INTERVIEW
安倉 宏明
17-12-20-Wed

「日本が好きだから、まずは世界を盛り上げる」
──ベトナム発グローバルベンチャーICONIC安倉流“世界の捉え方”

TEXT BY MISA HARADA@HEW
PHOTO BY YUKI IKEDA
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ベトナム(ホーチミン、ハノイ)、インドネシア(ジャカルタ、チカラン)、
マレーシア(クアラルンプール)、シンガポール、日本(東京)の5カ国7拠点にて
転職支援・人材紹介・組織人事コンサルティングを行う
ICONIC(アイコニック)グループの代表取締役社長・安倉宏明。

日本が好きだからこそ、アジア全体、世界全体に利益をもたらすことを考えていく。

安倉流の“世界の捉え方”とは?

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ベンチャー・リンクで“お豆腐屋さん”をしていた日々

安倉が起業したのは、「社会にインパクトを与えたい」という動機からだった。ビジネスにおいて世の中に影響を与えるとなると、自然と起業という選択に行きついた。

大手と呼ばれる企業から内定をもらっていたものの、「28歳までに会社を起こす」と一度決意したなら、その目標に近づけるような場所で働かなければならない。

そこで安倉が選んだのが、起業志望の若者たちが当時集まる、今で言うサイバーエージェントやディー・エヌ・エー、リクルートのような存在だった企業、ベンチャー・リンク。

まずはここで、経営コンサルタントとしてスキルを積もう──。しかし、ベンチャー・リンクで安倉は“お豆腐屋さん”をすることになる。

安倉「『ベトナムに来る前は何をやっていたんだ?』って聞かれて、『お豆腐屋さん』って答えると、皆に冗談だと思われるんですが本当の話(笑)。私自身がお豆腐を作って売っていたわけではなくて、ベンチャー・リンクで“店舗の1坪程度のスペースを使ってお豆腐を売る”という事業に携わっていたんです」

つまり、当時ベンチャー・リンクが行っていたのは、売り場の一部を活用したローリスクなフランチャイズモデルだ。そこで安倉は社内ベンチャーという形で、ゼロからの立ち上げを経験することになった。

しかし、1年目はクレーム対応の記憶ばかりが強い。加盟店からの「豆腐が届いていない」といったクレームになんとか応えていく日々だったが、物流や加盟店支援などフランチャイズ拡大に伴うすべての作業を経験した。

がむしゃらに働いていた3年目。安倉は自分で起業するときのビジネスモデルを何も考えていないことに焦りを感じていた。28歳までに会社を興すなら、そろそろ動き出さないといけない。

そんな焦燥感の中でふと頭の中に入ってきたのは、「日本は人口が減ってきている」という事実だ。

安倉「日本の労働人口は減っている一方で、どんどん経済が盛り上がっている国もある。だからビジネスを始めるなら、“これから伸びていく国”だなって。起業する場所は、日本でなくてもいい。それで細かいことは決めないまま、とりあえずベトナム行きを決めたんです」

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「“ベトナムのため”は本当か?」と自問自答

ベトナムではまず、知り合いが代表を務めるIT会社で広告営業をして1年間働いた。安倉がそのときにも変わらずに抱いていた感情は「社会にインパクトを与えたい」というものだった。

安倉私がやりたいのは“社会にインパクトを与えること”で、そのためのモノ作りをしたい。社会にとって価値あるものを生み出すとなると、真っ先に思いついたのは、単純ながらインフラだった。その中でも、生活する人々の足となる鉄道に興味を持ちました。日本でこれから鉄道王になるのは無理だけど、ベトナムならいけるんじゃないかと本気で思ったんです。

しかし、鉄道を1メートル敷くのに1000万円ほど費用がかかると知り、自己資金300万円だった安倉は撃沈。新たに事業内容を考えることとなったが、「社会にインパクトを与える」ための事業といっても、いまいちピンと来るものは見つからない。

そう悩む中、ベトナムが“途上国”であることを意識し始めた。

安倉国が成長するために必要なのは、技術やノウハウなんです。そして後発の立場であれば、イチから生み出すよりも、先進国から吸収した方が早い。じゃあ何が重要かと考えたときに、“人”が持つ知識・ノウハウだなと。日本人がベトナムで働いて、それによってベトナムの方が技術やノウハウを習得して、国が成長していく。素晴らしいことだと考えました。

その考えのもと、2008年にベトナム・ホーチミン市にてICONIC Co., Ltd.を設立した。しかし当時の安倉は、実は「自分は本当にベトナムを良くしたいと考えているのか?」と自問自答していたという。

確かにベトナムの成長に繋がる仕事をしている実感はある。しかし、やはり母国である日本が大切。自分の“ベトナムのため”という言葉は噓っぽい響きをしているのではないか。

だが、仲間たちと一緒に働くうちに思考は少しずつほぐれていった。

安倉ベトナム人の仲間たちと一緒にご飯を食べて、夢を見て、働いて、苦楽を共にしているわけです。もちろん私は日本人だから、皆ほどベトナムを想うことはできないかもしれない。でも、なにもNo.1に想う必要はないと気がついたんです。宗教の違いと一緒で、相手をリスペクトして共存していけばいいと。

