D2Cはなぜ盛り上がっているのか?
今、日本でD2Cが注目を集める3つの理由

寄稿者
森 雄一郎
  • 株式会社FABRIC TOKYO 代表取締役CEO 

1986年生まれ岡山県出身。大学卒業後、ファッションイベントプロデュース会社「ドラムカン」にてファッションショー、イベント企画・プロデュースに従事。その後、ベンチャー業界へ転向し、不動産ベンチャー「ソーシャルアパートメント」創業期に参画した他、フリマアプリ「メルカリ」の立ち上げを経て、2014年2月、カスタムオーダーのビジネスウェアブランド「FABRIC TOKYO(旧・LaFabric)」をリリース。”Fit Your Life”をコンセプトに、顧客一人一人の体型に合う1着だけではなく、一人一人のライフスタイルに合う1着の提供に挑戦中。

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皆さん、はじめまして。森 雄一郎と申します。普段は『FABRIC TOKYO』というオーダービジネスウェアのD2Cブランドを経営していたり、『Original Lab』というD2Cブランド起業家のコミュニティを主宰していたりします。

いわゆる経営者ですが、D2Cスタートアップを経営する一方で、一人のD2C研究家というかD2Cファンでもあり、自分で調査したり考察した内容を記事にまとめnoteで公開していたりします。

そんな一介のD2Cファンでありオタクである僕なので、よく周囲の人から「D2Cってなんで最近こんなに盛り上がっているの?」と聞かれたりします。物をつくるメーカーやネット通販(EC)なんて随分前から当たり前なのに、なんで今そんなに騒がれているの?といった具合にです。

これには明確な答えがあるので、今回はその疑問に答えてみたいと思います。

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そもそも、D2Cはどのくらい盛り上がっているのか?

D2Cムーブメントの震源地はアメリカです。2000年代後期にEコマースで自社ブランドを立ち上げるスタートアップが徐々に生まれ、それまではスタートアップといえばITで完結するサービスのことを主に指していましたが、自社でものづくりを行いEコマースで販売しスケールする企業が現れたのです。

代表的な会社は「BONOBOS」や「ModCloth」でしょう。この2社は、後に世界最大の小売りチェーンWalmartに買収されています(Walmartはその後売却)。この頃登場したD2Cブランドを「D2C第一世代」と世間では呼んだりしています。

D2C第一世代の活躍を見て生まれたのがD2C第二世代。第二世代は前期と後期に別れると考えられていて、前期はメガネのブランド「Warby Parker」やアパレルブランド「Everlane」など、後期はコスメブランドの「Glossier」やシューズの「Allbirds」などがメインプレイヤーたちです。

第一世代との違いは、単純にEコマース上でブランドを運営するだけではなく、ブランドが社会性を帯び、Purpose Driven(目的主導)でブランドを立ち上げている点、そして高いファイナンススキルにより多額の資金をベンチャーキャピタルなどから調達し、一気にスケールするモデルを作っているかどうかが違いです。

ここ数年でアメリカだけでも400以上のD2Cブランドが誕生し、その数は今も尚増加傾向にあります。同じカテゴリーでも競争が激化しており、アメリカ人の中ではマットレスを買う際に「マットレス買おうと思ってるんだけど、Tuft&NeedleとLeesaとCasperどれがいいかな?」といった会話が普通に起こってきていることが凄い点です。この3つはすべてこの数年で生まれたマットレスのD2Cブランドです。

アメリカにおけるD2C企業への投資額は上昇傾向

先日もWarby Parkerが大型の資金調達を行い話題になりました。コロナ禍でリアル店舗を持つ各社が苦しむ中、ここ最近明るいニュースが無かったD2C界隈ですが、久々の吉報とも言えるニュースだったのではないでしょうか。

私が主催するOriginal Labでも2週間で100件を越えるD2C起業家からの応募がありました。ジャンルはアパレルから家具、そして食品・アルコール飲料まで本当に多岐にわたります。数年前では考えられないくらいの数のD2Cブランドが産声をあげようとしており、この数ヶ月〜来年にかけて多くのブランドがリリースされていくことでしょう。

もしかしたら日本では、我々FABRIC TOKYOや2011年創業のOh My Glasses、2013年創業のBulk Hommeなどが第一世代であり、現在立ち上がってきているブランドを第二世代と呼ぶ将来がやってくるかもしれません。

