「夢を語り、巻き込む」ー大資本と「競争」ではなく「共創」に行き着いたセーフィー。その泥臭すぎる過程に学ぶ、スタートアップのアライアンス活用術

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登壇者
古田 哲晴

2006年、京都大学大学院エネルギー科学研究科修了。 マッキンゼー・アンド・カンパニーで多様な産業に対するコンサル、産業革新機構で海外投資やベンチャー投資に従事し、複数の投資先企業の社外取締役を歴任。 2017年3月からセーフィー株式会社にて最高財務責任者(CFO)として参画。

鈴木 竜太

2004年、株式会社ジュピターテレコム(現 JCOM)へ入社。2011年、株式会社g&h 取締役CSO(最高戦略責任者)就任。2016年にセーフィーへ営業部長としてジョイン後、2018年10月にパートナー営業本部長、2020年12月に執行役員に就任、2023年にはセールスイネーブルメントオフィスの立ち上げをリードし現在に至る。

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スタートアップの挑戦の中で、大手企業とのアライアンスは度々その成否を左右する要素となる。新規市場への参入には、多くの資金、人的リソース、情報が必要。ゆえに、その場面で、パートナーセールスをうまく活用できれば、スタートアップは商流をより効率的に拡大することが可能となる。

そんな中、大手企業と「競争」するのではなく、「共創」することで、ブルーオーシャンからARR80億円まで成長を遂げた企業がいる。カメラの映像をクラウド化し誰もが活用できる映像プラットフォームを提供するセーフィーだ。

以前、同社CEO佐渡島氏より、来る2030年の社会から逆算した緻密なロードマップと、パートナー戦略を駆使してスタートアップでありながらオセロの盤上を一つずつ覆していく思考法が語られた。

商流における“オセロの4隅”を押さえよ──人々の“第3の目”として「映像」を加えるセーフィー。CEO佐渡島氏が語る2030年の社会から逆算した緻密なロードマップとは

今回はそんなセーフィーのパートナー戦略の核心に迫り、その真髄ともいえる「社会実装に至るまでの泥臭いプロセス」に焦点を当てていきたい。

本記事では、2023年8月に開催したFastGrow Conference 2023Summerにて、セーフィー 取締役 経営管理本部本部長兼CFOの古田哲晴氏、執行役員 営業本部副本部長兼セールスイネーブルメント室長 鈴木竜太氏が「スタートアップがアライアンス戦略を駆使し未開拓市場に挑むリアル」についてのセッションの様子をお届けする。

  • TEXT BY WAKANA UOKA
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映像データを活用し、あらゆる業界の「現場DX」を推進

──まずは古田さん、鈴木さんの自己紹介と本日の意気込みについてお聞かせいただけますか。

古田私はマッキンゼー・アンド・カンパニーで4年ほど働いたのち、産業革新機構に5〜6年在籍していました。セーフィーに入社したのは6年ほど前で、当時の社員数は10名ほど。そこから現在の400名ほどの規模になるまでCFOとして2度の資金調達、そして2021年の上場を率いてきた立場になります。これまでのセーフィーのあゆみの中で私が学んだことを、1つでも皆様の参考になるようにお伝えできればと思っています。

鈴木私はジュピターテレコム(現 JCOM)に新卒で入社したのち、これまでのキャリアを通して、営業やパートナーセールスにずっと携わってきました。また一時、自分で起業してWebアプリなどの立ち上げを経験したこともあります。

セーフィーにジョインしたのは、古田と同じ社員10名ぐらいのタイミング。まだマンションの一室のようなオフィスから今に至るまで、非常にエキサイティングな時間を過ごしてきたと思っています。今回のテーマは「『競争』するな『共創』せよ」とのことですが、実は創業初期は競争していたり...ということもありましたので(笑)、本日はその裏側をなるべくリアルにお話できればと思います。

──ありがとうございます。では、まずはセーフィーのことを知らない視聴者もいると思いますので、会社のご紹介をしていただいてもよろしいでしょうか。

古田セーフィーは設立9年目の会社で、社員400名ほど、ARRは80億円ちょっとという会社です。事業内容を噛み砕いて簡潔にご説明すると、カメラをいろいろな場所に置き、カメラから生まれてくる映像をクラウドに溜め、いつでもどこでもスマホやパソコンで見られるという映像配信サービスを提供しています。

