連載スタートアップピッチ特集号――FastGrow Pitchレポート

飲食店のテイクアウトDX、製造現場の可視化、上場のための法人カード。
注目の領域特化型SaaS・プラットフォーマー──FastGrow Pitchレポート

登壇者
河野 匠

1992年、滋賀県出身。大学在学中にファッション系の通販サイトを立ち上げたことがきっかけで起業。その後、株式会社ランプを設立し、200社以上のWEBマーケティングやサイト制作を支援。京都府主催のセミナーや上場企業の社内研修にも講師として多数登壇。

2011年大阪大学工学部卒、2013年大阪大学大学院修了(材料工学) 新卒で川崎重工業に入社後、国内外の工場で産業用ボイラーの生産技術・製作指導業務に従事。2017年にボストンコンサルティンググループ(BCG)に入社。BCGでは製造業・エネルギー企業のターンアラウンド、デジタルトランスフォーメーション、業務改革案件に従事。2020年4月に株式会社東京ファクトリーを創業

宮城 徹

東京大学を卒業後、2014年にマッキンゼー・アンド・カンパニーに新卒で入社。東京支社・ロンドン支社にて、銀行オープンAPI等のデジタル戦略策定、手数料体系や店舗配置の最適化等、大手金融機関の全社変革プロジェクトに携わる。同領域への課題意識と知見・経験をもとに、取締役COOの水野(株式会社ユーザーベースの元マーケティング責任者)と、2018年に株式会社UPSIDERを共同創業。

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「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。

登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。

本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、株式会社ランプ、株式会社東京ファクトリー、株式会社UPSIDERの3社(登壇順)だ。

  • TEXT BY OHATA TOMOKO
  • EDIT BY HARUKA MUKAI
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株式会社ランプ
飲食店のテイクアウトをDXする予約・決済プラットフォーム

株式会社ランプ

最初に登壇したのは、ランプ代表取締役の河野匠氏。同社は、飲食店のテイクアウトに特化した予約・決済サービス『テイクイーツ』を開発・運営している。テイクイーツでは、店舗独自のテイクアウト予約サイトを簡単に開設し、注文を受けられる。ロゴやデザイン、メニューのオプションなども自由にカスタマイズが可能だ。

初期・月額費用はすべて無料。注文金額に応じて、店舗決済なら8%、カード決済なら11.6%の手数料がかかる仕組みだ。

また、商品登録の代行や販促支援、電話やzoomでの無料相談など、運営や収益面でのサポートも行っている。

テイクアウトを利用する顧客側のユーザーは、会員登録やアプリのインストールすることなく、商品を注文できる。

また、飲食店側にかかる手数料が8%から11%と他のサービスに比べて低額なため、飲食店の大半は手数料の上乗せをしていない。つまりユーザーは一般的なフードデリバリープラットフォームと比べて、安く商品を購入できる。

近年、フードデリバリープラットフォームを提供する企業は増えているが、河野氏はTake Eatsが「異なる使われ方をしている」と強調する。

河野主に郊外に住むユーザー、なかでもファミリー層の利用が広がっています。一般的なフードデリバリープラットフォームに比べ、食事会や夕食などで使われる方が多く、単価が高い傾向にあります。

地方や郊外を中心に事業開拓を行うべく、地元の自治体やタクシーとも連携し、配達網を充実させています。

また、ポスティングや地方新聞など、エリアに特化したプロモーション支援にも力を入れています。飲食店が近所に住む顧客を獲得しやすい仕組みを充実させていきたいと考えています」

競合との差別化を図りながら、順調にユーザーを獲得している同社。元々はWEBマーケティング事業を展開しており、2020年の春に「コロナ禍でなにかできることはないか」と考え、サービスを着想したという。

河野自前でテイクアウトを始める飲食店のなかには、予約を電話のみで受け付けていたり、「テイクアウトやってます」とチラシや看板で知らせたりと、アナログな方法を採っているお店が少なくありませんでした。

かといって、人気のあるフードデリバリープラットフォームを利用しても、他の店舗に埋もれて、なかなか見つけてもらえない場合もある。

機会損失が生まれている状況を、テイクアウトの予約・決済のデジタル化によって、解決できないかと考えました。

2020年6月のリリース後、2021年4月現在、全国約700店舗で導入されている。実際に導入した店舗からは売上が増加したとの声も上がっている。

河野例えば、京都にある回転寿司店では、寿司ネタごとにネット予約できるようにしたところ、売上が向上したと伺っています。以前は、電話でお寿司のネタを一つひとつ聞いて、紙に書いていたそうですから、業務の効率化にも貢献できたのではないかと考えています。

実際の予約サイト

2021年2月にANRI等から1億円の資金調達を終えたばかりの同社。「今後は、全国の飲食店をアップデートし、日本の食文化をともしていきたいです」と語り、ピッチを締めくくった。

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株式会社東京ファクトリー
現場を見える化し、製造業DXを実現するSaaS

株式会社東京ファクトリー

続いて登壇したのは、東京ファクトリー代表の池実氏。同社は製造情報を工程写真にもとづいて整理し、製造状況を可視化する『Proceedクラウド』を開発・運営している。

池氏は大阪大学で金属材料を研究し、川崎重工業で国内工場での生産技術や海外の外注先での指導に携わった。その後に転職したボストン コンサルティング グループ(BCG)でも製造業・エネルギー企業のDXに関わるなど、製造業でキャリアを積んできた。

なかでも重工業に深く携わるなかで気づいた課題が、Proceedクラウドを開発するきっかけとなった。

重工業では、船や大型機械などの製品を真ん中に置き、複数人で組み立てる「セル生産」が一般的でした。これは製造を標準化し、流れてくる製品に対して決まった人が決まった作業を行う「ライン生産」に比べて、IoTの導入やデジタル化が遅れていました。とくに製造に関わる業務やプロセスにはデジタル化の余地が大いにあると感じていました。