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現在、日本でD2Cが話題な3つの理由

アメリカを震源地とし、ようやく日本でも隆盛してきたD2C。なぜ最近話題なのでしょうか?その理由を紐解いていきたいと思っています。

先に結論から言うと現在日本でD2Cが盛り上がってきている理由は、「スマホシフト」「人材」そして「認知」であると言えると思います。一つ一つ解説していきます。

まず1つめの「モバイルシフト」です。

下記の図は、総務省が調査した日本国内におけるスマートフォン個人保有率の推移です。

2014年の時点で、既に20代と30代のスマホ所有率が80%を超えてきています。この頃からいわゆるキュレーションメディアが隆盛し、インターネット上にあらゆる分野の情報が溢れかえり、人々も情報収集の方法を従来のメディアからインターネットメディアに切り替えていきました。

InstagramなどのSNSの急激なユーザー増加です。2014年から2016年でユーザー数が国内では4倍になっています。この時期に多くのインフルエンサーが誕生し、そして多くの企業公式アカウントなどもスタートしました。

PCでインターネットに触れていた時代が終わり、スマートフォンを常に持ち歩き24時間365日インターネットに接続されている時代へと突入したんです。

こういった背景から、2014年前後で、「スマホシフト」により「情報の接点がインターネットメディアやSNSに変わった」という変化が大きく起こりました。

デジタルを主軸に展開するD2Cブランドを、消費者たちは見つけやすくなったのです。いえ、逆かもしれません。多様化する消費者のニーズに対して、デジタルマーケティングを最適化させてうまく顧客にダイレクトにアプローチする術をブランド側が手に入れたのです。

GoogleやSNSのデジタル広告を主戦場とし、特に最近はInstagramをハック(うまく活用)したブランド運営者が大きく業績を伸ばしていきました。

これが1つ目の理由である「スマホシフト」でした。

2つめに「人材」です。

1999-2000年に起こったドットコムバブルから20年。日本において、インターネット利用人口1,500万人、利用率13%だった1999年から20年経ち、2019年現時点では利用人口1億人超、利用率も80%を上回るまで普及しました。

20年前に10歳だった人も今は30歳になり、いわゆるデジタルネイティブ世代・ミレニアル世代が社会の労働と消費の中心の世代となってきたのが実はまだこの5年程になります。そんなデジタルネイティブ世代たちが、既存産業の企業に就職し、デジタル目線で既存産業の課題を知ったことになります。

それまでインターネットが好きな人間はIT業界という選択肢しか無かったのに、あらゆる産業にインターネットが溶け込み、デジタルネイティブ世代にとっての選択肢が劇的に増えたのが今です。

そして世界中で巻き起こるアントレプレナーシップの隆盛の背景があります。元々スタートアップはシリコンバレーを中心としたIT業界を中心に勃発したムーブメントでした。パロアルトにあるスタンフォード大学に在学していたプログラマたちが起業し、世界中に使われるインターネットサービスを創り上げてきました。

そんなインターネットサービスムーブメントが1周も2周もしてくると、前述したのと同じく、あらゆる産業が起業家たちの対象になってきたのです。フィンテック、B2B SaaS、シェアリングエコノミービジネスなども同じ潮流の中で出来てきた事業でしょう。

テクノロジーはコンピュータ・サイエンスなど理系出身のエンジニア起業家たちが立ち上げて行くのが一般的でしたが、小売・ブランドビジネス領域は意外とエンジニア達がわからない領域として進化が遅れていました。

そこに可能性を見出したデジタルネイティブ世代の起業家たちが世界中で同時多発的に創り上げてきたのがD2Cスタートアップ群です。AWSやShopifyなどのクラウドツールでブランドを安く早く立ち上げやすくなった背景もあり、数多くのD2C起業家たちが新しいブランドを世の中に生み出しました。

日本でも、大きく業績を伸ばしているD2Cスタートアップの起業家は元々メーカー出身だったり、メーカーをサポートする立場の広告代理店出身者だったりします。決してテック系出身者ばかりではなかったりするわけです。彼らはエンジニア起業家が苦手なブランド・リテールという領域に、テック要素を帯びたリテールブランドモデルを持ち込むことで、小売業界の革命児となっています。