さらに、その映像をAIで解析したり、他のセンサーやIoT機器と連携することで、付加価値の高いソリューションを次々と生み出している企業です。

古田我々は、映像が人間の“第3の目”となることで、日常生活がさらに豊かになるという未来を信じて日々サービス作りに挑んでいます。現在課金カメラ台数は20万台、クラウドモニタリングシェアにて60%弱と、まさに今日のテーマでもある「販売パートナー」の力を借りながら共に成長してきた会社です。

古田こちらが本日の肝でもあるパートナー企業様です。現在、売上高の60%近くがパートナー企業様から生まれております。このパートナー各社は実はもともと競争相手でした。1社1社口説いてオセロのように盤面をひっくり返し、当社のパートナーとなっていただいた形となります。

古田セーフィーの導入企業様も少しご紹介できればと思います。特に強いのは建設業界で、“5大スーパーゼネコン”と呼ばれる全社全現場に導入いただいております。

古田さらに最近は他社との共創も増えています。例えばネットカフェを運営されている自遊空間様では、夜間の受付を省人化するために遠隔接客サービス『RURA』というサービスを導入されているのですが、その『RURA』に我々のカメラ映像を組み合わせ、約30店舗の受付業務を3人の人間が遠隔で行うことに成功しています。

古田他にも、小売店や飲食店、サービス業店舗の映像を分析解析し、他機器と接続することでさらに便利なサービスを提供できるような取り組みも行っております。今後他業界にもどんどんセーフィーを広げていくことで、あらゆる業界の「現場DX」を推進しています。

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「競争」ではなく「共創」へ。
きっかけは「ビジネスわかってないね」の指摘

──ありがとうございました。では、ここから1つ目のアジェンダに入りたいと思います。セーフィーがパートナー戦略で事業を伸ばすことを選択した背景についてお伺いしたいです。初めはやはり直販だけをやられていたのでしょうか。

古田今の事業をスタートし、BtoB向けに動き出した当初は直販からスタートしました。当時から「売らせてくれ」と取引先の方々から言われることもありましたが、あまり仕組みとしてはできていなかったです。

ただ、事業展開をしていくなかで、とある企業の経営陣から「君たちはビジネスというものをまったくわかっていないね」と手厳しくもありがたいお言葉をいただきまして(笑)。「オセロは四隅から攻めるものだろう」と。要は、BtoBビジネスで勝つためには一定の定石がある、オセロの四隅に当たる“キープレイヤー”をいかに味方にできるかということだったんですね。

われわれの商流は、「BtoBで求めるカメラは、どこで販売しているのか」と「カメラが欲しいときに誰に問い合わせるか」の2点から絞り出すことができます。

「警備会社」、「通信」、「デバイスメーカー」、そして「既にビルの設備として入っているパターン」。この4つを私たちにとってのオセロの四隅と定め、パートナー戦略に着手した経緯となります。

──創業当時からハードウェアにも着手されていたんですか?

古田そうですね。クラウドカメラビジネスの特殊性は、ソフトだけではなく、ハードウェアも大事だということ。ただクラウドだけを提供するのではなく、お客様にとってはハードルの高い「カメラを設置工事する」という点がキーになると思っておりましたので。

ただし、我々はスタートアップ。ハードウェアメーカーではないので、カメラ自体を製造しているわけではありません。あくまでもカメラを買ってきて、そこに我々のクラウドにつながる専用ソフトを入れ、お客様や販売パートナーに渡して展開していくというビジネスになっています。

──パートナー戦略を実際に最前線で率いていた鈴木さんに、オセロの四隅を取るまでの舞台裏をさらにお伺いしていきたいです。どのように、直販からパートナーセールスに遷移したのか、またどのようにして「オセロの四隅」を定めたのでしょうか?

鈴木そもそも我々がパートナー戦略の有効性に気づくことができたのは、直販をしっかりとやっていたからです。創業当初、我々のような会社に直接カメラについて問い合わせがくるのはレアケースだったんです。

やはり「防犯カメラを付けたい」となれば、セコムさんのようなセキュリティ会社に問い合わせをしますし、「クラウド型カメラを付けたい」となれば通信が必要になるので、NTTさんのような通信会社に連絡すると思います。つまり、お客様とのタッチポイントは直販だけじゃない。この事実は、直販をやっているからこそ気づくことができました。

そこで、お客様とタッチポイントがある企業に先んじてセーフィーのクラウドカメラを配っておくことで、お客様がどこに問い合わせても良い状態を作る構想が生まれました。

──もちろん、初めからパートナー戦略がうまくいったというような単純な話ではなかったのですよね?

