「激動の教育業界の先導役にアスピレーションを感じずにいられるか」──学研の革命児Gakken LEAPに訊く、レガシーな産業&組織をDXする際の勘所

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インタビュイー
細谷 仁詩
  • 株式会社Gakken LEAP 代表取締役社長CEO 
  • 株式会社学研ホールディングス 取締役 

1986年生まれ。大学卒業後の2008年にJPモルガン証券に入社。13年にマッキンゼーアンドカンパニーに入社。同社パートナー就任後、21年4月に学研ホールディングス執行役員に就任、22年に上席執行役員、23年に取締役就任。21年12月にはGakken LEAPを設立し、代表取締役CEOに就任した。

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私たちが子どもの頃から、大人になっても何かしらの「教育」を受けてきたように「教育」の対象は広く、分野や世代によって内容や教え方が異なる。デジタル時代の到来でその傾向はさらに強まりつつある。教育を受ける側のニーズが個々人のレベルにまで細分化・多様化したのだ。

それならば、ソフトウェアの力が活きるはず……とスタートアップパーソンの諸君は感じるところだろう。まさにそんな挑戦を大企業の中で押し進めているあの企業に、今回は再び迫りたい。

「教育」事業で大きなインパクトを出すためには「マルチチャネル / マルチプロダクト」だと、Gakken LEAPのCEO・細谷 仁詩氏は1年前、FastGrowのインタビューで語った。同社は日本の教育産業に大きな影響を及ぼす大企業・学研グループのデジタル化のみならず、多くの事業で戦略、実行におけるあらゆる変革を推進する組織として、2021年に誕生した新しい企業である。

その学研グループがこの度2023年11月に、2024〜2025年の2カ年を対象とする中期経営計画「Gakken2025」を発表。「SHIFT」をテーマに据えたこの新中期経営計画の策定には、Gakken LEAPの細谷氏をはじめ同社の複数メンバーがリードした。

また一方で、2023年6月にはGakken LEAPオリジナルのプロダクト『Shikaku Pass』もリリースしてもいる。これら全てを同時並行で手がけてしまうGakken LEAPが推し進める前例のない大きな変革とは。前回インタビューからの1年を紐解きながら明らかにしていく。

  • TEXT BY YASUHIRO HATABE
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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「エンジニア集団」から「業界と学研グループの先導役」へ

1年前、Gakken LEAPの設立から1年経過した当時のインタビューでは、教育分野でコンテンツや知見を長年積み重ねてきた学研グループが持つマルチチャネル / マルチプロダクトをキーワードに日本の教育を改革していく展望が語られた。

そこからの1年間で、Gakken LEAPはどのような進化を見せたのか。

細谷まず1つには、自社プロダクトをローンチしたことを強調したいですね。

2023年6月に、Gakken LEAP独自のBtoC・BtoBプロダクト『Shikaku Pass』を発表しました。事業戦略を練り、開発、マーケティング、販売までを完結できる人材を含めた体制・ケイパビリティが社内に整ったということでもあり、この1年で一番の進化と認識しています。

もう1つの進化は、学研グループ内の複数のデジタルプロダクトに携わるようになり、マルチチャネル / マルチプロダクト戦略におけるプロダクト数が増加し、各チャネル・各学齢とのかかわりの深さも格段に強まったことです。

ここで言う「深さ」とは、今あるプロダクトを単にデジタル化するだけでなく、戦略やビジネスモデルから練り直すところまで踏み込むことを指します。戦略を練り直し、試行錯誤をしながらプロダクトを変えて、売り方を変える。こうした事業モデルの変革と言える部分まで携わり始めたのがこの1年でした。

こうした大きな2つの進化の過程で、「採用する人材の幅が拡がった」と細谷氏は話す。

細谷これまでは、グループ内外に対してGakken LEAPを分かりやすく説明するために、自分たちのことを「エンジニア集団」だと謳っていました。もちろん、人材採用の場面でもその色を強く押し出しながら。

私の頭の中でも、Gakken LEAPはAIなどを含めテクノロジー色を強めた方向に行くと想定していましたし、エンジニアを中心とした採用になるだろうと思っていました。

しかし、2023年の初頭から、それだけではインパクトを出し切れない事例が出てきて、採用戦略も修正をしていくことになりました。

プロダクトのバリューチェーンの要素のそれぞれで、エキスパートを揃えることがアジャイルに事業を動かし、改善していくには不可欠ということが身に染みてわかりました。そこで、直近の半年間は、プロダクトをつくるエンジニアだけでなく、戦略を考え実行する上流のコンサルタント経験者や、デジタルの売り方に精通したマーケティング人材、BtoBのセールス経験者などをバランスよく採用してきています。エンジニア組織でなくバリューチェーン全体を創造し、改革もする事業開発組織を志向するようになりました。