アジアを飛び回る日々を送る安倉は、世界に対する考えを面白い例え話で聞かせてくれた。

例えば、あなたがJリーグで名古屋グランパスを応援しているとする(安倉は名古屋出身)。 サポーターとしてグランパスの勝利を願うのはいいが、海外にはセリエAやプレミアリーグ、リーガ・エスパニョーラ、ブンデスリーガと魅力的なサッカーリーグがいくつもある。

そんな中で、Jリーグの他チームをむやみに敵対視しても仕方ない。大切なのは、Jリーグ全体が切磋琢磨してレベルを上げていくこと。それが結局、めぐりめぐって応援するグランパスの利益にも繋がるというのだ。

安倉私たちは日本で生きていても、日本で全部が完結しているわけではありません。ベトナムの発展は、このグローバル社会では日本や他国のためにもなる。そうやって皆が成長して豊かになれるなら素晴らしいことじゃないですか。

だが安倉は、「日本人だから日本を応援したい」というのは、いずれは消える考え方だろうというのだ。

将来は国家という概念だってなくなるかもしれない。国同士の垣根がどんどん低くなっていく現代において、人々の個性を活かした働き方や勤務先を見つけることを支援するのがアイコニックグループのミッションだ。

安倉もう日本人だから日本で働く、ベトナム人だからベトナムで働くという時代ではありません。働き方や雇用形態も変わっていく時代の中で、国境を越えて経済を回すために必要な『国境を越えて働く人達のプラットフォーム』を創っていきたいんです。1人ひとりが最もバリューを発揮できる国や場所にいることが幸せにつながっていくと考えています。

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ベトナムから創業した“本物”感が大手には出せない強み

そんな安倉が現地でのサービス開発で重視しているのが、先進国と比較してアジアの途上国は「シンプルなモノを求めている」ということだ。

安倉日本にいる知人から便利なSaaS型ツールを紹介されることもありますが、それらを導入するよりも現地の人を1人雇ったほうが想像していなかった価値を生み出せたり、コスト面も抑えられたりする。そういう現地の実態は知らない人は多いんですよね。

安倉は、「日本と同じ考え方で人材サービスをやろうとすると、現地のニーズとズレるんです」とも説明した。

現時点では、クラウドソーシングやリモートワークのような新しいサービス・働き方よりも、従来のオフィスに集う働き方が現地では好まれる。それが今のアジアのリアル。クライアントに向き合う上で、今必要とされていることは忘れてはいけない。

ICONICと同じく、アジアで複数の国にわたって人材サービスを行っている同業他社となると、ほとんどが大手企業だ。大企業を相手にアイコニックグループが戦っていくためには、なにか奇策があるわけではない。

上記のようなアジア途上国が今あるフェーズを理解し、仲間たちとミッションを共有した上で、「当たり前のことを当たり前に実践し続ける」ことしかできない。

また、大手日系企業と異なり、創業の地がベトナムであるという事実は、まさにアイコニックグループの強みだ。

安倉アイコニックグループは、ベトナムからスタートしていて、ビジネスの現場はアジアです。たとえ事業内容が同じ他社があっても、“現地に則している”という点では負けないと思っています。

現在、安倉は1カ月の間に東京とホーチミンを何度も行き来する生活を送っている。「他の拠点は4半期に1回くらいだから」と言ってはいるが、それでも多忙であることに間違いはない。メンバーとの日々の物理的な距離に問題はないのだろうか──。

「オンラインチャットツールを駆使すれば業務に支障はない」と語る安倉だが、四半期に1度は各拠点を必ず訪れ、メンバーに対面でビジョンを語る彼の姿からは、合理性だけで物事を考えない、メンバーを想う人情が感じられた。

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5つのグローバル拠点を設立準備中。本物のグローバル人材輩出を狙う

東南アジアに軸を置いているため、女性メンバーが活躍しているのもアイコニックグループの特徴だ。

東南アジアで人材サービスをするとなると、人材の7~8割が女性になるという。とくにマーケターやコンサルタントといった内勤がメインの職種は、ほとんどが女性。出産や子育てなどがしやすい環境であるがゆえだ。

そんな安倉率いるICONIC(アイコニック)グループは今後、台湾、上海、大阪、香港、バンコクとグローバル拠点を拡大していくことを計画中だ。各拠点の責任者は、現地での営業や自社メンバーの採用なども含め、現地のすべての業務を任されることになる。

「マレーシア拠点の立ち上げを当時26歳の社会人3年目の女性に託したこともある」というが、日本とは異なる商習慣を学ぶ必要があるため、相当な試練が待ち構えているだろう。

安倉は「そういう異国での難局を楽しめる人には、年齢を問わず今後も増え続ける世界の拠点責任者を担ってもらいたい」と、嬉しそうに最後に語った。

安倉東京で普通に働いてお豆腐屋さんの仕事をしていた私が、何の縁もゆかりもないベトナムにいきなり行って会社を作って、仲間が増えて、今ここにいる。そんなところがアイコニックグループのユニークさだと思うんです。私たちが楽しさを感じていることを一緒に楽しんでくれる人にジョインしてもらいたい。そう願っています。

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「日本が好きだから、まずは世界を盛り上げる」 ──ベトナム発グローバルベンチャーICONIC安倉流“世界の捉え方”
株式会社アイコニックジャパン 代表取締役社長 安倉 宏明
[撮影]池田 有輝

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