鈴木そうですね。最初はどのパートナーと組むと良いのかを手探りで検証していたので、爆発的には売り上げが伸びるというようなことはなく、直販のほうが早いのでは?というような迷いもありましたね(笑)。

それでも、「オセロの四隅」にあたるNTTさんやキヤノンさん、セコムさんなどと組むことができて、お客様とのタッチポイント数が一気に増加しました。

ただ、やはりタッチポイント数が増加したからと言って、いきなり売り上げに繋がるわけでもなく、最初はパートナー企業に同行してお客様に会いに行き、どのような期待値でパートナー企業から購入いただいているのかを見ていました。

最初の1〜2年、長くて3年ぐらいはパートナー企業に全てを委ねるということはせず、我慢しながら売り方を模索していったという感じです。

──なるほど。先ほど名前の挙がった企業はいずれも業界トップの企業ですが、そうした企業をなぜスタートアップであるセーフィーが口説くことができたのでしょうか?おそらく当時は売上や販売実績も少なかったですよね。

鈴木売上は当時全然ありませんでした。しかし、大前提としてプロダクトの強さ、技術力の高さは認めてもらっていました。その上で、いかにセーフィーを使ってもらうメリットを示せるかが重要でした。

例えばNTTさんが提供しているサービスでは満たせない機能を、セーフィーでは満たせるというケースがあればチャンスです。NTTさんのセールスの方と何度も交渉し、最終的には「(NTTでは満たせない機能があり)お客様に迷惑をかけるくらいなら、セーフィーのクラウドカメラを提供する方が良いのでは?」と思ってもらえるようにする。このように、1社1社一緒に提案したりという進め方をしました。

まさにこれが共創だといえます。パートナー企業も、まずは何よりお客様の課題を解決したいと願っている。そうであれば、お互いの損得は一旦置いておいて「もっと一緒に組んで広げていったほうがいいよね」という会話に持ち込むことができます。粘り強く交渉を続けていけば深い繋がりも生まれますので、一歩ずつあゆみを進めてきた形となりますね。今はNTTさんを例にしましたが、どの会社にもこのようなストーリーがあります。

──とはいえまだ、創業間もないスタートアップが業界トップ企業を次々と口説き落とすことができたなんて信じられませんね(笑)。他に意識していたことなどはありますか?

鈴木セーフィーのカルチャーにもある「夢を語り、巻き込む」を意識していました。クラウドカメラ、AIカメラがさらに増えていくのは未来のこと。なので、未来がどうなっていくのかを想いを込めて語ったといいますか、「一緒にやるとこういう未来が待っているので、ぜひ一緒にやってください」と5年10年先を見ながら口説いていったという感じです。

古田そうですね。まずPMFをして商流をつくるのがビジネスの鉄則だと思っています。その過程で、現場のファンを作り巻き込むことが重要だと思います。パートナー企業の営業担当さんに「セーフィーの商品、めっちゃいいと思うんですよ」と言ってもらえるくらいファンを作っていくんです。

でも、いくら現場がセーフィーのファンになってくれても「いや、この機能はうちに既に存在している」と風上で留められることも多々ありました。 その状況を打破するためには「このままじゃコンペで負けるかもしれない。だったらやはりセーフィーと組もうかな」「確かに組めばプロダクトは強いし、未来もあるし、一緒に進めるんじゃないか」と思わせていく。初めの2〜3年はこのように、地道に盤面をひっくり返す努力を継続したことで、業界トップの大手企業とアライアンスを組むことができるようになりました。

鈴木思い返せば、当時はネガティブな意味で競合の企業に呼び出しをされることもありましたね(笑)。その場で謝りながら、同時に「我々と一緒にやっていきましょう」と逆に説明して口説き落とすことをセーフィー全員でやっていました。

──セーフィーは株主構成もユニークですよね。大企業のCVCが目立っていますが、ここにはどのような狙いがあったのでしょうか。

古田もちろん独立系のVCさんから得られる経営上のアドバイスがあるのはわかった上で、やはり自分たちのものを一緒に売っていただける方、プロダクトをつくってくれる方を味方にした方がビジネスにレバレッジがかかるという思いが強かったんですね。

