スマートモビリティ、スポーツプラットフォーム。
グローバルに事業展開するスタートアップが集結──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、Zenmov株式会社、スポーツX株式会社の2社(登壇順)だ。
- TEXT BY OHATA TOMOKO
- EDIT BY HARUKA MUKAI
Zenmov株式会社
“規律ある公共交通”を実現するスマートモビリティシステム
最初に登壇したのはZenmov代表取締役社長の田中清生氏。同社は、フィリピンをはじめとした東南アジアの公共交通を最適化するスマートモビリティ事業を展開している。
スマートモビリティに取り組む背景には、東南アジアにおける不便な交通状況があるという。
田中フィリピンをはじめとした東南アジアでは、自家用車の普及並びにライドシェアリングのサービス活用が増えています。しかし、車の面積に対して乗車している人数が少ない。また道路面積が少ないため、あっという間に交通渋滞に巻き込まれます。
バスなどの公共の乗り物は、大きな企業や組織が運営しているのではなく、個人会社が車を借りて運行。ピーク時に移動したい人はたくさんいるのに、車が来ないことなどは日常茶飯事です。
そこで、弊社ではIT技術を活用し、最適な公共交通を実現します。過不足のない車を最適に配送し、乗りたい時に最適なタイミングで車が来る仕組みを作っています。またそれにより車の供給量を最適化し、CO2削減にも取り組んでいます。
主な事業は、機械学習を活用した近距離公共交通システム『SMOC(Smart Mobility Operation Cloud)』の開発・運営だ。
SMOCを公共交通機関に導入すると、電子チケット決済やドライバーの仕事リスト管理、運行状況やスケジュール調整、データにもとづく配車の最適化など、「最適な公共交通」に必要なアプリケーションを利用できる。
田中マニラ市中央にあるイントラムロス地区では、SMOCを活用したE-trikeサービス『EMI E-trike』の運行を開始し、移動ニーズの増加や雇用創出にも貢献できました。
この結果を受け、2020年からはフィリピン最大級の商業エリア、パサイ市でも同様の実証実証を行ってきました。走行台数の最適化による二酸化炭素の削減を目指しており、環境庁にも助成金をいただいています。
今後は保有する技術を活かして、公共交通のみならず物流移動にも特化したサービスを展開していく予定だ。さらに日本での活動も始めているという。
田中日本では、超小型モビリティに関連する事業を展開できないかを検討しています。小型のEVは非常に小回りが効きますし、省エネ、三密回避など、多数のメリットがある。観光地などでの利用が期待できると考えています。
街づくりを行う企業との協業や観光地の移動を手助けするタイアップの実現、ラストワンマイルでの物流移動など幅広い展開を検討している。「フィリピンやベトナムなど、ASEAN諸国を中心に、事業開発を一緒にやりたい方がいれば、ぜひお声がけください」と参加者に呼びかけた。
スポーツX株式会社
あらゆる地域にプロスポーツクラブをつくり、
世界を繋げる日本発のスポーツプラットフォーム企業へ
続いて登壇したのはスポーツX執行役員の高橋純一氏。同社はスポーツクラブの創設・育成、リーダー人材開発など、スポーツ関連事業を多数展開している。
高橋氏は、創業者である小山淳氏の思いを共有しながら、理念やミッションを紹介する。
高橋幼少期からスポーツに親しんでいた小山は、小学生の時にメキシコワールドカップを見て、日本と世界でサッカー環境のレベルに大きな開きがあると愕然としたそうです。
そこから日本のサッカー協会を世界水準に引き上げるために、日本サッカー協会の会長になろうと決意。中学・高校生は強豪校のサッカー部に所属し、全国優勝も経験しました。
しかし、大学時代の怪我によって、競技を続けるのが難しくなった小山氏。バックパッカーとして世界を旅するなかで「貧困と不平等を失くしたい」という思いを抱き、インターネット関連事業を起業した。
起業家として数年ほど経験を積んだ後、「かねてより情熱を持っていたスポーツから世界を変えよう」と、2009年にサッカークラブ藤枝MYFCを立ち上げた。
高橋もし個人がJリーグクラブを創設できるようになり、それがスタンダードになったら。日本中、いや世界中にプロスポーツクラブが生まれるのではないか。それによって地域で暮らす人々を元気にしたい。そうした思いが、理念の「咲かせようスマイルつなげようスポーツで」や、ビジョン「スポーツによる人づくり、国おこし、国づくりに貢献する」にも反映されています。
藤枝MYFCは、5年後の2014年にJリーグ入りを果たし、2017年には地元企業に経営権を譲渡するほどに成長した。現在はその経営ノウハウを活かして「おこしやす京都AC」など、国内のプロスポーツクラブ経営支援に力を入れている。
プロスポーツクラブのリーダー人材育成にも取り組む。一般的なプロスポーツクラブでは、サッカー選手としてのキャリアを終えた後、そのまま監督になるケースも多い。だが「マネジメント経験や社会人経験が少なく、チームの底上げにつながっていないのではないかという課題感があった」という。
高橋弊社では、選手の一部を社員雇用しています。ある社員は午前中に選手として練習をし、午後はスクールの先生として働き、5年ほど経験を積んだ後、J3の藤枝MYFCではキャプテンまで務めました。「監督」としてだけではなく「ビジネスパーソン」としても一流の人材を育てることを目指しています。
他にも、スポーツXでプロスポーツクラブ経営を経験した社員を「おこしやす京都AC」など支援先クラブに派遣をするなど、ノウハウの共有を進めています。
さらに国内・ベトナム合わせて1.6万人の子どもたちが通うキッズスポーツスクールにも創業時から投資・支援を行っている。「2030年までに20地域でプロスポーツクラブを形成したいと思っています」と目標を共有し、ピッチを締めくくった。
採用情報
第37回目となったこの日は、交通やスポーツ、それぞれの領域で海外を見据えて事業を育てている企業が登壇した。
今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。
こちらの記事は2021年04月08日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
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執筆
大畑 朋子
1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。
inquire所属の編集者・ライター。関心領域はメディアビジネスとジャーナリズム。ソフトウェアの翻訳アルバイトを経て、テクノロジーやソーシャルビジネスに関するメディアに携わる。教育系ベンチャーでオウンドメディア施策を担当した後、独立。趣味はTBSラジオとハロプロ
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