Gakken LEAPとして挑戦できる範囲が広がりましたし、自社のプロダクトをリリースでき、学研グループ内でも様々なアウトプットができている。これは想定以上にポジティブな進化だと思います。

現在の姿まで成長した理由は何だと考えているのだろうか。

細谷失敗を多く経験したことでしょうか。例えば、『学研教室オンライン』や『学研オンエア』など、教室・塾のプロダクトのデジタル化に幅広く携わる中で、戦略がポストコロナ時代に沿わないものが見えてくる。しかし、どんなに優秀なエンジニアでも、エンジニアだけでそれを変えようとすることは難しかったんです。

Gakken LEAPの社員が学研グループの下請けであるかのように「言われたことだけをやっておけばいい」という意識を持った瞬間に、我々の存在意義はなくなります。最終顧客の需要をつかみ、「本当にすべきこと」を特定し、実際に取り組むためにどうすればよいか、メンバーで考え尽くしました。

その流れの中で、事業の上流から下流部分までの全体を見られる人材や、学研グループ全体を見通して弱い領域のプロフェッショナルを採用し、事業開発チームとして再編したことが、ポジティブな結果に繋がったのだと思います。

既存のプロダクトをデジタル化する際、たとえばユーザーインターフェース(UI)を時代に合ったものに変えるなどして表面的な品質を改善するだけで、「これなら売れるだろう」という状態になることはよくある。

だが、そうしたプロダクトアウトな思考に偏ってしまっては、なかなかうまくいかないこともある。事実、細谷氏も実際に「売れなかった」と振り返る。

そのような失敗を経験したことで「そもそものコンセプトに問題があるにも関わらず引きずってしまっているもの、ニーズはあっても売り方に問題があるもの」など、根本的に辞めるべきサービスやフィックスすれば成功の期待が持てるものを選別していった。細谷氏は取材にこたえる中で「需要を捕まえる」という言葉をしばしば用いるが、この「需要」が社内外でどこにあるのかを追求する姿勢が、Gakken LEAPのメンバーに浸透しているのだろう。

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プロダクトリリースにM&A、そしてグローバル。
リスクを顧みず大胆に仕掛ける

学研ホールディングスは2023年11月10日、中期経営計画「Gakken2025〜SHIFT〜」を発表した。その前の3カ年の中期経営計画「Gakken2023」が発表された2020年時点では細谷氏は学研グループに参画しておらず、2021年に設立されたGakken LEAPは影も形もなかったわけだが、この先の2年の展望を理解するためにも、まずは過去3年間を学研グループとしてどのように総括しているのかを聞こう。

細谷前の2021年〜2023年の中期経営計画は、今まで「0」だったものを「1」にする、あわよくば「10」にしようというものでした。キーワードは「デジタル」と「グローバル」。

グローバルについては、学研ホールディングス内にグローバル戦略室ができ、海外事業の経験者を集めて一定の体制は整いました。その上で、ベトナムの教科書出版社に出資するなど、少なからず種まきができたという認識です。

デジタルも同様で、2021年時点ではGakken LEAPは存在すらしていませんでしたから、まさに「0」だった。そして2021年12月にGakken LEAPを設立して「1」になり、デジタルで戦える体制が整ってきました。

提供:株式会社Gakken LEAP

前の中期経営計画の定性的な進捗を、細谷氏はこのように分かりやすく説明してくれた。ただ、「Gakken2025」の策定を報告するリリースの中では、業績・重要指標評価に関して「新型コロナの流行や円安の進行、原価高などの環境変化を背景として、教育分野の失速を主因に計画未達」としている。そうした前の3カ年の積み残し課題を解決し、新たなステージに向けて弾みを付ける2年間がこれから始まるということなのだ。

細谷この先の2年は、前の3年で整えた体制のもとで「どれだけリスクを顧みずに大胆なことができるか」が重要だと思っています。

その意味では、『Shikaku Pass』自体がリスクをとった「大胆な」取り組みの1つと言えます。

2つ目は、教室・塾の事業。塾グループのM&Aにより、売上高では塾業界日本トップに躍り出ました。その基盤を使ってデジタル展開することで、さらに大きなインパクトを生み出します。