そこで、パートナーに製品を売ってもらって利益を得てもらう1段階目だけではなく、パートナーに株式も持ってもらうことで、セーフィーが成長した際に株式からもリターンを得られるという利益を2段階でもらえる仕組みを用意しました。

彼らにとってもより大きなメリットがありますし、出資というある種の血縁関係といいますか、親戚関係みたいな状態になれることで、出資先の社長に会わせてもらいやすくなったり、共同で記事を出したりと、互いを活性化させやすくなるという利点があります。出資関係、株式を上手く使うことでパートナー関係をより強固にしていくことはかなり意識しました。

──CVCは決定に時間がかかる、調整や交渉が大変そうといったイメージがありますが、そこも覚悟を持って経営メンバーで話されたということですか。

古田いきなり会社の本体を攻めるのではなく、まずはその会社のCVC、販売会社、系列会社といった関連会社から声をかけるなどはしていました。

やはり重たい意思決定をしたからこそ、向こうも重たい覚悟を持って一緒に動いてくれるので、そこは厭わずにしっかりと交渉し切る。また、出資交渉をすると独占販売を提案されることもありますが、スタートアップの成長を阻害するのであれば、ダメと言いきって強く交渉しきる。時間はかかりますが、半年あればどうにかなるかなと思います。

──ありがとうございます。視聴者の方々に向けて、スタートアップが大手企業と上手く付き合っていくためのエッセンスをお伺いしたいなと思うのですが、いかがでしょうか。

鈴木パートナーと長く付き合っていくなかでは、大手企業も大規模な方針転換、例えば組織変革や人事異動なんかは付き物だと思います。それにより、もし計画が頓挫しそうになっても、最初に中長期の目線を持って、5年10年先に互いがどうなっていたいのか、パートナーさんとクリアなビジョンを描くことがすごく重要だと思います。

弊社の場合はお金周りは古田が、事業の未来図はCEOの佐渡島と私で描き、「この未来に向けてやっていきましょう」と明確化しました。これがあれば、途中で先方の方針に変更があっても、目指す長期的なビジョンは変わらず良好な関係をパートナーさんと築いていけるかと思います。

古田入口としてビジョンは非常に重要ですね。鈴木が言ったように、スタートアップには技術とビジョンしかありませんから。その上で、先方の期待に応え続けることが大事です。先方の厳しい要件にちゃんと愚直に応え続ける。最初はセーフィーでも品質トラブルやカメラの接続不良、故障と言ったトラブルが起きていました。また初期設定に手間がかかる、作業時間がかかりすぎるといった問題点も上がってきました。

それらに真摯に向き合い地道に改善し続けていくことで、大企業の方にとって“使いやすいパートナー”の地位を固めていきました。

──ここで視聴者からいただいた質問を1つ取り上げたいです。「交渉上のハードシングスについてお聞きしたい」とのことですが、いかがですか?

鈴木卸価格ってあるじゃないですか。それまでは弊社が一方的につくったものだったんですが、大手パートナー企業になればなるほど「それでは目線が合わない」というので、いくらで折り合いをつけるのか交渉しました。「いくらを希望しているのか」など、相手の本音を引き出すのは1社1社かなり重たい交渉でしたね。我々が折れたところも結構あります。

古田ビジネスは人間関係なので、いかに濃い人間関係をつくっていくかが非常に重要なポイントだと思っていました。現場の担当をファンにし、別ルートから偉い人を紹介してもらうなど、いろんな人間関係を築いていましたね。

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パートナー戦略を駆使して商流をつくる。
その“泥臭い”舞台裏

──では、2つ目のアジェンダです。ここまでのお話でも既に、セーフィーが泥臭くパートナーセールスを推進してきたことが伺えますが、改めてどのようなプロセスでパートナーセールス組織を立ち上げ、販売戦略を練っていかれたのでしょうか?