最後に理由3つ目の「認知」です。

以下の画像をご覧ください。

出典:DNVB(DTC、D2C)でユニコーン&M&Aされたリスト

上記のように、D2Cスタートアップからは多くのユニコーン企業(未上場で時価総額$1Bを超える企業の呼称)が創出されています。特に、2019年に顕著で、Warby Parker以外のユニコーン企業は2019年初頭に生まれました。

日本では、2018年6月4日に日本政府が2023年までにユニコーンを20社創出する閣議決定がされるなど、何かとユニコーン企業が話題です。ぼく自身も起業家をやっているため、経営者の会合などに行くと日々ユニコーンという言葉を耳にするのです。

そんな状況の中、アメリカでは2019年にD2Cブランドという領域からユニコーンがいきなり複数社生まれることになった。IT系メディアやアーリーアダプターは見逃さず、多くの紹介記事が生まれ、SNSでシェアされてきました。(FABRIC TOKYOもたくさん取材を受けました。ユニコーンじゃないのに笑 ありがたい話です)

その結果、「人材」の部分でお話したように、ピュアなテック企業だけではなく、ものづくりやサプライチェーンといった既存産業の要素を多分に含むD2Cという領域でもユニコーンを創出する可能性があるのだと、国内でも認知され、一気にスタートアップのビジネスアイデアとして有効として取り扱われ始めたのが昨年だと思っています。

さて、ではなぜD2C領域ではユニコーンを創出することができたのでしょうか?理由は様々ですが、D2Cに限らずユニコーンとなっているスタートアップの唯一と言って良い共通点があります。それは「TAM」です。TAM = Total Addressable Market(到達可能な最大の市場規模)です。

過去20年、インターネットサービス事業者の主戦場といえば「メディア」「広告」「EC」「SNS」でした。この中でもD2Cを連想しやすいのはECですが、これまでのECといえば、モールが中心で基本的にはどこかのメーカーの物を仕入れて掲載する仕入れ型or出店型で販売手数料(= Take Rate)を得るサヤ取りビジネスでした。つまりECビジネスの実際の市場規模は対象商品の市場規模ではなく、そのうちの一部の販売手数料の総額が市場規模でした。

一方でD2Cは、自らがメーカーであり自らコンシューマー向けに販売することが基本的な概念なため、扱う商材の市場自体がそのまま市場規模になります。例えばとある商材の市場規模が1兆円で上記のTake Rateが仮に20%だった場合、旧来の販売手数料型のECの場合市場規模は2,000億円、しかしD2Cの場合は市場規模を1兆円とみなすことができ、より大きな売上及び利益を大きくしやすいということになります。

これは思ったよりもスタートアップにとって影響が大きくて、たとえば上場後の株価は今後の売上成長率や将来キャッシュフローによって大きく評価額が変わるので、「まだまだ伸びていける市場規模であるか?」という視点は非常に重要なわけです。上場後の投資家の目線からも、TAMというのはとても重要な要素です。

なお、蛇足ですが、個人的に感じていることは、D2Cスタートアップの今後のトレンドは、実はアメリカからヨーロッパへ移行するのではないかと思っています。D2Cはテック要素を帯びたブランドビジネスであると言えます。ヨーロッパ人の美意識の高さ、文化の深み、そしてデジタルネイティブ世代の台頭。間違いなく何か起こると予想しています。

また、アメリカやヨーロッパに負けじと日本もものづくり大国です。確かな技術ときめ細やかな職人技を持つ生産者を全国に豊富に抱え、海外からも評価が高いです。また、生活におけるあらゆるものの品質やサービスレベルは間違いなく世界トップレベルで、そんな中育った我々は良いものを判断する審美眼を持っているはずです。アメリカやヨーロッパに負けないくらいブランドが生まれ育つ環境があるため、D2Cという領域はスタートアップとして世界を目指せるジャンルだと思わざるを得ません。

本日は、現在日本においてD2Cが話題になっている背景をご説明してみました。他にももちろん理由はあるのですが、大枠なところで3つ挙げるなら今回ご紹介した「スマホシフト」「人材」そして「認知」だと思います。

今後もD2Cブランドを経営する上で知っておくべき予備知識や最新の動向について書いていきたいと思いますので、本連載をどうぞよろしくお願いいたします。

こちらの記事は2020年09月29日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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