3つ目は、グローバルですね。中期経営計画の中でも明記したように、対象地域を東南アジアに定めました。ベトナム、インドネシアなどで種まきしつつ、どのように花を開かせていくか。これらが大胆に取り組むべき3大テーマだと考えています。

この「大胆な」という部分は、学研グループがこれまであまり挑戦してこなかったことであり、慣れていない部分でもある。リーダーが勇気をもって具体的な方針を決定し、一度決めたことは全員でやり切る。組織風土としてそういう方向へ「SHIFT」することが最重要なテーマだと思っています。

中期経営計画の策定に当たり、学研グループは直近の社会と教育業界の情勢をどのように捉えたのだろうか。総務省が行った2023年の家計調査において、教育費は1〜10月累計で実質9%程度減少し、他のどの費目よりも減少率が大きかった。「これは、1年前には大方想定ができていたこと」だと細谷氏は話す。

細谷なぜなら、教育は家計において他の出費に比べると比較的長期的な投資だからです。物価高で家計が圧迫されると、短期的に効果が得られる投資に傾くことは容易に予測できますね。23年はそれに加えてコロナが5類に移行したため、外出や外食の需要が急回復しましたが、これも概ね想定できたことでした。

しかし、急激に社会全体を覆う変化に対して、想定をしていても大企業グループが受ける影響は大きくならざるを得なかった。

長期的には少子化の影響に抗うのは難しいですが、この数年の減少幅からは反動があると見ています。コロナ回復の特需が落ち着いて、家計の投資が平準化してくることを考えると2024年の教育業界の展望はそれほど悲観的ではありません。実際、23年10月からは家計調査の教育出費は前年同月比プラスに反転しました。一方で、戻ってきた教育投資が古くから存在する商品・サービスに戻ってくるのではありません。教育手法や内容、リカレント・リスキリングなどトレンドを的確に捉えるものを出せるかが学研グループ全体のミッションであり、2024年のテーマになると考えています。

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Gakken LEAPがグループ内に踏み込んで、「SHIFT」を先導していく

実はこの新中期経営計画「Gakken2025」の策定には、Gakken LEAPが大きく関与している。そもそもこの策定チームのリーダーは細谷氏が務めており、他にもGakken LEAPのメンバー複数名が参画した。

細谷今回の中期計画は、全社の20-50代の若手を含む将来有望な社員50名程度を結集して、1.5年かけて策定しました。このグループのリーダー役を担ったのは、私を含むGakken LEAPのメンバー。各事業分野のメンバーを巻き込み、納得感のある戦略を策定し、具体的なアクションプランに落としていった。

エンジニアリングだけではない領域でGakken LEAPのメンバーが活躍していくことで、グループ内で認知され、頼られる存在になってきたと感じています。

今回の中計は策定中に外部環境の変化などにより当社業績も計画を下回るトレンドに変化しました。どのようなテーマで次の2〜3年間を進めばいいのか、変化に応じて様々なテーマを考え、最終的には「SHIFT」というテーマに決めました。

この先の2年間で、Gakken LEAPがグループにより深く浸透していくことが学研グループの成功に繋がります。これまでの活動のなかでGakken LEAPがどのような旗を揚げ、どのような大胆な変化を、どのように起こそうとしているのか、示すことが出来るようになりました。Gakken LEAPは「SHIFT」の先導役としてグループをけん引していきます。

提供:株式会社Gakken LEAP

細谷氏はGakken LEAPの代表であると同時に、学研ホールディングスの取締役も兼務している。細谷氏だけでなくGakken LEAPの社員の一部は、Gakkenの経営戦略室やデジタル戦略室のほか出版部門まで、グループ内のさまざまな部署を兼務する。そのため、それぞれの会社・部署に籍を持ち、その名刺を持って活動している人も多いそうだ。それはビジネスサイドに限らず、エンジニアにおいても同様である。

Gakken LEAPに入社すると、全員がグループ企業の事業部に入り込み、デジタル化やそれを前提とした戦略の見直しを進めていくことになるのだろうか。

細谷Gakken LEAPのなかでバリューチェーンが完結する事業と他のグループ会社と協業してやっていく事業があります。新しく参画してくれたメンバーは、入社後しばらくの間はGakken LEAPで完結する仕事をしてもらっています。我々としても、その人の得手・不得手を把握・理解した上で、最もインパクトが出せる場で活躍して欲しいからです。

