連載睡眠と仕事力

がんばるビジネスマンが貯めがちな睡眠負債とはなにか?

小林 孝徳

自身の睡眠障害の経験をきっかけに、この社会問題を解決すべく2013年にニューロスペースを設立。企業向け睡眠改善プログラムで健康経営や働き方改革を推進し、のべ1万人以上のビジネスパーソンの睡眠改善をサポートしている。人々が最高の笑顔で毎日の睡眠を楽しみ仕事とプライベートを120%充実できる社会の創出を目指す。

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いまビジネスパーソンの間で、睡眠負債がキーワードになっている。負債と聞くと、借金のように一括返済できたり、反対に一気に貯蓄できたりできる概念のような印象を受けがちだが、そこに落とし穴があると専門家が教えてくれた。

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睡眠負債を理解していますか?

人にはそれぞれ最適な睡眠時間があります。そしてそれは年齢によっても変わっていくものです。

この最適な睡眠時間の判断基準は、「起床してから4時間以内に眠気をもよおさず脳がしっかりと働いているか?」というもの。

睡眠が足りていないと、日中の眠気や作業能率低下などにつながり、それが様々な疾患の原因になることも分かっています。

この状態を「睡眠負債が蓄積されている」と言います。

この睡眠負債が蓄積された結果、仕事でなぜかわからないけど集中力が持続しない、他のことに気が散ってしまう、物事をなかなか決断できない、怒りっぽい、他責思考になる、仕事中の居眠りしてしまう、というような状態が発生するんですね。

今や、睡眠負債は現代社会で働く上で無視できない問題となっています。

この睡眠負債という概念ですが、負債という言葉通りお金で言う借金から来ている概念です。しかし実は、お金とは大きく違う点があり、そのポイントを知らないと取り返しのつかない、致命的な問題になりかねないんです。

そこで、がんばる皆さんのようなビジネスパーソンには知っておいていただきたい、この睡眠負債という概念の注意点を2つ、お伝えします。

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注意点その1. お金と違って一括返済できない

前述のように、睡眠負債が溜まっていると、仕事や健康に様々な支障をきたすことになります。

負債というのはお金で言う借金であり、返済するお金ができたら、一括で返済する人もいますよね。

しかし、睡眠に関してはこの一括返済が逆効果となるため注意が必要です。

私たちの睡眠は、起きて光を浴びたタイミングから睡眠覚醒リズムがスタートし、そのリズムがしっかりと刻まれることで昼間に眠くなったり、夜に眠気を感じたりします。

そして人間にとって重要なことは、このリズムを一定に保つ、ということです。

ところが、例えば平日睡眠時間を削って仕事をしたことで疲れやストレス、そして睡眠負債がたくさん蓄積されている人が、土日に一気にその負債を返済しようとして、正午くらいまで寝たとします。

そうすると、いつもと起きる時間、光を浴びる時間の両方が毎日より4~5時間ほど後ろにずれてしまいます。その結果、翌週の月曜日に、「身体は寝ているが起きなければならない」という状態に陥り、なかなか起きれない状態、いわゆる「ブルーマンデー」という現象に悩まされることになるのです。

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注意点その2. お金と違って睡眠は貯蓄ができない

例えば、来週の月曜日と火曜日がとても仕事が忙しくなりそう、そして睡眠時間が短くなりそうとわかっていたとしましょう。そうすると、前もって土日にたくさん寝ておこうと考えて、日曜日に20時間寝るような人もいますよね。

しかしこれも、睡眠のリズムを崩してしまう行為ですよね。上記と同じ原理で、むしろ逆に月曜日・火曜日に起きづらい、疲れが取れていない、という現象に陥りやすくなります。

つまり、未来のためにどれだけ寝たとしても、睡眠時間は持ち越すことはできないのです。

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どう解消したら良いのか?

では、どうすれば睡眠負債は正しく返済できるのでしょうか?

1つ目の方法は「睡眠の質を上げること」です。これは体温、光、睡眠のコントロールにより改善することができます。

2つ目の方法は「睡眠時間を稼ぐ意識」です。特に睡眠不足が続いている場合でも、起きる時間は揃えた上で、正しい仮眠の方法を実践しましょう。

次回からは、これらの睡眠負債の正しい返済の仕方について、1つずつ詳細にご紹介していきます。

こちらの記事は2017年10月27日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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