鈴木1つ目のアジェンダの内容に近いんですが、我々のサービスは直販だけだと市場を取るのに時間がかかりすぎるので、時間を買うという意味でパートナーが必要なんだという意識を経営メンバー含めて全社で揃えることを意識していましたね。

ただ、パートナーと組んで「売ってください」だけではいいものにはならないので、ちゃんと自らの直販で得た知見を、パートナーにもインストールしてもらい販売促進につなげるというサイクルを回していました。

──直販を減らしていったわけではなく、同時に伸ばしていったと。

鈴木そうです。パートナーセールスが大きく動き始めたときに、営業部を直販とパートナーの部に分けたのが当時の流れです。

──組織の変化に関して、どのような変遷があったのでしょうか。

古田人数によって組織もビジネス形態も変わっていくので、組織を継続的に変え続ける覚悟がいると思います。当時は四半期ごとに組織変更していましたね。

組織が100人ほどの規模になってもなお「この課題を解決するのに相応しい人材がいないから少し寝かせる」みたいなケースもまだまだ多いかと思います。あるべきポジションを新たにつくって採用していくのは正しいんですが、多くが綺麗ごとの側面もあるので、まずは、現状の組織で改善できることはないか?という意識が大事なのではと考えております。

──次のアジェンダで組織のことについて伺おうと思っていますしたが、「組織の壁」に直面した経験もあったのでしょうか?

古田そうですね。1つは組織を柔軟かつ急進的に変えた結果、お客様との距離が生まれてしまったことがありましたね。担当者がコロコロ変わる状況になってしまった時期があり...これは手痛い失敗でした。今でも大きな反省点です。

私を含め、経営陣が100人規模の組織マネジメントをしたことがない人間ばかりだったので、いろいろな場所で意思疎通ができなくなるなど、しっかりと100人の壁に陥って苦労したことを覚えています。

経営陣がまずはマネジメントスキルを身につけなくてはいけないと思い、外部の研修機関を頼り、半年間ほど課題に向き合って経営陣同士でも率直なフィードバックを送りあって変わっていくことができました。

あと、ベンチャーでは部長クラスを経験のある外部から採用することも多いと思いますが、やはり経験のある人材ほど前職でのやり方や成功体験が身に染みている側面があり、弊社のスタイルと合わない部分もあったので、部長全員で集まってカルチャーにどう向き合うのかといった議論を何度も実施してきました。

──ありがとうございます。では一旦話を戻しまして、現在のパートナーセールスの組織の実態をお聞きしたいです。パートナーセールスと直販の住み分けなど、どうされているのでしょうか。

鈴木明確には住み分けておらず、パートナーと一緒に業界攻略をしていこうという姿勢をとっています。なので、パートナーさんだから、SMBだから、直販だからといったことは一切やっていません。逆にエンタープライズを落としたいという思いはあるので、「ここはパートナーさんのつながりが強いのでお願いします」「ここはセーフィーが開拓できそうなのでやらせてもらいます」と胸襟を開いてやっているのがポイントかなと思います。

──とはいえ、組織が一応別れているということでしたが、それぞれKPIは別に設定されているのでしょうか。

鈴木そうですね。アカウントセールスグループの直販部隊、パートナーセールスグループというパートナーを中心にしたグループと一応2つに分かれています。ただ、できるだけ情報共有ができる体制は整えていますね。パートナーセールスと直販がバッティングしたという事態がどこの会社でもあると思いますが、我々もやはりときどきあり、1つずつ向き合って調節しているのが現実です。

──利益率が高いのは直販だと思いますが、バッティングした際の調整はどう行っているのでしょうか。

古田利益率が高いというのはあくまでも粗利レベルの話であり、長期で考えたときには顧客獲得コストが結構馬鹿にならないんですね。そこも加味して考えると、実は営業利益ベースだとそこまで大きく変わるわけではなかったりします。

おっしゃる通り、KPIの設定をどうしていくのかは今でも難しいと感じるテーマですね。常にバランスを取りながら議論して試行錯誤しているところがあります。

──新規パートナーを開拓するときのプロセスなどはいかがですか?