そうやって半年ないし1年くらい仕事をすると、1つのプロダクトを生み出しグロースさせていくまでのフローや、教育業界特有のチャネルやマネタイズや顧客獲得投資の難しさが一通り分かってくるので、まずはそこで教育業界で事業を行う実情と打開に向けた仮説を身につけた上で、グループ企業で別のプロダクトに関わってもらう形です。

今まで学研グループは戦略 / 戦術を考える部分や、マーケティングのほとんどを外部任せにしていたので、それぞれ知見のある人が1〜2人入り、具体的な策を提案し、場合によっては自分たちがやってみせることで面白いぐらいにインパクトが出ます。そしてそのサイクルを一度回すと、「SHIFT」、つまり変わっていく感覚を体感として持てるようになるんですね。

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『Shikaku Pass』はGakkenのリブランディングと相まって若手層へのリーチを狙う

そうしたグループのDXを推進する動きと並行する形で、Gakken LEAPは2023年6月、大人向けの資格学習アプリ『Shikaku Pass』をリリースした。半年以上が経過した今、細谷氏は現状をどのように捉えているのだろうか。このセクションでは、プロダクトカンパニーとしてのGakken LEAPのトップという目線で振り返ってもらう。

細谷まだ学べる講座数が少なく種類が限定的なこともあり、初期のユーザー獲得の難しさを実感しているところです。

ただ、新中期経営計画ではリカレント・リスキリング領域の強化も謳っており、この領域については『Shikaku Pass』もその一翼を担っていくことになるため、「これから」が重要だと考えています。

先ほど「『Shikaku Pass』自体がリスクをとった大胆な取り組みの1つ」だとお話ししました。学研グループにとって、デジタルサービスは相対的にリスクが大きいものです。グループ内の他のプロダクトと比べると、教室・塾などは集客基盤が成熟していますし、指導者とのアタッチメントも強いためリテンションも高く維持できる。

一方、新しい領域でデジタルサービスを展開する場合は、日本全国を商圏とし、既に認知を拡大している競合などと競争をする必要が出てきます。サービスの作りこみや、運用、顧客マーケティングを含め実額として、これまでのリアルサービスより巨額な投資が必要になります。

細谷どんな事業だろうと、目指すは全国No.1のシェア。コングロマリット経営をしている学研グループにとっては、一つひとつの事業創出の意思決定において、相応の覚悟が必要になります。

「考えられるすべてのセグメントで新しいサービスを作って全国No.1にする、グローバル市場も開拓する」という意思決定ができるほどの知見や経験は、Gakken LEAPにはまだ蓄積できていません。だからこそ、そのチャネルと顧客基盤をもつ学研グループとの連携はインパクトを出す最短かつ最良の方法です。大人向けのチャネルや顧客基盤を学研グループではあまりもっていないので、Gakken LEAPでは、まず大人対象のリカレント・リスキリング領域にフォーカスし、『Shikaku Pass』のローンチをスピーディーに進めたということになります。

デジタルで資格取得に向けた学習が可能なこのサービス。昨今、世の中の注目を集めるリカレント・リスキリング領域というが、具体的にどのようなコンテンツラインナップになっているのだろうか。

細谷2023年6月のリリース時に用意したのは、「ファイナンシャル・プランナー3級」「基本情報技術者」の2講座のみでした。しかし11月から「ITパスポート」、12月からは「ファイナンシャル・プランナー2級」が新たに加わっています。2024年3月には「TOEIC」の講座が始まり、その先も「宅建(宅地建物取引士)」やAWS関連の講座や、投資や不動産運用などの「お金」にまつわる実践的な講座も準備中です。スピーディにラインナップを増やしていきます。

また、現状でリーチしてくれるユーザー層は、従来のGakkenの顧客層である40〜50代の男女が中心です。今後は20〜30代の層に認知を広げていく必要がありますから、そのためのラインナップに調整していきます。加えて、ここはGakken LEAPが単独で攻勢を仕掛けるわけではなく、「Gakken」のリブランディングも急ぎながら並行してマーケティングに注力し、若年層にリーチしていく考えです。

その後12月には「学研グループの羅針盤」と題された、グループとしての新コーポレートアイデンティティが発表されたが、これも新中期経営計画と連なるリブランディングの動きだと言えよう。

この中では新たにAspiration(大志)「人の可能性をどこまでも追求する会社へ」を掲げ、認知が薄まりつつある若手層を含めたあらゆる世代をターゲットにしていく意思がうかがえる。

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業界を「SHIFT」することにアスピレーションを感じずにいられるか

