を見ていく重要ポイントには違いがあります。例えば、カード会社は勘定科目の中でも貸倒引当金が肝といった具合に、「ここが成り立っていないと事業が上手くいっていない」というポイントが業種ごとにある。それぞれに提供できる価値を探し、事業化していけたらと思います。

また、採用をしていく上で難しさを感じているのは、予実管理というマーケットのポテンシャルの高さの認知です。30代前後くらいの年齢層は、その多くが予実管理に関わる当事者ではありません。だから、「本当にこのマーケットってあるんですか?」と疑問に思われることがある。しかし、現実にマーケットのポテンシャルは高いですし、成長が数字として表れてもいる。ここのギャップをいかに埋めていくかが肝だと思っています。

予実管理業務がなくなることはない。数々の業務がSaaSサービスにより効率化、利便性向上を果たしていくなか、予実管理のみがExcel作業のまま留まることはないだろう。事実、国内予算管理市場の売上金額は2018年度から2019年度にかけて前年度比54.5%増加と、右肩上がりに増えており、2023年度には市場の約8割をSaaSが占める見込みだという予測も出ている。

きらびやかなビジョン、ミッションの裏には、それを実現させるための予実管理業務がある。一見地味なようでいて、堅実に会社を成長させていくのに必要不可欠なものだ。将来、経営者や事業家を目指したいのであれば、なおさら知っておかなければならない仕事だといえる。予実管理は、経営の体幹。一流の経営者を目指すにあたって鍛えておかなければならない体幹だといっても、決して過言ではない。

こちらの記事は2021年12月24日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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