例えば、外注先の製造状況を把握する際。これまでは、メールや電話で連絡をし、必要に応じて出張や、ベテラン社員の派遣などの方法を採っていました。しかし、メールや電話の情報をもとに複数人で出張をしたら、実は一人でも問題なかった、連絡のミスによる追加の作業が発生するなどの問題が多発していました。

池氏が製造業のDXにあたって着目したのが「製造工程の写真」だった。工場では製造工程を写真で記録することが多い一方「保存先はローカルのPCであったり、フォルダーが整理されていなかったりと、データ活用が進んでいなかった」という。

Proceedクラウドでは、製造工程の写真をアップロードするだけで、部材や工程と紐づく形で、写真が整理、共有される。スマートフォンから写真にコメントを書き込めるため、製造情報や進捗の共有だけでなく、課題や疑問解消のコミュニケーションもスムーズになる。

さらに、写真やコメントを蓄積することで、製造情報や技術者のナレッジを蓄積できる。こうしたデータベースを構築することで、池氏は「技術継承をめぐる課題解決に貢献したい」と語る。

製造業では働き手の高齢化が進むなか、若手社員への技術継承が急務です。しかし、継承すべき技術を抽出し、文章化をするのは手間がかかりますし、あらゆる技術を網羅するのは難しい。

また、小規模な企業では十分な教育コストを割けず、技能継承が現場OJTで人に直接伝えられるため、データで残しづらい側面がありました。

Proceedクラウドでは写真をアップロードするだけで、ドキュメント化しづらい細かな勘所も含めてナレッジ化を進められます」

2021年1月にANRIなどから約1億円の資金調達を行い、「日本の製造業が今後もナンバーワンであり続けることに貢献したいと語る池氏。「東京ファクトリーにご興味ある方は、ぜひご連絡いただけると幸いです」と参加者に投げかけた。

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株式会社UPSIDER
成長を加速させる「法人カード」を軸にした金融サービス

株式会社UPSIDER

最後に登壇したのは、UPSIDER代表取締役の宮城徹氏。同社は、上場を目指す成長企業向けに「法人カード」を軸にした金融サービスを提供している。

法人カードに取り組む背景には「カード払いが企業の成長・上場の足かせとなっている現状」への課題意識があったという。

宮城例えばカードの限度額が足りず、広告やサーバーが止まってしまうなどは、急成長企業では決して珍しいことではありません。

限度額だけではありません。利用明細の締日や確定日は、会社の決算の締日と異なるケースが多いため、決算業務に遅れや漏れが生じてしまいやすい。

また、カードを様々な部署で利用することで、すでに使っていないサービスからの請求が続いていても気づけない場合もある。さらに第三者が不正利用しても気づけないという事態も招く等、ガバナンスの課題も生じていました。

こうした課題を解決するのが、急成長企業に特化した法人カード「UPSIDER」だ。

利用限度額は最大1億円、会計処理は翌月初日に完了する。利用状況を管理するソフトウェアも利用できるため、利用状況を可視化し、不要な支出や不正利用も回避できる。

導入企業は数百社規模で、継続率は99%と高い水準をキープしている。

将来的には、BtoBの取引でより広く利用される決済インフラ化を見据えている。その前提として「カード払いへのパラダイムシフトが起きている」と、宮城氏は自らの考えを共有した。

宮城例えば街のレンタルCD屋であれば、目の前でその都度決済を行う仕組みで問題はなかった。けれど、SpotifyやNetflixといったグローバルで利用される月額課金サービスの場合、一人ひとり銀行振込で処理したり、各国で信用力を確認したりするのは難しいですよね。だからクレジットカード決済が主流となっています。

逆に、利用者にとって、世界中のサービスを自由に利用できるようになっているのは、クレジットカード決済が主流になってきているからです。

to Cのサービスだけでなくto Bのサービスでも同様の動きが起きています。マスメディア広告はインターネット広告へ、オンプレミスはクラウドへ移行するなか、カード払いが必要になる場面は増え続けていくでしょう。事業者は、カード払いが存在することによって、より多くの選択肢を手に入れることができます。

UPSIDERはBtoBの取引がソフトウェア化するパラダイムシフトの中で、パラダイム・シフトの価値をより多くの人々が享受できるよう、新たな決済インフラへと成長していきたいです」

カード払いを軸にした金融サービスによって、最終的には「ゼロから挑戦する人を応援し、社会全体を幸せにしたい」と宮城氏は熱く語る。

宮城事業を立ち上げたい人や事業を拡大したい人が、実績が足りなくても世界中のソフトウェアサービスを利用することができ、世界中のあらゆる人をお客さんにするチャンスを得ることができる。挑戦できる人がより活躍できる世界を実現していきたいです

現在は「事業成長に対して人手が足りていない状況」であり、副業・フリーランスも含め、積極的に採用を行っているそうだ。

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第38回目となったこの日は、飲食店のテイクアウトや製造業の現場、企業のカード決済など、領域に特化したSaaS・プラットフォームを開発する企業が登壇した。

今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。

こちらの記事は2021年04月15日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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執筆

大畑 朋子

1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。

編集

向 晴香

inquire所属の編集者・ライター。関心領域はメディアビジネスとジャーナリズム。ソフトウェアの翻訳アルバイトを経て、テクノロジーやソーシャルビジネスに関するメディアに携わる。教育系ベンチャーでオウンドメディア施策を担当した後、独立。趣味はTBSラジオとハロプロ

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