鈴木やはり、エンドユーザーさんからどの経路で購入を決めたのかをヒアリングすることが多いですね。エンドユーザーさんから直接紹介してもらったりします。

ただ、業界によっても開拓プロセスは異なります。例えば、建設業界では、建設現場の機材などはほとんどレンタルするのが普通なんです。

建設現場で決裁権を持っているのは現場監督さんですが、彼らはできれば発注先を1個にまとめたいという希望があったりするんです。

なので、リース専門のパートナーさんを開拓し、リース先などにカメラを流すことで、現場にセーフィーのプロダクトを提供できるようにしていました。

──とはいえ、いきなり導入を決めるのが難しいところがあると思うのですが、ライトに使ってもらえる仕組みはあるのでしょうか。

鈴木セーフィーのカメラは1番安いと月額1200円ぐらいから始められるので、課長クラスで決裁できるんですよ。それを体感してもらうと「こっちの店舗にも付けたいね」となっていく。クラウドカメラは付ければ付けるほどメリットが出てくるので、そこからカメラが増えていき、決裁者も上がっていき、エンタープライズの全店舗に入っていくみたいな感じですね。最初から数千万、数億円といった見積もりを出すことはあまりないです。

──パートナー戦略を取るべき企業とそうではない企業など違いはあるのでしょうか?

古田BtoBビジネスはパートナー戦略を実行した方がいいんじゃないかと思います。エンドユーザーの方はその商品の代替になるものを買っているわけですよね。その商流を抑えて敵対するというよりは、売り子を味方につけたほうが話が早いと思います。あとは難易度が高いものや手間がかかるもの。そうしたものほど特殊な売り方でがんばっている人がいるので、その人たちに教えてもらう意味も兼ねて味方につけたほうがいいのかなと思います。

──セーフィーのパートナーセールスの今後の展望についてもお聴きしたいです。

鈴木将来的な取り組みとしては、よりパートナー目線に立って考えること。効率よくリードを取れる施策をパートナーと一緒につくり、彼らのCACを下げてあげる。そうするとパートナーが儲かりますよね。逆の立場になってみてうれしいことを進めていくことが必要かなと思います。

古田直近で言えば、セーフィーのカメラを一度売れば、その先に追加のAIサービスやソリューションなど、クロスセルの商材も生まれる。そんな期待を抱いてもらえるようにしていきたいです。

将来的には、セーフィーが起点となってエコシステムをつくり、セーフィーと関わるとビジネスチャンスがどんどん生まれるみたいな、夢がありながら実利も伴う、そんな関係を築いていきたいです。

実は、本日ご紹介したソリューションのなかには、我々がCVCとして出資してつくったものもあるんです。こういった活動も含め、エコシステムをどんどん広げていきたいですね。

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事業特性・戦略に紐づいたカルチャー設定が重要

──最後は組織カルチャーの作り方にも触れていきたいと思います。先ほど組織崩壊のお話も出ましたが、どのように現在のセーフィーのカルチャーに行き着いたのでしょうか?

古田そもそも、カルチャーというものは事業特性、戦略に紐づいてつくられるべきものだと思っています。

本日のテーマと近しいところでいえばやはり「三方よし」。というのも我々のビジネスはプラットフォームです。エンドユーザー、防犯カメラメーカー、AI解析をするパートナー、パートナーセールス、そして自分たち、全てのステークホルダーにとって実利があるモデルにしなければ成り立ちません。

鈴木「三方よし」はパートナーさんと関わる上で特に意識していますね。ビジネスモデルに直結しているため、社内でも自然と「三方よし」というワードが出ることが多いです。

他に通ずる部分としては「先義後利」ですかね。パートナーと組むとき、先に自分たちの利益を考えてしまうこともあると思うんですが、やはりそこは先に義を持ってきて、中長期的に見たときにあとから利が乗ってくるという考えをしています。ビジネスの重要な決断シーンにおいては、これらのカルチャーに立ち戻って考えることは多いですね。

古田事業特性や戦略に即して、必要なものや人を定義して言葉にひねり出すと、自然とカルチャーとして定義されていきます。そうしてできたカルチャーは日常行動と紐づくので普段から意識する機会が多くなると思います。

──ありがとうございます。最後に、お二人から一言メッセージをお願いします。

古田弊社は玄人っぽいビジネス経験豊富な人間が多くいて、新しい事業をどんどんつくっている会社です。パートナーセールスを参考にしたいから話したいという方も大歓迎ですし、一緒にやってみたいという方も大歓迎ですので、ぜひお気軽にご連絡ください。

鈴木今日ご視聴いただいた方の中から、将来我々と“共創”する方も出てくるかもしれません。そういった意味では、弊社に何かしら興味を持っていただいた方であればぜひお話ししてみたいです。本日はありがとうございました。

こちらの記事は2023年10月03日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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