今回の細谷氏のインタビューを通じて、Gakken LEAPが持つ複数の“顔”を感じた読者もいるだろう。そう、ここでまとめるならば、大きく2つの側面があると言える。

1つは、学研グループの経営やそれぞれのグループ会社が持つさまざまな事業・プロダクトのDXを推し進めるコンサルティング的側面。SECTION 3で語られた「グループ企業に入り込んで変革を起こしていく」のはまさにその側面の動きだ。

そしてもう1つの側面は、一事業会社として自社のデジタルサービスを開発し、スケールさせていくスタートアップ的側面である。

これらを並行して行う中で、学研グループ内のさまざまなプロダクトに関わる中で、Gakken LEAPとのスピード感の違いを感じることはないのだろうか。

細谷0から1をつくる動きよりも、100を101にする動きは、どうしてもスピードが遅く感じられがちです。ただ実際のところ、ひとつのプロダクトではこの「教育という業界全体」にインパクトを与えるのに膨大な時間がかかるものです。

その点、学研グループには、教室・塾の指導者や彼らが生み出してきたコンテンツやチャネル、顧客基盤という資産が78年分蓄積されているからこそ、一緒に進めることでスピードを加速していくことができます。特に、最前線で子どもや顧客(保護者)と接している先生たちは、これからの教育を支えていく最高のパートナーです。

先生たちは、教育現場における「変えるべきもの」と「変えるべきでないもの」の感覚値を持っています。我々がDXという文脈で考えていることが全て正しいわけではないからこそ、指導者さんたちとの関係性をさらに強固にし、支援していくことで、スピードをどんどん上げていくことができる。教育業界で変革に挑む醍醐味とは、ここにあると思っています。

非常に大きなアセットを持つ学研グループの変革を担いつつ、自ら事業やプロダクトを開発していくこともできる。細谷氏もほかのメンバーもこの両立を楽しんでいるようだ。

そんな環境に魅力を感じる読者もきっといるだろう。新規採用はこれから加速していくという話もあった。そこで最後に強調されたのが、「どのような人がGakken LEAPに来ると活躍の場があるか」についてだ。

細谷教育事業に興味があるのであれば、新しい作り方、売り方、教え方に「SHIFT」していくことに興味と志があることは非常に重要です。

では、志がないと駄目かというと、そういう訳ではありません。コンサルティングファームやプロフェッショナルファーム、銀行などにいて経営の上流を見てきた人が、Gakken LEAPの“コンサル的側面”において活躍する機会は大いにあると思っています。私も前職はマッキンゼーで経営者を相手に上流の仕事をしてきた身ですし、その経験を生かして今まさに奮闘している最中です。

細谷また、Gakken LEAPの『Shikaku Pass』を垂直で立ち上げたという点だけを見れば、今のところシングルプロダクトのスタートアップと代わり映えしないと思われるかもしれません。しかし、学研グループというコングロマリットを変革し、全体の経営戦略まで見ているという意味では、「考える」対象は非常に幅広いことがお分かりいただけると思います。

「教育」と一口に言ってもその裾野は広く、手がける事業やプロダクトの種類は多岐にわたります。ですから、自分の実力を試してみたい方はフィットするポジションを見つけられる可能性が高いでしょう。

Gakken LEAPは現在は40名ほどの組織だ。学研グループ全体では約28,000人の従業員がいる中で、約半数が塾講師などを含めた教育に関わる面々である。

細谷その中で、出版や教材などコンテンツやサービスをつくる人が1,000人くらいと考えると、Gakken LEAPがそれと同規模の組織になれば、多大なインパクトが生み出せる。今はグループの中でも焦点を絞っていますが、最終的にはグループ内の全ての企業と連携していきたいと考えています。

そのために、将来的にはGakken LEAPも数百名規模に拡大していく考えです。そう考えると、今のGakken LEAPはまだ数十名規模の未成熟な組織です。これからの事業成長と共に組織も拡大していくダイナミックさを味わいたい人にとっても、挑戦し甲斐のある環境だと思います。

「大企業か、スタートアップか」という対立軸で語られることは未だに多い。しかしGakken LEAPにはその両方の要素が同居し、いずれに転んでも“当事者”として関与できる。そのような企業はそう多くないだろう。幅広い事業、豊富なコンテンツと制作体制があり、バリューチェーンの上流から下流までフィールドがあるGakken LEAPなら、さまざまな知見・経験を生かす場がある。そこで自身が活躍する可能性を考えてみてはどうだろうか。

こちらの記事は2023年12月28日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

畑邊 康浩

写真

藤田 慎一郎

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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